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善者と悪漢の茶番試合17-4

 第2試合が開始してから時間は余り経過してはいない。

 しかし、ヴォンボ側は肉体的疲労よりも精神的疲労が多量に蓄積され、(おもて)に浮かべる苛立ちの色は疲労によって薄く為っていた。

「はぁ…、はぁ…、(くそ)ぉ…、当たらねぇ…」

 ヴォンボ達は魔獣と思しき生き物(ガイア)見据(みす)える。

「あ…、あんなの…、追い付ける訳が()ぇ……」

 取巻き2人は前線でガイアを一応形としては追い掛け回していた為、呼吸は少し乱れていた。

 そして開始地点から移動していないヴォンボは、先程迄(さきほどまで)ガイアにおちょくられ続け、その所為(せい)で初撃以外の魔法を行使させてくれなかった事に苛立っていた。

 しかし、魔獣と思しき生き物の恐ろしい速度を間近で()()たりにしたヴォンボは困惑の表情を浮かべ、それが(ふた)となり、内に溜まりに溜まった苛立ちは面に出す事すら出来ずに絶句する。

 その一方(いっぽう)で、ガイアは彼等から少しだけ距離を置き、おちょくり行為を止めていた。

(うーん…。この人達相手だと(ほとん)ど把握が出来ないなぁ)

 ガイアは自身の力量(りきりょう)を思った以上に把握出来ない事に、少々頭を悩ましていた。

 冒険者証を剥奪(はくだつ)されてはいるが、ヴォンボ達は一応C等級(ランク)の力量はあると冒険者組合(ギルド)に認められていた。しかし、ガイアはシャラナの試合と今の試合である疑問が(しょう)じていた。

(本当にC等級(ランク)なのかぁ? この人達って)

 今まで訓練という形で闘ってきた事のある強者はシャラナ1人だけだ。しかもガイアは、魔法のみという制限でしかしてない。近接での戦闘は禁止として。

 だが、それでも闘う相手の力量は大雑把程度に推測する事は出来る。

 テウナク迷宮都市に来る前迄に、シャラナと幾度も訓練で手合わせしたのだ。なので、今相手している彼等の力量は充分に理解していた。

 C等級(ランク)にしては弱過ぎる、と。

 各等級(ランク)で力量はどの程度の基準となっているのかは流石に判らないが、視界に映るヴォンボ達の力量がC等級(ランク)にしては低い事は確信出来る。

(上手い事(ズル)して等級(ランク)を上げたんだろうな。まぁ…、あの元貴族は今まで見て来た貴族魔導師と違って魔法が直ぐ発動出来る点だけは、一応マシな方だけど)

 しかし、マシであってもガイアの敵では無い事には(まった)く変わらない。

 元冒険者だったとはいえC等級(ランク)のヴォンボ達に対して、ガイアは最低S等級(ランク)の力量を秘めている。

 この現状を(たと)えて言うなら、小鬼(ゴブリン)3匹が強大な(ドラゴン)に挑むという無謀な構図だ。

 要するに、この模擬試合は(はな)から勝負に成る訳が無いという事だ。

(……相手の土俵に立つのはもう良いや)

