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アリサー02  作者: 稔~Minoru
1/10

アリサ、エピソード 2

   第8章

夏休み前の学生を入れた、父兄懇談会。

ショーは、母親の唄子と座っている。

他の学生の親も、セットして、気合いを入れている。

アリサは、ひとり、ウォークマンを耳につけている。

ウォークマンを見せる、アリサ。

ショーは、笑いそうになった。

スイッチが、切られた状態である。

笑う、アリサ。

アリサの横の女子学生は、

「隣の子。刺青しているの。」

「ウソ。高校生で?」

母親が、言った。

「学生で刺青入れるなんて、親、なに教えているの。」

何人かの女子高校生、親にアリサの悪口を言っている。

聞いている、アリサ。

アリサのママが来た。

「ママ、バイク?」

メットを脱いで、うなづく、ママ。

「時間、ギリギリだったかな?」

エプロンを、メットに入れた、ママ。

ジャケットを、着ている。

蛍光色の、オレンジに、左側の袖だけ白色のジャケット。

「出来たんだ。」

背中には、海岸の名前とアリサの書いた市の花が。左側に、STAFFの文字が。

「アケミ、怒っていたよ!」

「市の予算で作るのに、金がかかる。って!」

「でも、海岸スタッフに、配るんでしょ。」

「はい。アリサの分。」

袋から出して、着た、アリサ。

「似合う?」

ショーを見ながら、言う、アリサ。

「カッコいいでしょ。」

その姿を見ながら、髪を手ぐしで整える、ママ。

笑う、父兄も。

「で、どうだった?」

「今まで、救急車、2回来た。」

『またなの?」

「飲み過ぎで、脱水症状に、なったの。」

黙っている、アリサ。

ショーが聞いている。

「あと、何人?」

「鈴木君で、太田さん、山田君。その次。」

「間に合って、よかった。」


「鈴木さん。」

担任と副担任との、4者懇談会。

ショーの母親が、塾の夏期講習の話をした。

「でも、今の成績でも、大学に行けると思いますが。」

担任が言った。

「この夏休みの勉強が、大学につながるのです。」

ショーママが言った。

「気を抜くと、すぐに悪くなります。」

「おふくろ、ぼく、塾に行かないよ。」

「え? なんで?」

ショーママが聞いた。

アリサもアリサママも、見ている。アリサが見ている。

「期末テスト、上位に入った奴らの中に塾に行かなかった人がいる。」

「ぼくはその人に負けたんだ。」

「どう言う事。」

「県立大学を目指している。」

「ぼくは、その人と競い合いたい。」

ショーが、言った。

「なに、言っているのか、わからない。」

ショーママが、言った。

担任も、聞いている。

アリサは、立った。

止める、アリサママ。

「親の力で塾に行ったぼくと、家の手伝いをして勉強して、大学に入った人と、どっちが偉いと思う?」

「それって、その人の家の問題でしょ。」

ショーママが言った。

「違うよ。」

「その人が、毎日、塾に行ったならぼくは、成績が悪かった。」

「今のままで、ぼくは県立に、その人は国立大に入ったら、おふくろ、どう思う。」

「鈴木君は、そう考えたの。」

副担任が言った。

「そんな見方を、していたなんて。」

アリサが見ている。

「ぼくは悔しい。同じ世界で競えないのが!」

「だからなのね。あんな事をしたの?」

「あんな事って?」

ショーママが担任に聞いた。

「先生。」

「おふくろには、ぼくから、言うよ。」

「わかった。私は鈴木君を応援します。」

担任が言った。

「そんな。」

ショーママは、話をする事をやめた。

学生も父兄も、見ている。

「鈴木ショー君見たいに決断できる人って、数えるほどです。」

「高校生で、1つの目標をもつなんて、すごいと思いますが。」

アリサはママの膝に頭を載せた。ママはジャケットを被せている。

「でも、一浪したら、肩書きに傷がつきます。」

「たかが、肩書きでしょう。」

父兄が、学生が、担任を見ている。

「60年70年の人生で、たかが20歳で、生き方を決めるなんて、ムリな話です」

「私は、一浪しました。」

担任が、言った。

「大学時代、世界中を旅しました。」

「日本人が行かない所に、日本人が住んでない世界に行ってその国の人と、同じ食事をしました。」

「25で教師に、なりました。」

「でも、学生の時に過ごした経験は、一生の宝です。」

担任が言った。

「私達は、鈴木君の歩く道しるべでしかありません。」

「学生が、生きたい道への灯りを照らす者です。」

担任が、笑って言った。

「話にならない!」

「いい大学を出て、家族をもつ事が、ショーの幸福です。」

怒りに震えている、ショーママ。

「ショーの幸福は、私の幸せです。」

立ち上がった、ショーママ。

イスが、いきおいで倒れてしまった。

「先生には、期待外れです。」

大きく息を整えた、ショーママ、

「帰るわよ!ショー!」

ショーは、ゴメン、と、手を合わせた。

見送る、担任。

アリサとショー。手を叩いた。

誰も見ていない。




   第9章

夕暮れのなか、ビルから出てくる、学生達が。

夏期講習が始まったばかりだ。

スマホを見て歩く人や次の塾にと、急ぐ学生も多くいる。

駅にいく人々を追い抜くように、走る学生達。

人ごみの中、歩く、吉田と田中が、後ろから、阿部がついてくる。

吉田は、ノッポ。田中は、フトッチョ。阿部は、モヤシ。

夏休み前、吉田と田中はナンパして、撃沈。

そして、海渡に、笑われた。

今は、鈴木がいない。

「オイ!」

田中が阿部に命令する。

「走って、コーラ買って来いよ。」

前に、コンビニが、見える。

「でも、今日の分、昼に使ったし。」

2人にたかられ、パシられ、こずかいがない。

「仕方ないか!」

コーラを飲む、吉田と田中。

吉田、すこし飲んで、

「やるよ。」

「いいの?」

「気の変わらんうちに、飲め。」

阿部がすこしつづ飲んでいる。

『鈴木君、いたら、たかられないし、パシリをされないのに。』

「なぁ。明日、日曜、どうする?」

田中が。

「海岸通りにいくか?」

吉田が言った。

「塾は?」

阿部が言うと、

「授業、ないだろう。」

田中が言った。

「でも、開けているって。それに、ネットで、質問できるし。」

阿部が言った。

「だから?」

「日曜に塾、何人、来るんだ?」

「だから、明日、見に行こうよ。日曜日に塾に来る人を。」

「イヤダ!」

田中が、言った。吉田が笑っている。

「鈴木君なら、行くと思う。」

阿部を見る、吉田と田中。

「あいつ、なんで来ないんだ?」

「それは…」

「海岸通りで、バイトしているってよ。」

「もしかして?」

「そう、海渡の所。嘘だと思って、見に行ったら、いた。2人で、看板、出していた。」

「あいつ、よかったよな。ぼく達よりも。」

「海渡もな。」

「あいつ、バイトしているんだ。」

「ぼく達も、ナンパしても大丈夫さ。」

田中が言った。

「ぼく達より、海渡さんの方がいいのかな?」

言った、阿部。

「本当に行くの?」

「お前は、どうする?」

「ぼく、塾にいく…」

「付き合い悪いぞ。阿部。」

「もし、来るんだったら、9時な!」

吉田が言った。

田中がペットボトルを投げてた。

ゴミ箱に入らない。

「ダメだよ。」

阿部が走って入れた。

「ゲームなのに。」 


ファミリーレストランのドアをママ達が出てきた。

駐車場の入り口をふさいでいる。

入る、自動車が、2台3台と来ている。

クラクションが鳴った。

気がついて、道を開けた、ママ達。

「ありがとうございました。」

「お願いします。」

「又、来月に。」

と、挨拶をする、ママ友達。

何かの集まりだってみたいだ。

手には自動車のキーやバイク、自転車の鍵をもっている。

これから外の店でお茶会の続きをするママさん達が、動いている。

歩道に、自動車が出て行くのを、待っている人達がいる。

その中に、吉田、田中、阿部の、姿が。

3人に声をかける人がいるママさんがいる。

ショーのママだ。

「誰、鈴木さん?」

「息子の友達。」

「そうなの。」

ママ友から離れて、3人の下に。

「かわいいね」

聞こえている。

「今…?」

「塾の帰りです。」

「そう…なにか、食べる?」

「いいのですか?」

「いいわよ。」

レストランのスタッフに、喫煙席に案内してもらった、鈴木ママ。

「気前、いいのね?」

「だって、息子ったら、塾の話、なにもしないの。」

「朝、早く出て、夜遅く帰って来るの。」

「なに、しているの?」

「バイト?」

「そんな時間。ないでしょう。」

「国立大学、目指している、ショー君なのに、ねぇ。」

嫌味を言う、ママ友が。

「……」

「知らなかった。」

「でも、まだ、1年よ。」

鈴木ママが、言う。

「そうだけど。」

「塾でしょ。夏休みは。」

「夏期講習で。」

ママ友のひとりが、話をした。

「私の知っている娘さん。県立大学目指しているけど、塾についていけないって。」

「そんなに?」

ママ友が、しゃべり出した。

「ごめんなさい。ショーの友達を待たしているから。」

ショーママが、レストランに、入った。

テーブルに着いている。3人。

吉田、田中、阿部は、メニューを見ている。

「決まった?」

タバコをカバンから出した、ショーママ。

「本当にいいのですか?」

聞いた。

「田中。好きなものを、食べていいよ。」

と、タバコに火をつけながら、言った。

田中はイチゴパフェのビックビックサイズ。

吉田は、フルーツパフェのビックビックサイズ。

阿部は、抹茶パフェのレギュラーを、注文した。

長イスに、崩し正座で話をする、ショーママ。

出てきた、パフェに、口を押さえた。

ビックビックパフェにイチゴが、山のように盛られていた。

高さはパフェグラスを入れて、50センチはあるだろうか? 

フルーツパフェも同じ位の高さだった。

「これ、いくらするの?」

「3000円です。」

食べようとする田中と吉田を止めて、スマホで撮ったショーママ。

アイスコーヒーを飲む、ショーママが、

「こんなの、見たことないね」

「値段も、いいわ。」

「大丈夫ですか?」

阿部が聞いてきた。

「大丈夫。カードもあるし。」

「ねぇ、これって、ひとりで食べるの?」

と、ショーママが聞いた。

笑う、田中と吉田。

「これ、3人か5人で、分けて食べるのです。」

阿部が言った。

「でしょうね。血糖が上がりそう。見ているだけで。」

田中と、吉田に。

「ムリしないでね。」

次々と無くなるパフェ。

他のお客さんも、口を開けて見ている。

「まるで、TVの大食いを見ているみたい。」

2人が笑った。

「一度、食べて見たかったんです。」

「そう。」

田中が言った。

「ママに言ったら怒られて。」

「どうして?」

「太るから。」

ショーママが、田中を見ている。

「今日は、おばさんのおかげで、幸せです。」

「いいのよ。気にしないで。」

ショーママが、ほっぺたを指先た。

「ついているわよ。ここに。」

コーヒーを飲んだ、ショーママ。

タバコに火を着けた。

「田中君は、大学、どこに行くの?」

「なぜ、聴くのですか。おばさん。」

「……。」

おばさんと言われて、黙った、ショーママ。

「同じ大学だといいな、と思って。」

「ぼく達は、県立大学を考えています。」

吉田が言った。

「3人とも?」

「ぼくは私立大学を。」

阿部が言う。

「どうして?」

「頭がついていかなくて。」

吉田と田中が笑っている。

「まだ、1年でしょう。入試まで、先の先の話よ。」

「がんばっていけは、いいのよ。」

うなずいた、阿部。

「解らないことがあれば、ショーに聞けばいいのよ。」

「吉田君も、田中君もいるし。」

言ったショーママ。

タバコに火をつけた。

「よく、吸うのですか?」

阿部が聞いた。

「昔のクセでね。タバコを吸う女は、出来る女と、見られていたのよ。」

ショーママが言った。

「今は、健康の為とか言って吸うな、なんて、言っているけど。」

タバコの箱を見せる、ショーママ。

「JT って、書いてあるでしょう。

「田中君、JT って、知っている?」

吉田と阿部を見た、田中。

「いいえ。よく、聴くけど。」

「日本タバコ産業。」

「国が売っいるのよ。半分以上が、税金。」

笑う、ショーママ。

「つまり、あなた達の学校も私が、タバコを吸うので、運営されているのよ。」

「ちょっと、あなた、いいすき。」

他のテーブルの女性が、言った。

「そうね。でも、お酒みたいに多くの会社。作らないの?」

「多くの種類あるけど、同じ価格なの?」

「国が、手放したくないのよ。JRや、JAみたいに。」

「タバコ、吸いなさい。あなたも。」

女性に言った。

「落ち着くわよ。」

笑う、ショーママ。

女性が、座った。

「彼女の話もある意味、正解だよ。」

と、彼女の友達のひとりが言った。

タバコを吸い終わった。ショーママ。

「本当に、よく入ったわね。」

感心した。

パフェが、ほとんどなくなっている。

見ているお客さんも、

「すごいな!」

「若いからかも。」

言う人達が。

「身体、壊さないでね。」

言うショーママ。

「それで、夏期講習、何人くらいいるの?」

「クラスで50人くらいです。」

阿部が言った。

「何クラス、あるんだろう?」

吉田が。

「さあ。」

「解らないな。」

「ショー。家で話しないから。」

「ショー君、今は?」

「え?朝早くに出て行くけど?」

「そうなんだ…」

阿部が、言った。

「この前、ショーが言っていたけど。」

「塾に行ってないのに、いい成績取った、男の子って、誰だか知っている?」

「誰かな?」

吉田が、

「他のクラスの人とは知らないし。」

「そう。ショーが知っていたので、みんなも知っていると思ったんだけど。」

ショーママが、考えてしまった。

「いないと思うけど。」

田中も吉田も考えてている。

「それで、塾で、どんな話しているの?」

「え?」

「女の子の話? TVの話? ねぇ、聞いかせてよ?」

「実は、」

田中と吉田が、話はじめた。

「実は、ショーと会ってないんです。」

「塾で。」

「だって、あなた達、4人で行くって…。」

「私達に言ったので、ママ達、認めてたのよ。」

「すいません」

頭を下げた、田中と吉田。下を向いて、笑っている。

「実は、バイトしている見たいで?」

「バイト?」

「海岸通りで、見た奴がいるんです。」

「どういうこと。」

ショーママがタバコに火を、ライターがつかない。

「入口で待っていたのですが。こなくて。」

火が着いた。

「そうなの!」

「ごめんなさい。黙っていて。」

田中と吉田が、頭を下げた。

阿部は吉田に頭を押さえ込まれた。

「いいのよ。後はあの子に聞くから。」

テーブルの下で笑い声が、阿部は吉田と田中を見た。

「じゃ、ぼく達、帰ります。」

駅に向かう、3人。

暗くなった街。

「やった!ビックビックパフェ遂にひとりで食べたぞ!」

田中が言った。

「お前も、ビックビックパフェにしたらいいのに。」

吉田が阿部に言った。

「そしたら、残り、俺たちが食べてやるのに。」

田中が。

立ち止まった、阿部。

「なあ!」

前を歩いている、吉田と田中が、阿部のところに戻った。

「どうしたんだ?」

田中が阿部に聞いた。

「そんなの、悪いよ。」

「何が悪いものか!」

吉田が。

「おごってやるって、言ったんだぜ! おばさんが。」

田中が言った。

「でも、遠慮しないと。一番、高いもの食べなくても。」

「お前、ひがんでんた。」

「でんだ。」

田中と吉田が。

「ぼく、おばさんともう一度、話をする。」

阿部が言った。

「すきにすれば?」

「明日9時、忘れんな!」

「ぼく、いかない!」

吉田と田中の顔を見て言った。阿部。

レストランに走って行った。

「ピエロ、消えたな…」

田中が言った。

「いるのか?ピエロ。」

吉田が言った。

田中と吉田、笑い出した。


レストランから出てきたショーママを捕まえた、阿部は、座り込んだ。

「大丈夫ですか?」

スタッフが聞いている。

テーブルに座った阿部は、3人との関係から、話出した。

「ぼくの誕生日、7月だったんです。」

ショーは、プレゼントに、テディベアのぬいぐるみを、くれた。

田中と吉田は、アダルトDVD をくれて、そのDVD が兄さんのお気に入りだって言ってきて。兄さんにばれたからって、DVD代、催促されて、カネ渡したことから話を始めた。

