2 私たちは宇宙を目指す。
私たちは宇宙を目指す。
鳥の巣(宇宙科学研究所) 庭
時間は有限であり、命もまた有限である。
「なにしてんの?」
朝倉静の視界を影が遮る。静は影の中に澄んだ色の瞳を見つけた。静の頭の後ろには赤家翼がにっこりと笑って立っている。
長くて美しい翼の黒髪が緩やかな風に吹かれて揺れている。翼は真っ白な服を着ている。それは研究室の研究服だった。その下に着ている服も真っ白。靴も、ストッキングも、腕につけている時計も、なにもかもが真っ白だった。全身真っ白。その中で翼の長い髪の毛と二つの目だけが黒色だった。よく見慣れた翼の姿だ。こうして外に出てきたということは研究はうまくいかなかったんだな。静が心の中でそんなことを思っていると、翼は静のすぐ隣に座り込んだ。翼はにやにやと嫌らしい顔で笑っている。静はその顔を見て少しだけ身の危険を感じた。
「えい」でもその認識はちょっとだけ遅かった。
逃げようとした静を翼の両手がしっかりと捕まえる。そしてしばらくの間、静は翼にされるがままに、彼女のおもちゃとして扱われてしまった。まったく、ひどい扱いだとぐしゃぐしゃと髪を掻き回されながら静は思った。そう思いながらも、静は翼のされるがままにしていた。