 これ以上、力量が低い彼等で近接戦闘の確認をしても収穫は余り得られないだろう。

 ガイアは動く事を止めた。いや、止めて上げた。

 そして相手が何かをする迄、再び何もせず、頭の中で如何(どう)やって揶揄(からか)おうかと暢気(のんき)に思考しながら待つのだった。


 先程迄動き回っていた魔獣と思しき生き物が移動を止め、其処(そこ)から動こうとする素振りが無い様子を観るヴォンボ達は(いぶか)しげな表情を浮かべた。

「…何だ? 動かなくなった?」

 ヴォンボはそう疑問を口にした。

 しかし、そんな事は如何でも良いと、直ぐにその疑問を捨てた。

 (すき)が生まれた。やっと勝ち終えられる。そう浅はかに思い(わら)う。

「フン、やはり所詮(しょせん)は下等な魔獣だな。調子に乗って動き回った所為で疲困(ひこん)と為ったか」

 ヴォンボは完全に勘違いをし、何時(いつ)もの他者を見下す表情を浮かべた。

「今だ行け! あの魔獣が疲労で動けなくなってる内に叩きのめせ!」

 ヴォンボは取巻きの2人に命令を下し、取巻き2人はその命令に反応して大剣と拳を構え、動かなくなった魔獣と思しき生物に走り迫った。

「散々俺達をおちょくった分、たっぷりとお返ししてやらぁ!」

 ガイアへと一気に距離を縮め、攻撃が届く射程圏内へと接近した取巻きの剣士が大剣を振り上げる。

「喰らえ!!〈剛斬撃〉!!」

 武技(スキル)を発動させながら大剣をガイアの頭に目掛け、力の限りに振り下ろした。

 鉄製の大剣が岩石の頭に叩き付け、硬質な音が大きく響いた。

「なぁ?!!」

 剣撃を当てた後の結果に目を見開き、動揺(どうよう)が多く含んだ驚愕を面に浮かべた。

 武技(スキル)を載せた剣撃で殴る様に叩き付けたが、両腕ごと大剣が弾かれてしまった。

 だが、それよりも信じられない結果に驚く。

 それは魔獣と思しき生物(ガイア)の頭に傷が一切付かなかった事にだ。それも僅かな罅割(ひびわ)れや(へこ)みすら全く生じなかった事に。

 しかも、武技(スキル)による剣撃をその身に受けたその生き物(ガイア)は、何の痛痒(つうよう)すら見受けられなかった。更には剣撃を真面(まとも)に喰らったのにも関わらず、全く微動だにすらしなかったのだ。

 ――――有り得ない。

 剣撃を当てたにも関わらず、まるで何もされていないかの様に暢気そうな表情の(まま)魔獣と思しき生き物(ガイア)を見て、剣士の男は眼前に映る現実という光景を否定する。

(痛く無~い)

 そんなガイアは剣撃をそのまま受けるも、ぽけーっとした表情で驚愕する剣士の男を視界に映す。

「うらぁあ!!〈剛拳〉!!」

 剣士の剣撃が弾かれた後に格闘士の男がガイアへと接近し、武技(スキル)を発動させ拳当て(ナックルダスター)を握り締めた拳をガイアの顔面に目掛けて振り抜いた。

(ほいっと)

「なっ…?!!」

 しかし、格闘士の男も眼前に起こった光景に驚き動揺した。

 繰り出した武技(スキル)による拳撃が、岩石の片手に掴まれ止められてしまったのだ。それも親指と人差し指と中指で挟む様に掴まれてだ。

「な?! このっ…、放せ!」

 岩石の手から逃れようと、格闘士の男は掴まれた自身の拳を慌てて引っ張る。しかし、幾度も力の限りに引っ張るもびくともせず、ガイアの圧倒的な指の力から自身の拳を引っ張り出す事は出来なかった。

「この…、放せコラァア!」

 焦燥(しょうそう)に駆られた格闘士の男は、掴まれていないもう片方の拳でガイアに殴り掛かる。

 何度もガイアの顔面を拳当てで殴り付けるが、先程の剣撃同様、僅かな痛痒すら与える事が出来なかった。

「かっ、(かて)え…! 如何なってんだ此奴の身体!? 岩なんてもんじゃねえぞ!」

 殴る度に伝わる岩石とは思えない鋼鉄の様な硬さに困惑しながらも、ひたすら殴り続ける。

(んー…。低位(クラス)の魔法が無難かなぁ)

 そんなガイアは何処吹く風といった様子で、試してみたい魔法を頭の中で選択する。

 そしてガイアは格闘士の男を前方へ軽々と放り投げた。

「うおぁ!」

 放り投げられた格闘士の男は、少しの間だけ中空を浮いた後に地面に転がりながら落着し、慌てて立ち上がる。

「こっ…、この野郎!」

 いとも簡単に投げ飛ばされた格闘士の男の有様に剣士の男は驚愕するが、内に生じた焦燥が驚愕の感情を上回り、再び大剣を振り上げ剣撃を叩き付けようとする。

(さーてと、ちょっくら遊びましょっかー)

 ガイアは剣士の男の剣撃軌道を捉え、魔法を発動する。

(〈魔力の盾(マナ・シールド)〉)

 魔力で構成された盾を瞬時に創り出し、剣士の男の剣撃を防いだ。

「な…!!? 魔法!!?」

 攻撃を防がれた剣士の男、そしてそれを見た格闘士の男は予想だにしなかった驚愕の声を思わず上げた。

「な……、何なんだあの魔獣…?!! 魔法が使えるだと?!!」

 ヴォンボは視界に映る起こった光景に信じられないと言わんばかりに驚愕し、動揺するのだった。

(つっかまえた)

 そんな彼等の様子など御構い無しに、ガイアは剣士の男を片手で捕まえる。

「ちょっ、この、放せ!」

 ガイアに捕まった剣士の男は逃れようと暴れるが、胴体を掴む岩石の握力は非常に強く、剣で殴り付けてもびくともしない。

 ガイアは空いてるもう片方の手を剣士の男の腹部辺りに触れ、魔法を発動させた。

(軽ーく〈接触衝撃(インパクト・タッチ)〉)

 ガイアの掌から瞬間的に発生した弱目の衝撃が剣士の男の全身を打ち、3、4メートル程吹っ飛ばした。

「ゲホッゲホッ…! な…、何だ……今の衝撃は…!?」

 打撃とは異なる衝撃を喰らった剣士の男は苦痛の表情を浮かべ、胸中に困惑が生じた。

(あれ? 未だ威力強かったかなぁ…?)