ショーママと阿部の前に、アイスコーヒーが、置かれた。

「今もおばさんに頭を下げた時、笑っていました。」

「帰り、2人は、言ってました。『おごってやる。って、言ったんだぜ。』」

「遠慮しないと。と、言ったのですが。」

「そしたら?」

ショーママが聞いた。

「ぼくも、ビックビックパフェを、食べるべきだと。」

「残ったら、2人で食べてやる。」

「注文しなかった、ぼくが悪い。ひがんでんた。と言われました。」

「そう。ありがとう。」

「人は見かけによらないわね。」

ショーママが立った。

「ショー君。ひとりで、勉強していると思うです。」

「どうして?」

「さっきの男の子、心当たりがあるのです。」

「本当?」

ショーママは、座り直した。

「男の子と、違います。女の子です。」

「ウソ?」

「学校でケンカしてました。」

「海渡アリサ。左腕に、バラのタトゥー、刺青をしています。」

「よく出来る人で、でも、友達がいないのです。」

「ショー君と、海渡さんの話聞いたのです。」

「彼女、何人も家庭教師がいて。」

「何人?」

「わかりません。」

「その子の家。金持ち?」

「違います。海岸通りで、レストランと雑貨屋をしいて。」

「どういうこと? 何人も、家庭教師がいるなんて?」

「プレゼントのテディベアも、その店で買って。」

「それで?」

「期末テストの前に、ぼくとショー君が、席を移動して、ショー君、海渡さんの前に座って。」

阿部は、汗だくになった。

「いつの間に、海渡さんが、ショー君の弁当。持ってきて。」

「弁当代、あげているのに。」

ショーママが言った。

「それから、海渡さんも、クラスの人と話、するようになって。」

「ショー君が、彼女におせっかいするまで、いつもひとりで。」

「そんな事、あったの?」

ショーママが聞いた。

「ショー、学校の事、何も言わないから。」

「ショー君と知り会って、海渡さん、みんなと話、出来るようになって。」

力が抜けた、ショーママ。タバコに、火をつけた。

「まだ、よく知らないけれど、ショー君を怒らないでください。」

「どうして?」

「ひとりでがんばっていると、思います。」

「海渡さんに勝ちたいと思っているから。」

「ありがとう。阿部君。」

ショーママが、言った。




   第10章

一週間がすぎた。

ショーパパは、昨日から会社のゴルフコンペに行っている。

ママのスマホに、宴会で、飲まされて、裸踊りや、化粧させられて、

「ママ、愛しているよ!」

「チュ!」

の、動画が送られてきた。

ショーは、キッチンで、インスタントスープを、飲んでいる。

「これ、どう思う。パパの動画。」

「人気者じやん、ダビングして、兄貴に見せたら?」

「ウフフ。そうね。もしかすると、パパ、何か買ってくれるかな…」

ショーはママの顔を見て、答ない。

飲み終わった、マグカップを洗う、ショー。

「兄貴は、」

「レイコさんの家。」

「いい人ね。むこうの人も。」

「うまく、付き合い、出来そう?」

「ショーは?」

スニーカーを履きなから、

「まだ、わかんない。数回、会っただけだし。」

「ただ、兄貴が、幸せになってくれば、うれしい。」

「カオルが、家にいても?」

「そうだね。後に産まれた者の運命かな。」

ドアを開ける、ショー。

「じゃ、行って来る。」

「これ、弁当代。」

1000円渡した。

「サンクス。」

「これで、足りるの?」

「いけるよ。こずかいもあるし。」

ドアの外から、暑い風が入ってきた。

セミが鳴いている。

ショーが、ママチャリで、走って行く。

パジャマ姿で見送った、ショーママ。

朝早いのか、人は歩いていない。

「さてと、見に行くか!」

気合いを入れて、家の中に。

クローゼットの前で、服を合わせるママ。

「もう1つね。」

「ダメ、似合わない。」

ひとりで、ファッションショーをしている、ママ。

「これね。」

バラのTシャツに、白のジーンズ、サングラスに帽子。

「これでよし。」

7時を少しすぎている。

「ヤバ!」

ショルダーバックをたすき掛けにして、車庫に。

リモコンで、シャッターを開ける。

赤いハッチバックを走らせる、ママ。

運転をしなから、

「なんで、オートマにしないのかしら! 運転しにく!」

と文句を言っている。

右手で、ハンドルを、左手はミッションに置いている。

なかなかの、運転だ。

すぐに海岸通りに来た。

もう、渋滞になりかけている。

レストラン【インファント】を検索する、ママ。

車は?

