第9話:花音の思考を読む
あ、58pt入ってた。
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キョウコさんとマンションに戻った。部屋ではキョウコさんがニットのスカートの裾を掴んだら少しずつたくし上げていく。俺はそれを真正面でフローリングの床に跪いて見ていた。
キョウコさんは「あ、ああ…」と歓喜の声を漏らしながらスカートを腰の高さまで持ち上げた。脚は開いているのだけど、膝が内側を向いていて肝心な部分はよく見えない。
ただ、真っ赤なレースのパンツは、輪郭だけで本来布がある部分は全く何もなかった。キョウコさんの茂みの部分やその奥も全て俺の目の前にあった。
たまらずにそっと触ると「あっ」というキョウコさんの声が漏れた。いつからなのだろうか、下はびしょびしょに濡れていた。その液体は彼女の太ももまで伝っていっていた。
俺はニットのワンピースを全部脱がし、下着姿のキョウコさんを上から下までまじまじと見た。確かに、真っ赤なレースの下着を着けているようにも見える。ただ、各部大事なところは全く隠れていないのだ。
その後は、キョウコさんをお姫様抱っこして、ベッドに押し倒し下着を着けたままのキョウコさんと2時間は愛し合っていた。大事なところは何も隠れていない。それでいて下着は着けているように見える。
この煽情的なデザインと状況に俺は新しい扉が開くかと思った。
この時は、何故かいつもよりキョウコさんが上のことが多く、「抱いている」というよりは「抱かれている」という感じ、「している」というよりは「されている」という感じだった。
結局、あの煽情的なデザインの下着は二人の体液でぐちゃぐちゃになってしまったので脱がした。今はフローリングの床に静かに落ちている。
事後に俺がベッドでうつ伏せに横になっていると、キョウコさんはその上に重なるように寝転んで、俺の肩の辺りを甘噛みしながら尋ねてきた。
「どんな子?花音ちゃん」
「……頭のいい子で……俺からしたら何を考えているのか……いたっ」
キョウコさんに少し強めに噛まれた。
「カノジョじゃなくて、『元』カノジョだから」
「どうして別れたの?」
さっき嚙んだところをキョウコさんが舐めている。ムチのあとのアメだろうか。
「さあ、一方的にフラれただけです」
「無理やりえっちなことしちゃったとか?」
「手も握ってませんよ。あ、一度だけ握ったか。でも、それ以上は……理由は、未だに不明です」
俺は枕に肘をついたまま、掌を左右に広げて「分からない」というジェスチャーをした。
「じゃあ、『なにもしなかったから』じゃないの?」
「確かに、キスすらしてない。あ、でも今日初めて服の上から胸を触らせられた……あいたっ!」
再び肩の辺りを噛まれた。
「どんな会話をしたのか、全部お姉さんに話なさい!」
半眼で睨まれてしまった。どうも、迎えに来たのも、激しく攻めてきたのも、噛まれたのも、キョウコさんの嫉妬らしかった。
そう考えると、嬉しくなってきた。肩を噛まれて嬉しいとか、俺も変態の入り口に来ているのではと感じた。
キョウコさんには、屋上前の踊り場で花音と話したことを伝えた。俺と別れた後に泣いていたという話は自分が見た訳じゃないので、話さなかったけれど。
話し終わると、しばらくキョウコさんがベッドの上でうつ伏せのまま枕を抱きかかえながら脚をバタバタさせ始めた。
「うううーーーっ!」
なにか悔しそうなんだけど、何がどうなっているのか俺には理解できない。
しばらく唸った後、キョウコさんは、クルっと横にいる俺の方を見て、恨みがましい目で言った。
「二股でいいよ!ただし、花音ちゃんとは学校の中だけね!」
さっぱり意味が分からない。
「なにそれ。花音とはもう終わったし。もう一度付き合うつもりはないよ」
「でも、花音ちゃんはまだカツくんのことを相当好きみたいだし」
「ちょっと待って。俺と花音の会話のどこにそんなのを感じる要素があったの!?」
キョウコさんの理不尽な嫉妬に俺は抗議した。
「周囲がカツくんへの当たりがきついのは、カツくんが花音ちゃんを捨てたと思っているからよね」
「まあ、そうなるね」
「理由は分からないけど、花音ちゃんはそれを否定しない」
「多分、言ってもしょうがないからだろうけどね」
「周囲の気持ちとしては、『姫である花音ちゃんを振るなんてなにごとだ』という事でしょ?」
「うん」
「付け加えるなら『お前みたいな凡人如きが』ってことよね」
「そうなるね」
「そう言わせない一番簡単な方法は、花音ちゃんがカツくんと付き合う事でしょ?なにせ花音ちゃんが選んでいるわけだから、周囲は何も言えない」
「あぁ、そういう事か」
「二人が付き合っていたら解決よ。だから、花音ちゃんはよりを戻そうとした。誰のため?カツくんのためよ」
「……」
「しかも、自分には直接的なメリットはないけれど、そのために自分の身体まで差し出そうとしたのよ?」
本当だろうか。それが本当だとしたら、花音はまだ俺のことが好きだという事か。身体を使ってよりを戻そうとしても靡かなかったので、悔しく泣いた……と考えれば辻褄も合う。
ただ、二股は嫌だった。俺のラブストーリーのヒロインはキョウコさんだ。2人も3人もどうにかできるほど器用ではないし、あふれる愛情も持ち合わせていない。
「二股はいいや。俺はキョウコさんだけで」
そう言うと、キョウコさんが急に壁の方を向いてバタバタしながら壁にパンチをし始めた。どうしたどうした、俺のヒロインはバグったのか!?