 腹を抱える様に(うずくま)る剣士の男の様子に、ガイアは手加減が足りなかった事に反省をする。

 ガイアは魔力の質が強い為、たとえ威力の低い魔法で攻撃する際にも威力を意識的に抑えなければならない。そうでもしないと、ヴォンボみたいな一応闘える程度の相手を赤子の手を捻るが如く、あっさり殺してしまう。

 故に、この模擬試合は手加減という繊細な微調整が必須である。

 が、それはガイアにとって、ある意味苦労する事である。

(んー、難しい…)

 攻撃系の魔法は安易に使うのは未だ危ないなと、ガイアは損害が比較的小さな魔法を頭の中に浮かべる。

「ンン~」(う~ん)

 ガイアは唸り思考をするのだった。

「糞! ちょっと魔法が使えるからといって調子に乗るなよ!」

 そんなガイアに向かって、動揺しながらもヴォンボは苛立ちを含ませた怒声を吐き出し、片手に持つ短杖(ワンド)を正面に突き出し狙いを定めた。

 そして己の魔力を短杖(ワンド)の先端に込め出し、魔法を発動する。

「〈火炎球(ファイアーボール)〉!!」

 魔力を炎属性へと変換し、創り出した火炎球を謎の魔獣(ガイア)目掛けて放った。

(んあ? まーたそれかい。というか、大体のああいう貴族出の魔導師って何で炎系統しか使わないんだ? いや、それしか使えないのか?)

 ガイアはヴォンボの使用可能な魔法の少なさに呆れながら、飛来し迫る〈火炎球(ファイアーボール)〉を暢気に眺める。

(まぁ、如何でも良いんだけど…。あ、来た)

 飛来する火炎球がある程度迫って来たのを確認した直後に、ガイアは人差し指をクイッと上げ、その動作と連動するかの様に魔法を発動させた。

(〈水柱(アクア・ピラー)〉)

 飛来する火炎球の真下に魔法陣が瞬時に形成され、多量の水が真上に勢い良く噴出し、水の柱が火炎の球を飲み込み完全消火した。

(ふむ、魔法発動タイミングの方は()ず先ずかな)

 ガイアは飛来し迫った〈火炎球(ファイアーボール)〉の飛来速度と距離間、そして、それに合わせて魔法を瞬時に場所指定と発動が出来るか如何かを実践し、一応は大丈夫そうだと自身を評価する。

 一方で自身の魔法を防がれ消火された光景を目にしたヴォンボは、更に燃え上がりそうだった苛立ちは多量の冷や水を掛けられたかの様に鎮火し、驚愕の表情を(さら)し動揺していた。

「水…!? 水系統魔法を使った…!? あの魔獣、水系統魔法も使えるのか!?」

 ヴォンボは視界に映る下等な魔獣(ガイア)が水系統魔法も使えるという事実に悪い意味で衝撃を受けるのだった。

「ふ、ふざけるなぁああ!!〈炎槍(フレイム・スピア)〉!!」

 己にとって有り得ない事実を否定し、自分の方があの下等な魔獣より上である主観的価値観と思い込みを肯定しようと、再び魔法を放つ。

 下等な魔獣が自身より強い筈が無い、あってはならないと。

(じゃぁ此方(こっち)は〈落石(フォーリング・ロック)〉)

 ヴォンボが放った〈炎槍(フレイム・スピア)〉に対し、ガイアは上空に岩石の塊を構成し、それを地面へ急速落下させ、飛来する炎の槍を圧し潰すが如く粉砕した。

「………!!」

 今度は土系統系統魔法でいとも簡単に防がれた事実を目にしたヴォンボは絶句した。

(良ーし、次は降らせてみよ)

 そんなヴォンボの様子などガイアは気にもせず、両手を掲げる様に上げ、次なる魔法を行使する。

(雪やこんこん〈降雪(スノウフォール)〉)

 上空高くに巨大な魔法陣が展開し、その直後に無数の純白な粒が発生し、ふわふわと地面に向かって落下する。

「な、何だ、この魔法は…!? 雪…!??」

 ヴォンボは降り注ぐ雪の現象に困惑する。

 彼に限らず、取り巻きの2人、そして試験管も同様に困惑する。


「ほう、〈降雪(スノウフォール)〉か」

 そんな神秘的な純白が降り注ぐ光景を目にするエルガルムは微笑を浮かべる。

「良いわねぇ。雪が降るだけで殺風景な場所が綺麗に為るから、あたしこの魔法(これ)好きよ」

 ベレトリクスもそう言い微笑を浮かべる。

「雪遊びでもするのかしらね」

「ホッホッホッ、じゃろうな。使っとる魔法は低位(クラス)ものばかりじゃからな、この機会に試せなかった事を色々試してみたいのじゃろう」

「……まぁ、ガイア(あの子)の事ですから、遊びたがりますよね」

 シャラナは困った色を微笑に浮かべのだった。


(うーん、余り積もらない)