近いところに、パーキングが見つかった。

浜風が気持ちいい。

防波堤から、砂浜で男の人や女の人の声が、聞こえてくる。

海水浴客達が、騒いでいる。

見ている、サングラスをかけたママ。

砂浜で、ラグビー? ショーがいる。

男女の中に、何人かタトゥーをしている人も。棒取りゲームが、始まった。

スタートする、お兄さんお姉さん達。

男女混ざってしている。

「ショー!」

ショーママに聞こえるぐらいの大声で言う。女の人。

「賭けない!私、勝ったら、ジュース!!」

「O.K. !」

5人がスタートラインに。

手を叩く女の人。スタートした、2人。

3人は、立って、座って、見ている。

ショーが棒を取った。

腕を上げた、ショー。

その上に、女の人が、乗った。

ショーに顔を近づける、女の人。

棒を離した、ショー。

棒をとって、

「1番!」

「ずるいぞ! アリサ!」

みんなが笑っている。

「アリサの勝ちだ!」

大柄の男が笑って言った。

みんなが集まる。

海水で身体を洗う人びと。


シャワールームに、走る人も。

ショーママの横を走って行く、ショーとアリサ。アケミ。

ショーと女の人2人で、レストランと雑貨屋のオーブン準備をしている。

看板を出す。ショー。

黒板にメッセージを書く女の人。

「今日は何、書くんだ?」

「夏バテ防止!」

「昨日。救急車、6回、通ったのよ!」

「タクシーじゃないんだから、呼べばいいと言うんじゃないし。」

「タクシーみたいに金、取ったら?」

「え?」

「病院と契約して、ドクターとナースと救急車が常駐している。つまり、ドクターカーだな。」

「重症なら、お金払ってのドクターカーか、119の救急車を呼ぶか?」

「だから、ドクターも、ナースも、ここまでの治療と線を引く。って。」

「ショー、悪い人なんだ!」

笑いながら書く女性。

「楽しみにして来た海水浴なのに、ひとりの為にみんなが嫌な思いをするなんて…」

アリサが言う。

「体調を考えて、休み休み、遊べばいいのに。そう思うでしょう。アリサ。ショー。」

アケミが言った。

「アリサ、開いている?」


カップルが、声をかけた。

「いらっしゃいませ。」

ショーがドアを開けた。

中から聞こえてくる。


ショーママ。

立ち上がった女の人に、声をかけた。

ドアを開けてくれた。

左手に白いピアノが、置いてあり、オーブンキッチンのカウンターが、6席。テーブルは7つ。28人プラス6席のレストラン。

女の人が、メニューを持っきた。


コーヒーを、注文すると、 

「モーニングセットの方が、お得ですよ。」

勧めてくれた。

トーストセットを注文した。

左腕に、バラのタトゥーが。

カウンターに注文表を持って行った、女の人。

ママは、席を変えて、店内が見えるようにした。

ファッション雑誌を、開いた。

モーニングセットを持ってきてくれた。女の人。

腕に、ドルフィンのタトゥーをしている。

ショーと女の人が、テーブルでパンを食べながら、何かしている。

「あの人、何をしているの?」

「勉強です。お互い、教え合っているのです。」

「大学受験の、この前は、私立K大、2人でやっていたんです。」

「できたの?」

「私、県立大だし、回りも、国立大や、県立大、多いから。学ぶのにいいかも。

笑って言った。女の人。

ママとふたり、スタッフルームに消えた。

「ハー。」

ため息が出る、女の人。

「どうした?」

聞く、男の人が、。

「山田兄さんの本。難しい。」

座った。お兄さん。

「仕事は?」

「待ち合わせ!」

「これって、A大だろう。」

ショーママが、3人を見た。

「山田の兄さん。A大だもの。」

「明日まで、待ってくれ。」

お客さんが、入ってきた。

ショーが注文を取りに。

女の人がカウンターに入った。

サイフォンに、湯を入れてコーヒーの準備をする、ショー。

モーニングセットを作る、ショー。

女の人が、お客さんに、持って行く。

2人は、立って、見ている。

スタッフルームから戻った2人を見て、座った、ショーと女の人。

「アリサ、ショー、」

女の人が、声をかけた。

「今日は、先にピアノするか!」


2人は、ピアノを奏でる。

「朝からピアノ。いいね。」

お客さんが言った。

「贅沢だな。」

「今日は、ラッキーかも。」

スタッフのお姉さんが、何人か来た。

キッチンを任せて、女の人が、ショーママのテーブルに来た。

「あの男の子ピアノ、引いて、2週間ぐらいです。」

笑う、女の人。

「そうですか。」

映画、【ある日、どこかで】の、テーマソングを奏でる。

「家にピアノがあるみたいで、お母さんの誕生日にプレゼントするのですって。」

「……」

「16になって始めるには遅いけど、コンクールや、コンサートでないし、人前で弾けたら、カッコいいだろう。って、好きな曲から、習っているの。」

「そう…」

「楽譜も読めないのに、一生懸命、人がお客さんが、いる前で、がんばって、ここまで来たのよ。」

「カッコ悪いでしょう。」

「笑うでしょう。」

女の人が泣き声で。

サングラスの人。顔から、水が手に落ちた。

見ている、女の人。

「余計なこと、言ったね。」

「いえ…。」

「今日の昼はホールをさせるから、ゆっくりしていって。」

言うと、カウンターに入った。

女の人達のアドバイスが入る。

「ショー、ママに聞いてもらうつもりで、弾きなさい!」

ショーママピアノを奏でるショーを見ている。

レジ前に立っ女の人達。

ドルフィンの人が、話だした。

「……梅干カレー…」

サングラスを下げたママ

「…本当、セーバーの顔ったら」

「で、どうするの?アケミ?」

「メニューに入れても、売れないよ。」

スタッフのお姉さん。サングラスの人を見ている。

スタッフルームから、女の人が入って来た。

「ゴメンね。かあさん。」

外に連れて行く、女の人。

「ショー、アリサ。終わりにしょうか?」

女の人が、言った。

「今日はリエさん。雑貨屋の方に行ってもらうから。」

「え? どうして。」

「夏風邪。」

「夏カゼ?」

リエが、言った。

「誰が?」

女の人達、リエに指を指した。

「え? えぇ? 私が?」

バラの人が迫っていく。

「お腹、出して、寝たんでしょう。」

「ち、ちがうわよ。」

「だって、この前、ベッドから落ちたって。」

みんなが、リエを見た。

「誰から、聞いたの?」

「リエのママ。」

「地震かと思ったって。」

「ママァー!」

スタッフが笑ってている。

「アリサ!」

にらみつける、女の人。

「言う話とちがうでしょ!」

アリサが、小さくなった。

「ゴメンね、リエ。」

「いえ、いつものことですから。」

と、雑貨屋に入った。

「この子は。」

にらまれた、女の人。

「何か、あったの?」

「アリサが、また、余計なことを、言ったの。」

笑っている、スタッフの女の人。

「リエには、あとで、謝っておくから。」

ため息をつくママ。

「今日は私とショーでするから、遊んでいてね! おばあちゃん。」

笑うスタッフの女性達。

ランチメニューに変えたスタッフ。

お客さんが、入ってきた。

コップを変えた、スタッフは、

「ゆっくりしていってください。」

ホールにショーと女の人が。

スタッフの人もいる。

子供連れや、カップルが入ってくる。

テーブルを2人ように分ける、ショーとアリサ。

注文をとる、スタッフ。

ホールからキッチンに入ったスタッフも。

プレートランチが、お客さんの方に。

満席になった。

お客さんの出入りが、緩やかになっていく。

外で並んでいる人びと。

「今日は出番、ないのね。お客になるよ。」

笑うスタッフ。

サングラスの人のテーブルに座った、おばあちゃん。

「ショー、注文!」

グラスを2つテーブルに。オーダーを聞く、ショー。

「いじわるされている。」

笑う、アリサ。

持ち帰りのランチセットを作る、ママと、アケミ、スタッフの姉さん達。

オーダーを言う、ショー。

お客さんのランチセットを用意しながら、

「遊ばれたネ。」

「でも、答られるように、なった。」

BGM が変わった、

アリサはカクテルジュースを持って行った。

「ご注文の品です。」

グラスに青色のジュースが、ストローと、フルーツが、入っている。

「ごゆっくり。ネ。おばあちゃん。」

「こら! 一言よけい。」

回りの人が笑っている。

「あの子も大きくなって。」

孫を見る女性。

「あの人の腕にバラが…」

「ああ、刺青。タトゥーだよ。」

「姉さんの真似して。やめたらいいのに。」

「知った時は、刺青、でき上がった後で。」

「そうですか。」

「まあ、仕方ないかも。」

「ここに住んでいる人。刺青している人が多いから。」

ランチが来た。

「これがプレートランチ?」

パイナップルピラフに、ハンバーグ。サラダ。スープに、ヨーグルト。が入っている。

「おいしいよ。」

食べる、女性。

「余ったら、持ち帰り用の箱もあるし。」 

テイクアウトを用意する、スタッフ。

「浜辺や、公園で、食べる人も、多くて。」

「おいしい!」

サングラスの人が。

「だろう。」

おばあちゃんが言った。

「でも、すごい量ですね。」

「ライフセーバーも、昼に食べにくるし。」

隣のテーブルは、BBバーガーが、とどいた。

「あれって、かぶりつくんですか?」

フォークとナイフで食べる人。

「おいしいよ!ナイフとフォークで食べる、ハンバーガーは。また、違った味わいがするから。」

「そうですね。私だったら、一回で、食べられないかも。」

サングラスにショーが写っいる。

「この夏に入った、ルーキーだけど、まわりがうるさいから、よく動き回っているよ。」

「そうですか。」

「アリサもまだ学生だけど、あの子の立っているところ、店全体をみれるの。」

アリサが動いた。

お客さんがレジの方に。

声をかける、アリサとショー。

スタッフも挨拶をする。

お客さんが帰られた時には、次の、お客さんが入って来た。

「何か、すごいですね。」

「繁盛する店は、何かがちがうんだよ。」

「チェーン店にない、なにかが。雰囲気が。」

「お客さんは、それを求めて来るの。味わいに来るのよ。」

「そうですか。」

「私も、娘や、亡くなった、娘の旦那からの、受け売りだけど。」

寂しく笑う、女の人。

「そこで、働く人も、多くのことを、いろいろと学ぶんだよ。」

「え?」

「お客さんの年齢も、お客さんの層も、ちがうだろう。」

「恋人でも、若い人と、年とった人。」

「ひとりか? 恋人といっしょか? 家族か? 子供がいるか?」

「この、レストランを、選んでくれた人の、出会い。数十分の出会い。」

「その中で、お客様に喜んでもらえるサービスを、おもてなしを。」

回りのお客さんは、聞いている。

「こんな事。学校は、教えてくれないよ。」

ショーママは黙って聞いている。

「コーヒー。お持ちしましょうか?」

ショーが聞きに来た。

「お願い。」

「……。」

「何年、働いても、それに気がつかない人も多いけど。」

ショーが、ホットコーヒーを持ってきてくれた。

コーヒーを飲みながら、言う、女の人。

「食事が終わって、10分ぐらいで、コーヒーを聞きに来るよ。」

見ている、恋人のテーブル。

食べ終わった。15分ぐらいで、コーヒーが来た。

ショーママ。

カップを両手で持って、少しづつ飲む。

「10分って、食事が終わって、タバコを吸う時間だって。」

女の人が、言った。

「ハイ?」

ショーママが、聞き直した。

「そして、食事が終わって、余韻、気持ちいい時間だって。」

「その時に、持って来てくれる、コーヒー、おいしいよ。」

コーヒーを、一口飲んで、カップを見る、女の人。

「今ファミリーレストランで、サラダバーや、ドリンクバーが、ついているでしょ。」

うなずいた、ママ。

「コンビニや、ハンバーガーショップでも、コーヒーが飲めるけど、一杯のコーヒーが、テーブルに届く時って、幸せになるのよ。」

回りのお客さんが、聞きている。

中には、コーヒーを飲んでいる人、人も。

「コーヒーか…」

「だから、美味しいのかも。」

言ってくれた女性も。

うなずいた、男の人。

両手の中のコーヒーを見る、ママ。

「私も、子供がいます。塾に、夏期講習にいくように。言っているのですが…。」

「学校を卒業したら、人間関係で、悩むのですね。」

ゆっくりとコーヒーを飲み終えた、ママ。

サングラスに、女の人が写った。

「私、いまから行く所があるので。」

「そうかい。」

「これで、失礼します。」

伝票を持った、サングラスの人。

「ここはいいよ。私が。」

「いいえ。私に払わして下さい。

「次、いつ、お会い出来るかわかりませんが。」

立ち上がって、お辞儀をした。

「じゃあね。お元気で。」

「ありがとうございました。」

レジに、ショーがついた。

「ごちそうさま。」

「ありがとうございます。」

アリサも横に立っている。

「またのお越しをお待ちしています。」

アリサとショーが挨拶をした。

テーブルに座っている女の人に、手を振って外に出たサングラスの人。


アリサママが、あわてて外に。

道端に立っている人が、アリサママに深々とお辞儀をした。

アリサママもお辞儀を。

歩いている、人、人。

不思議なものを見るように、見ている。

アリサママが、頭を上げた時は、いなかった。



  第11章

次の朝。

ショーは、朝早く、キッチンで、カップスープを飲んでいる。

「おはよう。」

ショーママが、テーブルに座った。

「いつも、朝、早いから、ママも癖になっちやった。」

『ママ』と言う時、ショーは、イヤな顔をする。

「かあさん。なにか飲む?」

「同じので、いいは。」

マグカップにカップスープを作った。

「夏なのに、美味しいね。」

ママが言った。

「身体は大丈夫?」

「どうして聞くの?」

「カオルの時より、2時間早く起きているもの。」

「兄貴と、同じにしないで。」

笑って言う、ショー。

「そうね。ゴメン。」

半分、飲んだ、スープを見ている。

「いってくるよ。」

スニーカーを履く、ショー。見送るママ。

「ハイ。食事代。」

「サンクス。」

ママチャリで飛び出す、ショー。

窓を開ける、ママ。

暖かい風が、入ってくる。

セミが、やかましく鳴いている。

ピアノの前の椅子に座って、鍵盤を叩いている、ママ。

「おはよう。」

「おはようございます。」

カオルとレイコさんが、起きて来た。

「おはよう。」

ママが言った。ピアノに座っている。

「ねぇ、レイコさん。モーニング、お願いしていいかな。」

「ハイ。ママさん。」

パパも、起きて来た。

キッチンに、レイコさんが立っている。

「大丈夫か?ウタコ。」

うなずく、ママ。

鍵盤を叩いてている。


指が、左手の指が、いつの間にか、リズムになっていく。

「え?」

レイコが、手を止めた。

「どうした、レイコ?」

「気づかない。ママのピアノ。」

右手が、メロディを奏でている。

身体が、力が、入っていく。

ピアノが唄っている。心の唄を。

「ステキ。ママさんのピアノ。」

新聞を置いて、聞いている、パパ。

「日曜は、ピアノ、弾いているけど。」

ソファーに座って、見ている、パパ。

「カオルは、日曜に出かけるから。」

「すいません。」

レイコが、誤った。

「いいさ。私自身とママも、若い頃は同じ事をした。

パパは、ワインをグラスに。

「なんていう曲?」

「ラフマニノフのラブソティ。」

カオルがキッチンに立った。唄が変わった。

「キレイ。」

レイコさんが、言った。

曲が終わった。

リズムを変えて弾く、ママ。

「湖にいるみたい。草原かも、しれない…。」

「なんていう曲?」

「ある日 どこかで。」

カオルが言った。

「ママが好きな曲だ。デートの時、見た、映画の。」

パパはワインをピアノに置いた。

「ありがとう。」

ママが、泣いている。

「どうした?なにがあった!」

「かあさん。」

「ママさん。」

3人が、ママに。

「だめね。音が狂っている。」

ママが言った。

「この前、調教に来てもらったのは…。」

ピアノを奏でながら、言った。

「こんなピアノ、引かせられないわ。」

「え!」

「誰に?」

ママがひとり言を。

「椅子も、もう1つ、買わないと。」

涙が落ちた。

引き続ける、ママ。

「大丈夫か?」

うなずいた。ママ。

「私の子供が、旅立つのが、嬉しくて。」

カオルを見る、レイコ。

赤くなって、レイコを抱く、カオル。

「そして、」

「そして?」

パパが聞いた。

「寂しいの。」

泣きながら、ピアノを奏でる、ママ。

「悲しい。」

「辛い。」

セミも黙って聞いていた。



   第12章ー①

早朝浜辺。

ショーとアリサ。アケミ。ライフセーバーの兄さん、姉さん達が歩いていた。

砂に埋まっている、ビンやアルミ缶。

花火や、バーベキューの炭…。

見つけては、バケツや、ゴミ袋に入れている。

海岸通りの店の人や、近くに住む人も浜辺でゴミ拾いをしている。

朝、早く来た、カップルや家族連れが、見ている。

ひとり、朝から元気なのが、海に入って、泳いでいる。

散歩に来た、ゴールデンレトリバー。

飼い主の手を振り切って、遊びまわっている。

その、飼い主が、アリサを見つけては、走って来た。

「おはよう。アリサ。」

ハイタッチをしてきた、喜ぶ、飼い主。

「見つけた?」

バケツの中のものを数える、飼い主。

セーバーの女の人が、撮っている。

「ミユキの方が、ひとつ多い。」

喜ぶ、飼い主。

母親が、歩いてきた。

アリサのバケツにも、ミユキのバケツにも、いくつかの、石が入っている。

「これと交換。」

「いいよ。」

アリサが大きな赤い石を、ミユキの手に置いた。

喜ぶ、ミユキ。

海に捨てられた、ガラスのビン。

長い時の眠りから覚めて、人の手に渡った。

『人魚の涙』と、言われている、石。

ミユキの、大事な、だいじな、宝もの。

この石達も、お菓子の缶に入れられて、眠りに付くだろう。

レトリバーが、駆けて来る。

みんなが見ている中、ブルルルル、と身体を振るわせた。

「きゃ!」

「この子は!」

ミユキは塩水を浴びた。

ショーとアリサも。セーバーの兄さん、姉さんも。

「ねぇ。アリサ。」

「なに?」

「夏休みの宿題、終わった?」

「ミユキは?」

「あと、少し。」

「全然、していないの。」

「ママ。よけいな事!言わないで!」

「そうなんだ。」

アリサが言った。

「アリサは、夏休みの宿題、終わったの?」

アリサはショーを見た。

「アリサの学校。宿題、ないんだ。」

「本当!」

ミユキの目が輝いた。

「本当よ。ショーも同じ学校だもの。」

「ミユキ、そこにいく。」

「変わろうか、ミユキ。」

「うん!」

「でも、休み終わったら、テスト、あるけれど、いいかな。」

「ゲッ!」

「テスト?」

「夏休みの宿題を、アリサ姉さんにしてもらって。」

「ミユキ、テスト、してくれる?」

ショーの顔を見たミユキ。

首をおもいっきり、横に振った。

「じゃあ、ミユキ、宿題しようね。」

「うん。」

アリサに言った、ミユキ。

手をふって、帰る、ミユキ。

手を伸ばした、アリサ。

「ショーは、どうだった?」

「知ってんだろ。怖いママに、恐ろしい兄貴が、いるんだ。」

「アリサ!」

アケミが言った。

走り出す、3人。

カメラが、あとを追った。

