表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒霧  作者: よた
4/9

4


 日が暮れる頃、わたくしと護衛は百姓と鍋を囲んでおりました。近くの山で獲れた猪、畑の野菜、山菜を煮込んだだけの簡単なもので、味付けという味付けは、何もありませんでした。そこで持参していた塩を一振りしてやると、見違えるほど味が変わりましてね、――もちろん陛下にお出しするほどのものではございませんが、――たいへんおいしゅうございました。


 それはさておき、わたくしは百姓に黒霧のことをあらためて聞きました。すると、百姓は焚き火をいじりながら語りはじめたのです。ただその前に、これから申し上げますことは、わたくしが百姓の云ったことをなるべくわかりやすいようにと、直したものとなります。というのも、百姓言葉をそっくりそのままお伝えすると、――なにせ、百姓のなまりがわれわれの知るものとはまったく別の発展を遂げた、独特なもので、はっきりした言葉の意味がわからないこともございました。なので、一つひとつ文字におこしたり、身振り手振りで予想したりと、不要なやり取りばかりとなって――ただしくご理解いただけないのではないか、と考えたためでございます。その点は、あらかじめ、ご了承くださいませ。


 たとえば、はじめに驚いたのは百姓に、名はなんと申すか、と聞いたとき、首をかしげたことです。なんと百姓には名前らしい名前がなかったのです。


 ではどうやって彼のことを呼べば良いのか、考えたあげく、百姓がよく、『わしは~』という一人称を用いていることに気がつきました。そこで、わたくしは彼のことをワシワと名付けることにいたしました。こんなようなことが山ほどあるのでございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