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第39話 もの言える証人⑦

「ぎんちゃん」の使い分け。注意書き!

♪銀ちゃん→ユーリー

♪ギンちゃん→猫(長毛、たち耳、白猫のスコティッシュフォールドの雄、推定10歳以上)


銀ちゃん(ユーリー)は、八幡宮の敷地以外では、猫のギンちゃんの体を借りて(体の中に同居して)過ごしています。

「ギ~ンちゃん、お願いがあるんだけど。」

 ジョシュアさんがギンちゃんの前にしゃがみ込んで話し掛けた。


「にゃ」


「さっき、うちに来ていた人の家って分かる? 佐々木さんって言うんだけど。」


「にゃ」

 ギンちゃんは首を傾げていたが、暫くすると、

「にゃ~」

 と一声上げた。分ると言ってるみたいだ。単なる勘だけど。


「じゃあ、今から佐々木さんの家に行って、誰かお客さんが来ていないか確認してきて欲しいんだ。できれば、そのお客さんと佐々木さんが何をしていたか、何を話していたかも確認してきてもらえないかな?」


 いくらギンちゃんが賢いからってそんなお役目を果たせる訳がない…

 ああ、銀ちゃんと一緒なら出来るのか。


 今はどっちが答えてるのかな?


 もしかしたら、ジョシュアさんが言っていることを、銀ちゃんがギンちゃんに通訳してるのかもしれない。


 ジョシュアさんのお願いを聞くと、直ぐにギンちゃんは出かけて行った。


「後は、ギンちゃんが戻ってくるのを待とう。僕たちが晴斗はると君の家の周りをウロウロしてたら怪しまれるからね。」


 ギンちゃん大丈夫かな、やっぱり心配だな。

 でも私もギンちゃんを信じて待とう、それが愛だと思うから。




「僕たちは、夕飯の買い物に行くけど、あかりも来る?」


 ここで一人でギンちゃんを待っていても良いけど、特にやることもないし一緒に行こうかな。

「はい、お供します。」


 スーパーに着いてから思ったけど、よくよく考えたらこの三人でスーパーで買い物って、はたから見たらどう見えるんだろう?このスーパーはうちの母親も良く買い物に来るし、大河たいがの母親にも時々会う。でも、何もやましいことなんてないのだから堂々としていれば良いだけだよね。


「今日はギンちゃんのために、サーモンのお刺身とチーズを買って行こう。来海くるみは何が食べたい?」


「アジと中トロ」

 光物と中トロですか、相変わらず渋い好みの小学一年生だな。


あかりは?」


「えーっと、サーモンが良いです。刺身ならば。」


「好きなものも、ギンちゃんと一緒なんだね。僕は何が良いかな、そうだ、いろいろ買って手巻き寿司にしようか。」


「手巻き寿司!」

 来海ちゃんが喜んだ。


「いいですね、手巻き寿司。」

 なんか私も嬉しい…って言うか、夕飯も食べる気満々だな私…ちょっと図々しいかな…



「あら、あかりじゃない。」


 背後から聞き覚えのある声が…振り返ると、


「お母さん。」


「今日もエバンズさんの家でご飯食べて来るの?」


「あ、うん。」


「エバンズさん、こんにちは、うちの明がいつも本当にお世話になってます。」


みどりさん、こんにちは。こちらこそ、いつもお世話になってます。」


 うわ、うちの母のことも名前で呼んでるよ、この人。


「あんまり迷惑かけちゃ駄目よ。遅くなるときは連絡するのよ。」


「うん、わかった。」


「じゃあ、失礼しま~す」

 そう言って、ニコニコしながら母は去って行った。

 何だか含みを感じる笑いだな…まあ、いいや。


「いい人だよね、明のお母さん。優しそう。」


「まあ、優しいですよ、普通に。」



 そんな話をしていたら、またもや聞き覚えのある声が、


「あれ~、明ちゃん、ジョシュア君、それに来海ちゃんも!」


「こんにちは、百合絵ゆりえさん、今日も素敵ですね。」


 ああ、大河たいがのお母さんのことも名前で呼んでるよ、この人。


「あ~ら、相変わらず嬉しいこと言ってくれるなあ。そう言うジョシュア君は両手に花でお買い物デートかしら。モテる男は良いわね。」


「そうなんです。良いでしょう。」

 ニコニコしながら屈託のない返事。


「また、パン教室に遊びに来てね。もちろん単に遊びに来てくれるのも大歓迎よ。それじゃあね~」

 そう言って、大河の母は右手をひらひらさせながら、嬉しそうに去って行った。



「あの…」

 やっぱり、ここははっきりさせておく必要あると思い、話を切り出した。


「なに?」


「もしかすると、ジョシュアさんと私の仲を勘違いしている人がいる気がするんですよね。」


「うん、多分いるね。」


「そういうのって良くないと思うんです。お互いに。」

 来海ちゃんに目をやった。

 彼女はアジと中トロを自分の小さい買い物カゴに入れてご機嫌な様子で、何も気にしていないみたい。というか、私ごときは敵でも何でもないのかもしれない。勿論、彼女とそういう事で争うつもりはサラサラないけど。


