衰亡辿りし魔導学院15-5
「………あの…」
大粒の黄玉を嵌め込み、細工を施されたミスリル製の杖を片手に持ったルードンは、何とも微妙な表情で声を掛ける。
「そうそう、その調子じゃ」
聞こえていないのか、それとも無視しているのか、エルガルムは振り向かなかった。
「……もしもし?」
「ちゃーんと自分の動像に意識を集中するのよ。そうそう、良い感じ」
ベレトリクスも聞こえてないのか無視しているのか、何方の理由にしても振り向かない。
「……聞こえてます?」
「動像の操作も何度も繰り返し練習すれば、魔力の操作も自然と身に着いてきますよ。頑張って」
シャラナも振り向かず。
(はーい、今度は此方此方ー)
ガイアも全く振り向かない。
「ちょっと……」
ルードンは何かしている彼等に、何度も情けない声を掛ける。
しかし、誰も振り向こうとしてくれなかった。
「賢者様! 御願いしますから、無視しないで下さい!」
ルードンは情けない声の音量を上げて、エルガルム達を呼び掛ける。
「ん? 何じゃい、今良い所じゃから邪魔するでないわ」
「えーっ!? 酷い…」
言われた通りに出来る限り早く戻って来たのに対し、邪魔するなという理不尽な返しに、教師全員は錯愕とした表情でショックを受けるのだった。
(え~、もう? 良い所なのにぃ)
ガイアも今している事を止め、嫌そうな顔で教師達へと振り向く。
(……思ったより随分と居るんだな)
振り向いた先には、教師達と幾多の生徒達が集まっていた。
(あの人数、ほぼ貴族出身なんだよね…。結構この王都って貴族居るんだなぁ)
ガイアは視界全体に映る生徒達を見渡しながらそう思うのだった。
「所で……先程から何を為さっていたので?」
魔導教師の1人、セルパンがエルガルム達のしていた何かが気になり訊ねる。
「ん? そりゃあお前達が戻って来るまで暇じゃったから、彼に魔法の教授をしていたんじゃよ」
エルガルムはその場から数歩退き、平民の男子生徒の姿を彼等教師達に見せ付けた。
平民の男子生徒とガイアの間には、2体の粘土の動像が立っていた。
「ほれ、ちょいと動かしてみなさい」
「は、はい!」
平民の男子生徒はエルガルムの指示に従い、覚え立ての魔法――――特殊技能無しで粘土の動像の操作をその場で披露する。最初はのそのそと可愛らしい歩行を見せ、次第に歩行から走行へと徐々に変化させていく。
(僕も混ーぜて!)
ガイアも自分の創造した粘土の動像をほぼ無意識的な操作技術で動かし、彼の粘土の動像の下へと駆け寄り、其々自分の粘土の動像の操作を披露する。
その光景はほのぼのとした鬼ごっこ、からのハイタッチ、そして仲良く腕を組んで一緒に並走する。最後は其々の創造者の下へと戻って行くのだった。
その一連の光景に対し、教師全員はポカンとした表情を浮かべるのだった。
そして彼等の中から1人、スェルヌーが疑問を投げ掛けた。
「あの……その動像が…何なのです?」
スェルヌーだけでなく、教師達も先程の光景が何なのかを理解出来ていなかった。
動像が動いてたがそれが何だ? と彼等は疑問を浮かべる。
「何って…見て解らんのか? あの粘土の動像1体は彼が操作し動かしたんじゃよ」
「えっ? それが……何なのです?」
余りの理解力の無さに、エルガルムは哀れみの視線を無能な教師達に向け、仕方なく理解出来る様に説明するのだった。
「此処に居る彼は、是迄お前達が魔法について学ばせなかった平民出身の生徒の1人じゃ。待っとる間に彼に魔法を教授したら、数十分程度でもう魔法が使える様に成ったんじゃよ」
「え…?!」
教師達はエルガルムの説明で漸く理解が出来た。そして目を丸くし、其処に居る1人の平民の男子生徒へと視線を向けた。
彼等の浮かべた表情は、有り得ないという信じたくない思いから来る不安の色だった。
其処に居るのは才能の無い魔力量が乏しい平民の筈――――だったが、此方が模擬試合で勝つ為の不正手段を講じ急いで戻って来てみれば、魔法が使えない平民が魔法が使える様に成っていたのだ。
「いっ、いったいその平民に、どの様な物を御与えしたのですか?」
「与えた…じゃと?」ポルゼの発言に、エルガルムは少し苛立った表情を浮かべた。「それは如何いう意味で言っとるんじゃ?」
「ひっ…!」
ポルゼはエルガルムの苛立ちの含む声音に恐怖した。
その後少しの苛立ちからコロッと一転し、エルガルムは軽いノリで彼の質問に答えた。
