白い君
白いカーテンがふわりと広がった。やわい朝日を浴び目を細めるカオルを見て、ナオは「ああ、綺麗だ」と思った。
カオルは白かった。肌も、纏う衣服も、周りの寝具の色も。反射する光によってより白さが強調されていた。
ベッド脇の椅子はあまり座り心地の良い物ではない。しかしできることなら、白い天使のそばで、ずっと座っていたかった。
「そういえば、花、ありがとう」
「ん。どういたしまして。どう?色合い」
「すごく綺麗。かなり好き」
「それはよかった」
はにかんだカオルにつられ、ナオも笑った。
***
葬儀屋に呼ばれ目が覚めた。焼骨が終わったらしい。骨上げをすべく、収骨室へと向かう。
カオルは相変わらず白かった。
ナオはカオルのはにかんだ笑顔が好きだった。白に包まれながらも、意思を失わない黒い瞳が好きだった。その瞳に自分を写してくれることも。
だけどもう、それらを見ることは叶わない。
骨壷を抱え、葬儀屋に手伝ってもらい、ほとんどを収めた。残るは喉仏の骨。ああ、これを拾うのが自分でよかった。
葬儀屋の手によりカオルは白に覆われた。墓もないので家に連れ帰る。
これからは、四六時中共にいられる。悲しみの中で、唯一嬉しいことだった。