学びと成長の成果13-3
大天使達と動像達による激しい攻防が、訓練所の空間全体に幾度も響き渡る。
互いに強化され攻撃とその攻撃速度に加え、総合的機動性の高い大天使と速度を総合的に大幅強化された動像は俊敏に動き回り、強力な連撃を繰り出し、逆にそれを防ぎ回避し、互いの攻防を不規則に入れ替える様に激しい戦闘を繰り広げる。
大天使達は己の長所と戦力差を最大限に活かし、敵動像との戦闘を上手く立ち回る。
6体の動像は大天使達よりも数はかなり少ないが、創造主の〈動像操作〉による特殊技能効力で、動像1体1体の動作は精錬された戦士に近い動作を可能にし、唯一武具を有していない赤銅の動像は拳や腕、脚に膝といった全身を武器とし、近接格闘を巨軀とは思えない軽やな動作で俊敏に繰り出し、大天使の盾強打や剣撃の猛攻を華麗な体捌きで払い回避し続ける。
白銀の動像と黄金の動像も、其々が有する巨大な盾と剣で大天使達の猛攻を往なし防ぎ、騎士槍から繰り出される高速連続突きや重厚な巨剣による重々しい剣撃を素早く繰り出し、猛反撃をする。
ガイアは創造した6体の動像を同時操作で大天使達相手に猛応戦し、シャラナは荒れ狂う激戦を窺う様に動くべき戦況を見極めようとする。
彼女の隣に空中で留まる3体の魔導の大天使は何かしらの魔法を発動させる素振りは見せず、召喚者と共に戦況を窺っていた。
(むぅ~っ…これは流石にキツ過ぎる…)
大天使達のあらゆる猛攻に対応する為に、全ての動像を高速操作し、攻撃、防御、回避行動を頭の中で瞬時に行わなければならない。
その過程でガイアは、更に強烈な頭痛がより重い重石と為って頭に圧し掛かる。
それも当然だ。1体だけを集中的に高速操作するなら未だしも、6体の動像を高速同時操作というかなりの無茶を行っているのだ。
「……ねぇ、エルガルム。あんた、あそこまで同時に高速操作って出来たっけ?」
「無理じゃ。大雑把な操作なら未だしも、あの様な精密かつ速い動作は難しい。たとえ〈動像並列操作〉の特殊技能を有してもじゃ」
ガイアが操作する6体の動像の高速攻防を繰り広げる光景に、ベレトリクスとエルガルムは信じられないものでも観ているかの様に目を見開いていた。
「確か…未だ〈動像並列操作〉と〈動像並列制御〉の特殊技能を習得していないと、先程聞きましたが…。その特殊技能を有さずにあそこまで精密に操作しているという事ですか…!?」
「そうじゃ。未だその2つの特殊技能を有していないにも関わらず、あの同時操作技術の高さ……。間違い無く儂やベレトリクスをも超えとる」
ゼルクルスの質問に対し、エルガルムは肯定と補足を告げ、隣で聞いていたセルシキアとキルセミーゼはその事実に驚愕する。
そして更にエルガルムは、ガイアに対する予感を告げる。
「……それもそろそろ、修得するやもしれんぞ」
硬質な音が幾多も鳴り響く、動像と大天使の激しい戦況は少しづつ変化していく。
(良し! 掴んだ!)
1体の赤銅の動像が守護の大天使をガッチリと捕まえ、手の甲に仕込んだ接触魔法を発動しようとする。
その直前、宝石を嵌め込んだ純白の杖を持つ1体の魔導の大天使が即座に反応すると同時に、杖を掲げて即座に魔法を発動する。
魔導の大天使から発せられた魔法は、自身を含む全ての大天使に掛けられ、魔法の光が大天使達の全身を包み込んだ。
(な、何だ!? けど今は――――〈高圧感電接触〉起動!)
直後、赤銅の動像の腕から手へ刻まれた魔法陣が光り出し、掴んだ標的に高圧電流を流し込み、電撃を纏わせる。
しかし、感電状態と為っている筈の守護の大天使は痙攣を起こさず、戦闘態勢は殆ど崩していなかった。掴み掛かって来た赤銅の動像を真っ直ぐ見据え、無理矢理に盾強打で押し返し、そのまま純白の剣による追撃で斬り付けた。
(効いてない!? まさか電気魔法に対する耐性付与魔法か!?)
そう。魔導の大天使が発動したのは電気属性耐性付与の中位級魔法――――〈中位電気属性防護〉による耐性効力が、感電から守護の大天使を護っていたのだ。
(あの天使は補助役か!)
ガイアは魔導の大天使を最優先に倒すべきだと判断するが、今は6体の動像を同時操作し、20体もの大天使達を相手にしなければならない為、殆ど手が回らない状態だった。
(なら大人しくして貰おうか!〈絡み付く―――――)
ガイアが拘束系の自然系統魔法を発動しようする前に、今度は別の魔導の大天使が先に魔法を発動させた。
瞬間、魔法によって発生した濃霧が周りを覆い尽くしながら広がり、シャラナと3体の魔導の大天使が濃霧の中へと姿を晦ます。
(あっ、ちょっ!? 霧の中に隠れるつもりか! 逃がさないぞ!)