 ガイアは視界全体に映る降雪の光景に不満を抱く。

 広大な地面の所々が白く染まり、積雪の層が出来ている。

 しかし、ガイアにとって望んだ光景ではなかった。

(やっぱこの程度の降雪量じゃ直ぐに積もらないか)

 ガイアは上空を見上げ再び両手を(かざ)す様に上げ、展開した魔法陣の術式を改変させ、効力を増大させた。

(もっと降れ降れ〈豪雪ヘヴィー・スノウフォール〉)

 無数の雪粒は大きさを増し、降雪量は更に増加した事により、一面は一気に真っ白な世界に染まっていく。

 が、そんな世界を焼き払うが如く突如と発生した炎が雪景色を溶かし消し出した。

(あ、ちょっ!)

 ギョッとしたガイアは炎の発生源に目を向けた。

 目を向けた先、ヴォンボが〈放火ファイア・レディエーション〉を行使し周囲の雪を溶かし払っていた。

「糞、糞!! ただ雪を降らすだけか!! 馬鹿にしやがって…!!」

 雪を降らすだけで攻撃を仕掛けなかった所為なのか、彼は完全に舐められていると捉え、悔しい思いを顔に浮かべ苛立ちを吐き出していた。

(うぉーい! 何溶かしてんじゃー!)

 そんなヴォンボに対しガイアは怒り、更に魔法を発動する。

(止めんかコラー!〈雪塊落下スノウランプ・フォール〉!)

 彼の頭上上空に雪の塊を生成し、それを勢い良く落下させ妨害攻撃をする。

「えっ、ちょっ!? オブァ!」

(未だ未だ追加ぁ! (つい)でにお前達もだー!)

 ガイアは更に雪塊を多数生成し、3人に目掛け落とす。

「ちょっ、待っ、止め、ブオッ!」

 柔らかな雪塊なので痛痒は無いが、身体が多量の雪に埋もれていく。

 そしてあっという間にヴォンボ達は完全に雪に埋もれ、試験場内の闘技場全体は雪一面と為った。

(良し、積もった)

 たっぷりと雪が積もり敷き詰められた真っ白な光景に、ガイアは満足げな表情を浮かべる。

(後はあれを沢山作って準備しよっと)

 そして今度は、ヴォンボ達が積雪の下から這い出てくる迄にある物を魔法で大量生成し出す。

 ガイアがある物を大量生成し始め約1分程、其々3箇所、雪の表面が盛り上がる。

「ぶはぁっ! さ、寒っ!」

 その盛り上がった雪の中から、ヴォンボ達が這い出てきた。

(お、出てきた)

 積雪の下から這い出て身体に付着した雪を払う彼等をガイアは視認し、ある物の生成作業を止め、パッと思い付いた簡易なある悪戯を実行し出す。

「何なんだあの魔獣…、いったい何を考えて――――」

(〈粉雪煙幕パウダースノウ・スモークスクリーン〉)

 雪の中から這い出たヴォンボ達は体勢を立て直そうとしたその時、ガイアの魔法によって発生した雪煙が()き上がり、彼等の視界全てを遮る。

「うおっ!? 今度は目眩(めくら)ましか! 糞っ!」

 視界全体が白一色の光景を払おうと、ヴォンボは魔法を放とうと短杖(ワンド)を握り締め――――。

「ん? あれ!?」

 その時、ヴォンボは右手の感触に違和感に気付く。

 身も視界も覆う雪煙が晴れ、その違和感の原因を目にする。

「な、無い! 私の短杖(つえ)が!」

 そう。右手に有った筈の短杖(ワンド)が何時の間にか無くなっていたのだ。

「あれ!? 俺の剣、何処いった!?」

「俺の拳当て(ナックルダスター)()ぇ!」

 ヴォンボだけではない。取り巻きの2人も持っていた武器も何時の間にか無くなっていた。

 困惑するそんな彼等の顔面に、人の頭程の大きさ(サイズ)の雪玉が直撃する。

「ブフォッ?! この、あの魔獣め――――、んがぁ!!?」

 顔面にぶち当たった雪玉を乱暴に払い落とし、魔獣(ガイア)を視界に捉えたヴォンボは目を丸くする。

 ヴォンボ達の視界に映った光景、それは自分の武器が飾り付けられていた雪達磨(ゆきだるま)だ。

 おそらく魔獣(ガイア)が作ったであろう雪達磨の両手には拳当て(ナックルダスター)が嵌められ、大剣は剣先を地に刺し、両手で柄を持つ騎士の様な姿勢だった。だが肝心の短杖(ワンド)は、雪達磨の鼻飾りとして使われていた。

「私の短杖(つえ)を鼻飾りに使うな!! 手に持たせろ、手に!!」

 自分の短杖(ワンド)の扱いに納得がいかなかったのか、ヴォンボは思わず下らない抗議を唱える。

(え~。剣と短杖(つえ)を其々片手に持たせるとバランス悪いじゃーん)

 そんな抗議に対し、ガイアは如何でも良いと言いたげな表情であしらう。

「いや、違うそうじゃなかった! 私の短杖(つえ)を返せ!!」

 ヴォンボはそう言い積雪を払い踏み固め、取り巻きの2人と共にガイアに向かって行く。

(良ーし、いっくぞー)

 ヴォンボ達が此方に向かって来るのを見たガイアは、大量に作った物を片手に持ち、投擲(とうてき)の構えを取った。

「え? ちょ、それ――――」

(雪玉を相手の顔面に、シュート!)

