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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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聖獣様は契約獣!?2

許可? なんの? っていうかヘスティアが許可したってどういうこと?


頭の中でハテナがたくさん浮かんでいる私に、陛下は眉を顰めた。


「はあ……なにも知らない奴に説明するのは面倒だが、仕方がない。まずヘスティア、こいつは俺の契約獣だ」


「けい、やくじゅう」


陛下の言葉に、目を見開く。


「そして契約者は契約獣と会話をすることができる」


驚きすぎてぽかんとするだけの私に、陛下は説明を続けた。


「先程も言ったが、聖獣と契約した者には、力と加護が与えられる。俺もこのヘスティアと契約したことで様々な加護を受け、圧倒的な力でもって隣国との戦争にも勝利し、こうして国王の座に就くことになった」


先日リックからも聞いたが、たしかにリンデマン王国の辺境の村にいた頃、隣国には化け物みたいに強い騎士がいて、その騎士のせいで負けたとかなんとかって聞いたことがあった。


そうか、それってヘスティアの力を借りていた陛下のことだったのね。


この国の人達からしたら、聖獣とともに戦う英雄、ってところかしら?


あまりの強さに悪魔王陛下と恐れられているって話だったけれど、愚王であった前王の悪政から解放されて喜んだ人もいたよね、きっと。


まるでおとぎ話を聞かされているような気持ちになり、あれこれ空想の世界を広げながら陛下を見上げた。


しかし私の思いとは逆に、そのまるでルビーのような真っ赤な瞳が、「恐ろしいか?」と聞いているように見えた。


「……陛下は、ヘスティアと共にたくさんの命を守ってきたのですね」


誤解を解きたくて、自然とそんな言葉が口から出てきた。


すると陛下は、私の呟きに目を瞠った。


「戦争ですから、どちらが正しいとか悪いとか、白黒のつけられるものではなかったと思います」


前世でも、世界に目を向ければ戦争をしている国はあった。


でも、どちらかだけが悪いってことは、たぶんなくて。


「……陛下がどのように戦争を終わらせたのか、私は詳しく知りません。けれど、残虐なことを好んで行ったり、無慈悲なことをするような方には思えませんもの。ヘスティアがそれに力を貸したとも思えませんし」


行方知れずになっていたヴァルを探し続け、今も優しい瞳で我が子を見つめるヘスティア。


聖獣だというのであれば、契約する相手のこともきちんと選んでいるはずだ。


「陛下のおかげで守られた命も多いのだろうなって、そう思っただけです。たった数日間ではありますが、少なくとも私が自分の目で見た陛下は、そんなに恐ろしい方ではなかったので」


少々荒っぽいところや雑なところはあるが、私を気遣ってくれることもあった。


多くは語らないが、ふとした言葉の端々に優しさが垣間見えることもある。


「それに、陛下ってもふもふな動物、好きですよね? こんなところでひとり自分の契約獣を愛でている人は、そんなに悪い人じゃないと思うんです」


おそらく、陛下はその容姿や戦争のこと、前王を追放したことで誤解されることが多いのだろう。


王位を簒奪した、なんて言う人もいるかもしれない。


それでもこの国の王として立ち、胸を張って生きている。


国を統べるのに、綺麗事だけでは上手くいかないなんてことは、一庶民の私にだって分かることだ。


その頂点に立つ者は、清濁併せ呑むことができないといけない。


陛下のなにを知っているわけでもない私だけれど、少なくとも近しい人達から慕われている様子からも、悪い人じゃないって思える。


「……ヴァル、この子もヘスティアに似てとても賢い子ですが、陛下のことを恐がったり威嚇したりしませんよね。こうしてお母さんであるヘスティアのことをかわいがっていらっしゃる姿を見て、きっと陛下の優しいところを分かっているのだと思います。……なんて、偉そうなこと言ってしまったでしょうか」


そこまで話して、少し図々しかったかしらと苦笑いする。


しかし陛下はそんな風に返されるとは思わなかったとばかりに、再び瞠目した。


「……別に、愛でているわけではない。先程おまえはかわいがっていると言っていたが、俺は契約した主として振る舞っているだけだ。それに特別動物が好きなわけでもない」


口調こそ平静なものだったが、耳が少しだけ赤くなっているのを私は見逃さなかった。


「そうですか? でも今だってヴァルのことをずっと抱いてしかも頭まで撫でていますよね? それ、無意識ですか?」


陛下の胸元にちょこんと収まっているヴァルを指さす。


居心地が良いのか、ヴァルも尻尾を振ってご機嫌だ。


「………………深い意味はない。こちらに来たから抱き上げただけだ」


苦しい言い訳だなぁと思いながらも、それを声には出さずにそうですかとだけ言っておく。


動物好きって隠したいのかな?


自分には似合わないとか、またそんなことを考えていそうね。


「こほん。それで話を戻すが……」


あ、そういえば話がすっかり逸れてしまっていた。


「えっと、許可が出たとかなんとかって話でしたよね」


許可ってなんなんだろう。


「ヴァル、このチビをおまえの契約獣にしても良いと、ヘスティアが言っている」


「へ? ……ええええええええっ!?」

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