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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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聖獣カフェでも開きます?3

覚醒? 覚醒って何?


ヴァルは大丈夫なの?


まばゆさが増して目を開けていられないほどになり、腕で目を覆う。


しばらくそのままでいると輝きが落ち着いたようで、そっと腕を下ろして目を開けた。


「ヴァル……? きれい……」


すると先程までのふわふわの白い毛並みが、輝くような銀色に変わっていた。


ヘスティアと同じように。


「ヴィオラ、やった! 僕、覚醒できた!」


尻尾を振り振り私の元へ駆け寄るヴァルの姿は、その毛の色以外はいつもと変わらない。


もふもふ加減も、温かな体温も、同じ。


「ヴァル、覚醒ってなに? 大丈夫? 身体、なんともない?」


嬉しそうにしているから多分大丈夫だとは思うけれど、念のため確認すると、心配性だなぁと笑われた。


「大丈夫だよ! むしろ、とっても良いことなんだから!」


満面の笑みを浮かべるヴァルは、どこか誇らしげな表情に見える。


するとヘスティアも側に来て、鼻先をヴァルの顔に擦りつけた。


まるで、すごいね、おめでとうって褒めてあげるみたいに。


「心配しなくて良い。覚醒は聖獣にとって、とても誉れ高いことだからな」


「すげえな、俺も初めて見たぞ」


「ええ、なかなかお目にかかれるものではありませんからね」


陛下とガイさん、フィルさんがそう続け、なにも知らない私に聖獣の覚醒について教えてくれた。


曰く、聖獣は覚醒することでその能力が飛躍的に伸び、また独自の特殊な能力を目覚めさせるのだという。


それは幼獣の時に起きるとは決まっておらず、成獣であっても覚醒前であるものもいるし、また必ずしも起きるとは限らないらしい。


まあ覚醒する前になにかの事情で命を落としてしまうこともあるだろうからね。


「ヘスティアはすでに覚醒した状態で俺と契約したからな。子ども達もまだ誰も覚醒していない。そもそも聖獣に出会うことが稀だからな。……今現在は、飽和状態だが」


たしかに今、庭園のそこかしこには様々な種類の聖獣がいる。


しかも親子で。


陛下の言葉で、この状況がいかに異常なのかが分かる。


ここに集まってくれた赤ちゃん聖獣達もいつか覚醒するのかしらと思いながら振り返ると、聖獣達が皆こちらを向いて顔を伏せているのに気付いた。


「覚醒したヴァルを祝福しているらしいぞ。ヘスティアの顔を見ろ」


隣にいるヘスティアを見上げれば、胸を張って誇らしげな表情をしている。


自分の子どもが認められて嬉しいのは、人間と同じみたい。


前世でお父さんも、お兄ちゃんの就職が決まった時はすごく誇らしそうに常連のおじさん達に自慢してたっけ。


そんなことを思い出していると、顔を伏せていた聖獣達が続々と私達の方へ歩いてきた。


「え? ど、どうしたんでしょうか?」


「大丈夫だよ、ヴィオラ! そのまま待っててあげて」


戸惑う私を、腕の中のヴァルがそう言って落ち着かせてくれた。


そして全ての聖獣が取り囲んだのは……私!?


「みんな言ってるよ。美味しいご飯をありがとう、力が湧いてきたって」


「『うちの子もあなたの子みたいに覚醒できるように、たくさんヴィオラのご飯を食べさせてやりたい』……とヘスティアに言っている奴もいるようだな」


ヴァルと陛下が聖獣達の言葉を代弁してくれる。


いや、私の料理を食べたからって必ず覚醒するとは限らないんですけど!?


「聖獣の覚醒には条件があるという研究もあるのですよ。その能力が高いほど覚醒が早いとか、秘めた力が大きいものは幼獣で覚醒するとか、そんな研究結果もありますね」


私の料理で成長促進すれば、覚醒も早まるかもってこと?


いやいや、だから私の料理で~とか、そんな物語みたいに上手くいったりする?


フィルさんの話を半信半疑で聞いていると、赤ちゃん聖獣達が私の前に集まって来た。


「きゅ~」


「がう、がうがう!」


「ぐるるぅ~」


か、かわいい!!!!


聖獣達はそれなりに厳つい容貌のものも多いのだが、赤ちゃんはどの子も愛くるしい!


ちょ、ちょっとだけ触ってみたい。


でも親御さん達に怒られたりしないかしら……?


「ありがとうって、みんな言ってる。それから……えっ? 僕達も撫でて、って?」


なんと許可を頂けた。


それならちょっとくらい……としゃがんで、一番前にいた不死鳥の赤ちゃんにそろそろと手を伸ばす。


もふっ。


! やわらかい!


「きゅっ! きゅぅ~」


その素晴らしい毛並みに感動していると、くすぐったそうに不死鳥の赤ちゃんが声を上げて羽を羽ばたかせた。


すると白虎やグリフィンの赤ちゃんも負けじと鳴いた。


「ぐぅ! ぐぅ!」


「がうぅっ!」


「……ヴィオラ、僕達も早く撫でろってさ」


少し不本意そうなヴァルをよしよしと撫でた後、その他の子達もなでなでしていく。


「わっ!? やだみんな、ふふ、重いよぉ」


僕も私もと群がる赤ちゃん聖獣達は、撫でられる順番を待ちきれなかったのか跳び乗ってきて、押し倒されてしまった。


どの子ももふもふで、良い匂い。


「ああっ!? ヴィオラ、大丈夫!? もう、みんな! ヴィオラは僕の契約者なんだからね!」


やきもちを焼いたヴァルの声が響く。


「あはは、みんな元気で良い子ね。これから毎日美味しいご飯作って来るから、たくさん食べて大きくなってね!」


「「「「「きゅぅーん!!!!」」」」」


まるで、分かった! 楽しみにしてるよ! と返事をしてもらえたようで、私は自然と満面の笑顔になったのだった。


「……まるで聖獣のためのカフェテリアのようになってしまったな」


「あ、それ良いんじゃねえか? 聖獣カフェ、これからもっと流行りそうだな」


唖然とする陛下に、ガイさんが茶化して笑う。


たぶんガイさんが言ってるのは聖獣のためのカフェって意味なんだろうけど。


前世であった〝猫カフェ〟みたいに、聖獣達をもふもふして癒されるカフェも良いよなぁと、心の中で思ってしまう私なのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 優しい物語でとっても癒されます^_^ 夢中で読んでます。
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