「ただ儂は、お前達が教えなかった事を教えただけじゃが?」
「そ…そんな馬鹿な!? 平民如きがそう簡単に使える様に成る訳が…!」
魔力が僅かしか持たない平民如きが魔法が使える訳が無い、何かしら魔法関連の非常に高価なマジックアイテムが無ければ行使する事が出来ないと、ポルゼは恐れ困惑しながらも誤った価値観による否定の言葉を口にする。
「ホント馬鹿ねぇ、ちゃんと基礎を教えれば誰でも使える様に成るわよ」
そんなポルゼの魔法に関する間違った価値観から生じる言葉に対し、ベレトリクスは否定の言葉を投げ付ける。
「お前達は教師として、いったい今迄此処で何をしておったのじゃ? 最初から魔法が使えるだけの者ばかりを贔屓して残りは不当に扱いおって、お前達に贔屓された者に関しても魔導師として全く成長が成っとらんではないか」
エルガルムは目の前に居る教師全員を蔑視し、呆れた口調で説教するのだった。
「基礎を教えれば簡単な魔法は直ぐに使える様に成るというのに、基礎も教えず今も平民を不当の扱いをして、それでよく己を魔導教師だと言えたものだな」
当然、教師達は言い返せない。
「ホント、無能ね」
更にベレトリクスの解り易い一言が、教師達の精神を抉るのだった。
「それで一流とか称してよく教師面していられるわね。簡単な基礎も出来てない癖に」
そして更に容赦無く教師達の精神を指摘の言葉で抉る。
「後その杖何? ミスリル製? それも全員。碌に魔法を使い熟してないあんた等にとって、それは只の高価な玩具でしかないでしょう。頭大丈夫?」
更に容赦無く抉る。
「今迄ずっと見た目だけしか努力してないの? どんなに金銭掛けて武具とかマジックアイテムを付けようがね、実力が無きゃそれは只の魔導師ごっこをしてる様なものよ。地位と権力だけが取り柄の無能が誇らしげに魔導師を名乗ってんじゃないわよ」
ベレトリクスの無慈悲な指摘の言葉は教師達だけでなく、訓練所に集まった貴族の生徒全員の精神をも抉るのだった。
(わー、容赦無ーい)
そんな光景に対し、ガイアは他人事の様に内心で呟く。
「ベレトリクスよ、それ位で良いじゃろ。奴等に幾ら言葉で指摘しようが変わらんから時間の無駄じゃし、とっとと始めようぞ」
「そうね。今迄指摘しても改善しなかったし、時間の無駄ね。とっととこんな事終わらせたいし」
「儂も好い加減この国の汚点を消し潰して、早く久方のダンジョンに行きたいわい」
(僕も早くダンジョン行きたーい)
エルガルム達の緊張感がまるで無い様子に、教師達は少し困惑する。
だが、彼等は内心でニヤリと嗤い黒い希望を抱いた。
我々を完全に侮っている。
警戒もしていない。
油断をしている。
――――これは勝てるのでは、と。
そんな可能性を安易に抱くのだった。
「さて、学院の存続と撤廃を決める模擬試合を始めよう。シャラナ、前へ」
「はい」
エルガルムの指示に返事をしたシャラナは前へと歩み進み、教師達との離れた配置に着いた。
「ほれ、お前達もとっとと位置に着け」
エルガルムは顎を動かし、棒立ちしている教師達に早くしろと促す。
急かされた教師達は、慌てて其々の配置に着く。
その後エルガルムはある特殊技能を発動させ、訓練所全体と場外一帯を確認をした。
(……やはりな)
予想通り、と確認を終え、エルガルムはシャラナと教師達の間へと立った。
「では模擬試合を始める前に、規則の確認じゃ。勝利条件は相手を戦闘不能にするか降参させるかじゃ。シャラナは教師全員を倒す事が勝利条件とし、教師側はシャラナ1人を倒す事が勝利条件とする。攻撃手段は魔法のみ、物理的な直接攻撃は禁止ではあるが、試合中に創造した動像による物理攻撃は良しとする。魔法薬類の服用、能力向上マジックアイテムの装備も当然禁止じゃ。そして場外からの妨害行為が行われた際は試合を一度無効とし、仕切り直しの再戦を行う。これ等の規則をどれか1つでも破った者は、失格と見做し敗北とする」
エルガルムの規則説明にシャラナ側は平常で余裕の表情であるのに対し、教師全員と幾多の貴族生徒――――貴族至上主義の者達は心に余裕が余り無く、表情は硬く、不安を滲み出していた。
「本来なら杖もマジックアイテムに該当する物じゃから当然駄目じゃが、今回だけ大目に見てやる。負けても文句言うなよ」
エルガルムに半目でじろっと視線を向けられた教師達は、反射的に目を逸らすのだった。
「因みに、お前達の不正が発覚したら罰則じゃからの」
「えっ!? それはいったい如何いう意味ですか!?」