 ガイアは躊躇(ためら)い無く、手に持った雪玉を思いっ切り投げ飛ばす。

「オブァ!」

 再び雪玉を顔面投擲されたヴォンボは後ろへ転倒する。

(雪合戦の始まりだーい!)

 模擬試合にも関わらず、ガイアはほぼ一方的な雪合戦を始めるのだった。


「……完全に遊び始めちゃった」

「遊び始めちゃったわね」

「ホッホッホッホッ。実に子供らしい」

 ガイアが雪玉を投げる光景に、シャラナは困った様な笑みを、ベレトリクスは仄々(ほのぼの)とした笑みを、そしてエルガルムは楽し気に笑うのだった。

「……もはや試合ですらない」

「そうだな、彼奴(あいつ)ら完全に遊ばれてるな」

 ヴォルベスはその光景に呆然の表情を浮かべ、ダムクはヴォルベスが口にした言葉に同感する。

 ミリスティとミュフィも同様に呆然とした表情を浮かべる。

 グルエドは可笑しな光景でも観るかの様な――――いや、実際に試合としては余りにも可笑しな光景に呆けた表情を浮かべていた。

 ――――何だこの状況は、と。


(それそれそれそれー!)

 ガイアは次々と大量の雪玉を投げまくり、豪速球の如く飛来する雪玉にヴォンボ達は直撃する度に僅か後ろへ吹っ飛ばされる。

 人の頭程の大きさではあるが、豪速でぶつけられても殆ど痛みは無い。しかし僅かですら後方へと吹っ飛ばすだけの威力には、ヴォンボ達は動揺を隠せなかった。

「ちょっ、待っ、たんま、ぶえっ!」

 雪玉の大量投擲に晒されるヴォンボは翻弄され続ける。その光景は実に滑稽である。

(……あれ? これって試合だよね? 何この光景?)

 それを見届けている試験管は困惑や呆然が入り混じった何とも言えない感情を抱くのだった。

(次はこれだー!〈大雪玉ヘヴィー・スノウボール〉!)

 ガイアは雪玉投擲で吹っ飛ばし転倒させたヴォンボ達に容赦無く、魔法により生成された大きな雪玉を放ち転がす。

「な!? ちょっ、待て待て待て、どわ――――――っ!!」

 転がり迫る大雪玉を目にしたヴォンボ達は慌てて退避し出すが、脚を2歩動かした直後に大雪玉の下敷きにされる。そしてヴォンボ達を()し潰した大雪玉はそのまま転がり去る。

 圧し潰されたヴォンボ達は命の別状は全く無い。ただ積雪に押し込まれただけの様なものだ。

 そしてそれも傍から見れば滑稽である。

(わはー、魔法で雪遊びするの楽しいな。雪なら怪我しないし、良い魔法だなぁこれ)

 ガイアは雪を創り出す氷系統魔法の楽しさを堪能する。

(んー…。このまま真正面で迎え撃ち続けても、彼方(あっち)は雪達磨に辿り着かないなぁ。――――良し、なら横から投げれば公平(フェア)になるでしょ)

 このまま一方的では遊び(ゲーム)に成らないと思ったガイアは雪達磨から離れ、別の位置へと小走りで移動する。

 大雪玉の下敷きにされたヴォンボ達は積雪に埋めた顔を上げ、身体を起こし立たせる。

「畜生め…、これ程迄にコケにされるとは…。ん? あの魔獣は何処だ?」

 先程まで雪達磨の隣に居た魔獣(ガイア)忽然(こつぜん)と消えた事を視認し、周囲を見渡し探す。

「あ、居た! 彼処(あそこ)だ!」

 取り巻きの剣士の男が指差し、他の2人は視線をその先へと動かす。

 指の先、視線の先には魔法で雪玉を作っている魔獣(ガイア)が居た。しかも既に雪玉の数はたんまりと仕上がっていた。

「完全に遊んでやがる……」

 そんな魔獣の様子を遠くから見る取り巻きの格闘士の男は、僅かに戦意が消沈する。剣士の男も同様、特に攻撃が通用しなかった事と魔法による攻撃を受けた所為か、既に戦意は少し損失していた。

 そんな中、愚直なのか蛮勇なのか、ヴォンボは未だ戦意は失ってはいなかった。

「ぼさっとするな!! 急いで武器を回収するぞ!!」

 ヴォンボは雪達磨の方へと急ぎ向かい、自分の短杖(ワンド)を回収しに駆け出す。

 取り巻きの2人も彼に釣られる様に武器を回収しに慌てて走り出す。

(お、走り出した。それじゃあ第2ラウンド開始ぃ!)

