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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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今の私にできること2

「へぇ、隠すの止めるんだ?」


「うん。このまま隠し続けるのは無理かなって。まだ少し怖いけど、みんなの役に立てるような使い方をしたいって思ってる」


いつものように聖獣達のご飯を作って庭園まで運ぶ道中、リックにも昨夜のことを伝えた。


今日はカレンさんが用事で不在なので、リックとヴァルの三人で並んで歩いている。


リックは心配するというより、自分で決めたことなんだから良いんじゃないかって感じの反応だ。


でも大人組は私に対してちょっと過保護というか、甘やかしすぎじゃないかと思うことも多いので、あっさりとしたリックの反応が普通だと思う。


「まぁおまえがその力を悪用するとは誰も思ってねぇからさ。兄貴達が危惧してるのは、おまえが誰かに狙われたり利用されやしないかってことだよな」


さらりと私のことを信用していると言ってくれたリックに苦笑しながら、狙われる可能性については考えていたことだと伝える。


でも、それについては陛下が必ず守ってくれると以前約束してくれたし、昨日もう一度同じことを言ってくれた。


『おそらく、騎士共や料理人達もおまえの決心を知れば、今まで以上におまえを守ってくれるだろう。あれだけの人間の心を掴むその術をご教授頂きたいくらいだ』


冗談交じりの陛下の言葉に、私の心はとても軽くなった。


その分、私もこの人達のためになにかできたら良いのにって思ったくらい。


「ま、俺も応援してるからさ。おまえの料理、好きだし」


「……ありがと、リック」


ほんのりと頬を染めるリックの気持ちが嬉しくて、笑みが零れる。


「僕だって! いやいや、むしろ僕がいっちばんヴィオラの料理が大好きだし、応援してるよ!」


「そうよね、ありがとう、ヴァル」


リックに負けじと主張してくるヴァルにもお礼を言う。


「……なに言ってんのか俺には分かんねぇけど、なんか対抗されてる気がするな」


雰囲気でヴァルの言葉を理解しているリックが面白くて、また笑う。


そうだ、私は、私なりに頑張ろうと決めたことを頑張っていくだけ。


たとえこの先に心配なことがあったとしても。


不安のない人生なんて、ないのだから。


自然と背筋が伸びて、目の前が明るくなった気がした。


「さ、今日のご飯もみんな喜んでくれるかしら」


「そりゃ喜ぶに決まってるさ。聖獣達、おまえの料理なんでも好きだろ絶対。美味い上に成長まで促してくれるんだから、喜ばないわけないだろ。ほら、早くも集まって来た」


庭園に着くと、私達の姿を見た赤ちゃん聖獣達がきらきらと目を輝かせて駆け寄ってきた。


その体は、最初よりもひと回りくらい大きくなった気がする。


「成長促進の効果が必要なのは幼獣だけのはずなんだが、いつまでも親獣が一緒に食ってるしよ」


「それだけ気に入ってくれてるってことかしら? ふふ、嬉しいことだわ」


「僕の! 僕の分もちゃんと取っておいてよ!?」


ぶつぶつ言うリックと一緒に、聖獣達が食べやすいように料理を芝生の上に置いていく。


するとすぐに聖獣達は躊躇いなく料理を口にしていく。


そんな風に親子で寄り添いながら美味しそうに食べてくれる姿を、腰を落として目を細め見守る。


「みんな、元気に、大きくなってね」


この子達も、ヴァルみたいに誰かの契約獣になる日が来るのかな。


「私みたいにうじうじと悩む契約者じゃないと良いね」


ヴァルには悪いことしちゃったなという思いで呟くと、一羽の赤ちゃん不死鳥がふわりと羽ばたき私の肩に乗り、鼻先をその翼でそっと撫でた。


ん?と首を傾げると、ヴァルがものすごく嫌そうな顔をした。


「駄目! 駄目だよ!」


「ど、どうしたのヴァル」


すると赤ちゃん白虎がとてとてとやって来て、私の膝にすりすりと頬を寄せた。


「! だから、駄目だって言ってるじゃん!」


「な、なに? この子達、どうしちゃったの?」


その後も次々と赤ちゃん聖獣達が私の周りに集まって甘えるような仕草を見せ、ヴァルがそれに吠えた。


なんのことやらさっぱりな私が戸惑っていると、ひょっとして……とリックが口を開いた。


「そいつら、おまえと契約したいとか言ってるんじゃねぇ?」


「ええっ!? そ、そんなわけ……」


ぱっとヴァルを見ると、すごく不満げな表情をしている。


そして親獣の方を見ると、うんうんと頷きを返された。


う、嘘でしょ……?


「……ちょっと、私ひとりの手には余るので、それは遠慮したいかな、なーんて……」


断ろうとしたら幼獣たちがぴーぴーわーわー鳴き叫び出した。


そ、そんなこと言われても。


「ほら、ヴィオラは無理だって言ってるじゃん! 大人しく他の契約者見つけなよ!」


牽制を続けるヴァルと、なかなか諦めない赤ちゃん聖獣達。


「なんなら俺なんてどうだ? いつでもウエルカムだぞ?」


空気を読んでいるのか読んでいないのか、そう冗談めかして言うリックに赤ちゃん聖獣達はぷいっとそっぽを向いた。


そして親獣達も、ぷるぷると首を振るではないか。


「なんでだよ! 俺だって毎日おまえたちのメシをせっせと運んでやってるじゃんよ!?」


そう叫ぶリックのおかげで、なんとかその場は聖獣達に諦めてもらうことができたのだった。


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