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黒霧  作者: よた
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 ミネ村の危機が去った翌日から、イケス村の者たちがひっきりなしに山を訪れるようになりました。ワシワとイケス村の村長が約束したように、イケス村の者たちは山の山菜や動物に手を出すようなことはありませんでした。彼らはただ山を登って降りて行く、それだけが望みでありましたから。


 頂上へ登ってなにをしているのか気になった若い衆がいました。彼らはイケス村の者たちの後をつけて様子をうかがいます。すると、どうやらこの美しき山は彼らの信仰の対象であったらしく、頂上でひとまとまりになって手を合わせているのだそうです。


 これならまぁ、山や村に害を及ぼすことなどないであろう、というわけで、彼らの好きにさせておくことにいたしました。


 それから数日後のある日のことでございます。村に二人組の男がやってきたそうです。話を聞いてみると、その二人は、イケス村のある湿地帯のさらに先にある、海沿いのカイ村の者たちでした。


 ワシワは面倒ごとは避けたかったので、村にやってきた彼らを家に招き入れて、話を聞くことにしました。彼らは云います。


「イケス村の連中だけに山の通行を許すなんて、どういう風の吹き回しだい? もし奴らに通行を許すなら、俺たちも山を通れるようにしてほしいんだが」


 ワシワは彼らにイケス村と通行を許した理由を話しました。するとカイ村の者たちは、続けます。


「それなら俺たちも、おまえたちに魚を納めてやる、そうすれば山を自由に行き来してもいいんだろ?」


「いいえ、あの時は」とワシワは返します。「大嵐のせいで村の食料がなくなってしまって、近くの村のイケス村に助けをもとめたのです。だからその見返りに、山の通行を許したというわけでして、決して特別扱いしているわけではありませんよ」


 しかしカイ村の者たちは納得しませんでした。それではどうすれば良いのか、とワシワが訊くと、カイ村の者たちは、それではこれならどうだ、と提案してきました。


 カイ村ではミネ村にはない魚や海藻、貝がある。イケス村みたいにそれを収めるから、山の通行を許してほしい、と。


 しかし、ワシワはあまり乗り気ではありませんでした。そこで、カイ村の者たちには三日ほどしたら村長を連れてくるように言い、いったん引き取ってもらうことに致しました。


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