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【書籍化】電車飛び込みお姉さんと人間不信家出男子と最強元カノ  作者: 猫カレーฅ ^•ω•^ ฅ
第一章:エロ巨乳お姉さんと俺とチート元カノ
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第25話:閑話 健郎と明日香

 昼休み、教室で健郎&明日香カップルは雑談していた。話題は、最近の将尚(かつひさ)の事。そして、今日の明日香のおやつはきのこの山。健郎のためにたけのこの里も買ってきて来ていた。


「ほい」とばかりに当然の様に渡し、健郎も当然の様に受け取った。将尚は昼休みふらりといなくなった。その少し前に、藤倉花音(ふじくらかのん)が合図を送っていたので、二人はどこかで会っているのだろうと明日香は考えていた。



「最近の将尚くんどう思う?」


「将尚?あぁ、だいぶ話しかけやすくなったな」



 教室内の1つの机で前と後ろに椅子をそれぞれ置いて座っている。机にはお菓子。

 とりあえず、明日香のきのこの山から開封された。



「そう!なんか肩の力が抜けたっていうかね!」


「うん、ATフィールド(話しかけるなオーラ)全開って感じだったからな。お前の件がなかったら、俺も話しかける勇気無かったわ」



 以前、明日香は将尚に助けられたことがあった。



「クリフハンガーな」


「ハンガーノック!毎回全然違うじゃない!」



 □□□



 (明日香)は1年の時から陸上部だった。長距離選手なので朝から学校の周りを走り込んでいた。ところが、学校近くの公園に差し掛かったあたりで急激に体調が悪くなっていった。正確には、体調が悪いというより、力が抜けていった感じ。頭からも汗が噴き出してきている。そういえば、最近少し寝不足気味だった。それで今朝も寝坊して朝食を食べていない。


 すぐに原因が思い当たった。「ハンガーノック現象」だ。ハンガーノックは、体内のエネルギーがなくなり、ガス欠を起こすような現象のことらしい。私は身長が低い分身体の体積が小さい。だから、エネルギーを蓄える量が少ないのかもしれない。こんな初心者みたいな事をやらかしてしまって超ハズイ。


 トレーニングウェアなので当然食べ物は持っていない。立てなくなってきているのも問題だけど、ハンガーノックを起こしたこと自体が恥ずかしい。他の部員に見つからないように何とか寂れた公園に隠れた。


 そこに丁度、登校中のクラスで見たことのある顔が通りかかった。ただ、誰とも話さない人。確か武田くん。竹下くん?竹中くんだっけ?とにかく、クラスメイトに見つかるのも恥ずかしいので、やり過ごすことにした。



「どうしたの?大丈夫?」



 意外なことに、向こうから話しかけてきた。女子が公園の入り口で座り込んでいたら声はかけるか。おなクラ(同じクラス)だし。



「あの……ハンガーノックで、何か食べ物……」


「お腹空いたの?アンパンならあるけど?食べる?」



 お腹が空いたわけじゃないと弁解したいけれど、その元気もない。コクコクと頷いて差し出されたアンパンを受け取る。袋を開けてかぶりつく。何故この人は鞄にアンパンを入れていたのか?この人のお昼ご飯?色々考えたけど、まずは食べた。食べて少し時間が経てばエネルギーが充填されて普通に戻る。でも、その頃には彼はもういなかった。


 着替えて部室を出ると、カレシの健郎(たけろう)が待っていた。相変わらず背が高い。152センチの私では見上げるように背が高い。確か178センチだったか。カレシならカノジョである私に少しくらい身長を分けてくれてもいいのではないだろうか。



「おつかれー!」



 顔が見えると、健郎が無遠慮(ぶえんりょ)に頭をなでる。



「ちょっと!気軽に頭撫でないでよ!」


「……慎重さ(身長差)はあるんだけどな」



 健郎が掌を水平にして、明日香の背の高さから自分の背の高さにスライドさせた。

「うまい!」……そうでなくて。


 ついさっき、ハンガーノックで危ないところをクラスの男子に助けられたことを伝えた。「マジか!?」と言って、お礼の品を買って行こうという事になり、食堂の自販機でパンとジュースを買った。


 そして、一緒に教室に持って行った。まだSHRは始まるまでに少し時間がある。



「田中!朝は明日香がサンキューな」



 そう言って、健郎は朝の彼の机の上に買ってきたパンとジュースを置いた。



「え?あ、あぁ、いや。いいよ」



 最初何が起きたか分からなかったみたい。でも、健郎の横に私がいたので、理解したみたい。色々説明しなくても健郎がカレシだと伝わったらしい。



「あと、武田」


「ん?」


「名前」


「ああ、武田!サンキューな」



 武田くんが苦笑いしていた。



「武田くん、ハンガーノック恥ずかしいから陸上部には秘密にして!」



 私は手を合わせて拝むようにお願いした。マジでハズイから。



「ふっ、話す友達がいないから、心配しなくていいよ」



 ちょっと自嘲気味に言った。



「ぶっ、お前面白いヤツだったんだな!」



 健郎が武田くんを気に入った瞬間だった。



 □□□



 あれが切っ掛けだった。クラスで孤立して誰ともつるまない将尚くんを、健郎が構い続けていた。そんなのもあって、3人はどんどん仲良くなって、お互いを下の名前で呼ぶようになった。


 話しかけたらちゃんと返す。

 でも、自分からは話しかけてこない。


 ちょっと変わった人。

 でも、悪い人じゃない。


 後でネットで調べたけど、ハンガーノックって死ぬこともあるらしい。それ以来、鞄には常にお菓子を常備するようになった。


 高2の終わりの方で、藤倉さんと何かあったみたいで、将尚くんはいよいよ誰とも話さなくなった。藤倉さんとも話さない。クラスの雰囲気も悪くなった。いつも委員長が将尚くんに文句を言っていた。将尚くんが何かしたのかな?


 ここ最近?急に将尚くんの雰囲気が変わった。変わったというか戻った程度?多分、1年の時くらいになった感じかな?どこか影がある感じというか……でも、以前よりは少し明るくなった?


 関係あるのか分からないけど、ここ最近の将尚くんの周りには事件が多い。期末テストでいきなり学年1位を取った!しかも、ずっと1位常連だった藤倉さんをおさえての1位。確か、それまでは、健郎と同じくらいで200位くらいだったはず。


 次は、打ち上げで行ったカラオケ。藤倉さんが急に歌うのをやめたから、何事かと思ったら、いきなりみんなの前で将尚くんに告った!しかも、なんかめちゃくちゃ可愛かった!


 でも、ここで疑問が沸いた。最近、将尚くんが持ってくるあのお弁当は誰が作ったの!?藤倉さん?二人でちょくちょく教室を抜け出して話している。藤倉さんが作ったキャラ弁を食べている。それってもう付き合ってるじゃない!じゃあ、なんで告白!?


 色々聞いてみたいけど、聞くチャンスがない。そろそろ夏休み。夏休みに聞いてみよう。

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