恥ずかしいから
「そもそも、どうして御館様は功績を隠されるのですか」
ビーコがそう質問をしてきた。それを口にするのも嫌で口ごもっていると、エーコが代わりに答えた。
「それはですね、ベィミィ様が恥ずかしがり屋さん、だからですよ」
「恥ずかしがり屋さん?」
無表情なビーコが珍しく驚いて、眼を丸くした。
「ベィミィ様はですね、皆さんを救うのは神々や勇者だ、と思われているのです。魔女は、そもそも、そんな事をしない。そんな存在ではない。なのに、ベィミィ様は御優しいから困った皆さんを放っておけない。魔女なのに、人助けをするのは変だ。だから、知られたくないのです」
「御館様は神々の如く御力を持ちながらも、驕らずに謙虚であられる」
普段は暴走しがちな二人だが、実は二人が一番よくベィミィの事を知っていた。なんだって、一番の古株だからだ。
心の中が丸見えのようで恥ずかしくて、ベィミィは耳まで赤くなった。
「つまり、ベィミィ様はとても可愛らしいのです」
エーコはそう言いながら、ベィミィの頭を優しく撫でてきた。
「やめて、エーコ、やめて」
「止めよ、エーコ。御館様がお困りだ。それに貴様、主人になんたる無礼を」
「侍女長、それはさすがに失礼では」
「でも御二人も、一生懸命なベィミィ様を撫でたくありませんか?」
二人の生唾を飲み込む音が聞こえてきた。これ以上の恥辱には耐えられないので、ベィミィは顔を上げた。エーコが残念そうな顔をする。
威厳を取り戻すように落ちた帽子を被り直し、咳払いした。
「まだ、気になる事がある。そもそも、どうして今になってこんな本を人間は出したのか、どうして最初の方はあたしの悪口が書かれているのか」
こんな本を出されたのは、おそらく初めてだ。人間は今まで、気を使ってベィミィだとは知らないふりをしてくれた。それに本を出したのなら、最初の数頁の意味が分からない。
「それについては、食材を買いに向かったシーコが調査しています」
「有り難うビーコ、とても助かるよ。それじゃあ、シーコの帰りを待つしかないね」
「相も変わらず、優秀な副官達であるな。まぁ、拙者の副官達も負けてはいないが」
「自慢の妹たちですから。ビーコちゃんも、よしよし」
「お止めください、姉上」
ニコニコしながらエーコは、ビーコの頭を撫でた。口では止めてと無表情に言ったが、何だか満更でもなさそうにベィミィには見えた。この姉妹達の仲はとても良い。