くるりとこちらに転がるように振り向くと変な質問をしてきた。
「それだとこの問題は、夏休み明けまで解決できないけど大丈夫?」
その言い方だと、夏休み明けには解決するとでも言っているようじゃないか。俺の抱えている問題はそんなに簡単じゃない。
俺はこのまま卒業を迎えて「高校時代とは苦い思い出だった」と振り返ると思っていた。それなら、別に何も変わらなくてもいい。これが通常運転だ。
俺の高校生活はキョウコさんとのラブラブ生活の記憶だけを残して、他は消去でいいと判断した。
そのためにも二股はダメだ。アニメやラノベでは迂闊に二股になって身を滅ぼす話に溢れている。わざわざ、そんなリスクを取る必要がない。
「よし、じゃあ成績を上げよう!」
「は!?」
キョウコさんも花音と似ていて、思考が先に先に行く傾向がある。俺はあんまり頭が良くないから着いて行けないことがある。
2人続けて似たような頭の良さと言うことは、俺の無意識による好みなのか、運命なのか……
「もうすぐ一学期期末テストじゃない?」
「まあ……」
社会人なのによく高校の期末テストの時期なんて把握しているな。
「カツくんの成績は真ん中くらいかな?上位100人の貼り出しには名前が載ったことがない!」
拳銃のジェスチャーで撃たれてしまった。確かにキョウコさんの言う通りだ。学年400人中200番周辺を行ったり来たり。桜坂高校は割と進学校なのでそれでも大学進学は問題ないだろう。
成績の上位100人は廊下に名前と順位、点数が貼り出される。なぜそんなことをキョウコさんが知っているのか。
「1月期中間の結果は……ないよねぇ。答案があっても家だよね……」
「答案?うーん、花音に見せるために写真に取った。Googleフォトに残ってるかも!?」
「ぐぬぬ……また花音ちゃん!」
思わず苦笑いしてしまった。キョウコさんは意外に嫉妬深いのかも。愛されている気がして嫌いではないけどね。
「お姉さんが勤めていた会社は、中々にブラックだったから事務とはいえ、仕事の垣根なく任されてたの。……と言うと聞こえはいいけど、なんでもやらされてたの」
なんか大変そうな事だけ伝わった。
「営業の資料を作ったり、マーケティングリサーチしたり、果ては新人教育まで」
その仕事は「事務」なのか!?高校生の俺でも変なことは分かる。
「新人教育の基本は、『目標と手段と実例を先に開示』『業務の目的や必要性
の説明』なのよ。これを説明しないままで始めると、新人は何をやっているのか理解できずにただ『やらされた感』だけが残りモチベーションを下げていくの」
「はあ……」
なんだかキョウコさんが活き活きしてきた。仕事が好きなのかな?
「この場合の『目標』は、成績トップ。『目的』として、『クラスの空気が悪い問題』の改善のためよ」
「成績トップになって改善するかなぁ?」
「『お前ごときが』の部分を改善させていくの」
「ああ、なるほど」
「カツくんが抱えている3つの問題のうち、私が解決できるのは、『クラスの空気が悪い問題』と『家庭内問題』だけよ」
「もう一つは?」
「『花音ちゃんとの仲問題』ね。これは解決したら、お姉さんが振られちゃうので協力はできないの」
なるほど、確かに。花音との問題が解決するということは、仲良くなってしまう事だし、確かに解決してしまったらダメだな。
ここで、俺が抱えた問題はその3つだけかと思い、考えてみたけど確かに無数にあると思った問題は、その3つに集約されていた。
沢山あると思っていた問題も3つだけと把握できたら不思議と少し気が楽になった。
「成績を上げたらいいのは分かったけど、そんなに簡単に上がるかな?」
「『手段』の部分ね」
成績を上げたいと思ってすぐに効果があるなら誰も苦労はしない。それで何とかなるなら、塾や予備校は廃業だ。
「それに関してはねぇ、ちょっとアイデアがあるの。たまたま良いものがあるのよ!明日学校に行ったら……」
キョウコさんがまた俺の理解を超えた作戦を教えてくれた。