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第二話 お堂と鬼

 ボウタケマル達の住む山には古びたお堂がある。

 かつてこの辺り一帯を支配していた領主が、来たるべき戦に備え、多くの武器や防具を隠しておくために作ったらしいが、結局何も起こらず放置されることになった。やがて時が経つと、領主も変わってこのお堂の存在自体を知る者が居なくなったので、手つかずのまま残されている。

 いらないのならば有効活用させてもらおうというアガラの提案で、二人はそのお堂へとやって来ていた。


「それにしても、ぼろっちい堂だな」


 開口一番、アガラはそう言うと、お堂の扉を蹴飛ばした。扉は彼女の蹴りの衝撃で簡単にひしゃげると、音を立てて吹っ飛んでいく。さして広くもないお堂の中に日の光が差し込むと、放置されていた武具の類いが顔を見せた。お堂で雨風を(しの)げたおかげか、防具はなかなか良い保存状態で残されている。


「ボウタケマルには、この堂は()と狭いだろう。(われ)が中から武具を放り出してやるから、外で受け止めてくれ」


「ああ、分かった」


 ボウタケマルの返事を聞いたアガラは、意気揚々とお堂の中へと入っていく。彼女は手近な大鎧をいとも簡単に持ち上げると、子供が(まり)を放り投げるように、外のボウタケマルへと投げて寄越した。

 大太刀や、鉄で出来た棍棒、弓矢など、お堂にあるものはアガラによって片っ端から外へと放り投げられた。それを外で受け止めるボウタケマルが一つ一つ、丁寧に並べていく。それをしばらく繰り返して、外へと並べる場所が徐々に少なくなって来たとボウタケマルが思いはじめた頃合いに、中にいるアガラが声を掛けてきた。


「どうだー? だいぶ中のものも減ってきたが、まだ行けそうか?」


「そうだなあ。もうあと少しあっても大丈夫だと思うが」


 お堂の入り口から顔を出したアガラは、はしゃいだ声でボウタケマルへと話しかける。何か見つけたらしい彼女の様子はとても浮かれているようだった。


「いや、実はな、なんかでっかい唐櫃(からびつ)が出てきてな! もしかしたら財宝が入ってるやもしれん」


 今持ってくるからちょっと待っていろ。と言って、アガラは堂の奥へと消えていく。彼女もさすがに(ひつ)を投げるつもりはないようだ。彼女が戻るまで、ボウタケマルは並べた武具から良さそうなものを探しておこうと一つの大太刀を手に取った。彼にとっては大太刀ではなく小刀程度のそれは、長年放置されていたこともあってさび付いてしまっている。使い物にはならなそうだった。


「うぎゃああああっ!!」


 カエルを潰したような絶叫があたりに響いた。

 急な悲鳴に驚いたボウタケマルは手に持っていた大太刀を壊してしまった。身体が驚きで跳ねた時に力を入れすぎたらしい。悲鳴の主は唐櫃を持ってくると言ったアガラだろう。奥まったところから櫃を持ってくるときに防具の下敷きにでもなったのだろうかと思いながら、彼はお堂へと向かった。


「大丈夫か?」


 ボウタケマルはそう言いながらお堂をのぞく。


 と同時に、先程アガラによって放り投げられていた武具のように、今度は彼女自身が吹っ飛んできた。そのままボウタケマルに激突すると、二人はそろってお堂の外へとはじき飛ばされる。

 その後、お堂の中から、低いうなり声を上げる一匹の巨大な狼が姿を現した。


「この私が守護する堂で、盗みを働くとは、生かしては返さぬぞ」


 灰色の毛並みをした巨狼は 恐ろしい形相で、外へと倒れ伏す二人に向かって大きく吠えた。



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