 走り出したヴォンボ達を目で確認したガイアは、今度は彼等の横遠くから雪玉投擲を再開し出す。

(おりゃりゃりゃりゃー!)

 多数の雪玉を次々と高速で投げ飛ばし、其々の武器を持つ雪達磨の元へと走る3人にぶち当てる。

「ぶはっ! 糞ったれ、球数が多い! どんだけ投げんの(はえ)ぇんだよ!」

 横から豪速で飛来する雪玉の弾幕に3人は進行を妨害され、また足止めを喰らう。

「舐めるな魔獣がぁ!!〈放火ファイア・レディエーション〉!!」

 ヴォンボは雄叫びを上げ、飛来する雪玉の弾幕に手を向けて薙ぎ払う様に炎の魔法を噴射する。

(およっ?! 短杖(つえ)無しで魔法使った!)

 ヴォンボの対応行動にガイアは驚く。

 今まで見てきた貴族魔導師の様に「魔力媒体が無ければ魔法は使えない」と口にする魔法媒体頼りの無能達とは違い、短杖(つえ)無しでも魔法を使える元貴族(ヴォンボ)の意外さに少し目を見開く。

短杖(つえ)が無くとも魔法は使えるのだよ!!」

 しかし、彼の放つ炎の魔法は短杖(ワンド)を持っていた時と比べて火力が弱く為っていた。結局彼も、大半は魔法媒体の恩恵に頼っているのだろう。

(ま、別に良いんだけど。その方が遊び甲斐(がい)が在るし)

 炎で遮られる事などガイアは気にせず、多量の雪玉を高速かつ連続で投げ飛ばす。

 雪玉の弾幕が飛来する度、ヴォンボは炎で溶かし蒸発させる。しかし、全てを防ぎ切れずたまに雪玉が顔面に直撃し、所々で進行を妨害される。

 炎の魔法の御蔭で3人は雪達磨の下へ辿り着き、各自の武器を回収する事が出来た。

「散々この私をコケにしてくれたな、下等な魔獣が! 魔法が使えるからといって、上級魔導師(アーク・メイジ)である私の方が上である事を思い知らせてやる!!」

 ヴォンボは雪達磨の顔を殴り壊し、遠くに居る魔獣(ガイア)を睨み付ける。

(ありゃりゃ、到着(ゴール)しちゃったか。ま、いっか)

 ガイアはヴォンボの口上など一切聞いておらず、次は何を試そうかと暢気に思考していた。

「先ずはこの雪を消してやる!〈炎の降雨(ファイアーレイン)〉!!」

 ヴォンボは上空に広範囲に魔法陣を展開させ、数多の炎を雪が積もる地へと降り注ぐ。

(〈炎の降雨(ファイアーレイン)〉か。危ないなぁもう、〈水壁(アクアウォール)〉)

 それに対しガイアは慌てる事無く、反射的に水の防壁を頭上上空の広範囲に展開し、容易く防ぐ。

 あっさり防がれた事にヴォンボは舌打ちをし、思い通りに行かない現状に苛立ちを募らせる。

特殊技能(スキル)〈強腕〉!」

 取り巻きの2人は特殊技能(スキル)で己の腕力を強化した後、魔獣に向かって走り出す。

「今度のはさっきと違うぞ!! 喰らえ、武技(スキル)〈剛斬撃〉!!」

「砕けろ!! 武技(スキル)〈剛拳〉!!」

 振り上げた大剣を振り下ろし、引き絞った腕を放つが如く拳を突き出し、取り巻きの2人は眼前の魔獣(ガイア)に最高の攻撃を仕掛けた。

 しかし、剣も拳も岩石の身体に僅かな傷すら付けられず、弾かれる。

 痛痒無し。

 微動だすらせず。

 まるで何もされていないかの様な平然とした顔の儘である。

「………!!」

 余りにも堅硬(けんこう)な魔獣に取り巻きの2人は改めて驚愕し、攻撃の手を止めてしまうのだった。

(さっき何か特殊技能(スキル)使ってたな。きょうわん……あ、強腕! 強い腕で〈強腕〉か。特殊技能(スキル)名からして腕力を強化するやつか。通りでさっきより威力が強かったのか)

 一方のガイアは眼前の2人の心境など気にも留めず、2人が使用した〈強腕〉という特殊技能(スキル)がどの様な効力なのかを、最初にわざと喰らった一撃と今の一撃の威力差から自分なりに予想と分析をしていた。

(折角の機会だし、もっと戦士の武技と特殊技能(スキル)を見せて貰おうかな)

 出来ればダンジョンに潜る前に、此処で知れる事は知っておこうとガイアは眼前の2人の攻撃を敢えて待つ。

(ねぇねぇ、他に武技と特殊技能(スキル)は? もっと見せてちょ)

 ガイアは頭を傾け「次は何をするの?」と言いだげな仕草で目の前の2人をジッと見た。

 僅かな時間が経過するも、取り巻きの2人は仕掛けてくる様子は無かった。

(……あれ? もしかして、武技と特殊技能(スキル)あれだけ?)