「では両者、準備は良いな」
「いや良くないです!! 罰則の内容って何ですか!!?」
「自分の胸に聞け」
教師達の必死な質問に対し、エルガルムは濁した答えを放り投げる。
そしてその後、空いた片手を空に向けて上げた。
「それでは、シャラナ対自称魔導教師13名による模擬試合――――」
「じっ、自称!?」
(自称って)
自称と馬鹿にされた教師達は驚愕し、そんな彼等に対しガイアは内心で笑うのだった。
「――――始め!」
エルガルムは教師達の事など御構い無しに、模擬試合開始の宣言を響かせた。
教師達は慌てて各々自分のミスリル製の杖や短杖を前に突き出し、構えを取った。
しかしその直後、視線の先に居るシャラナの様子を見て困惑が生まれた。
シャラナは戦闘態勢すら取らず、その場から動く様子も無く、ただ立ったまま教師達の出方を平静な目で見ていた。
両者の間に少しの硬直の時間が経過し、中々行動を起こさない教師達に呆れたシャラナは溜息を吐いた。
そしてその後、彼等に促しの言葉を掛けた。
「……御先にどうぞ」
シャラナが教師達に掛けた言葉には、慈悲や好機を与えるという意味は一切無い。
早くしろという挑発の言葉である。
しかし、彼女の言葉を聞いた教師達は、その言葉に含まれている意味を自分達にとって都合の良い捉え方をするのだった。
「では見せてやろう! 我々上級魔導師の絶大なる魔法を!」
教師達は己の手にする杖や短杖の先端に魔力を込め始め、魔法を発動させようとする。
が、30秒経過しても未だ魔法が発動する気配が無かった。シャラナに限らず、エルガルム達もそれに関しての理由と原因を解り切っていた。
そして内心で呟く。
(………おっそ)
魔力を感知出来るシャラナとエルガルム達にとって、相手がどの程度の魔法を行使してくるのかを判断出来る感知能力を有している。そして今教師達が時間を掛けて魔力を集め、どの程度の魔法を発動させようとしているのかも判断出来る。
彼等が時間を掛けて発動させようとしているのは、低位級の魔法だ。
シャラナとエルガルム達は呆れた表情で、それを傍観するが如くただ眺めながら待つ。
しかし、貴族至上主義の貴族生徒達はそんな教師達の魔法を発動させようと無駄に時間を掛けているその姿に希望を抱き、歓喜の声を上げるのだった。
そんな彼等にも対し、シャラナとエルガルム達は呆れるのだった。
本当に水準が低い、と。
――――そして1分経過。
未だ発動する気配が無い。
(……ホント遅いなぁ)
これが実戦だったら疾っくに全滅しているだろうと、ガイアは内心で呟く。
たった1分の短い経過すら永く感じながら、教師達の魔法の発動を待つのだった。
――――1分半経過。
「では、私から行きますぞ!」
(やっとかい)
漸く魔法の発動が可能となった教師達の中で、1番先陣を宣言したポルゼが短杖をシャラナに向けて突き出し、自信のある笑みを浮かべ己にとっての高威力の魔法を放った。
「〈魔力の弾丸〉!!」
若き魔導教師の魔法発動に、貴族生徒達は歓声に近い感嘆の声を上げた。
(………ナニアレ)
漸く放たれた魔法を視界に映し、ガイアは何とも言えない感情を抱いた。
(え~……? あれが〈魔力の弾丸〉?)
ポルゼが放った魔力の弾は青白い光を灯し、大人の拳程度の魔力の球が非常に頼りなく、ふよふよとシャラナに向かっていた。それも人が歩く速度より若干速いだけの遅さでだ。
(うわぁ~…デジャヴぅ~…。彼奴もかぁ~)
最初に見た貴族至上主義の貴族魔導師の魔法をガイアは思い返す。
その時の光景と今の光景がほぼ重なり、あの魔導教師が如何に低水準であるかを思い知るのであった。
(ていうかアレ見て歓声みたいな声上げるって、此処の貴族生徒達もどんだけ水準低いんだよ)
ただ高い魔力を持っているだけの貴族生徒達に対しても、同じく低レベルである事を感じるのだった。
「…良し!」
(いや良しじゃないから。あんな低威力の魔法放っただけで何勝ち誇った顔してんだよ彼奴等)
ガイアは内心で勝ち誇った顔をした教師達にツッコみを入れた。
ふよふよと魔力の球が真っ直ぐ飛んで行き、目標まで到達し着弾するまで残り2メートル辺り。
それを視界に映すシャラナは溜息を吐いた後、のんびり飛んで来る魔力の球に片手を翳し向け、魔法を放った。
「〈魔力の弾丸〉」
シャラナの魔法は即座に発動し、放たれた魔力弾はフワフワと飛んで来た魔力の球を風船を割るが如く、いとも簡単に粉砕した。
