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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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チートを発揮するなら、今でしょ!5

「美味い! ひと仕事した後のメシは特別美味い!」


「……少しは遠慮しろ、ガイ」


「お疲れ様でした。みなさん、ご無事で良かったです」


あらかた街の人に食事を配り終え、騎士達や陛下も聖獣の作った机と椅子で食事をしてもらっている。


リックは今見回り中だということなので、後でたくさん労ってあげよう。


聖獣達の仕事のおかげでそこまで絶望感はないみたいで、街の人たちからも笑顔が見られる。


死者もひとりもいなかったんだって。こんなこと、なかなかないってガイさんも驚いていた。家族や友人たちがみんな無事で、ほっとしたよね。


食事を楽しむみんなの姿を見ながら、食事を配っていた時のことを思い出す。


温かいスープを渡した時に、『あったかい。私達、ちゃんと生きてるのね』って言ったおばあちゃんの言葉が耳に残っている。


おにぎりをひと口食べて、『初めて食べたのに、ほっとする味ね』って言ってくれた幼い子のお母さん。


から揚げをひとかじりして、『なんか力が湧いてきたよ。ありがとうな、お嬢ちゃん』って言ってくれたおじさんもいた。


食べることは、生きること。


本当にそうだね、お父さん。


「……見慣れないケープを着ているな」


「あ、そうなんです。元々は私が赤ちゃんの時のおくるみだったんですけど、カレンさんが加工して下さって……」


思いがけない陛下からの質問に驚きながらそう答えると、そのカレンさんが珍しく急いだ様子でこちらにやって来た。


「すみません、ヴィオラ様。少し手伝っては頂けませんか?」


カレンさんは怪我人の手当ての仕事にあたっていたはず。


私も一応回復魔法が使える(らしい)のだと事前に話していたので、こうして呼びに来てくれたのだろう。


「あ、はいっ! お話の途中ですみません、行って来ますね」


ぺこりと下げた頭を上げると、陛下がため息をついて立ち上がった。


「……幼い子どもに働かせておいて俺達が休むのはおかしな話だな」


「は!? おい、まさか……」


「行くぞ。市民も己の家や所有物が気がかりだろう。無茶をして怪我人が増えないよう、注意喚起して回るぞ」


マントを翻す陛下の後を、嘘だろー!?と言いながらガイさんもついて行く。


真面目な陛下にくすっと笑って、カレンさんと共に怪我人の待つ避難所へと向かった。


「あ、待ってたよヴィオラ!」


「ヴァル? あなた、治療の手伝いをしていたの?」


「まあね。僕、一応聖属性に特化してるから!」


そうだった、私の回復魔法の効果だってヴァルのおかげで増大したって話だものね。


「それよりほら、そこの騎士見習いを治してやろうよ。覚醒したとはいえ、僕だけの力じゃ完治は難しくて。ヴィオラにならできるはずだから」


ヴァルが顎で指した方を見ると、なんとそこにはリックがうつぶせで横たわっていた。


そしてその背中には、ひどい裂傷が。


「すまん。瓦礫の中からぬいぐるみを取り出そうとするチビがいてさ。二階部分が崩れるのが見えてとっさに庇ったら、こんなことに……」


「お、おにいちゃんごめんなさい……。わ、わたしのせいで……」


その側にはぬいぐるみを抱きしめる、私より少しだけ幼い女の子がいた。


亡くなったおばあちゃんからの贈り物で大切なものだという。


「そっか……。大丈夫、すぐ治すからね」


悪いなとリックは笑っているけれど、その顔色は悪い。


出血がひどいみたいだし、早く治してあげないと。


「ええと、ヴァル?」


「うん、大丈夫。〝治療(ヒール)〟って、唱えてみて?」


それにこくんと頷き、両手を組んで目を瞑る。


「〝治療(ヒール)〟」


傷が治りますように。


血が止まって、皮膚も綺麗に戻りますように。


そう祈りを込めて唱える。


ぽおっと温かい光を感じて目を開けると、リックの背中はすっかり綺麗になっていた。


「うお、すげぇな。結構深い傷だったのに、全然痛くねぇや」


「よ、よかったあぁぁ!」


むくりと起き上がるリックに、女の子は泣いて抱きついた。


その様子を見てカレンさんとふたり、良かった……とほっと息をつく。


「ありがとうございました、ヴィオラ様。ヴァル様にヴィオラ様を呼んだ方が早いと言われましたので」


「いえ、良かったです。……あれ? でもどうしてヴァルの言葉が……?」


聖獣の言葉が分かるのは、契約者だけのはずなのに……?


「ふふ。私も少々特殊なスキルを持っておりまして。人間を含め、生き物の言葉はどのような言語でも聞き取れるのです」


にっこりと笑うカレンさんに、たらりと冷や汗を流す。


そ、それって色々なアレコレも聞かれてた、ってこと?


「ここだけの話、スパイ活動も得意としております。動物を味方にできると便利ですよ?」


綺麗な微笑みが、逆に怖い。


カレンさんだけは敵に回したくない、うん気を付けよう。


「それにしても見事だねヴィオラ! 僕とヴィオラがそれぞれ鍛錬すれば、もっとすごい回復魔法が使えるようになると思うよ! ほら僕もヴィオラもまだ子どもだし。まだまだ伸びしろがあるよね!」


いや、あれだけひどい傷を綺麗に治せたんだから、十分すごいと思うんだけど。


ちなみにどれくらいのことができるようになるのかしらと、怖いもの見たさでヴァルに聞いてみる。


「うーん、切断された腕を生やすくらいはできるだろうね!」


怖っ! 腕を生やすって言い方! 逆に怖いよ!


「まあ。ヴィオラ様の今後が楽しみですわね」


びくっ!と肩が跳ねた。


カレンさんにまで聞かれてしまった。


この方の前でヴァルと不用意な話をするのは控えないといけないなと、心に刻む。


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― 新着の感想 ―
カレンさん……やるわね(。-∀-)ニヤリ
[良い点] いつも楽しく読んでます! ま、心まで読まれるスキルよりは安心だよね(笑) 動物だけでなく虫とかも手懐けれたらさらに活躍はできそうだけど、カレンさんが耐えれないよね虫に(笑) 女性の方…
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