 2人の様子から、他に武技と特殊技能(スキル)は無いと理解したガイアは僅かな落胆の感情を抱く。

(まぁ、仕方ないか。この程度の実力だし、ちょっと期待するのも無駄だよね)

 そんな事を胸中で思っていた時、ガイアは相手からの魔法攻撃を察知し、その場から即座に退避する。

(おっとっと)

 その直後、ガイアが立っていた場所から魔法による発火現象が起こった。

「何をボーっと突っ立っている!! とっとと攻撃しろ、この馬鹿共が!!」

 その現象――――〈発火(イグニッション)〉を行使したヴォンボは取り巻きの2人に怒声を浴びせる。

「く…、くっそぉぉおおおお!!」

 取り巻き2人は自棄糞(やけくそ)に為り、削がれた戦意分を補完し魔獣(ガイア)に立ち向かう。

「〈剛斬撃〉!!〈剛斬撃〉!!〈剛斬撃〉!!」

「〈剛拳〉!!〈剛拳〉!!〈剛拳〉!!」

 腕力を強化し更に攻撃力を増した武技(スキル)で、ひたすら魔獣(ガイア)の岩石の身体を攻撃し続ける。

 それに対しガイアは無防備(ノーガード)、僅かな痛痒(ダメージ)すら伝わってこない攻撃を喰らい続ける。

(………もう良いか。これ以上は収穫無さそうだし)

 これ以上続けても時間の無駄だと思ったガイアは、模擬試合という名の茶番をここで区切り終わらせる事に決めた。

 ガイアは片手で剣士の男の剣持つ手をがっちり掴み、空いたもう片方の手を胸当て(ブレストプレート)に近付ける。

(この位かな? えいっ)

 ガイアは力加減を調整し、剣士の男の胸当て(ブレストプレート)にデコピンを打ち込んだ。

「ガハッ…!!」

 金属板が強く打ち付かれた音が鳴り響き、それと同時に剣士の男は軽々と吹っ飛んだ。

 そんな彼を間近で見ていた格闘士の男と遠くから見ていたヴォンボは驚愕した。

 無論、試験管もその光景に驚愕の表情を浮かべていた。

 吹っ飛ばされた剣士の男は地面に不時着し、そのまま倒れ伏した。

 試験管は仰向けに気を失っている剣士の男にある程度の距離まで近付く。そして剣士の男の胸当て(ブレストプレート)の状態を目にし更に驚く。

(デ、デコピンで胸当て(ブレストプレート)(へこ)んでる…!)

 その鉄製の胸当て(ブレストプレート)の凹み具合はデコピンの威力では無いのは明らか。吹っ飛ばしの飛距離は約5メートル程度だが、それでも普通デコピンで出来る事では無い。それは鉄鎚による強力な一撃に近いものと言って良い。

(しかも魔法も4系統使えるって、あの生き物はいったい何なんだ…!?)

 試験管は謎の生き物へと視線を動かし、内に驚愕から生じた好奇心を抱く。

「む、無理だこんなの! 勝てる訳が()ぇ!」

 剣士の男がいとも簡単にデコピンで()された光景を見た格闘士の男は、戦意を殆ど損失してしまった。

「おい! 何か他に魔法は()ぇのかよ!? 此奴(こいつ)の防御力を下げるのとかよ!」

「そ、そんな魔法は使えないぞ!」

「何で炎しか使えないんだよ! 上級魔導師(アーク・メイジ)なら他の魔法も覚えとけよ!」

「う、煩い!! だったら貴様が何とかしろ!」

「出来ねぇからお前に頼んでるんだよ!! 見てただろ!! もう魔法じゃなきゃ損傷(ダメージ)与えられねぇんだよ!!」

 物理的な攻撃は完全に効かない。ならば残すは魔法による攻撃しか損傷(ダメージ)を与える術はない。

 しかし、ヴォンボの扱える魔法は炎系統のみ。水系統魔法で容易に消火し防げてしまえる。

 如何にかしろ何とかしろと言い合う彼等を他所に、ガイアは自分の頬をカリカリと指で掻き、頭の中である反省をしていた。

(んー、ちょっと強かったかなぁ…。あれは鎧が無かったら死んじゃってたかも…。気を付けないとな)

