無自覚チートは転生あるある4
フィルさんとガイさんの答えに、僅かにあった希望は塵と消えた。
くらりと眩暈がしたところで陛下が口を開いた。
「おい、おまえのステータスが予想以上に高くて戸惑っていることは分かった。だが今はそれが知りたいのではないだろう?」
あ、そうだった。
「えっと、ちょっと待って下さいね」
陛下の指摘に、慌てて先程画面に映っていた続きをスクロールするようにして流してみると、知りたかった能力についての記載が現れた。
* * * * *
スキル:料理 LV 10 ・ 魔法付与(ただし料理に限る) LV 5
餌付け LV 8
【料理に付与可能な効果一覧】
成長促進 LV 5
体力回復 LV 3
集中力上昇 LV 3
安眠 LV 2
精神安定 LV 2
* * * * *
……。
餌付け……?
安眠?
精神安定?
なんか、思っていた以上に特殊な効果も付与できるみたいね、私。
「おい、惚けていないでさっさと教えろ」
「はっ、すみません、つい」
あまりに予想外なことまで書いてあったので、そこまでは答えなかったが、私はとりあえず予想通り料理に魔法が付与されていたようですと結論だけ伝えることにした。
「やはりな……」
「聖属性と光属性魔法の付与、ということですね」
「その二種類の魔法が使えるたぁ、将来有望だな。魔術師団長が聞いたらヴィオラを勧誘しに、すっとんで来そうだな」
はっはっは!とガイさんは呑気に笑っているが、それは遠慮させてもらいたい。
もちろんなにかあった時にお手伝いできることは協力するが、できれば仕事は料理をしていたいから。
「それは秘すべき内容だろう。個人のステータスとは、そう簡単に口を滑らせて良いものではない」
「分かってるよ! 冗談で言ってみただけじゃねぇか」
私の戸惑いに気付いてくれたのか、陛下はガイさんに釘を刺してくれた。
「さて、では執務室に戻るぞ。ここでは落ち着いて話ができないからな」
そしてそう言って私の手を取り、執務室へと連れて帰ってくれた。
外見は幼女の私だ、廊下は暗いし転ぶと危ないとか思ったのかしら。
微妙な気持ちにはなったが、陛下の優しさは感じられる。
そうして執務室に戻ると、ヴァルが待ってくれていた。
「ヴィオラ、おかえり! どうだった!?」
尻尾を振って飛びついてくるヴァルを受け止めると、陛下がソファに座れと言ってくれたので、腰をかけた。
フィルさんとガイさんも座り、一度ふうっと息を吐いてから口を開く。
「あの。先程ステータスはそうそう人に教えるものではないとおっしゃいましたが……」
自分ひとりで抱えておくには、ちょっと私はチートすぎる。
ステータスのことをまるっと話してしまって良いのかと悩みはしたが、この力をどう使い、どう隠したら良いのか一緒に考えてくれる人がいると心強い。
まだ出会って僅かな月日しか経ってはいないけれど、この人達ならきっと親身になって考えてくれる。
そう思って、使用できる魔法の種類とレベル、不可思議なスキルについても包み隠さず話すことにした。
口にするだけでは良く分からないだろうから、紙とペンを借り、記憶を頼りにステータスを記入していく。
定食屋では一度にたくさんの注文を取ることもあったから、暗記は割と得意だ。
この世界の文字を書けるかしらと思っていたのだが、書こうと思った文字や数字が自動的にこの世界の言葉に変換されて書くことができた。
不思議なことだが、これも異世界転生チートってやつかしら。
「こんな感じでしょうか。うろ覚えのところもありますが、だいたい合っているかと思います」
そうして書き終えた紙を見せると、三人はぴしりと固まった。
あれ?
「魔法付与、成長促進の効果がつくというのは先程も聞いたが……。その幼さでMPが千超えだと?」
「ここに書いてあることが本当ならば、全属性の魔法が使えるということですか?」
「おいおい、高いだろうなとは思ったけど、料理レベルはMAXかよ。それでもって付与の内容もありえんし、わけの分からんスキルまであるな。〝餌付け〟って、なんだこりゃ」
ざわざわと三人はありえない、マジかと連呼しながら私のステータスを凝視する。
や、やっぱりおかしいよねこのステータス。
もしかしたらもしかして、珍しいけどちらほらこんな人いるよーな感じだと良いなぁとか僅かな期待を持っていたのだが、再び見事に打ち砕かれてしまった。
そこへひょこっと顔を出してヴァルがステータスの書かれた紙を覗き込んだ。
「あ、やっぱりね。ヴィオラ、すごい才能を持ってるなーってずっと感じてたんだよね! 僕と契約して多少は魔法レベル上がったと思うけど、これほとんどヴィオラが元々持ってた能力だよ!」
つぶらな瞳でなんて爆弾発言してくれるのか、このヴァルは。
「ぷっ、スキル〝餌付け〟だって。まさに僕がされたヤツだね! ああ、そこのお母さんの契約者やお付きの人たちもそっか。なんならご飯作ってもらってる騎士達もそうじゃない?」
きゃはは!と無邪気に笑うヴァルの口を慌てて塞いだ。
陛下やその側近、騎士団長様に向かって〝餌付けされた〟なんてとんでもない!
「どうした?」
そ、そうか、ヴァルの言葉が分かるのは私だけだった。
「俺達や騎士共も餌付けされたとでも言われたか?」
な、なんて察しが良いんだこの陛下は!
「まああながち間違ってはいないが。それにしても、スキルだったのか?」
「まんまと餌付けされてしまいましたからね。認めましょう」
「そうだなぁ、しかも料理スキルと共に高レベルだし、抗いようがねぇよな」
ヒヤッとした私だったが、お三方はすんなりとそれを認めてしまっている。
いやいやいや……。
「疑わしい顔してるけど、本当だぜ? ヴィオラの味に慣れちまったら他でメシ食えねぇ!って言ってる信者も騎士団にはいるからな」
ガイさんの言葉に、フィルさんまでうんうんと頷いている。
「ちなみに、噂を聞きつけた他の騎士団や別棟の食堂関係者から、私共と第二騎士団だけ美味いものを食ってずるいぞ!と苦情も入っております。もともとヴィオラは陛下の専属料理人、そのついでに騎士達にも作っているだけだと突っぱねておりますが……。まぁ時間の問題かなと」
なにが時間の問題なんですか!?
ぼそりと呟いた最後の言葉、ちゃんと聞こえてましたからね!?