「タンマ!」

アリサが止まった。

「どうした?」

「500円、見つけた!」

「本当だ。」

ショーが、言った。

「って、事は?」

アケミが、セーバーが、双眼鏡で、回りを見ている。

丘の上、見ている。

崖を、見ているセーバーが、

「崖の上!!」

走り出した、セーバー達。

アリサもアケミも、走る。

「ショー!」

後ろで、警察を、救急車を、呼ぶ、セーバー。

砂浜から石ころに岩が落ちている浜になる、海岸。

アリサと、続く、セーバー。

「ショー君!こっち!!」

アリサに続く、セーバー達。

崖の上に着いた、ショー。

アリサが、白い服の女の人に、抱きついている。

麦ワラ帽子が、風に乗って落ちていく。

「お久しぶりです。皆さん。」

女の人が、頭を下げた。

道路には、国産高級車が、止まっている。

黒服の男女が、何人か、見ている。

パトカーが、救急車が、きた。

警官もセーバーも話を聞いて、肩を落とした。

「よかった。」

セーバーのお姉さんが言った。

「おい!行くぞ!」

セーバーが浜に帰った。

女のセーバーが言った。

「アリサ。あれで霊感強いから。」

ショーに話した。

「浜でお金、拾ったでしょう。」

「その時、ここから飛び落ちた人いたの。何人も。」

「それって、偶然でしょう。」

「そう偶然。でも、何回も当たっらどう思う?」

「それに、アリサの時だけ、おもいとどまるなんて。」

「あの子が、なにか、持っていると、思っているのよ。」

と言った、お姉さん。

アケミも、カメラをもった姉さん達も、アリサと女の人を見ている。

「ンで、後はよろしく。」

パトカーと、救急車は、帰った。

女の人とアリサ。アケミ、ショーと何人かの黒服の人が、残った。

「モーニング、しょうか。」

アリサが聞いた。

うなずいた、女の人。

高級車のドアを開けた、SPに、

「歩くから。」

と、言った。女の人。

シズカさん。アリサが呼んでいる。

シズカさんの親は、この街に別荘を持っている。

浜の別荘で、婚約者と、その友達どもに、遊ばれた。

そして、心に、身体に、キズを受けた、シズカさん。

崖に立っていた。

「あの時、笑ってしまいました。」

シズカさんが、言った。

「え! そうだっけ。」

「ハイ。私、海渡さん。アリサさんの言葉で、自殺を止めたのです。」

「なに、言ったのかな。ショー、覚えている?」

ショーに聞く、爆弾天然娘のアリサ。

聞いた者全員が、呆れて、笑わせた。

「アリサさんの恋人?」

「いい人。アリサの取ったら、怒るぞ!」

言って、ショーに、しがみついた。

笑う、シズカ。

「アリサ、なに、言ったのですか?」

アケミが、カメラで録りながら、聞いた。

SPの女性が、アケミに近ずいた。

「いいのよ。」

言う、シズカ。

にSPは、

「でも、お嬢様に傷がつきます。」

「もう、付いているのよ。」

「あいつによって。2つも3つも、ついたから。今、ここで付いても、なんともないは。」

アリサもアケミも、驚いている。

「いい所の人だったんだ。」

「違うは。おじいさまが、偉大なだけ。父さんは、その遺産を守って、大きくしただけ。」

「そして、姉と私は、道具にされた。」

「あの事があって、私の回りは、変わった。

「いいえ、変わったのは私。」

アリサが、みんなが、聞いている。

「華やかな世界が灰色になった。」

「解る? セピア色でないの。灰が、降って、私を埋めていくの。」

アリサもSPも、黙っている。

「今まで、誰にも、話できなかった。」

立ち止まって、言う、シズカ。

「あの時、アリサが言ったの。」

「『飛び降りる前に、あなたの名前と住所、教えて!』」

立ち止まった。アリサ。

「私、そんな事、言ったの?」

「ハイ。私の靴、風で飛んでいって。」

「そうだったね。」

「そしたら、風が私を持ち上げて…」

「私を助けてくれた、お兄さん、元気にしている?」

聞いた、シズカ。

「うん。今、就活中。」

「え? もう、働いていると、思ったのに。」

「あの崖からシズカさん、助けたのよ。」

SP を見た、シズカ。

「入院費用は、会社から、出しました。」

「何故、言わないの!私の命の恩人よ。」

「言うな。と、言われました。」

「そう…会ってお礼をしたい…」

シズカが言った。

海岸通りまで、来たアリサ達。

アリサが、走り出した。

「待って!」

シズカも、みんなも、走った。


オーブン準備をしてくれた。セーバーの姉さん達。

「帰って来た。」

ベンチに座って、店で売っている、ビンのジュース、口をつけて美味しそうに飲んでいる。

「じゃ、後、お願いネ。」

砂浜に、歩いていく、お姉さん達。

SP は、汗で濡れている。

自動車で、先についたSP に

「お嬢様が、走ったので。」

言った。

シズカに、SPの人達に、雑貨屋から、服を選んだ、アリサとアケミ。

「これに着替えて。」

と、渡した。

「目立つの。海岸通りでは、黒服は。」

「高級車も含めて。」

言った、アケミ。

店内には、常連客が、何組か来ている。

アリサのおじいちゃん、SP の尻を撫でて、悲鳴を上げさせた。

「なにこの人、私に悲鳴を上げることをさせて。」

「ただ者で、ない!」

と、言われた、おじいちゃん。

「色ぽいな、いい身体だ。」

「おじいちゃん!」

アリサママとアリサ、アケミから、カミナリが。

見ている、シズカ。 

「たいへんネ。」

シズカは、超天然娘である。

アリサは、ショーが作業服専門店で、買ったカッターシャツを、ワンピースみたいに着ている。

「シズカさん、似合っている。」

アケミとアリサが言った。

モーニングを楽しんでいる、シズカ。

2人のSP を付けて、帰って行った、人達。

「遊んでいて。」

アリサママが言った。

シズカは、3人でコーヒーを飲んでいる。

「アリサ、私、あそこに行きたいの?」

「じゃ、ピーク終わったら、行こう。」

笑って言った。

昼下がり、、シズカは座って見ている。

まわりを見ている、シズカ。

「どうしたのです。シズカ様。」

「アリサさん達、忙しいのね。」

言った。

「私の知らない世界なのね。」

「多くの人びとの働きによって、社会は動いているのです。責任をもって。」

「私の責任って、なにかしら?」

「そうですね。色々ありますが、シズカ様のお父様の下で働く社員。その系列会社で働く、社員と家族を守る事かな。」

「何人ぐらい?」

「さあ、数千人かも。」

「え!そんなに?」

「そうですね。」

「考えた事、ありますか。お嬢様。」

「それはやめて、シズカでいいは。」

アリサが来た。

「ハイ!ご注文の品です。」

トロピカルジュースに、オムライス、プレート。

パエリアのプレート。

ビックビックバーガーのプレートが来た。

「どうやって、食べるんだ?」

と言った。男のSP 。

まわりの人は、ナイフとフォークで食べている。

「入る?」

聞いた女性が。

「すごいね。」

シズカが言った。

まわりの男性客、女性客は、ピークビックバーガーを、食べ切る人が多い。

「私でも、できるかな?」

シズカが言った。

見ている、男と女の人。BGM が止まった。

女の子が、白いピアノを弾いている。

「可愛いね。」

言った、シズカの連れの女性。

「ぼく達の娘でね。今度、コンクールに出るのですよ。」

隣のテーブルに座った家族が言った。

「この店は、弾いてもいいのですよ。あの子、いつも、上がって、まちがえるので。」

「そうですか。」

お客さんが見ている。

ピアノの音が、乱れた。

シズカが座った。

「いっしょに弾こうか。」

「うん。」

奏でる、シズカ。

「なにが好き?」

「私、ピアノ、好きじゃない!」

「いつも、ママ、連れて来るの。」

「遊びたいのに。」

女の子の手が止まった。

シズカの手を見ている。

奏でるピアノを聞いている。

鍵盤の上を指が走っている。

「すごい!」

「お名前は?」

「ミユキ。」

曲が終わった。

拍手をするお客さん達。

テーブルを見た、ミユキ。

「なんで、なんで、お姉ちゃんの時、拍手したの?」

ママにパパに、聞きに行った、ミユキ。

「さあ?」

「どうしてかな?」

答られない、大人達。

シズカは、ピアノを弾いている。

「ミユキさんは、どう見えた?お姉さんピアノ。」

『ミユキさん。』

と大人扱いしてくれる、シズカを、見ている。

「すごいの!」

「あのね。お姉さんの手が、ピアノで踊っているの!」

「ピアノさん。楽しく歌っている。」

「いまも、見える?」

「うん。お姉さんの回りを音が踊っている。」

驚く、お客さん。

「なんで、涙が、出るのかな。」

泣きながら、見ている、ミユキ。

ミユキを抱き締めた、シズカ。


ピークが終わった。

シズカはメシア教教会に行きたい、と言った。

メシア教会100年以上前に建てられた。県の文化財に指定された教会。

昔、大昔、外国の旅客船が沖合いで難破した。

多くの死者と生存者。

まだ小さな漁村でしかない村むらの人びとが集まって助けた。

県が、支えた。

そんな時代。

何年かして、国に帰った人々とこの地に残った人達。

シスターが作った、教会この地の、神社の人と結婚して、女の子が産まれた。

天上の母上に、祝福された、シスターは、代々、天使と共に、教会を守っている。

教会へいく、アリサと、シズカ。ショー達。

「来なくていいのに。」

言う、シズカ。

「でも、仕事ですので。」

女の人が言った。

「もう、自殺なんか、しないわよ!」

海水浴に来た人びとが、シズカを見た。

視線を感じて、黙って歩く、シズカ。

「ここで待って。」

シズカとアリサが、花屋に入った。

ショーと男性、女の人は入り口で見ている。

「あれ、あんた、来たね。」

姉さんが。シズカに言った。

「前に来ました。」

「そうだよ!」

おばさんが、出てきた。

「かあさん。」

「アリサちゃんが、助けた人のひとりだよ。」

「よかった、頑張っているんだね。」

抱いて、泣いて、喜んでくれた、花屋のママさん。

白い薔薇の花束を買った、シズカ。

砂浜で拾った、500円で仏花を買った、アリサ。

お釣を募金箱に入れた。

それを見ていた、シズカは2枚募金箱に。

「いつも、しているの?」

シズカが聞いた。

「うん。浜で拾ったおカネは、花を買って、お釣を募金箱に入れるの。」

「アリサ。こんな事しか、できないから。」

「…。」

「少しでも、生きてくれたら、嬉しいから。」

「そうね」

教会が見えてきた。

入口には、大きな自然石を加工して彫られた教会の由来が。もうひとつの石は、旅客船が、彫られている。

石段を上る、アリサとシズカ。ショー達。

「何段あるの?」

聞いた、お姉さん。

「さあ、数えた事ない!」

「ショーが言った。シズカが止まった。

「まだ、あるよ。」

クラスの人が、息を切らして、降りて来た。

「アリサとショーだ。」

踊り場で止まった、スポーツクラブの人達。

「なにしているの?」

聞く、友達。

薔薇の花束をもっている人を、見ている。

「知っている人を、教会に。」

笑う、アリサ。

「何か、怪しいぞ。」

言っては、聞き出そうとする、仲間達。

「私も、一緒に行く。」

言った、女の子。

「え~」

聞こえた。

「いいでしょう。」

タメ息が出た、ショーとアリサ。

「また、登るの?」

言う、部員が。

「でも、知りたいでしょう。教会の秘密!」

「でも、知らない方がよかったと思うよ。ショー。」

「そうだな。」

登るシズカ達。

「大丈夫?」

アリサが聞いた。

「ハイ。」

汗をかいて答るシズカ。

「最後の20段。頑張って、シズカ!」

アリサが言った。

教会の入口には、駐車場があった。

アリサの話では、結婚式などに、使われてる。

今は、駐車場に、白い丸いテーブルや、椅子が、置かれている。

自販機もあって、観光客や、海水浴のカップルが、座って、教会を、海水場を見ている。

テーブルや、椅子は海岸の、レストランや海の家からの寄付? の品だった。

アリサとシズカ達が、自販機で、ジュースを買って、飲んでいる。

今は、夏休み、子供たちの、遊び場、勉強の場所に、なっている。

ママさん達が、頑張って、ママチャリで、坂道を上がって来た。

アリサとショー達を見つけて、椅子に座り込んだ。

子供たちが、遊んでいる。

電動式のママチャリから降りたママさん。

カッターシャツに、ジーパン姿。

男の子がママのもっている、スーパーの袋から、アイスクリームを取った。

ゲンコツを与えて、ニッコリと笑う。

アリサは、笑い、ショーは、あきれた。

シズカは、ビックリして、アリサや、ショーに聞いた。

「なにするんだ!かあちゃん!」

「家に入ってからでしょ?」

言うと小学生ぐらいの男の子の耳を引っ張って

「すこし待ってくださいね。」

教会の中に入った。

「イタタタ! ハナセ! くそババア!」

「お兄ちゃん、いつになったら覚えるんだろう。」

袋を持って追いかける、女の子。

それを見ている子供とママ友のみんな。

「また、している。」

あきれる、ママも。

「あの人、強いね。」

シズカが、自販機で買ったお茶を飲みながら、言った。

シズカのおごってもらった、お茶を飲みながら、言うSP 。

「でないと、子供を育てていけないよ。」

シズカは、SPを見た。

「あの女性が、牧師ですか?」

聞いたSP の女の人。

「子供も、いるなんて。」

「この辺じゃ、有名よ。」

言った、ママさん。

「旦那、市役所の人だしてくれる。」

「大恋愛の末にゴールしたの。」

「高校も、同じだって。」

聞いた、アリサ。

「まるで、私達みたい!」

ショーを見た。


「頑張ったんだんだね!」

シズカに言った、牧師のハナミ。

「よかった、生きていてくれて。」

学生達は、

「どうしたの?」

「なにがあったの?」

イスに座って見ている。

子供たちも、見ている。

「あの……」

シズカが口を開いた。

「解っているよ。シズカさんだね。」

ハナミに、うなずいたシズカ。

教会に入って行く、シズカとハナミ。

ハナミの子供がシズカの手を握っている。

アリサとショーも、続いて歩いている。

「どこに行くの。」

アリサに聞いた、クラスの人。

「……。来る? でもつらいことだけだよ。」

友達を見て言う、アリサ。

教会の中ガラス戸から光が、入って来る。

海からの風が、流れて、中が、涼しく感じる。

教会を守るように、薔薇の枝が蔦となって、レンガの壁に。

薔薇の香りが教会を包み込んだ。

祭壇には、ステンドグラスが。天上の母上の像が、納められている。

長イスが10脚ある。

ショーとアリサが母上に、祈った。

「へぇ。こんな所だったんだ。」

誰かが言った。

声が響わたって、驚く、学生達。

牧師のハナミ。

シズカ達を像の後ろにある、部屋に。

ハナミは、シズカに、SP に、学生達に、ろうそくを渡した。

火を灯した、ろうそくを持って、入った、部屋。

蛍光灯の下に、無数のツボが…。

ハナミが祈った。

シズカは白い薔薇を供えて、祈った。

祈る、ショーとアリサ。

SP の女性が男性の背中を押している。

「なんなの?この部屋は?」

部屋全然に壺が、置かれている。

「この壺は?」

学生のひとりが、聞いた。

「私のいる場所。」

ハナミとアリサ、ショーは、黙っている。

シズカを見る、学生達。

「ここにいる人達、崖から飛んだ人達よ。」

ハナミが言った。

「ツボに貼っている番号、上が見つかった、年月日で、下が、自殺した人の番号よ。」

「崖、風が強くて。」

「紙も、靴も飛ばされているの。」

「あの日も、」

シズカが言った。

「息を切らして現れた、アリサが、言ったの。」

『飛ぶ前に、名前と連絡先、教えて。』って。」

「私、笑ってしまって…。」

「今から死ぬ人に、何を聞くの?」

思った。

「そしたら、風が、私を持ち上げてくれて…。」

「ライフセーバーのお兄さんが、走って、崖を飛んで、、私を受け止めてくれて、海のの中に。」

「私を助けてくれて。」

「でも、その人、岩に身体を、血を吐いて…。」

石畳に、水が、落ちた。

「あの日、私は、死んだの。」

SP が、シズカを見た。

「私は、アリサとセーバーに、助けられた。」

「アリサとセーバーに、命をもらったの。」

アリサに抱きつく、シズカ。

「ここにいる人は、5年たったら、移動するの。」

ハナミが、シズカを見ながら、言った。

「どこに?」

聞く、学生が。

「1年で、100人近い人が自殺するの。」

「アリサさん。何人もの人を連れて来るの。」

「行きましょうか。」

教会の墓地。

名前のない墓が。

ショーとアリサが、仏花を供えた。

「ここは?」

「多くの人が眠る、場所。」

ハナミが言った。

「無縁仏の眠るところ。」

みんながいるなかを、おばあちゃんと女の子が、ろうそくと、線香を。

「失礼します。」

言う、おばあちゃん。

「よくお参りに。ご苦労様です。」

ハナミが言った。

みんなが、頭を、下げた。

手を振る、女の子。

「おばあちゃん。アイスクリーム、食べたい。」

声が聞こえた。

「いい子ね。」

「うらやましい…。」

シズカが言う。

「私も、あの人が、ママだったら、自殺しなかったかもしれない。」


「今は、パソコンでも、調べることができるし。」

ハナミが言った。

教会のドアを出た、シズカとアリサは、ジュースを買った。

「警察のホームページにも出ているけど。」

教会の前の、白いテーブルのイスに座った、

ハナミとシズカ。

「向かえに、来る人は、少ないのよ。」

「なのに、自殺する人が多くて、身元もわからないし、解っても、引き取りに、来ないの。」

アリサとショーも、聞いている。

「5年ぐらいしか、おいて置けないの。」

「祀るところがなくて、無縁仏に、処理されているの。」

「あの中に、何万人もの人が眠っているのよ。ひとり寂しく眠っているの。」

「シズカさん。」

「天上の母上から授かった命。アリサにワタルさんに助けてもらった、命。」

「大事にしてね。」

うなずいた、シズカ。

教会を見る、学生達が、

「こんな秘密があったなんて。」

言った。

「どう、悲しい秘密でしょ。」

アリサが言った。

「ママ!バラの中にゴールした。」

言った、女の子。

「まったく、もう!」

ママさん達が、女の子の後を追っかけた。

「いいところだったのに。」

「知らない。ドラマ。潰して。」

怒る、アリサ。

笑う、シズカやSP の人びと。

スマホに学校から、かかってきた。

「今、教会です。帰ります。」

学生達が、学校に戻った。

石作りの階段を降りる、シズカは、踊り場に立って、前を見た。

家が見える。

アリサの家も。

浜辺もよく見えている。

自動車をかき分けて、救急車が、走っていく。

「いいところね。」

シズカが言った。

「辛い思い出があって、死ぬ覚悟を決めた場所だけど…。」

SPが、見ている。

「生きる力をもらった人びとの住む街ね…」

涙をためながら、言う、シズカ。

「ここは、私の住む街。

「あの家は、私が生まれ変わった家。」

シズカは、アリサに向かって、

「私、アリサのレストランで、働きたい。」

言った、シズカ。

 耳を疑った、SP 。

「本気なの?」

アリサとショーが聞いた。

うなずいた、シズカ。

SP の顔を見た、

アリサ。断ってくれ! 

