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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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人を見た目で判断してはいけません!2


「はい? 料理をして、それから給仕のお手伝いをしています」


「な、かわいいだろ? ウチの騎士共から大人気なんだぜ? 美味い食事に美少女からのお給仕。今やこの食堂は騎士達の癒しの空間となったわけだ! いや実際ヴィオラが来てから、騎士達の動きが良くなったんだよなぁ。美味いメシがあると、やる気も出るってやつかもな!」


わははとガイさんは上機嫌だが、陛下の眉間には未だ皺が刻まれている。


「……ヴィオラ、大量の料理を作って給仕の手伝いまでしていては大変だろう。別におまえはそこまでやらなくても良い」


あ、そうか。


陛下は私が無理をしているのではと心配してくれているのか。


「いえ、大丈夫です。元々給仕のお手伝いは好きでやっていることですから」


たしかに多人数の食事を作るのはなかなか骨が折れるものだが、メニューはひと種類だけだし、料理人さんもたくさんいるのでそこまで大変ではない。


定食屋ではメニューも多いし従業員はお父さんと私だけ、昼時や夕食時なんて、そりゃあもう目の回るような忙しさだった。


私は大学もあったし家事や弟達のフォローもしていたから、毎日が目まぐるしく過ぎていったものだ。


好きでやっていたことだから不満はなかったけれど、その時に比べたらこの生活はとても時間に余裕があって充実している。


ちょっとやそっとの忙しさなんて屁でもない。


だから心からの言葉を言ったつもりだったのだが、それが健気に頑張る幼女の姿に見えたらしく、フィルさんとガイさんが私の頭をそっと撫でてきた。


「まだ幼いのに……。見ていていじらしいですね」


「ヴィオラは頑張り屋さんだな! 今度城下町で甘い菓子でも買ってきてやるからな。無理はするなよ」


側にいたリックまで涙を滲ませて私を見ている。


……なんだか勝手に美化されている気がするのだけれど。


「無理なんてしていません。本当に私がやりたいことをさせて頂いているだけですから。むしろ好きなことをやらせて頂いて感謝しているくらいです」


「くっ……。どう育ったらこんなに良い子に育つんだ!?」


「本当に……。リックにあなたの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいですね」


どうしてもガイさんとフィルさんは私を良い子に仕立て上げたいらしい。


まあふたりは私を本当の幼女だと思っているし(いや肉体年齢的には本当に幼女なのだが)、前世のことを知らないから仕方がないと言えば仕方がないのだけれど。


「なんで俺を引き合いに出すんだよ!?」


しかし流れ弾に当たってしまったリックには申し訳ないなと思いながら苦笑する。


「……ヴィオラが良いならそれで良い。だが、本当に無理はするなよ」


そう言うと陛下は席を立った。


食器を片付けようとして下さったので、慌てて私がやりますと駆け寄る。


「でも、心配して下さったことはとても嬉しかったです。お気遣いいただきありがとうございました。夕食も皆で頑張って作りますから、楽しみにしていて下さいね!」


感謝の気持ちを込めてそう伝える。


すると陛下は少しだけ目を見開いた後、私の耳元に顔を寄せて囁いた。


「まだここに来て間もないんだ。おまえが思っている以上に体は疲れているものだぞ。適当に休憩は取れよ」


たしかに大人の感覚で働いていて気付かないうちに体が疲れてしまう……とかあり得るかも。


気を付けますとの意味を込めて大きく頷くと、それに満足したのか陛下もぽんと頭を撫でた。


「ああ、楽しみにしている。今日も夕食は執務室まで頼む。食器も悪いが頼んだぞ」


「はい、分かりました!」


せっかく陛下から助言を頂いたのだ、健康には気を付けよう。


改めて気を引き締め陛下を見送ると、フィルさんとガイさん、それにリックにまでじっと見つめられているのに気付いた。


「珍しいこともあるものですね」


「胃袋を掴まれた結果ってやつか?」


「今日の陛下はあんまり恐くなかったな……」


三人でこそこそと話している内容は聞こえなかったけれど、なんとなく私と陛下のことを話しているのだろうなということは分かった。


「陛下って、本当に優しいですよね」


「「「はぁ!?」」」


これまた本心を言っただけなのに、思い切り聞き返されてしまった。


「ヴィオラ、大物だな……。歴戦の猛者でも黙ると噂されている陛下のこと、優しいとか」


リックが胡乱な目をする。


ヘスティアとの契約のこともあるし、実際に見たことはないけれど陛下は本当にものすごく強いのだろう。


「そうそう、よく見ると綺麗な顔してるって言われてるけど、基本不愛想だし目つきも悪いしな。貴族令嬢からも恐がられてるし。……そういやヴィオラは初めから陛下のこと恐がってなかったな」


ガイさんが不思議そうに首を傾げて私を見た。


しかしいくら親しいとはいえ、ガイさんちょっと言い過ぎなのでは……。


「そうでしたね。陛下と接しているあなたの様子を見て、怯えているというより戸惑いの方が大きそうでしたので、私も珍しいなと思っていました」


フィルさんまでそんなことを言い出した。


たしかに陛下は強面かもしれないが、中身はしっかりした思い遣りのある一人の普通の青年だ。


「見た目だけで人を判断してはいけないと知っていますから。それに、優しい顔をしていて内心で良からぬことを考えている人もいますからね。そちらの方が、よっぽど恐ろしいです」


前世でもニュースに出てくる詐欺師なんかは、本当にごく普通の、なんなら優しげな顔の人が多かったもの。


私はお父さんで免疫ついているからっていうのもあるけれど、見た目だけで判断しないようにしているつもり。


「……なんかヴィオラって、子どもらしくないよな」


ぽつりと零すリックに、私はぎくりとする。


「たしかに。おまえよりもよほど考えがしっかりしている」


「あっ、ついでに俺を貶すなよ兄貴!」


「おまえ、本当にフィルの弟かって疑いたくなるくらいガキだもんなぁ。この前も同期の見習いと……」


「ああっ、団長! その話は止めて下さい!」


良かった、ガイさんのおかげで話がリックのことに逸れたわ。


リックにはまたまた申し訳ないけれど、助かった。


「さ、俺達もそろそろ行こうぜ。おいリック、おまえ見習いなんだから先に行って準備くらいしておけよな」


「へーい、分かりましたよ。じゃあな、ヴィオラ。夜メシも楽しみにしてるからな!」


慌ただしく仕事へと戻る皆さんを送り出し、片付けへと戻る。


それにしても危なかったわ……。


別に前世の記憶があるって隠さないといけないことではないけれど、そうそう人に話すようなことでもないものね。


変に疑われたりしても嫌だし。


ヴァルとの契約のことといい、内緒にしておいた方が良いわね。


「あ、ヴァルに終わったらおかわり持って行ってあげるって約束してたんだった。急いで片付けないと」


約束をした時、目をキラキラさせて尻尾を振って、かわいかったなぁ。


そんなヴァルの姿を思い出しながら、私は再び片付けに戻ったのだった。

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