 デコピンなら丁度良い手加減の攻撃に為ると思ったが、実際に噛ましてみたら思ったよりも少し威力が強かった。未だ未だ力加減が自在に制御出来ていない証拠だ。

(さて、次は)

 反省を短く済ませたガイアは片手を前に翳し、照準を合わせた。

(〈螺旋突風撃スパイラル・ガストフォース〉)

 翳した片手から魔法陣を展開し、螺旋状に吹く突風を発生させる。

「え、どはぁ!!」

 螺旋状に渦巻く突風が直撃した格闘士の男は、身体全体を高速横回転しながら後方へと勢い良く吹っ飛ばされる。そして地面を無茶苦茶に転げた後、気を失い倒れ伏した。

「か…、風系統も使えるだと…!?」

 剣士の男に続いて格闘士の男までもが倒され、更には謎の魔獣(ガイア)が風系統魔法を行使した事実にヴォンボはまた驚愕した。

 最初の無系統、次に水系統、土系統、氷系統、そして今度は風系統。行使された魔法の殆どは低位(クラス)ばかりだが、謎の魔獣(ガイア)は5系統もの魔法をこの試合で使用した。

「……ふざけるな…!」

 ヴォンボは認めたくなかった。

 その事実を認めるという事は、自分が魔導師としての力量があの魔獣よりも劣っていると認めてしまう事に為るからだ。

 そんな事はヴォンボの内にある誇り(プライド)が許さなかった。

「魔法が5系統も使えるからって調子に乗るな魔獣風情がぁ!!」

 私は上級魔導師(アーク・メイジ)なのだ。あんな下等な魔獣に劣る筈が無い。

 己は弱者だという事実を焼き払い塗り替えようと、ヴォンボは有りっ丈の魔力を消費し魔法を発動させた。

「我が魔法の最大火力を恐ろしさ、思い知れぇ!!〈大放火グレーター・ファイア・レディエーション〉!!」

 多量の魔力を使用し無理矢理に中位(クラス)の炎系統魔法を発動させ、膨大な炎をガイアに向けて放射する。

(わぉ! 中位(クラス)使えたのか。ちょっとビックリ)

 迫り来る膨大な炎の塊に対し、ガイアは平然としていた。

(じゃぁ(それ)、試しに使わせて貰うね。〈竜巻(トルネード)〉)

 そして迫り来る膨大な炎の前に渦巻く気流の柱――――竜巻を発生させた。

 竜巻は膨大な炎を気流に取り込み、気流渦巻く柱を炎渦巻く柱へと姿を変貌した。

(出来た!〈火炎竜巻(フレイム・トルネード)〉の完成!)

 ガイアは炎系統の適正値が非常に低い。本来なら〈火炎竜巻(フレイム・トルネード)〉は現時点で発動する事は出来ない。何とか発動出来ても非常に小さな〈灯火(ランプライト)〉ぐらいだ。

 そこでガイアはふと思い付いた。

 相手の放射した炎を利用し、間接的に炎系統に属する魔法を発生させられないだろうかと。

 そして自分なりの方法で試みた結果、見事成功した。

 ヴォンボは目を見開き口をあんぐりと開け、その驚愕の表情に絶望の色を滲ませる。

「そんな……、馬鹿な……」

 全力で発動した〈大放火グレーター・ファイア・レディエーション〉は通用せず、魔獣が発生させた竜巻に阻まれるどころか飲み込まれ、今のヴォンボでは発動する事が出来ない魔法の発動に利用された。

 ヴォンボは受け入れたくない現実を否応(いやおう)に刻み込まれ、慢心に生じた畏怖という亀裂が一気に広がる様に奔り、砕けてしまった。

 ――――勝てない。

 やっと、そして今更、大きな実力の差を思い知った。

 絶望で顔を歪め、傲慢(ごうまん)という強気はごっそり()がれ、戦意も生じた畏怖によって殆ど失せた。

 赤味が混じる炎渦巻く柱はガイアの魔力操作によって消失され、吹き荒れる熱気は治まった。

(さてと。これで終ーわりっと)

 ガイアは片手を前に出しながら、拳銃(ピストル)を構える様に指を呆然と立ち尽くすヴォンボに差し向ける。

 そしてそのまま、頭の中で引き金を引くかの様に発動させた。

(〈空気の弾丸(エアバレット)〉)

 発動直後、ガイアの人差し指の先から一定量を留め固めた空気が放たれ、一直線に勢い良く飛んで行き、ヴォンボのがら空きの身体に着弾した。

「ゲハァ!」

 完全に(ただ)(まと)と化していたヴォンボは固められた空気の塊を真面に喰らい、打撃を喰らった様な衝撃と痛みが生じると同時に勢い良く吹っ飛ぶ。

 そして、地面を無様に転がりながら落着し、呆気無く倒れ伏すのだった。

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