と、言っている。

「アリサが決めること、出来ないの。」

「シズカ。あなたが、ママに言って。」

レストラン【インファント】に帰ったシズカとアリサ達。

さっそく、シズカがママに話をした。

「シズカさん。」

「あなた、料理したことあるの?」

「バイトは?」

アリサママの問に、答られない、シズカ。

「だめでしょか?」

アリサもアケミも、見ている。

考え込んだ、ママ。

「本当は、あなたのようなお嬢さんを雇うことに、抵抗あるの。」

「でも、アリサがシズカさんを助けたことで、私達も、なんらかのつながりを持ったは。」

「だから、シズカさんを雇います。」

シズカは、喜んだ。

「でも、私達は、シズカに、何を教えてあげられるか、わかりません。」

「アリサもアケミもショーも、基本は、教えられるけど、考えて動きなさい。」

頭をかきながら、言ったママ。

「アリサ、ショー。あんた達が教えなさい。」

アケミが、言った。

「えぇ! なんで。」

「あんたが、助けたのでしょう!」

「最後まで、めんどうみなさい!」




  第12章 ②

翌日。シズカは、朝遅くきた。

「遅い!」

「シズカ、仕事なんだから、ショーなんか、7時前に来ているよ!」

お嬢様の、シズカ。見ること、やること、ゆっくりしている。

「どうする?シズカ。」

「続けられる?」

アリサとショーが、聞いた。

「シズカ、泊まり込みで、働いてみる?」

ママが、言う。

翌日は、朝早く、叩き起こさられた、シズカ。

家からきた、ショーと、浜辺に走っていく、シズカ。

お姉さんと、子供達も、シズカを引っ張っていく。

何日かたった日、シズカはショーに聞いた。

「いつも、こんなこと、しているの?」

「体力勝負だから。」

「私、ついていけない。」

「シズカさんは、ピアニストでしょう。

「ピアノって、お腹空くよね。

「体力、いる、仕事でしょう。」

「体力作り、しているんだよ。」

「アリサにもアケミにも、店にも、迷惑かけているのよ。」

「誰も、することだよ。」

「そう思うなら、注意して、働いていけばいいことだよ。」

うなずいた、シズカ。

「シズカさん。ピアノ、できるでしょう。」

「シズカさんのピアノ、楽しみにしているお客さん。多いの、知っている?」

ショーを見る、シズカ。

「ママさんも、楽しみにしているよ。」

言うと、ショーは、店に入った。

「ご苦労様。」

アリサもアケミもママ達も、笑っている。

その日から、シズカは、なにか、振り切れたようになった。

キッチンに入った、シズカ。

料理等したことがなかった。ナイフで切ったり、皿を割ったり、している、シズカ。

失敗して、大騒ぎしている、シズカ。

「懐かしいわね、リエちゃん。」

スタッフの姉さんに話をする、ママ。

「小さい頃の、アケミやアリサを見ているみたい。」

肩肘をついて見ている、ママ。

笑う、リエが。

「ウソ。」

アリサが言った。

「できたて、生みたての、子供を見ているみたい。」

「大丈夫かな?シズカ。」

姉さんが心配して言った。

「大丈夫!!」

「なにか、掴むところよ。」

「頑張っているね。シズカ。」

「なにか、いじめたいよね。」

アリサとアケミとお姉さん達が、言っている。

「いじめたら、ダメよ。」

ママが、笑いながら言う。

ある日、ピークが終わった頃、ライフセーバーのお姉さん達が、昼飯に入ってきた。

「やる?」

アケミが、シズカに注文をとりにいかせた。

トレイには、虫のおもちゃをおいて。

水と、おしぼりを渡した、シズカ。

「あの、これ、何ですか?」

摘まんで、アケミに見せた。

「ゴムで、できているみたいですけど。」

まわりは、驚いている。

「……。ダメだ。こりゃ!」

アリサが言った。

「ゴキブリを、知らないなんて。」

お姉さんが、あきれかえった。

「こうなれば!」

アリサとアケミ。お姉さん達の火が付いた。

子供の頃。お姉さん達に試した、おもちゃを出して、シズカをいじめた。

スライム。グラスに入れて、倒した。

サンプルのフルーツと、流れ出して、ゆっくり、床に落ちた。

「いつもの、カクテルジュースと、ちがいますね。」

言う、シズカ。

蜘蛛、カエル、蛇、と驚かそうとしたけど、ダメだった。

「筋金入りのお嬢様だね。」

「もう、止めれば。」

ママが笑いながら言った。

シズカ。

ピークが終わった頃から、ピアノを弾き始めた。

何時間でも。

「疲れない?」

聞く、ママ。

「コンサート前は、1日練習してますので。」

笑って、答ている。

ある日、レストランに、ポスターを張った、シズカ。

「えっ! 全国ツアー?」

始めて、シズカのことを知った、【インファント】の人々。

「こんなところで、働いていいの?」

ママが心配して、言ったぐらいのことだった。

笑う、シズカ。

「ここで、弾かせてもらってます。」

「シズカ姉さんが、いいのなら。」

言った、アリサ。

「いつものように言って、アリサ。」

で、

「イヤ、急に、手のとどかない人のように見えたから。」

「私はわたし。この店では、スタッフのひとりよ。」

笑って言う、シズカ。

シズカが、【インファント】で働くようになって、10日ぐらい、たった。

ライフセーバー達が、昼飯に入ってきた。

そのひとり、身体中が、傷だらけの人がいた。

「ワタルさん?」

振り返った、男。

「シズカです。」

「あなたに、助けてもらった…」

「あんたか?」

「大丈夫だったね。」

と、言うと、セーバー達と話を始めた。

「どうしたの?」

アリサが聞いた。

「いえ、私のこと。覚えていないの?」

「ワタル。就活で、忙しいの。」

アリサが言った。

「あれで、活動、遅れて、焦っているみたい。」

ワタルを見る、シズカ。

「できたよ。持って行って。」

ママとアケミが言った。

スタッフのお姉さん達が、セーバー達に持っていく。

「ワタルのね。」

お姉さんが受けとろうと手を伸ばした。

「私が。」

シズカが持って行った。

テーブルにおいたプレートランチ。

シズカが戻って来ない。

シズカを見る、スタッフ達。

セーバー達。

ワタルにしがみ付いた、シズカ。

「ありがとう。助けてくれて。」

シズカの涙が、ワタルの背中に落ちた。

「ありがとう。」

「よかった。頑張って生きていてくれて。」

ワタルが、泣いている。

涙が、シズカの手に。腕に、流れた。

「あの、食べたいんだけど。」

シズカが、離れた。

スタッフルームに入った、シズカ。

涙を拭いて、出てきた。

ライフセーバーのお姉さん、お兄さん達は、ワタルとシズカさんの、行方が、面白いのか、【インファント】にワタルと食べに来た。ワタルがくるたびに、シズカは、サービスをした。

始めは、喜んでいた、ワタルだが、何回も続くと、足が遠くなって行った。

それでも、セーバー仲間は、ワタルが照れて困っている姿が、面白いのか、楽しいのか、【インファント】で遅い昼を食べに来た。

ある日、ワタルが、逃げ出した。

仲間は、驚いた。

「どうしたの?ワタル。」

「アケミさんか!」

「ワタルらしくない。」

「わかっている。でも、どう付き合ったらいいのか、わからない。」

防波堤の階段に座って言う、ワタル。

店では、シズカが泣いている。

「私。ワタルさんに嫌われた。」

「俺、いままで、女の人にモテたこと。ないし。」

泣き声で話をする、ワタル。

「あれ以来、傷で、余計、恐がられて。」

「でも、だって、私達と話しているでしょう。」

「みんながいるから。みんなの前で、仲間として。」

セーバー仲間も来ている。

「じゃ、恋人は?」

セーバーのひとりが、聞いた。

「いない。」

「ナンパは?」

「した。」

「でも、ダメだった。」

「じゃ、特別の人とは?」

「SEX は?」

「まだ…。」

「ワタル。よく、スケベな話、しているじゃん。」

アケミが聞いた。

「みんなの仲間にはいる為に、DVD を借りて…」

「えっ?」

「そんな話、みんな、好きだろ。」

セーバーの姉さんが、店の中に、入った。

「えっ?ワタル。まだ、女の人と?」

「そうみたい。」

シズカを見ている、セーバーのお姉さんが、ビックリした。

「そう言えば、ワタルの話、DVD のに、似ているな?」

笑う、セーバー仲間。

「まぁ、ワタルは、口下手だし…」

アリサとショーも、話を聞いている。

「兄ちゃん、23でしょう。」

と、

「まぁ、気持ちは解るけど。」

ショーが、言った。

「ウフフフフ。」

アリサが、体当たりしてくる。

「なんだよ。」

「何も。」

甘い言葉にあきれながら。

「どうするんだ?」

セーバーが聞いた。

シズカを座らせた、アリサ。

「荒野に咲く、薔薇1輪か。」

セーバーのお姉さんが言った。

「うまい、ザブトン、一枚。」

笑う、アリサやセーバー達。

その笑いをはねかえした、シズカ。

「まったく罪作りね! ワタルは。」

『誰が言うんだ』と、目で、合図している、セーバー達。

全員が、アリサを見た。

『えっ?私?』指をさす、アリサ。

『むり。ムリ。無理。Muri。』手を振っている、アリサ。

全員の視線が、怒りの視線が炎となって、襲いかかった。

『ハイ。』肩を落とした、アリサ。

「おもしろいね。」

ママと、姉さん達が、見ている。

タメ息がでた、アリサ。

「あのね、シズカ。」

「ワタル兄ちゃん、今まで恋人さん、出来なかったの。」

シズカが、顔を上げた。

泣き濡れた顔を、新しいおしぼりで拭いてあげる、アリサ。

「みんなも、ワタルも、がんばってアタックしたの。」

「恋人さん、欲しくてがんばったのよ。」

アリサを見る、シズカ。

「でも、ワタル兄ちゃん、2人で話を、となると、出来ないの。」

「なんで?」

「知らないよ!ワタルに聞いて。」

怒る、アリサ。

笑いがおこった。

ショーを、仲間を、にらみつける、アリサ。

「それなのに、目の前に、白い薔薇が突然現れて、『好きです。』って、言わないで、行動で表されたら兄ちゃん、どうすればいいのか、わからなくなったの。」

「えっ、白い薔薇って、何?」

「もう、シズカ姉ちゃん!! あんたのよ!!」

真っ赤に、身体中が真っ赤になった、シズカ。

「そうそうだったの。知らなかった。」

頭から抱きすくめる、シズカ。

身体中で抵抗する、アリサ。

「ありがとう。アリサ。」

「死ぬかと思った。」

「私!がんばる。」

「息できた。」

「アリサ。何すればいい?」

「えっ?デートでも。知り合うには。」

真っ赤な顔で言う、アリサ。

これでうまくいくと、思った、セーバー仲間。

ところが! ところが!! ところが!!! 

大変な事になってしまった。初めてのデート。

仲間は、服装から、デートのこころえ、デートコースに、自家用車まで、貸してぐれた。

【インファント】の前。待ち合わせに。

シズカが現れた。

オーブンカーに乗って。

「デートの為に買ったの。気に入ってぐれた? ワタルさん。」

赤い、ヨーロピアンタイプの、オーブンカーに乗って、言う、シズカ。

「乗って、行きましよ。」

走り去った、シズカとワタル。

「どうするのよ。」

ママが言った。

我に戻った、アリサにショー。アケミ達。

「もっと、教育が必要だった…」

「調教でしょう。」

翌朝、シズカはご機嫌だった!

ワタルは?