「そ、そん――――」そしてシャラナの放った魔力弾はそのまま、ポルゼに向かって急速で飛んで行く。
「――――ごはぁっ!?」飛んで来たシャラナの〈魔力の弾丸〉に直撃したポルゼは後ろへと飛ばされ、仰向けに倒れ呆気無く気絶した。
そのあっという間の光景に、残り12人となった教師と場外から観戦している貴族生徒達の顔色は青ざめ、驚愕の表情を浮かべるのだった。
「弱っ」
ベレトリクスは鼻で嗤い呟く。
(うわぁ~〈魔力の弾丸〉一発で遣られるって……)
倒された彼の余りにも脆弱さに驚きすら起こらず、ガイアはただ呆れるのだった。
そしてガイアと同様に呆れているシャラナは、再び挑発の言葉を投じた。
「未だですか? 時間が無駄になりますので早くして下さい」
今度はシャラナの挑発を正しく理解した教師達は緊張で顔を強張らせ、心に生じた不安を隠し、何が何でも勝たねばと、魔法を発動させる為に必死に魔力を集めるのだった。
「今度は私だ!!〈火炎球〉!!」
次にボウナンから放たれた小さくショボい火の球が、シャラナに向かってふよふよと飛んで行く。
「はぁ……〈火炎の矢〉」
シャラナは魔力が制御された炎の矢を即座に放ち、ズッケンドの〈火炎球〉を粉砕する。そしてそのままシャラナの〈火炎の矢〉はズッケンドの身体に突き刺さり、衣服に引火し全身を炎で包み込む。
「ギャアアアァァッ!! アヂヂヂアァァアア!!」
シャラナの炎系統の低位級魔法である〈火炎の矢〉よる引火で、身体中を広がりながら纏わり付く炎に焼かれるボウナンは地面を無様に転がり回り、必死に鎮火させようとする。
「誰かっ! 誰か消してくれぇええぇぇぇっ!!」
「すっ、直ぐに消す!! 待ってろ!!」
クルヌッドは慌てて燃えているボウナンに向けて、魔法を発動させた。
「ア、〈放水〉!!」
クルヌッドは短杖の先端に発生させた水を、ボウナンに向けて浴びせる。
本来よりも勢いが無い放水で、ボウナンに纏わり付く炎は完全消火された。
シャラナは呆れた目で無様なボウナンの姿を見据えながら、片手を前に向け魔法を放つ。
「〈水の弾丸〉」
水弾を飛ばし、隣に居たクルヌッドごと吹っ飛ばす。
水弾によって呼ばされた2人は柱に激突し、地面へと伏し気を失うのだった。
(うわぁ~全然対処出来てないよ…。あれでよく上級魔導師なんて言えるな…)
魔法に関する技術だけでなく、敵の魔法に対する対応力の無さにガイアは更に呆れるのだった。
「次は未だですか?」
シャラナは呆れた表情の儘、残り10人となった教師達に向けて少しやる気の失せた声を投げ掛けた。
「くっ……誰か彼女の動きを封じるんだ!」
如何にかしなければとルードン学院長は焦るが、周りの教師陣に如何にかしろという無能な権力者らしい命令を言い放つ。
「私なら動きを封じる魔法があります! 動きを封じた後を御願いします!」
「ならば私がその後に攻撃魔法を放ってやろうではないか!」
スェルヌーの提案にズッケンドがニッと笑みを浮かべ、攻撃の役目を引き受けた。
そして充分に魔法発動に必要な魔力が集まったスェルヌーは、杖を前に突き出した。
(む? この魔力の感じは……あれか)
ガイアは模擬戦開始少し前から常時発動させている特殊技能〈魔力感知〉で、教師達とシャラナの魔法を発動する前に何の魔法が行使されるのかを感知しながら分析し、系統、威力、効力を全て把握していた。
そしてスェルヌーは動きを封じる魔法を、シャラナに向けて発動させようとした。
「動きを封じよ!〈軽度――――」
「〈中位麻痺抵抗力強化〉」
「――――麻痺〉って、えっ!?」
しかし、スェルヌーの魔法が発動する前にシャラナの魔法が先に発動し、状態異常に対する抵抗力上昇の中位級魔法の効力が、シャラナの身体の外側から内側まで全身を巡らせ纏う。
スェルヌーから放たれた麻痺を齎す状態異常魔法〈軽度麻痺〉を難無く抵抗し、麻痺状態を回避した。
「何故麻痺に為らない!?」
(麻痺状態に対する抵抗力強化の魔法を使ったからだよ。教師なら知っとけ)
麻痺の魔法がシャラナに効かなかった事に驚き慌てるスェルヌーの様子を観ていたガイアは、彼に対し内心で指摘するのだった。
シャラナもそんなスェルヌーに対し、呆れた目を向けていた。
「何やってるんだスェルヌー! 効いてないぞ! 真面目に遣れ!」
ズッケンドも何故シャラナに麻痺が効いていないのか理解していないにも関わらず、スェルヌーに理不尽な怒声を浴びせる。