「そう?本当の事じゃないんだし、勝手にそう思ってるだけなんだから気にすることないんじゃない?」


「そうかもしれませんけど、私は気になるって言うか…」


「まあ、気になるよね。」

 何だか寂しそうな表情で言ってくるなあ、やだなあ罪悪感…でも、私は誤解されるのは嫌だ。


「嘘ついてるって言うか…誤解されたままって、やっぱり、良くないと思うんですよね…」


「う~ん、じゃあ、僕の友だちの彼女ってことでどう?立場的に付き合ってることをおおやけに出来ない人だから詳しい話は出来ないていで。嘘じゃないけど、ややこしい話にはなるよね。」


「それがいいです。ジョシュアさんの友だちの彼女!今からそれで行きましょう!」


「明が良いなら、今からそれで行こうか…」

 なんか苦笑いしてるけど気にしない。だって、その方が事実に近い!彼女かどうかは分かんないけど…



 ああ、銀ちゃんの彼女

 そういう事だよね~顔がニヤついちゃう。


 まだ、本人に確認を取った訳じゃないけど、って言うかそう言う概念がないっぽいけど、だったら、私がその概念を叩き込めばいいって訳だ!




 ニヤニヤしながら夕食の準備を手伝った。


「明お姉ちゃん、なんだか嬉しそう。」

 一緒にお手伝いをしている来海ちゃんが声を掛けて来た。


「そうかな、普通だよ。」

 何でもない振りをしてみた。


「明はね、好きな人のことを考えてるんだよ。それで、さっきからずっとニヤニヤしてるんだよ。」


 余計なこと言わなくていいのに。そんなことを思っていたら来海ちゃんが尋ねてきた。


「明お姉ちゃんの好きな人ってどんな人?」


「え~、どんな人かって? 優しい穏やかな人だよ。銀髪で背が高くて、かっこよくって、でもいつもジャージ着てて…」


「ふーん、何してる人なの?」


「え!何してる人かって?」

 銀ちゃんって何してる人なんだろうか?


「学生さん?お仕事してる人?」


「…休職中かな…」


「きゅうしょくちゅう?お昼ご飯?」


「お仕事を、お休みしてるってこと。」


「ふーん」


 余り具体的な話は墓穴を掘るからやめておこう。

「今は、何もしてないの。」


「そうなんだ。じゃあ、どうやって生活してるの?」

 具体的なことを聞いて来るなあ、来海ちゃん。


「お家がお金持ちなんじゃないかな。だから、働かなくても暮らせてるのかも。」


「ふーん、その人のどこが好きなの?」


「え?どこが好きかって?」

 私は銀ちゃんのどこが好きなんだろう?


「穏やかで、優しくて、話してると楽しくて…顔が良くて…」


「それから?」


 え?それから?まだ何かあったかな?

「それから…真っすぐで、純粋で、屈託がなくて…笑った顔が好き。」

 そうだ、私は、銀ちゃんが笑った顔が大好きなんだ。


「ふ~ん、素敵な人なんだね。きっと。」

 そう言って、来海ちゃんが笑った。


「うん、素敵な人だよ。」

 私も笑った。


「あれ、もしかしたら帰って来たかも。」

 そう言って、ジョシュアさんはどこかへ行って、暫くするとギンちゃんと一緒に台所に戻って来た。


「お帰り、ギンちゃん…どうしたの?そんなに汚れて…」

 いつもは真っ白なギンちゃんが、埃まみれで灰色になっている…


あかり、ギンちゃんをブラシして、お風呂で洗って上げて。随分と頑張ったみたいだから。」


 ギンちゃんをお風呂に連れて行った。

 ブラシをして、ゆっくりお湯をかけて、よく泡立てて優しくシャンプーして…なんて思ったら…

 お湯をかけた時点で大暴れされた。

 暴れるギンちゃんを押さえつけてどうにか洗い、ドライヤーと思った所で逃げられた。その後は、ギンちゃんはビショビショのまま家の中をかけ回り、ジョシュアさんの肩の上に飛び乗った。私が捕まえようとすると、思いっきり威嚇された。

「シャーーーーーー」


「ギンちゃん落ち着いて。頭に爪立てないでー」

 そう言いながら、ジョシュアさんがギンちゃんを捕まえた。


 二人でギンちゃんをタオルで包んで、ご機嫌を取った。来海ちゃんがサーモンの刺身とクリームチーズを見せると、大きなヘーゼルの瞳をより大きく見開いき、途端に大人しくなった。

 ああ、私の愛よりもサーモンとクリームチーズなのね…

 ハムハムと美味しそうに食べる姿を眺めていると、まあ、仕方ないかって思ってしまった。






今回のお話はいかがでしたでしょうか?

感想を聞かせていただけると励みになります。


毎週水、日の14時30分更新予定です。

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