アリサとショーが、ワタルを探しまくった。

「そっとしとけよ。」

「ほっとく事だな。」

言う、ライフセーバーの仲間達。

「ワタル!」

家に閉じこもった、ワタル。

アリサとショーが見つけた。

「ワタル。どうだった?」

アリサが、ワクワクしながら、聞いた。

「俺、やっぱり、シズカさんとは、ダメだ。」

落ち込む、ワタル。

「どうして。」

「どうしてなの?」

ショーとアリサが聞いた。

「あれから、シズカさんの家。イヤ、別荘に行ったんだ。」

話、出した。

別荘地でも、大きい家。

屋敷を案内してくれても、どこにでも女の人がいて、ついて来た。

昼食も、どこかのホテルのシェフが来て、フルコース。

フォークとナイフが、いくつも並んでいて、どれから使うのか、わからない。

女の人の冷たい視線を感じる中、シズカさんは、箸を用意してくれて、食べた。

「シズカさんが好きだという、ダンスも、踊れないし…。」

「あの別荘で、食べたもの飲んだもの。話した事。何も覚えてない。」

「そのあとは?」

ショーが聞いた。

「近くの駅までおくってもらった。」

「見えなくなった後、商店街の居酒屋で、飲んで、食べて…」

「気がついたら、駅の椅子で…」

「終電も終わっていて、タクシーで帰ったんだ。」

「シズカさんの事は?」

アリサが聞いた。

「好きだよ。もっと知りたい。」

「でも、あの人の家を見たら、息ができないんだ。」

それから、ワタルは、【インファント】に、顔を出さなくなった。

シズカも、暗く、落ち込んでいった。

「私、ワタルさんに、嫌われたのかな…」

アリサの部屋で泣き続ける、シズカ。

アリサは、眠いのを、がまんして聞いている。

あくびをかみ殺した。アリサ。

「ねぇ、シズカ姉ちゃん。ワタル兄ちゃんの家。知っている。」

「知らない。」

「家。漁師だよ。ワタル兄ちゃんのお兄さん。マグロ漁に出ているんだ。」

「だから。」

「兄ちゃんから聞いたよ。」

「執事がいて、メイドがいて、外国の高いワインを、ホテルのシェフを呼んで、昼食を。」

シズカを見る、アリサ。

「住んでいる世界が、違うんだよ。」

言った、アリサ。

「ワタル兄ちゃんは、シズカ姉ちゃんを、幸せにできないと、思っているのさ。」

「シズカ姉ちゃんの為にも、ワタル兄ちゃんのこと、忘れなよ。別れなよ。」

「いや!」

「うまく、いかないよ。」

「イヤ!」

「2人とも、不幸になるだけだよ。」

「イヤ!!」

タメ息をついた、シズカ。

「どこがいいの。ワタル兄ちゃんの?」

「あの時、ワタルさん。死んでいたかも知れないの。」

「先生と、パパの話、聞いたの。」

「一生、車イスの生活だったかも知れない。」

「歩くのが、走れるのが、奇跡だって。」

「もう、いいんじゃない。」

アリサが、言った。

「元気になったんだし、シズカ姉ちゃん。ワタル兄ちゃんと、会えたし。」

「兄ちゃん。満足していると思うよ。」

「そう、そうかもしれない。」

「でも、私、ワタルさんを好きになってしまったの。」

「……。どこが?」

聞いた、アリサ。

「私を、人として見てくれるところ。」

「えっ?」

「何?」

伝声管に耳を近づける、アリサママが言った。

「どう言う事?」

アケミが言った。

「私を、道具として、見ていない。」

「それで? シズカ姉ちゃんは、何を求めているの?」

「私だけを、愛して欲しい。」

「ワタル兄ちゃんと結婚したら、姉ちゃん、どうするの?」

「それは…」

「他の人と、遊ぶの? 浮気するの? 不倫するの?」

「そ、それは……。」

「勝手すぎない!」

アリサの目に、涙が。

「でも、パパの為に。会社の為…。」

「言って、ワタル兄ちゃんを裏切るんだ!」

泣き出した、シズカ。

シズカは、何日か、休んだ。

そして、シズカが現れた。

「アリサさん。話、あるの。」

言って、アリサの部屋に。

伝声管に、聞き耳をたてる、ママとアケミ。

「ウソ!!」

「私、これしかできない。」

「ダメだったら。」

「言わないで。」

言った。

「ママ。姉ちゃん。」

アリサが、呼んだ。

2人とも、言葉を失った。

何日かして、セーバー仲間が、ワタルを【インファント】に、誘った。

今日は、貸し切りになっている。

ドアに、カギをかけたアケミ。

「久しぶりだなぁ。【インファント】に来るのは。」

「でしょう。今日はシズカ姉ちゃんいないけど、ゆっくりしていって。」

アリサが言った。

「いないのか…。」

寂しく言った。

仲間が見ている。

アケミが、シズカと2人で後ろ向きで座っている。

「どうしたの?ワタル兄ちゃん。」

「ア!、うん。シズカさんには、悪いことしたと、思っている。」

ワタルが言った。

「そうなんだ。」

ワタルの話を聞いている、セイバー仲間。

「もっと、シズカさんの気持ちにたって、動いたら良かったのに。」

「後悔している?兄ちゃん。」

アリサが聞いた。

ビッグビッグバーガーを、ワタルにおいて。

スタッフのお姉さん達は、テイクアウトの、デリバリーを作りながら、耳は、アリサとシズカの話をしっかり聞いている。

「じゃ、なんで、シズカ姉ちゃんと、会わないの? 」

「デートしないの?」

「アリサには、わからないよ。あの日、何本もの、フォークとナイフが、並んで、みんなに見られて、ナイフとフォークの使い方も知らないのか! って、口に出さないけど、、視線を感て。」

食べることをやめた、ワタル。

泣き出した。

「おれ、シズカさんに、恥を書かせた。」

「あの人には、おれより、もっとふさわしい人が、いるはずなんだ。」

「そんな人と結婚して、幸せになって欲しい。」

言った、ワタル。

シズカも、ワタルの話に、泣いている。

そして、涙を拭いて、ワタルの後ろに立った。

「ワタルさん。」

振り返った、ワタル。

立ち上がって、シズカを見る。

「わ、私。ワタルさんの、お、思い、を、 受け止めました。」

「でも、ワタルさんの言った、わ、私の幸せを、あの人達は、壊しました。」

「あな、あなたが言った、ふさわしい人、と、言うけれど、その人達は、私に、なにをした?」

「ワタルさんは、アリサさんは、私を助けて、生きる力をくれた人です。」

「ワタルが、私と一緒に生きて行くことが、不安なら、私が、手を取って、歩いて行きます。」

言い切った、シズカ。

「だから、わ、わ、」

胸に手をおいた。

「いよいよだそ。」

店の中、みんなは、クラッカーを、手の中に。

「言うのよ。シズカ姉ちゃん。結婚を前提に、付き合って!」

アリサの手には、汗が。

「わ、わ、わた、わたし、」

シズカの声が、高くなっている。

「私、私と結婚してください!」

シズカは、顔が、腕が、全身が、熱くなるのを感じた。

アリサの顔を見る、シズカ。

「えっ? 結婚?」

アリサは、シズカを見た。

みんなが、驚いた。

「オイ、結婚を前提に付き合いだろうが。」

言う、セーバーのお兄さん。

シズカは、セーバーのお兄さんとお姉さんを見た。

そして、間違って言ったことに気がついた。

「私、間違ってしまった!」

座り込んだ、シズカ。

そのシズカを抱く、ワタル。

 「ワタル兄ちゃん。シズカさん、兄ちゃんの為にこんなバカなこと、したのよ。」

シズカの、左腕の包帯を取った、アリサ。

腕には、タトゥーが、薔薇のタトゥーが彫られていた。

薔薇の下には、【Love WATARU】の文字が、シズカが震えている。

「私には、こんな事でしか、ワタルさんのこころ。答えることができないの!」

みんなが驚いている。


「ワタルは、わかっているでしょ。」

「女の子が、身体に、名前を入れることの意味を。」

ママが言った。

「こんどは…。」

ママが、声を失った。

シズカを力強く抱く、ワタル。

「ねぇ、これ、どうするのよ!」

言うセーバーのお姉さん。

手には、クラッカーが。

「やれ! やれ!」

「1つ飛び越えたけど、めでたいことなんだから。」

クラッカーが鳴った。

悲鳴を上げた、シズカ。

ビデオカメラが、動いている。

アリサとアケミが、不満顔で、見ている。

「面白くない。」

ママが、アケミとアリサを見ている。

アリサが動いた。

「それでは、2人のはじめての共同作業をしてもらいます。」

「えっ?」

アケミとアリサが、笑って渡した、塵取りとほうきを。

「店を、キレイにしてね!」

ワタルはほうきとアリサ、アケミを見ている。

「ハイ!」

楽しんでいる。シズカ。

「ダメだ!」

笑って言う、セーバーのお姉さん達。

「ワタル。今日は、上がっていいよ。」

セーバーのお兄さん、お姉さん達。

「でも。」

「今日のお前はジャマ。シズカがついてくるから。」

と、言って出て行った。

「シズカさんも、ジャマ!」

ママが言った。

「ワタルを連れて、部屋に居なさい。」

「どう? シズカ姉。」

店が暇なのか?