「だが! 今が好機!」
シャラナが完全に油断し隙だらけの状態と見たズッケンドは杖を翳し、彼女の上空真上に魔法を発動させようとした。
「喰らうが良い!」ズッケンドが魔法を発動させようとする前に、シャラナはその場から数歩程のんびり移動し、移動し終えた後に先程居た場所の上空を見上げて待った。
「〈落雷〉!!」
魔法陣が上空に展開された後、魔法陣中心から雷特有の音が鳴ると同時に発生する。
とても細い雷が瞬く間に魔法陣の真下へと急速落下し、地面を少しだけ焦がした。
「………あれ?」
雷は地面に落ちただけで終わった。
狙いが外れた事に疑問を生じたズッケンドは、ポカンとした表情を浮かべた。
狙った筈なのに外れた理由は、とても簡単。
シャラナはズッケンドの発動する魔法とそれを発動させる場所を〈魔力感知〉で把握し、魔法の発動場所が固定された時に其処から離れただけの事だ。
シャラナは溜息を吐いた後、ズッケンドに向けて皮肉な言葉を投げ掛けた。
「真面目にやって下さい」
先程スェルヌーに浴びせた言葉をシャラナから冷酷に告げられ、ズッケンドは錯愕の表情を浮かべた。
そしてシャラナは片手を前に翳し、取り敢えず御返しという程度の気持ちで魔法を発動し返した。
「こう遣るんです。―――〈落雷〉」
ズッケンドとスェルヌーの上空真上に魔法陣が瞬時に展開された直後、雷鳴を短く響かせると同時に魔法陣から雷が発生し、2人の頭上へと瞬時に奔り落ちた。
「ギャアアアアアアッ!!」
魔法の雷を直に浴びた2人は、電流により全身を痙攣させ、そのまま力無く地面へと倒れ伏した。
彼の放った〈落雷〉とは違い、シャラナの放った低位級の電気系統攻撃魔法は魔力を精密に制御されている為、威力は比べるまでもない雲泥の差である。
が、流石に高威力を放って死なせる訳にはいかないので、シャラナは当然手加減をしていた。
「………」
最早何も言う事が無いとシャラナは挑発も皮肉を口にせず、残り8人となった教師達を呆れた視線を送るのだった。
「ス、〈礫の弾丸〉!!」
「〈礫の弾丸〉」
ドットローノが土系統魔法で創り出し放った小さな礫に対し、シャラナは拳の2倍程大きい礫を創り放ち、飛来する小さな礫を粉々に砕く。そしてシャラナの放った礫はそのまま、目標であるドットローノの腹部に目掛けて突撃する。
「ゴハァッ!!」
肉体的にひ弱な身体に大きな礫が直撃し、激痛が奔る。それと同時に勢い良く殴り飛ばされるかの様に吹っ飛び、ドットローノは無様に倒れ伏した。
「ならば避けられない攻撃をすれば!」
続いてガガナムが杖を上に翳し、これが己を強者だと示す魔法を自信満々に発動させた。
「〈炎の降雨〉!!」
上空高くに大きな魔法陣が出現し、無数の弱々しい炎が雨下の如く、シャラナを中心とした周囲の地面へと降り注ごうとした。
「流石にこれは―――」
「〈水壁〉」
シャラナは慌てる事無く、即座に水系統の防御魔法を上空に展開する。
「―――避けられな……え…?」
水の防壁に阻まれた炎の雨はそのまま水の防壁へと落下し、着水すると同時に弱々しい炎はボジュゥゥと音を立てながら次々と自ら勝手に鎮火し、魔力を使い果たした〈炎の降雨〉の魔法陣は役目を終え、跡形も無く消え失せた。
「〈水の弾丸〉」
「えっ! ま、待ってオブァアッ!」
シャラナは間髪容れず水弾の魔法を放ち、水弾に直撃し吹っ飛ばされたガガナムも呆気無く無様に倒れ伏した。
「ならば我が嵐を受けてみよ!〈暴風〉!!」
ケミスタッカーが短杖を前に突き出し、シャラナの目の前に暴風を発生させ――――
(………え〰〰〰〰…)
――――たが、それを暴風と呼ぶには余りにも弱々しい風であった。
(あれの何処が嵐だよ…。ちょっと強い風でしょこれ……)
ガイアはそれを発生させた本人の顔をチラッと観た。
(いやだから何でそんな自信満々な顔してるんだよ。何決まったみたいにドヤ顔してるんだよ。あんたの発動した魔法は嵐じゃないから。強風かなぁ? くらいの風だから)
ガイアはひたすら教師達に対し、呆れ続けるのだった。
「これのどこが〈暴風〉よ。突風よりも弱いじゃないの」
観戦に飽きたのか、ベレトリクスは普段よりも気怠さが増した声音でつまらなそうに呟く。
「はぁ……その程度の魔力では余りにも不十分ですよ。〈暴風〉」
再び溜息を吐いた後、シャラナはこれが本当の嵐だと言わんばかりに魔法を発動し、自信満々顔のケミスタッカーに実力の差を見せ付けた。
