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【書籍化・改題しました】転生幼女は王宮専属の定食屋さん!〜転生チートで腹ペコなモフモフ赤ちゃん達に愛情ご飯を作りますっ〜  作者: 沙夜
本編

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料理と人間関係って、意外と似てるよね5

そうして陛下の執務室に到着し、ノックをして入室する。


すると中では、陛下とフィルさんが机に向かってお仕事をしていた。


「失礼致します。ヴィオラ様と共に、お食事をお持ちしました」


「ああ、ご苦労だったな」


カレンさんの呼びかけに、陛下はふうっと息をついてペンを置いた。


わ、仕事している真面目な顔も、ちょっと疲れてため息をつく姿も、すっごく絵になる。


美形ってすごい。


私がぽーっとしていると、陛下はワゴンを見てから私の方へと視線を移した。


「……随分と良い匂いがするな」


「あ、はい! 本日は〝から揚げ定食〟をお持ち致しました!」


我に返った私は、カレンさんと一緒に食事の準備をする。


執務机は書類の山で一杯なため、どうやら応接セットの方で食事を摂るようだ。


するとフィルさんも立ち上がり、ソファの方へとやって来た。


「……今日もとても美味しそうですね」


「そうですか? お口に合うと良いのですが。さあ、冷めないうちにおふたりとも座って召し上がって下さい」


昨日のだし巻き玉子定食を食べてから、フィルさんの私への態度がかなり軟化したように思う。


胃袋を掴んだってやつかしら?


初対面の時はすごく警戒していたのに……。


美味しい料理って偉大である。


ソファに座った陛下は、まずから揚げに興味を持ったらしく、じっと見つめている。


「カラアゲ、だったか。この肉料理のことか?」


「はい。そのまま召し上がって頂いても結構ですし、添えつけのレモンをかけて頂いても、さっぱりと食べられますよ」


「そうか。では、頂く」


ぶっきらぼうな言い方ではあるが、ちゃんと陛下は〝いただきます〟っぽい仕草を見せてくれた。


それに続き、フィルさんもフォークを取った。


サクッ


「……!」


「んっ……! これは、美味しいですね……!」


口に入れて噛み切った時の音。


そしてしっかり味のついたから揚げに、美味しさと驚きに目を見開く姿。


そんな、ふたりの反応に満足して、私は微笑んだ。


「お口に合ったなら、良かったです! では私も失礼して、いただきます」


もぐもぐと咀嚼するふたりを見ながら手を合わせる。


まずはみそ汁をひと口。


うん、出汁の味がしっかり出ていて素晴らしい出来だ。


そしてレモンをかけたから揚げをフォークで刺す。


それだけでサクッとした感覚が分かり、自然と笑顔になる。


口に入れれば、思っていた以上に熱々で、はふはふと熱を逃がしながら頬張る。


「うーん! 美味しい!」


お父さんが教えてくれた、久しぶりの味!


それが嬉しくて、陛下とフィルさんの前であることをすっかり忘れて声を上げて破顔する。


レモンの酸味でさっぱりとした風味になったから揚げをもぐもぐと頬張っていると、陛下とフィルさん、そしてカレンさんにじっと見つめられていることに気付いた。


「!!! あっ、ご、ごめんなさい! 私ったら、つい……!」


しまった、陛下達の存在を忘れ、自分で作ったから揚げを自画自賛するなんて!!


完全に無作法というか不遠慮というか、とにかく恥ずかしい!


緩みきった顔を見られたことも羞恥心を刺激する。


あわわわわ!と両手で顔を覆って下を向くが、頬の熱さが半端ない。


と、向かい側からぷっと吹き出す声が聞こえた。


「おまえ……。本当に美味そうに食べるな」


「ええ、見ているこちらの頬が緩んでしまいそうです」


わ、笑われてるーーーーー!!


昨日のお腹の音といい、本当に私はなにをやっているのか。


穴があったら入りたい。


恥ずかしさのあまり、今度は涙目になりつつある。


「……陛下、ローマン卿、そのあたりで。ヴィオラ様が茹でダコのようになっております。……ふっ」


か、カレンさんにまで笑われた……!


「も、もうお許し下さい……! 私などのことより、他の料理も早くお召し上がり下さい!」


この空気に耐えきれなかった私をようやく解放して、陛下とフィルさんは食事を再開させた。


「うん、レモンをかけたカラアゲもとても美味しいです。昨日とは具が違いますが、ミソシルも。ご飯がとてもよく進みます」


今日も饒舌なフィルさんはすっかり定食を気に入ってくれたみたい。


あ、そうだ、キャベツ。


陛下のお皿を見ると、やはりから揚げが順調になくなっているのに対し、キャベツには全く手をつけられていない。


「陛下、よろしければその添えつけのキャベツには、このどちらかをかけてみて下さい」


「? なんだその……白いドロドロしたものは」


お手製のマヨネーズと胡麻ドレッシングを見て、陛下は眉を顰めた。


初めて見るものだから仕方ないけれど、それにしても顔が恐い。


「生野菜にかけると美味しいソースみたいなものです。こちらがマヨネーズ、こちらの少し茶色っぽい方が胡麻ドレッシングといいます」


簡単に材料なども説明してみると、フィルさんはかなり興味を持ってくれたようで、両方少しずつキャベツにかけてくれた。


「……! これは、キャベツがものすごく美味しく感じますね。みずみずしいキャベツにどちらも良く合う。しかもから揚げの後に食べるとさっぱりして、またから揚げが美味しく食べられそうです」


さすがのフィルさんのコメントに、そうでしょう!?と前のめりになる。


「そうなんです! 分かって頂けますか!? それだけでなく、キャベツは脂質の吸収を抑え、また消化を助けてくれるので、揚げ物によってかかる胃の負担を減らしてくれるんですよ!」


「シシツ? ショウカ? 食物のことは私にはよく分かりませんが、そうしたきちんとした理由があるのはとても素晴らしいことですね。あなたはまだ幼いのに、とても賢い」


フィルさんに褒められて調子を良くした私は、さらに口を滑らせてしまう。


「ちなみにその胡麻ドレッシングに使われている胡麻は、二日酔いに良いとされています。お酒を飲みながらのから揚げ、胡麻ドレッシングがけのキャベツ添えなんていかがですか?」


「ほう……興味ありますね」


手でクイッと眼鏡を直す仕草がとてもサマになる。


思った通り、フィルさんなかなかイケる口ですね?

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