アリサとショーが、シズカのいる部屋に来た。

「ハイ。差し入れ。」

雑貨店の、お菓子を、パクって来た、アリサ。

「ねぇ、私、下に降りなくていいの?」

アリサに聞いた、シズカ。

「いいの。シズ姉は。」

と、アリサは、美味しい、チョコを食べている。

「ハイ。ショーの。」

と、食べる権利は当然あると、口が動き回っいる。

「晩は、パーティーだから、寝たほうが、いいよ。」

言って、カメ2匹は、出て行った。

夜、シズカとワタルが、レストランに降りていくと、パーティーが始まった。

「えっ? え! なに、何なの?」

シズカがわからないまま立っている。

「婚約パーティーよ。」

とアケミが言った。

「だれの?」

聞く、シズカ。

「さぁ、誰でしようか。」

シズカを見る、セーバー仲間。

「ワタル。」

呼ぶ人が。

「おやじ。」

「お前なぁ!」

と、おやじと、おふくろに、小言を言われる、ワタル。

「昨日、晩メシの時も、話さなかったのよ。」

と、ワタルのおふくろが、横に立っている、お嬢さんに、話をしている。

「面白くなってきた。」

ママが、4人の会話を見ている。店のみんなが、笑いをこらえている。

「で、お前のフィアンセってのは、誰だ。」

聞いた、兄貴。

「シズカさんです。」

肩を抱いて、前に押し出した、ワタル。

「!」

「あなたなの?」

親も、兄貴も、絶句した。

「ワタルが崖から飛んだのよねぇ。」

「ワタル。いいのか?」

兄貴が、聞いている。

笑った、ワタル。

シズカは、腕をまくった。

薔薇が、文字が。

「ワタルがいいのなら、」

「ここまでする、お嬢様なんだから。」

親も兄貴も、認めていった。

「さぁ、おめでとう。婚約。」

後は、飲めよ、食えよの、大騒ぎになった。

「こら!店壊すな!」

ママが、スタッフのお姉さん達が大声で。

ショーとアリサは、シズカの回りにまとわりついている。

シズカは、グラスに注がれた、ビールやカクテルを、ゆったり飲んでいる。

「大丈夫か?」

ワタルが心配して聞いた。


笑う、シズカ。

「ねぇ、ピアノ。」

奏でる、シズカのピアノ。

ワタルが、離れようとすると、音が止んだ。

「よわったな。」

トイレまで、ついてくる、シズカ。

また、ピアノの前に座った。

「ねぇ、あの人。」

言う、セーバーのお姉さん。

「なによ。」

「シズカさんよ。」

「誰?シズカって?」

「ピアノストのシズカさん。この前、クラシックホールで、コンサート開いた。」

アケミとアリサが、お姉さんを見た。

「本当だ。」

学校の副担任も、言う。

「うそダァ。」

「だって、目に、泣きボクロがあるもの。」

「シズ姉!」

アリサとアケミが大声を出した。

「シズ姉。クラシックホールでコンサートした?」

「うん。」

アリサの顔を見て笑った、シズカ。

その後、ピアノで遊んでいる。

「ウソ!」

店が、揺れた。

アリサを見る、シズカ。

「どうしたの?」

「シズ姉。ピアニストだったの?」

「うん。」

「聞いてない!」

「だって、聞かなかったもの。アリサが。」

「新しい、ポスター。店に貼らせて。」

笑って言うシズカ。

また、1つ、謎が溶けた。

そして、ワタルの顔が。

「たいへんだ。ワタル兄ちゃん。」

同情する、仲間。

シズカは、ピアノの前から離れない。

「いいは、有名人のピアノただなんて。」

副担任が、言う。

わいわい、ガヤガヤ、飲んで、食べて、お祭り騒ぎの【インファント】。

シズカのピアノが終わった。

「おなか空いた。」

ワインを飲む、ワタルとシズカ。

「ねぇ、これいい?」

プレートの唐揚げに、ピラフ、サラダ、等々、食べるシズカ。「大丈夫?シズ姉。」

うなずいたシズカ。

「コンサートしたら、何キロも、やせるの。」

ワイン2本をワタルと開けたシズカ。

また、ピアノの前に。

「どうするの?ワタル兄ちゃん。」

「シズ姉、海外ツアーも、あるみたいだけど。」

聞いた、ワタル。笑ってごまかした。



  第12章 ③


数日後、黒塗りの高級車と、ヨーロッパのスポーツカーが、海岸通りを走ってきた。

渋滞に巻き込まれて、ノロノロ進んでいる。

スポーツカーの男。

クラクションを、鳴らし続ける。

「なに、あの車。」

注目のまとである。

別荘の女性が、【インファント】に、案内した。

「ここです。」

「ここで、昼飯を食べているのか?」

と、老夫婦が言った。

老夫婦の後、夫婦が、女の人が、続いている。

海水浴には、ふさわしくない、スーツ姿の団体。

汗が流れている。

SP の女性も男性も、黒いスーツで、立っている。

長い列の最後尾に並んだ、一向。

「じっちやん、ばっちやん。暑いけど、大丈夫かね。」

「これ、飲みな、店に入るまで、時間かかるよ。」

笑って、スポーツドリンクを渡した。

「ありがとう。」

「はやっているのかね?」

「このレストランは。」

聞いた老人。

「あぁ、うまいからな。」

キレイなお姉さん達も、いるし。」

「スケベ!」女性に怒られる、男の人達。

「まだか!」

イラつく、男。

並んでいる人を押しのけて、ドアを開けた。

「オイ、ご主人様が、向かえに来たぞ。」

大声で叫んだ。

男の一言で、スタッフルームに飛び込んだ、女の人が。

「どうしたの?」

スタッフのお姉さん達がシズカに聞いた。

「ワタルの。」

ドアを開けて、レストランを見て、走っていく、シズカ。

レストランでは、揉めている。

「あんた、誰?」

「並んでくれる!」

スタッフのお姉さん達が、男を取り囲んだ。

「おれは、シズカの主人さまだ。」

「シズカを出せ。」

「いないよ。」

アケミが言った。

アリサは、雑貨店から出て、シズカのどころに。

「お前な!」

男は、アケミの胸ぐらをつかんだ。

アケミの手にには、誰かが渡した、業務用の長い、お玉が。

「なにするのよ。女の人をつかむなんて。」

リエが、入り込んだ。

「うるさい!」

リエは、吹き飛んだ。

スタッフのお姉さん達が、かばう。

「なにするのよ!リエに!」

アケミは男にお玉を。スタッフのお姉さんもお玉を。

「痛い!いたい!イタイ!」

「やめろ!」

言う男の膝に、お玉が。

倒れ込んだ、男。

「あんたの連れ?」

聞いた、ママ。

「そうだ。」

老人が答た。

「シズカに会いたい。じいじが来た。」

「ばあばも。」

笑う、老人達。

「こいつの声を聞いたとたん。逃げたよ!」

ママがお玉で、2ハツ3パツと殴るている、木魚みたいに。

「いたい!イタイ!痛い!いたい!」

と、声をあげる、木魚。

「ママ! 焦げている!」

スタッフのお姉さんが。

「ハイ!」

木魚を叩いて、キッチンに入る。

ママ。アリサとショーが、ワタルとシズカと帰って来た。

何人もの、セーバーと、ともに。

「こいつ、どうします?」

「くくって、出しとけ!」

「おばちゃん。」

シズカが、抱きついた。

「大丈夫かい。」

言うおばちゃん。

「シズカ。」

「ハイ!」

「後でね。」

言うと、ドアの中に。

「シズカの服。なんてかっこうなの!」

女の人が、言った。

老人達が、案内された。

「いらっしゃいませ。」

スタッフのお姉さん達が、挨拶をする。

アリサが、席に案内した。

水の入ったコップが来た。

「いらっしゃいませ。」

「メニューブックです。」

スタッフのお姉さんが言った。

「ありがとう。」

おばちゃんが、受けとって、スタッフの顔を見た。

「シズカ!」

全員が、シズカを見る。

「ハイ!」

笑う、シズカ。

「ご注文が決まりましたら、およびください。」

と、オススメランチを説明する、シズカ。

「スタッフのお姉さん達の中に入った、シズカが、言った。

「緊張した。」

笑う、お姉さん達。

「だって、みんなくるなんて、思ってなかったから。」

おばちゃんが、笑っている。

ソフトドリンクから、運んだ、シズカ達。

「お前、腕の…」

「いいでしよう!」笑う、シズカ。

「後でね。」

アケミはキッチンの中に、アリサとショー、シズカ達は、ホールのお客さん相手に、動いている。

「シズカが、バイトをねぇ。」

「あの子の料理を食べられるなんて。」

おばちゃん。おじいちゃんが、感動している。

「ハイ!、ビックビックバーガーです。」

シズカが言った。言葉を失った、シズカの兄さん。

「どうやって、食べるんだ?」

シズカが肩を叩いた。

指差すお客さんを見る。

フォークとナイフで食べる、人。

「ごゆっくり。」

「シズカ!」

腕を握る男。

「後で。」

立ち去る。

お客さんが、いなくなった頃、シズカは、ビッグパフェを持って通った。

「あれ!」

シズカのお姉さんが、指さした。

「ハイ、ミユキちゃん。」

親子の前に置いた。

「来た!」

女の子が、喜んでいる。

「ミユキ。好きだね。」

口の中に詰め込むのに忙しい、ミユキは、大きくうなずいた。

「ミユキは、シズカ姉ちゃんと、パフェ、どちらが好き?」

「姉ちゃん。」

イチゴを食べながら、言った、ミユキ。

「先に、パフェを食べるって、言ったのに。」

「ママはよけいな事、言わないで!」

怒る、ミユキ。

「食べたら、しようか?」

シズカとミユキが、ピアノを弾いている。

「オイ、カネはとっているのか?」

聞いた、男。

「いいえ、シズカさん。とってないですよ。」

スタッフのお姉さんが言った。

「バカな!」

「シズカは、有名人だぞ。ただでなんて考えられない。」

言った、男。

「私の勝手がでしよう!」

にらみつける、シズカ。

「お前、。」

シズカにつかみかかろとする、男。

の足を引っ掛けた。スタッフ。

「誰だ。」

にらみつける。男が。

誰もかまわない。

「遅れて、ゴメン。」

ワタルが、セーバー達と入ってきた。

「ワタル。」

抱きついた、シズカ。

「汗臭いぞ。」

「いいの。いいの。」

ミユキは、ママの方に戻った。

「ママ、楽しい?」

笑う、ミユキのママ。

「今、おじいちゃん達が来ているの。」

シズカが、ワタルの腕をつかんで、紹介した。

「初めてまして。」

「シズカ、この人は。」

「私の旦那様。」

「ウソ!」

「本当よ。」

シズカが言った。

「キミは、ワタル君だね。」

「言った、おじいちゃん。

「孫娘を助けてくれて、ありがとう。」

おばちゃんが言った。

「でも、なんで、結婚に、行った?」

シズカを見る、老夫婦。

シズカは、うれしそうでなかった。

「なにしに、来たの?」

黙る人びと。

「シズカ、座ろ。」

ワタルが、イスを薦めた。

「ママ、閉める?」

レストラン【インファント】は、久々の昼休憩になった。

「シズカ。ここのコーヒー。美味しいね。」

照れた、シズカ。

「コーヒー、シズカが入れたの。」

ママが言ってくれた。

男の人が、見て、

「いいレストランですね。」

「でしょ。お兄さん。」

「私に生きる力をくれた人びとの集まる、どころ。」

シズカが言った。

男を見る、シズカの家族。

「言わないのか。」

老人が言った。

黙っている、男。

タメ息をついて、兄さんと言った人が、話を始めた。

「実は、こいつ、シズカと同じような事件をしたんだ。」

「誰?」

「日の出会社の、華子さん。」

「……。」

「それで?」

「華子さん、脅したビデオを、ネットに流したんだ。」

「それで?」

「他の人達も、華子さんの勇気に、押されて、ネットに流し出した。」

お兄さんが言った。

「コーヒー、おかわりもらえる?」

お姉さんが言った。

「お前は!」

「私に関係ないことよ。」

言い切った、お姉さん。

「私は、シズカの顔を見たいだけ。」

「私に関係無い事よ。」

シズカは、ワタルに抱きついた。

「で、なにをしてほしいのです。シズカさんに。」

ワタルが聞いた。

「助けて欲しい。」

「私には、関係ないことよ。」

「オレ、親から、見捨てられた。」

「アホくさ。」

スタッフのお姉さん達が、あくびをしている。

「あんたがした事よネ。」

お玉が来た。

「シズカに、助けてって言うか!」

アケミが、ネットで、調べた。

「シズカ。あった。」

「酷い。」

目をそめたくなる、場面がいくつもある。

「こいつの会社も、こいつの仲間の会社も、いまは動いてないんだ。」

「私には、関係ないことよ。」

シズカがもう一度言った。

「その中で、流してない人がいて、シズカも、そのひとりなんだ。」

「だから! 私のイヤな事を思い出さないで!」

ワタルにしがみつく、シズカ。

「シズ姉、もう、ワタルのものよ。」

アリサが腕を捲った。

青い薔薇のタトゥーが、下には、『Live WATARU 』が。

ワタルに抱かれて、にらみつける、シズカ。

「シズカ。お前。」

笑い出した。お姉さん。

「シズカ。良くやった。」

「兄さん。ザンネン。」

「あの、可愛いシズカが、歩いているなんて。」

おばちゃんが、喜んでいる。

「お前、あの男のどこかいいんだ。」

「言わないといけない?」

シズカが言った。

「ねぇ、シズカ、男の名前言わないけど。」

スタッフのお姉さんが、見ている。

「言うのも汚わらしい、ってか。」

笑うお姉さん達。

赤くなって、にらみつける、男。

「私は、ワタルのことをいうのも、なにから話をしても、言いつくせない。」

「私の代わりに、死んでくれた、人。」

男を見て、ゆっくりと話をした。

「お前らに、持て遊ばれた日。私は汚された。」

「私を愛してくれたと、思っていた幻想が崩れて、、生きることが、イヤになって、崖に立った。」

「アリサが、見つけてくれて、名前と連絡先を、なんて聞いてきて、笑っちゃった。」

「私、自殺、死ぬつもりなのに、まだまだ笑うことが。って、バカバカしく。」

「でも、天上の母上の怒りだったのね。身体が浮いて、海の方に。」

「あぁ、私、死ねるんだ、感じ時、誰かが、私を包んでくれた…の。」

「気がついたら、病院だった。」

私が、退院した後に、知ったの。」

「私を助けてくれた人の名前。」

「あんたならできる?」

「私の為に、死ねる?」

「人のタメに死ぬことができる?」

「……。で、できる。」

「じゃ、ワタルと同じように、崖から、飛んで!」

シズカが。

「できもしないクセに。」

青ざめた顔の男に言った。

「私、あそこに行きたい。」

「アリサ、きて。」

ママが行け!って、合図している。

「みんなに、見てもらいたいものがあるので。」

シズカは、言った。

「おじいちゃん、おばあちゃんには、きついけど。ゴメン。」「まだ、シズカには、負けん。」

笑う、おばあちゃん。

花屋によった、アリサと、シズカ達。

シズカは白い薔薇をたくさん買った。

ショーとアリサは白いユリの花束を。

「誰かの墓参りかい?」

おじいちゃんが聞いた。

さびしく笑う、シズカ。

教会。の下、石段に立った。

おじいちゃん、おばあちゃんの顔を見る、シズカ。

「大丈夫だよ。」

シズカが上り出した。

ショーとアリサが続く。

おじいちゃん、おばあちゃんが、後を追った。

タメ息が出た、お父さん、お母さん、石段に。兄さん、姉さんが上り出した。

「他の道は、ないのか?」と、上がっていくSP に言った、男。SP は、見て、石段を。途中、踊り場で、止まったシズカ。

「先いくよ。」

アリサとショーが、抜いた。

にらんだ、シズカ。

「大丈夫か?シズカ。」

「おばあちゃん、おじいちゃん!」

「まだ、若い者には、負けんよ。」

笑う、老夫婦。

おじいちゃん、おばあちゃんと上っていく、シズカ。

「会社の階段、いつも上がり下がりしているからね。」

シズカが目をむいた。

「ウソ!」

「でも、やっぱ歳だね。途中、座って、休憩しているよ。」

おばあちゃんが、シズカに言った。

おじいちゃん、おばあちゃんと上っていく、シズカ。

教会の前、イスに座って話をしている、ショーとアリサ。

学校のクラブの連中と、ふざけあっている。

「だから、」

テーブルに、マジックで、勉強会を。

「あっ、来た!」

アリサが言った。

「来た。でないでしょう!」

頭に、パンチが。

「誰が、テーブルを、ノートにしていいと言ったの!」

ハナミが怒っている。

「だから、やめよって言ったろう。」

ショーが、クラブの連中に言った。

「お前な!」

笑い出した、シズカ。

「あぁ、ショーとアリサを見ていると、たのしい。」

「でしょう。」

「オレ達、大変なんだぞ。」

シズカは、おばあちゃん、おじいちゃんに、家の人に、お茶のボトルを買った。

「なんで。」

「アリサとショー、急に話を振るから。」

「私も、された。」

「で、勉強、終わったら、消しなさい。」

と、牧師の、ハナミが怒っている。

「ハイ。」SP の人達に、お茶を渡した、シズカ。

「オレのは。」

座り込んで聞いた、男。

無視を取った、シズカ。

「カードが、使えない。」

叫んだ、男。

「後で、返せ。」

ショーが、金を渡した。

「教会か!」

おじいちゃんが、言った。

ハナミ、シャツに、ジーンズの、ラフな姿で、アリサとショー達と、冗談を。

「だからさ…。」

「で、どうなった?」

子供、2人いるなんて感じさせない、話の入りかた。

女の子は、アリサにぴったりと、アイスキャンディを食べている。

「行こうか?」

キャンディを食べた、娘を見て、言った、ハナミ。