「なっ、何ぃいいっ!!?」
ケミスタッカーや他の残っている教師達に限らず、それを観戦する貴族生徒達もが、彼女が魔法によって発生させた嵐に間抜けな驚愕の表情を晒し瞠目する。
そして当然シャラナの発生させた嵐は、ケミスタッカーの嵐を容易に打ち消す。
その後は激しく吹き荒れる風は、シャラナの意思的操作によって消え去った。
「〈空気の弾丸〉」
「えっ? ぶおぁっ!」
一定質量の空気を魔力で圧縮し、包み固められて放たれた風系統の低位級魔法が、ケミスタッカーの腹部に直撃する。
ケミスタッカーは殴り飛ばされるかの様に勢い良く吹っ飛び、背中から柱に激突した。
「ゴハッ…!」
強打された様な激痛を感じる間も無く気絶し、呆気無く倒れ伏すのだった。
「〈動像創造〉!! 出でよ、岩石の動像!!」
時間を掛けに掛け、やっと必要な魔力を集め終えたルブルフォが魔法を発動させ、1体の岩石の動像を創り出した。
「我が魔法を喰らうが良い!〈爆裂〉!!」
ルブルフォに続きゴノブルも魔法を発動させ、シャラナの眼前に魔力による爆裂を発生させた。
だが、その魔法も当然本来の威力よりも弱い為、爆裂音は然程も大きく無かった。爆裂範囲も精々2、3人程度のものではあるが、1人であるシャラナに対してなら充分な爆裂範囲内である。
そんな威力が弱く爆発範囲が狭いゴノブルの魔法に対し、シャラナは避けずそのまま攻撃を受けた。
「良し!! 遂に当たった!!」
漸く真面な一撃を与える事に成功した事に、教師達は糠悦びするのだった。
しかし、爆裂魔法の影響で大量の砂埃がシャラナの周囲を舞い、姿が見えない状態と為る。
実際に攻撃を喰らい倒れているのか、若しくは未だ立っているのか、確認が出来なかった。
「出来したぞルブルフォ! さぁ、後は彼女を抑え付けるだけだ!」
教師達は愚かにも自分達にとって最悪な状況の予想より、今の状況を圧倒的優勢に為ったと都合の良い方向だけを見ていた。
そしてゴノブルは追撃するべき好機だと安易に断定し、彼女を抑え付けて勝利を収めようと岩石の動像を動かし出す。
(うわ~……。下手だなぁ~、動像の操作)
彼の岩石の動像の動きは余りにもぎこちなく、1歩1歩歩く動作の律動も不規則で、前進速度は非常に遅い。これでは追撃の意味が無い――――というよりも、追撃ですらない。
(それと教師の皆さん、確かに攻撃は当たったけど本人には当たってないよ)
大量に舞い上がっていた砂埃が徐々に薄れると共に、シャラナの姿も徐々に顕と為っていった。
「なっ…!? そ、そんな馬鹿な…!!」
ゴノブルは信じられないと言わんばかりに目を見開く。
砂埃から姿を顕にしたシャラナの周囲には、魔力によって創られた障壁――――〈魔力障壁〉が展開されていた。
シャラナは魔法による爆裂が発生する前に感知し、爆裂が起こる直前に魔力障壁を即発動展開した事により、その身が爆裂によって負傷する事無く完全に防いだ。その結果、無傷で事無きを得たという訳だ。
ルブルフォの放った〈爆裂〉を防ぎ終えたシャラナは、周囲に展開している魔力障壁を解除し、今も呆れたままの目で残り5人の教師を見るのだった。
「は…早くもう一度さっきのを使え! 早くしろ!」
「す、直ぐに遣る! 少し待ってろ!」
ゴノブルは岩石の動像をぎこちない操作で動かしながら、ルブルフォに隙を作れと慌てながら怒鳴りせがみ、ルブルフォも慌てて魔法を発動する為に必要な魔力を集め始めた。
教師達の〝直ぐ〟は余りにも遅い。
敢えて先手を譲り待って上げなければ、教師達は何も出来ぬまま呆気無く倒せてしまう。
教師達がシャラナに勝つ可能性を生み出す方法があるとすれば、単純な事――――。
――――不正行為をバレずにしてしまう事だ。
残り5人となってしまった教師達は待っていた。
必勝を得る為の卑劣な援護行為を、未だか未だかと焦燥を抱きながら待っていた。
(む……そろそろ仕掛ける気だな)
ガイアは模擬試合の開始前から既に常時発動させている〈魔力感知〉で、場外から8人魔力が活性している者を捉え、発動させようとしている魔法の効力を即座に拘束・束縛系のものだと分析した。
ガイアだけでなく、エルガルム、ベレトリクス、ライファも即座に感知し何処に居るのか捉え、発動させようとしている魔法も即分析していた。
3人は平静な表情で、感知した者の場所をチラッと横目で見る。
――――仕掛けてくるか。
