表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
館の魔女は気苦労が多い  作者: 鳥元鰐
1章 どうして、あたしの本が出ているの?
19/99

それは、もう、仕方ないよね…

 それからは、なごやかな雰囲気での食事が始まった。フックラーの侍女達が用意してくれた料理は美味しくて、ベィミィは次々と口に運んだ。近くに控えている侍女に、副侍女長であるシーコは作り方を聞いていた。彼女の舌にも合ったらしく、今度ベィミィの館でもこの料理が出ると思うと楽しみだった。


「ところで館の魔女様、この度はどのような御用件で来られたのですか?」


 食事中にフックラーがそう言った。料理が美味しくて夢中になっていたベィミィは我に返る。今日は別に、遊びに来た訳ではない。


「そうだ、気になる事があってやって来たのだけれど、その前に一つ良い?」


「なんなりと」


「シツジィが持っていた、あたしが描かれた絵。それって、いつの間に描いたの?」


「この絵の事ですな」


 言って、シツジィがあの絵を取り出した。ベィミィの顔と胸元まで描かれた精巧せいこうな絵である。


「ああ、それでしたか。それは城内の画家に描かせた絵で、昨日から作業したばかりなのでそんなに小さな紙のものしかありませんが、これから立派な額にかざる大きな絵を描かせるつもりです。宜しければ、館の魔女様にも何枚か献上したいと思うのですが」


是非ぜひ、御願いします」


 シーコがそう即答した。


「じゃなくて、どうしてあたしの絵が描けるのかなって。もう何年も此処には来なかったし、それにどうして今更になってこんな絵を」


「それは、昨日いらっしゃった、館の魔女様の使い魔を名乗る方からお聞きしたのです」


 嫌な予感がした。昨日、此処に来たベィミィの使い魔。シーコを見る。勿論、彼女は首を横に振った。


「たまたまそこに私も居合わせたのですが、いやはや、とても美しい御方でした。流れるように清らかな長い桃色の髪をして、優しげな目で、何処か男をとりこにするような妖艶ようえんな香りをさせた女性です。私も、もう少し若かったら…いや、死んだ妻にあの世で叱られてしまうので、これ以上は止めましょう」


 桃色の髪のベィミィの使い魔。間違いない、エーコだ。


「それで、その使い魔は何を言ったの?」


「はい。このような本を売るなら、是非、ベィミィ様の絵も描いて頂けませんか、と仰いました。そこで、どのような御姿か、精密せいみつに御教授頂きました。私共もこうした館の魔女様の絵を是非飾りたいと考えていたのですが、何分お姿が分からない。なので、大変お世話になりました」


 その様子が鮮明に思い浮かぶようであった。きっと彼女はニコニコしながら、嬉しそうにフックラーにベィミィの容姿を伝えたのだろう。そして、本を持ち帰ったのに嬉しくて報告を忘れている。


「流石は侍女長、良い仕事をされますな」


「侍女長の事ですから、おそらく考えるままに行動したのでしょう。それが、今回は良い方向になっただけです」


「侍女長にはいつも驚かされますが、とても良い御方ですよっ」


「うん、もう良いよ…エーコじゃ、仕方ない。問題はそっちじゃないし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