教会の礼拝堂の奥、ハナミは、ローソクを渡した。


子供の手を引くハナミ。

たくさんの骨壺が並んでいる。

「ここは?」

おばあちゃんが聞いた。

「あの崖から飛んだ人びとです。」

ハナミが、言った。

「一年で、数十人。」

「教会では、満室になるので、5年で、無縁仏の中に入ってもらっています。」

シズカは白い薔薇を。アリサは白いユリを。

ショーは、白い薔薇や、ユリを、シズカの家族に、渡した。

「こんなところが。」

見て回った、おばあちゃん。

「名前がない。」

「わからないのです。」

「この番号は。」

「なくなった、日。」

シズカが言った。

「あら、この骨壺、シズカと同じ名前がある。ね、シズカ。」

お姉さんが、見つけて言った。

シズカは、骨壺を持った。

「私の骨壺よ。」

中に、髪の毛が、入っている。

「この日、私が、崖から飛んだ日。」

「そして、私が、ワタルとアリサに、助けてもらった、生まれ変わった日。」

男を見て、言った。

シズカ。

部屋の中、響いている。

「ふたりに助けてもらった、命。」

「私は、死ぬまでワタルと過ごしたい。」

「人の為に、使いたい。」

「大変です。」教会の入口で待っている、SPが、入って来た。

男の祖父が、会長を、親が、社長を、辞任すると、記者会見を流している。

男どもには、罰を受けてもらう。

と会見している。

「私は、反対よ。」

息巻く、母親。

「私も、あんたの為に、言う通り、イヤな男どもに抱かれて、会社の為、会社を大きくしたのよ!」

「私も、おもちゃにされた!」

「なのに、なんで、あんたが、社長を辞めないといけないの!」「私がいたから会社が大きくなったのよ!」会見の、デスクを叩きつけながら、怒っている。

「私は、なんだったの。」

と、泣き崩れた、女。

日本中が、地球全国が、多くの人々が、彼女の叫びを聞いている。

「でも、私は、あんたを許さない。」

シズカは、礼拝堂で言った。

牧師のハナミが、

「それも、シズカの運命。」

「許せ、なんて言わない。」

男を見て、言った、ハナミ。

「この男が、シズカにしたことに、対して、社会的制裁の他、忘れることの出来ない、心の傷を、みずから、着けたのだから。」ハナミを見る、男。

「人の心を、身体を、傷つけたことに、あなたは、家族も、会社も社会的地位も、失いました。」

ハナミの話が、言い方が、変わった。

見ると、ハナミの背中に、翼が。天使が。

「あなたの肩には、背中には、多くの女の人々の怨みを背負っています。」

教会が、まぶしく輝いた。男の背中に、赤ん坊のようなものや、子供のようなものが、抱きついている。

「助けてくれ!」

「この子達は、あなたが、もて遊んだ人達の、あなたが、捨てた人々の、魂。」

「傷ついて、あなたに、助けて欲しいと、現れたのです。」

ハナミが、倒れた。

「大丈夫か?」

「大丈夫です。」

言う、ハナミ。

「姉さん!ローズ姉さん。入るなら、言ってよ!」

「心の準備が。」

笑う、天使が、見える。多くの天使がハナミを見ている。

「助けてくれ。」

消えた、天使。

「助けてください。」

「あなたのしたことよ。あなたが考えて、動きなさい。」

天使の、ローズが、言った。

太陽が、水平線に隠れる頃、レストラン【インファント】では、大騒ぎになっていた。

シズカがスタッフとして、カクテルジュースや、プレートランチを、出している。

老夫婦は、孫娘の持って来た、料理に、涙を流している。

シズカは、スタッフに、いじられて、恥ずかしそうにしている。「ワタル、助けて。」

言いつつ楽しそうにしている。

シズカが、ピアノに座った。

店内には、シズカのポスターが、張っている。

拍手の中、ピアノを引く、シズカ。

ママが、シズカの家族の中に。

「いつも、店で奏でているのですよ。」

「でも、月謝も、取らずになんて。」

シズカの兄さんが言った。

「人に教えることは、シズカも学ぶことですよ。」

「お兄さんは、月謝の話を、お金の話をしますけど、私の店では、シズカを始め、スタッフが、なにか手の中に入るものを、学ぶところにしています。」

ミユキが、両親と食べにきている。

シズカ、セーバーに歩いて行った。

ワタルの首に回して、ワタルの飲んでいる、ビールを飲みほした。

そして、シズカはワタルと、家族の席に。

「今日は、終わり?」

シズカのお姉さんが聞いた。

「まだ、わかんない。」

アリサが、シズカに、ビッグビッグバーガーを。

「で、どうするの?」

SP のお姉さんが、聞いた。

「なんのこと。」

崩れる、家族。頭をかかえた、SP のお姉さん。

「ヨーロッパのコンサートです。」

「…。忘れていた。」

「どうしよう、ワタル。」

頭にお玉が、

「シズ姉、ボケ過ぎ!」

アリサが。

「それに、ワタルさんと結婚したら、ワタルさん、私達の家族になるのよ。」

シズカのお姉さんが言った。

「そうよ。」

あたりまえのように言う、シズカ。

「で、ランチ、箸で食べたのだって。」

「うん、お姉ちゃん。」

「パーティでは、ダメだから!」

「私達に、恥かかせないで!」

「ハ、ハイ。お姉ちゃん。」

「それに。」

お父さんが、

「話題も、多くの、トップの人々と合うのだから。」

「話が、できるようになっておきなさい。」

お母さんが。

「シズカ、がんばって!」

「どうしよう。お姉ちゃん。」

「私は、知らない。」

「ワタルさんを選んだ、お前が悪い。」

「このような結果になることを。」

「見て来たでしょ。パーティで。多くの人を。」

「私、パーティに出ないといけない?」

「シズカのピアノ。楽しみにしている人々に、失礼でしょう。」うなずいた、シズカ。

ワタルは、指をおって数えている。




【おまけのコーナー その、1 】

アリサ「おはようございます。」

ショー「おはようございます。」

アリサ「アリサのドラマ。見てくれている。テレビの前に皆さ

ん。お元気ですか?」

ショー「今、アリサとショーは、あるところに来ています。」

アリサ「アリサとショーは、皆さんもご存知のように、

    テレビ の、キャスターと、コメンテーターをしていま

    す。」

ショー「えっ!知らない?本当に?では、ドラマの中で、してい

    ます。見てください。」

アリサ「今、特別な会場に来ています。」

ショー「テレビの前の皆さんは、この会場に、入る事ができない

    のです。」

アリサ「どこか、と、言うと…」

ショー「アリサ。もったいぶらすに、早く!」

アリサ「ハイ。私達は、ドラマの作者。ミノルさんの、身体。脳

    の特設会場に来ています。」

ショー「俺達、アリサを作った、脳の中にいます。」

拍手が起こった。

アリサ「すごい、人ですね。『アリサ 』『天使の涙』『スター

    シップ(仮)』、他、多くのドラマの共演者が、来ていま

    す。」

アリサ「見てください。私達の、兄弟、姉妹ですよ。」

ショー「すごいです。」

アリサ「では、お待たせしました。私達の作者。ミノルさんの登

    場です。」

拍手で迎えられた、ミノル。

ミノル「ハイ! おはよう。とうとう、頭の中に入ってきまし 

    た。」

ミノル「ありがとう!」

アリサ「で。ミノル先生。なにか、雑然として、整理されてない

    だけど。」

カメラが、ミノルの頭の会場を撮っている。

アリサ「すごい、ファイルの量。それも、雑然としている。」

笑いが起こった。

アリサ「もう少し、かたずけてください。」

アリサが怒って言った。

ミノル「でも、この状態から、『アリサ』や、『天使の涙』が生

    まれたんだよ。」

会場から、驚きと、笑いが起こった。

アリサ「どういうこと?」

ミノル「たとえは、頭の中。整理してなかったから、ファイルが

    崩れて、ファイルと、ファイルが重なりあって、溶け

    て、新しいファイルになるンだ。」

ショー「じゃ、この中から、先生は、ドラマを作ったのです

    か?」

ミノル「作った訳じゃないよ。俺の興味のあることを、広く浅く

    見て、ファイルしたンだ。」

   「アリサも、俺の頭の中で、現れたんだよ。」

アリサ「すごいのか、わからない。」

笑いが始まった。

ショー「では、アリサが聞きたいと、言う、質問をしていただき

    ましょう。」

アリサ「シズ姉。早く。」

シズカが、来た。

アリサ「私より、シズ姉の質問なんだけど。」

シズカ「あの、いたのですか? メシア様は、」

会場が、静かになった。

ミノル「俺より、よくしっている人に、登場していただきましょ

    う。」

ミノル「『天使の涙』の、エリカと真。」

アリサ「ようこそ。」

真「おはようございます。」

エリカ「おはようございます。」

ミノル「じゃ、後は、よろしく。」

真「えっ。いなくなるのですか?」

アリサ「まったく!」

エリカ「いつものことです。」

アリサ「じゃ、エリカさんに、質問を。天使の羽って、透き通っ

    ているのですね?」

エリカ「多くの人々が、昔から、白い翼を書いているけど、科学

    が発達してなかったから。」

シン 「翼は、光りの集合体なんだ。」

   「天使の身体だから、好きな時に、翼を見せるし、飛んで

    いく。」

ショー「凄いですね。」

アリサ「シズ姉の質問ですが、『メシア』さんって、いまし

    た?」

エリカ「いたわよ!」

不機嫌に答た。

エリカ「あの悪ガキが!」

会場のみんなが、固まった。

エリカ「天上の父上の子だから、教育係を、押し付けられて、私

    や、天使の言う事、いっこも聞かずに、悪さばっか

    り。」

みんなは、エリカを見ている。

エリカ「いたずら、激しいもんだから、天使のみんな、逃げた

    の。」

エリカ「最後に、私しかいなくなって……」

エリカ「なのに、私をいじめて……」

エリカ「ごめんなさい。」

アリサ「それから……」

エリカ「あまりにもひどいいたずらで、私、我慢できないから、

    天上界に帰ったの。」

エリカ「そしたら、あのクソガキ。」

エリカ「『私は、天上の父上の子供だ!』なんて、言って、勝手

    に、死んだの。」

ショー「それから?」

エリカ「天上の父上、母上の命によって、メシアを引きとっ

    た。」

エリカ「今、メシア本教会で、眠っている。」

アリサ「なんか、凄い話ですね。」

ショー「メシアさんが、いたなんて。」

シン 「メシアだけが、天上の父上の子ではないよ。」

アリサ「えっ!」

ショー「まだ、いるのですか?」

マリー「何千人。何万人が。」

会場が、アリサ「あなたは?」

マリー「マリー。天使のマリーよ。」

ローズ「やっぱり、来たんだ。」

マリー「おひさ。」

ローズ「ホント! あの時。父上、精力的に動いてたから。」

   「私達、教育係も、たいへんだったね。」

アリサ「じゃ、メシアさん。多くいたのですか?」

マリー「父上の子はネ。」

ショー「その人達は? 救世主になったのですか?」

エリカ「人、それぞれよ。」

ローズ「父上の子と、名乗らないで、ふつうに、家庭を守って、死んだ人もいる。」

ローズ「父上の子だ。と言って、始めはいい事を言っていたの

    に、最後、ひとりさびしく亡くなった人もいる。」

マリー「たとえ、父上の子だからって、人々を導く力があるわけ

    でもないし、」

   「父上の子だから、特別な力、あるわけでもないし。」

シン 「父上も、罪作りな天上人だ。」

ショー「ホント。奥さんと、仲良くしていればいいのに。」

ミノル「それで、マリー。メシア教会の話、してくれ。」

マリー「いいのですか?」

うなずいた、ミノル。

マリー「じゃ。メシア教会は、地球上最大の、政治、経済組織で

    す。」

ショー「どういう事?」

ミノル「わからないか? メシア教は、メシア様の教えを守っ

    て、2千年以上、君臨してきた、地球規模の組織だ。」

   「メシアさんの教えを、過大解釈して、利用されて、人々

    に、外の国々に、翻弄されても、おかしくないのに。」ミノル「俺の生まれた、地球では、よく似た宗教が、人々の考え

    で、国の国教会に、されて、権力者の道具になって、戦   争に、人殺しまでしている。」

マリー「私達の、メシア教は、そんな教えを解いていません」 ミノル「だから、地球を治めている。」

   「教会。地球のすべての国々に多くあるだろう。」

   「その情報を、すべて本教会に集まっていく。」

ミノル「国々の情報機関より、凄いことだろう。」

マリー「何千年もの、地球国家、宗教、経済の、埋もれた、遺産も。」

   「その情報で、地球国家を、後から、運営というか、ささえているの。」

ショー「ということは?」

シン 「ショーの考えている通り。戦い、戦争に関しても。」

アリサ「じゃ、戦争を始めていることも?」

マリー「いえ、どう終わらせるか?、いうことです。」

   「天上人が、介入しにくい、出来事です。」

   「もし、介入したら、地上人は、天上人が見方してくれて

    いる。と、言うでしょう。」

   「そうなれば、どうなります?」

   「皆さん。」

ローズ「私達は、戦いによって、獲られた平和は、永続きしなか

    った、と、言います。」

   「なぜ、戦いによる、平和を選ぶのでしょう?」

マリー「よく考えて、見てください。」 

アリサ「時間がきました。」

ショー「これで、皆さんとお別れです。」

アリサ「キャスター。アリサ海渡。」

ショー「コメンテーター。ショー鈴木、が、お送りしました。」アリサ「では、次の日まで。」

ショー「ごきげんよう。」

   「ハイ! カット!」

   「お疲れ様でした。」

アリサ「ミノル先生。もう、これっ切りネ。」

ミノル「何が?」

アリサ「脳内放送。」

ミノル「まだ、始まったばかりだよ。ドラマで書けない事、アリサちゃんとショー君に、でてもらって、うれしいよ。」

アリサ「私は、イヤ!」

ミノル「そう言わずに、第2段、3段。よろしくね。」

ミノル。脳の、外の部屋に消えた。



   第13章

シズカなる台風が、去った。

ワタルと、シズカの恋愛を、しぶしぶ認めた、シズカの家族は、シズカをおいて、会社に、戻った。

シズカのおじいちゃんと、おばあちゃんは、近くのホテルで、夏休みに入っている。

シズカは、【インファント】で、スタッフのひとりとして、泊まり込みで働いている。

モーニングセットを運ぶ、シズカ。

スタッフのお姉さん達が、集まったら、ピアノに、毎日、何時間でも、引き続ける、シズカ。

【インファント】のお姉さん達は、始め、大丈夫かと、心配したほどだった。

うまくいかないで、ものにあたる、シズカ。

「ダメ。私、才能ないんだ。ピアノ、やめようかな!」

言っては落ち込んだ、シズカ。

ランチを、食べて、話をしている、シズカに、子供達が、

「シズカお姉ちゃん。ピアノ、やめるの?」

「誰が?」

「お姉ちゃん。」

「どこの?」

言うと、シズカは、ピアノに座った。

そして、子供達とピアノを弾いては、子供達から教わった、アニメの唄を歌っている。

「いつもの事か!」

スタッフのお姉さん達は、シズカを見ている。

お客さんの中には、酒クセの悪い人達や、女に、もてたいと、ナンパする人達が、シズカを誘いにくる。

アリサや、アケミ。スタッフのお姉さん達が、またか!と、タメ息をついた。

「お兄さん。」

「なんだよ!」

お客さんも、その会話を楽しみにしている。

「あのポスターの人、知っています?」

アリサが聞いた。

「知らん。俺たちに、なんの関係あるわけ?」

「シズカさん。」

「ピアノニストの、シズカさん。」

「前売り券、いくらか、知っています?」

「書いているけど。」

数字を見る、男ども。

「その、シズカの、練習室が、【インファント】なの。」

笑いだす、お客さん達。

「えっ!」

「ねぇ。お兄さん。コンサートの前売り券、買ってくれる。」「シズカ姉ちゃんも、喜ぶと思うけど。」

「イヤ、いいです。」

「じゃ、聞いていて。ピアノの練習。」

「ネェ!シズカ!」

「なにか言った。」

「コーヒータイムに、しよう。シズカ。」

男どもは、テーブルに座った。

「信じられないでしょう。ピアノニストが、練習するなんて。」横のお客さんが、男どもに言った。

その後、シズカは、息抜きに、子供の練習に付き合ったりしている。

夜、シズカは、レストランが終わってから、アケミや、アリサ。アリサママ達と、食事を楽しんでいる。おじいちゃん、おばあちゃんも交えて。

時には、ワタルも、入って。シズカがワタルに聞いた。

「どう。シズカのピアノ。」

「よくわからない。クラッシック、聞いたの、学生以来だから。」

シズカは、黙って聞いている。

「解る。シズカも、いろいろな唄、聞きたい。」

「音楽を仕事にしている人達は、いろいろ、学んでいかないと思うけど、音楽を聴く人は、好きか、嫌いか!で決めたらいいと思う。」

「感性に合うか、あわないか。」

「だって、シズカも聞いてない人のCD たくさんあるのだから。」

「シズカのピアノ。聞いて、好きになって欲しい。」

シズカを見る、おじいちゃんとおばあちゃんだった。


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