感知したその者に対し、正当に侮蔑すると同時に内心でニッと笑みを浮かべた。
ぎこちなくノロノロと前進して向かって来る岩石の動像に対し、シャラナは手を翳しながら狙いを定め、御返しの魔法を発動させようと見せた。
直後、シャラナはその場から跳躍するかの様に即座に後退した。
その瞬間、シャラナが居た場所から複数の魔法陣が地面や中空に出現し、石塊や鉄鎖、魔法陣其の物が標的に捕らえようとする。
「なっ!!?」
その光景を目にした教師達は驚愕する。
そして抱いていた焦燥が、一瞬で不安へと変化した。
折角準備した場外からの奇襲は、空振りである。
(無駄だよ。此方には〈魔力感知〉の特殊技能が有るんだからバレバレだよ)
シャラナも模擬試合が開始すると同時に〈魔力感知〉を常時発動させていたので、当然場外から横槍を入れようとしていた存在にとっくに捉え、警戒していた。
「……〈石塊の拘束〉に〈鉄鎖の束縛〉、〈拘束魔法陣〉ですか」
シャラナは呆れた目を冷たい目へと変え、ジロッと教師達に冷たい視線を向ける。
「可笑しいですね。其方からは未だ魔法を発動していないのにも関わらず、何故魔法が発動したのでしょうか」
感情が籠っていない冷徹な言葉を教師達に浴びせながら、シャラナは視線を場外へと向けた。
「わ、私だ! 私が、君に向けて発動し放ったのだよ!」
ルードン学院長は不正がバレる事に不安を色濃くし、先程の不正を誤魔化す為に自分が放った魔法だと、焦りながら主張し出した。
そんな主張を聞いたシャラナは再び冷たい視線を教師達に向け、僅かに苛立った声音で冷徹にルードンの主張を否定する。
「嘘を吐かないで下さい。ルードンは魔力を集めているだけで未だ一度も魔法を発動していない事は〈魔力感知〉でずっと把握してます」
「そっ、それは…その……そっ、その証拠は!? 私が嘘を言ってるという証拠は無いではないか! たとえ魔力感知で相手が発動する魔法が何なのか判る訳が――――」
「始まってから貴方はずっと、炎系統と電気系統の魔法を同時に発動させようと、今も時間を掛けて魔力を集めているではありませんか」
シャラナに発動させようとしている系統魔法が何かを言い当てられたルードンは、不安で彩る顔に驚愕の色を浮かべ晒した。しかも1つではなく、2つの系統を当てたのだ。魔力感知自体が出来ないルードンが驚愕するのは当然の事であった。
「そんな状態の貴方が3種類の魔法を同時に8つも発動させられる訳無いじゃないですか」
「た…確かに8つ発動したが、さっきのは紛れもなく学院長が発動した魔法だ!」
ニムオーノはその会話に割って入る様にルードンの援護をし、場外に居る横槍を入れた不正協力者の存在を誤魔化そうと、彼女の見解を否定する。
「発動された其々の魔法からは1人の魔力によるものではなく、1つに付き1人ずつ、計8人の魔力が感じ取れたのですが?」
「くっ…口でなら何とでも言える! それを証明出来なければ、それは只の妄言だ!」
「では、其方も仰っていた事が本当であるという証拠を今直ぐ見せて下さい」
「うっ…」
流石の教師達はシャラナの図星を差す冷徹な言葉にこれ以上反論出来ず、口を閉ざしてしまう。
「はぁ……もうさっさと終わりにしましょう」
児戯としか言えない模擬試合と今の遣り取りに対しうんざりしたシャラナは、岩石の動像に向けて魔法を発動し放った。
「〈爆裂〉」
魔力を起爆剤の性質に変質させる事によって発生した爆裂によって、ルブルフォの岩石の動像は粉々に爆散された。
「わ、私の岩石の動像――――」
「〈衝撃波〉」
「――――がへぁっ!!」
続いて即座に発動した魔法により大気が歪み、発生し放たれた衝撃波はルブルフォに直撃、そして物理的激痛とは違う痛みが内臓にまで響き渡る。
そしてその痛みに耐えられなかったルブルフォは、気を失った。
「ル、ルブル―――」
「〈動像創造〉」
「―――フォ……えっ? ボファアッ!!」
直ぐ傍で創造された粘土の動像に強烈な平手打ちを喰らったゴノブルは吹っ飛び、地面を無様に転がった後には気を失うのだった。役目を終えた粘土の動像はその場で元の土塊へと戻り、跡形も無く消え失せた。
あっという間に残り3人となってしまった教師――――ルードン、セルパン、ニムオーノは、着々と迫りつつある受け入れたくない未来に不安を色濃く面に晒す。
「糞ぅ……! おい、セルパン! お前は下から攻めろ! 私は上から攻める!」
「よ…良し分かった!」
