天水警邏隊
拝啓祖父へ。
現代社会から約1800年前の中国の時代に飛ばされた俺は幼いころ行方不明になった母さんと出会った。そして今俺は、ここ天水という町で働いています。仕事としては詠・・・・賈詡さんのところで文官。つまり公務員の仕事を手伝ったり、そして俺が立案した警邏の平隊士として手伝いをしています。
最初は字が分からなく、そして激しい仕事で大変でしたが、母さんが字を教えてくれたり、そして仕事の先輩?でもある華雄、張遼さんのおかげで何とか生活できています。
そしてこの世界に来て、半年ぐらいでしょうか?俺は詠にとある部屋に連れてこられました。その部屋は『警邏隊隊長室』という場所でした・・・・
「・・・え?俺を警邏隊の隊長に?」
「ええ、そうよ」
部屋に呼び出され詠に言われて俺は少し驚いた。警邏隊の隊長ということは俺の世界では警察署長、もしくは警視総監ぐらいの階級職になるからだ。別の時代の人間であり少し前まではただの高校生だった俺がそんな大事な役に付かせてもらうなんて正直言っていいのだろうかと俺は思った
「なんで俺が?一応、警邏隊の隊長は華雄さんじゃなかったけ?」
「華雄将軍は代理の隊長よ。先代の隊長がなくなってからその穴埋めとして代わりにやってくれてたの。それにあなたを隊長にって推薦したのはその華雄将軍・・・・橘花よ」
「え?橘花が?」
「ええ。貴方、武官見習いで華雄のところで働いていたじゃない?それでね華雄から『腕もいいし、覚えも早いから町の警邏を任せてもいいんじゃないか?』って言われたのよ」。それに恋・・・・あなたのお母さん・・・てこういうのはちょっと複雑ね・・・・とにかく、恋も吹雪が警邏隊の隊長になるの認めてたわよ」
「華雄と母さんが・・・・」
「それに僕だって。そろそろ大きなこと任せてもいいかな~って思ってたのよ。あなたの提出した警邏隊の立案所に銀行やら目安箱。それに学校とかもね。だからね吹雪。警邏については立案した吹雪に任せようと思っているの。どう?やる?」
詠が真剣な目で俺を見てそう言う。その目は俺を信頼して・・・期待している眼だ。ならその期待にこたえなくてはならない
「わかった。警邏隊長の件。引き受けるよ」
「そ、よかった。頑張ってよ吹雪」
「ああ。詠の期待に応えるように頑張るよ」
「な、何を言っているのよ。言う相手が違うんじゃないの!?僕だけじゃなくて、月の期待にもこたえるようにね///」
と、俺が不適の笑みでそう言うと詠は顔を少し赤くしてそう言って出てってしまった。
「とにかく頑張らないとな・・・・・」
部屋にただ一人残された俺はそう呟くのであった。
翌日、俺は服を着替えて部屋を出ると・・・・
「お待ちしておりました。天の御使い様。私は警邏隊士の樊稠と申します」
と、長い銀髪で片眼に眼帯をした女の子が立って俺にあいさつをした。
樊稠って言えば騰と韓遂の軍を破る実力を持ちながらも、李傕に謀反を疑われて死ぬ事になった悲劇の武将だったよな?
「ああ、おはよう。樊稠さん。今日はよろしくお願いします」
と頭を下げる俺に彼女は驚いた顔をした
「えっと・・・・頭を上げてください。あなたは天の御使いであり私たち警邏隊の隊長・・・・上司になりますので、そんな下の者に頭を下げないでください」
「でもこれから共に働く仲間になるんですから、ちゃんと挨拶をしないとって思って」
「それは・・・・ご立派ですが。密偵の草上がりの私なんかに頭を下げなくても・・・・」
と、慌ててそう言う密偵ていうとスパイのことだったけか?
「それでもだよ。だからこれからよろしく樊稠さん」
「は・・・はい」
俺の言葉に彼女は戸惑った表情をして返事をする。そんなに頭を下げることがおかしいことだろうか?
そんなことを疑問に思いながら俺は樊稠さんに連れられ着いた場所は警邏隊の隊士たちがいる隊舎であった。そしてそこには総勢100名くらいだろうか?若い男女・・・・と、いうよりほとんど女の子だな…その隊士たちが整列していた。
俺は隊士たちの前に立ち
「え~本日より、ここ警邏隊の隊長に着任した沖田吹雪だ。世間では天の御使いなんて呼ばれている。隊長としては俺はまだ新人でありますが、精いっぱい頑張って君たちの期待に応えたいと思います」
「「よろしくお願いします!!」」
俺はそうあいさつし頭を下げると、他の警邏隊士たちも頭を下げ返事をする。そして挨拶も終わり各自隊士たちは仕事場へと向かう中、一人だけ俺を睨み立ち尽くしている子がいた
「……あなたがここの新任の隊長ですって?」
「ええ・・・そうです。えっとあなたは?」
少しいらだった表情をし俺を睨む少女に俺はそう返事をすると
「ふざけるな!!」
「うぐっ!!」
そう言うなり俺を蹴り飛ばした。そして
「天の御使いだか、呂布将軍の息子だか知らないけど!あんたが先代の隊長の役を務められるわけないでしょ!!」
そう言い殺気のこもった眼で俺を睨む少女。そして少女は俺を指さし
「はっきり言うわ!私はあんたを絶対に隊長だなんて認めない!!あんたのような奴は足を引っ張るだけだ!さっさと自分の故郷に帰れ!!」
そう言い彼女は舌打ちをしてその場を去った。そして俺は立ち上がると
「大丈夫ですか?隊長?」
樊稠さんがそう訊く
「う…うん大丈夫だけど……彼女はいったい?」
「はい。彼女は李傕と申しまして、先代の隊長の副隊長であり姪であり、隊長が来るまでは隊長代役を務めた人です」
「あの子があの李傕・・・・」
俺は立ち去っていく彼女を見てそう言う。李傕と言えば董卓の腹心の武将で母さんである呂布と共に曹操を迎撃し、夏侯淵の部隊と戦う。董卓の死後長安を攻めて、郭汜と共に呂布を翻弄し、張済、樊稠に城を襲わせる。勝利後殺戮を行い後に郭汜と対立し、最期は曹操に敗北して山賊となり、段煨に討ち取られるんだっけ・・・
「隊長。気にしないでください。乱暴者に見えますが彼女は仕事熱心で優しい人なんです。多分隊長が新任隊長と聞いて少し驚いているだけですから」
と、そう言い樊稠さんは李傕さんの去った場所を見て俺にそう言うのであった
「くそっ・・・くそっ・・・・何で伯父上の代わりがあいつなんだ・・・・なんで・・・・」
路地裏で壁を叩き李傕はそう言う。そして
「うぐっ・・・・伯父上。なんで亡くなられたんですか?あなたがいなくなってはこの警邏隊はどうなるんですか?・・・・私だけでは無理です。代理が華雄将軍ならいざ知らず、ましては出世不明のあの男が伯父上と同じ隊長になるなんて・・・・・」
そう、小さな涙を流す彼女、そして
「伯父上。私があの男から警邏隊を守ります・・・・必ず」
と、そう言う彼女李傕で会った