ニムオーノは杖を上空に掲げ、セルパンは短杖をシャラナへと突き出す様に向け、魔法を発動させる。
「これで如何だ!!〈降り注ぐ魔力の矢〉!!」
「我が氷の魔法を喰らえ!!〈氷針〉!!」
ニムオーノは上空から幾多の魔力で構成された矢を降らし、セルパンは足元付近から凍らせ次々と氷の針を出現させながら目標に向かって地面を伝う様に凍らせ迫り行く。
しかし、上空に出現した幾多の魔力の矢は小さく、地面を凍らせながら迫る氷の針も脅威が感じられない程に非常に細く、大した程までに氷の針は余り伸びていなかった。
上空と地面からの上下挟み撃ちが迫る中、シャラナは平静かつ冷静に2人からの魔法に対応する。
「〈突風炸裂〉」
シャラナを中心に突風が上空を含む周囲全体に炸裂し、降り注ぐ全ての魔力の矢は文字通り吹き飛ばされ、早送りでも見ているかの様に成長する植物の様に地面を這いながら凍結させる氷の針は、突風による風圧で殴打されたが如く砕かれるのだった。
「そ……そん…な…!」
絶望の表情を浮かべるニムオーノとセルパンの状態など御構い無しに、シャラナは2人に対し魔法を容赦無く叩き込んだ。
「〈氷塊落下〉」
シャラナは氷系統魔法を上空に発動し、掌に納まる大きさの幾多の氷塊を2人に目掛けて落とし放つ。
「おがっ…! ぐはぁっ! まっ、待って、助けでふぁっ!」
「ぶへぅっ! い…痛い痛い痛いっ! ちょっと待っでぁっ!」
降り注ぐ硬い氷塊が2人の脆弱な肉体を何度も何度も打ち付け、痛みを与え、最後には勢い良く落下した氷塊が打ち所の悪い頭部に直撃し、ニムオーノとセルパンは共に地面に倒れ伏すのだった。
「後は貴方だけですね、ルードン学院長」
最後に残ったルードンに対し、シャラナは冷ややかな視線と言葉を送った。
13人という圧倒的優勢を有していた教師側は残り1人、ルードンだけという圧倒的劣勢――――いや、圧倒的絶望の状況へと簡単に追い込まれてしまった。
「発動出来るまで待っていますので、早くして下さい」
シャラナはルードンに最後の挑発を冷ややかに送る。
それを聞いたルードンは焦燥に駆られ、皺の有る顔を顰めた。
「くっ…! 舐めるな!! そこまで言うのなら刮目せよ!! そして私の力をその目に焼き付けろ!!」
ルードンは杖を翳し時間を掛けて集めた魔力を使用し、この学院という世界で自身にしか出来ない魔法技術で2系統の魔法を同時発動させた。
「〈火炎球〉!!〈電撃球〉!!」
ルードンの左右に其々、炎と電気の球が中空に同時出現した。是迄の他の教師達の魔法よりも、ある程度は内蔵しそれなりの威力を秘めていた。
「ど…如何だ…! 流石の君にでも、魔法を別系統2つを同時発動する事は出来まい…!」
ルードンは己の力を自慢するが、彼には〈魔力操作〉と制御系の特殊技能を有していない。なので彼が発動させている2つの魔法は威力が低く、気を抜けば消えてしまうとても不安定な状態である。
つまり、ルードンは無理矢理に別系統2つを同時発動させているのだ。それを証拠に呼吸は荒く、皺の有る額からは脂汗を滲ませ流していた。
「……随分と時間を掛けてその程度ですか」
「何だと…!」
シャラナに冷たい言葉を告げられたルードンは、学院長としての誇りを侮辱された事に苛立ち怒りを面に晒し、怒声を上げる。
そんな彼に対し、シャラナは呆れ果てた表情を向ける。
そしてシャラナは両手を左右に広げながら掌を上に向け、この模擬試合の終止符を打つ為に魔法を発動させた。
「〈疾風の騎士槍〉〈穿つ水圧大噴射〉」
左右に魔法陣が同時に出現し、魔力で形成された疾風の騎士槍は目標目掛けて急速発進し、生成された多量の水は水鉄砲とは比べ物にならない勢いで噴射された。
疾風の騎士槍は電気の球を貫き、噴射された水は炎の球を穿ち、シャラナの魔法がルードンの魔法を粉砕した。
ルードンは絶望という驚愕の表情を色濃く浮かべ、口を大きく開けるが驚愕の声すら上がらず絶句する。
此方側の攻撃を全て真っ向から粉砕された。
彼女の魔法は明らかに己を含む教師達よりも明らかに上。
場外からの不正支援による妨害束縛も失敗に終わった。
勝機は完全に失った。
いや、教師達に勝機など、始めから無かった。
「ふぅ……これでやっと終わらせますね」
シャラナはルードンに片手を向け照準を合わせた。
「へっ? ま…まっ、待ってく――――」
「――――〈螺旋突風衝撃〉」
螺旋に渦巻く突風が放たれた後直ぐ、模擬試合は幕を閉じるのだった。