ガイアは特殊技能〈魔力感知〉を常時発動化させ、雲の様な濃霧内に隠れたシャラナの魔力を探り、魔力の強さを識別し、その存在に追従する別の存在の魔力に向けて魔法を発動させようと―――――。
(――――ん!? あれ!?? 感知出来ない!? 何で!?)
濃霧の中に居る筈のシャラナと3体の魔導の大天使の魔力を感知出来ない事に、ガイアは困惑を色濃く浮かべた。〈魔力感知〉で捉えていた4つの魔力反応が、忽然と消え失せてしまったのだ。
動像6体を同時操作しながら、濃霧の中に居るであろうシャラナと3体の魔導の大天使を魔力感知で探り出そうとするも、一切感知に引っ掛からなかった。
(だったらその霧、ちょっと吹き飛ばさせて貰うよ!〈空圧大爆風〉!)
ガイアは濃霧の中心へと手を翳し、中位級では上位の威力を誇る風系統魔法を行使し出す。
周りの空気を瞬間的に圧縮し、圧縮し留めた空気の体積を無理矢理急膨張させ、留める魔力を解く事で圧縮した空気が爆裂する。煩い爆裂音が鳴り響くと共に爆裂波が周囲を容赦無くメタメタに殴り飛ばし、濃霧を一瞬で吹き飛ばす。
(あれ!? 居ない!)
濃霧の中に隠れている筈の存在――――シャラナと3体の魔導の大天使の姿が見当たらなかった。
(えっ!? 何処!? 何処に行ったの!?)
ガイアは動像を同時操作し応戦しながら〈魔力感知〉で行方不明の存在を探るが、それでも感知に引っ掛からなかった。
今も何故か感知出来ない現状に、疑問と困惑が交差する。
しかし、その疑問を解き明かす時間を与えないと、ガイアの視界外の上空から白く光る神聖な魔力で構成された騎士槍が、1体の赤銅の動像を背後から貫き、動力源を粉砕する。貫かれた1体の赤銅の動像は崩れ落ちる様に倒れながら、無数の光の粒となり消滅した。
(ちょっ、其処に居たの!?)
不意を突かれギョッと驚くガイアは慌てて視線を上空へと向け、神聖なる魔力で構成された騎士槍――――〈聖なる騎士槍〉を放ったであろう1体の魔導の大天使を視界に捉えた。
その直後、抱いていた疑問から更に新たな疑問が生じ浮かび上がる。
(――――感じない!? ちゃんと姿は目では見えてるのに、あの天使の魔力が感じ取れない! いったい何をしたんだ!?)
魔力を感知出来ない理由を、今迄学び頭の中に蓄積させた知識を必死に探り掘り起こそうと考察を巡らせる。だが、大天使達の猛攻で、それも思う様にさせてくれなかった。意識を謎解きに向ける余裕が無かった。
「良し良し。魔導の大天使に〈濃霧〉で姿を晦ませ、更に〈魔力隠蔽〉を施して貰う事で、ガイアからの魔力感知対策をした様じゃな」
賢者エルガルムに限らず、観戦する重鎮達はシャラナと魔導の大天使の魔力が感知出来ない原因を即座に理解していた。
(待てコラーっ!!〈絡み付く樹木〉!!)
視界に映ったの魔導の大天使を捕らえようと急速に樹木を伸ばすが、素早い魔導の大天使は絡み付いて来ようとしつこく追い回す樹木を難無く回避し続ける。
ガイアは常人では耐えられない程の精神的疲労と、鉄塊の如き重く圧し掛かる頭痛に苛まれる。
残り5体となった動像の同時操作による高速攻防、そして束縛系の自然系統魔法を行使しながら魔導の大天使を追い回す様に操作。
5体の動像同時操作と発動した魔法を操作――――それは更なる無茶な行いである。
現時点で、ここまでがガイアの限界と言って良い。
しかし、ガイアは現時点の精神的な限界値を無視し、更に魔法を発動させた。
(ぬぉぉおおお!!〈乱気流〉!!)
自然系統魔法を行使しつつ更に風系統魔法で乱気流を発生させ、交戦中の動像と大天使全てを巻き込む。
「動像複数同時操作と系統別の魔法2つを同時に持続行使を一遍に!? 如何なってるの、あの子の制御操作技術!?」
最早、常人の魔導師水準でガイアを測るのは無意味である。魔法を行使出来る上位級の魔物や妖精などの制御操作すら超えている幻神獣フォルガイアルスの制御操作技術の高さに、ベレトリクスは畏怖を心の底から湧き出してしまう光景だった。
発生した乱気流の中、大天使達は不規則な気流に流されずに空中飛行していた。
その要因は、シャラナが大天使達に施した補助魔法――――〈防風化〉が乱気流の風圧影響を軽減しているからだ。
ガイアは魔法の選択ミスをしてしまった。
しかし、今はミスをした事に対し認識する余裕は無い。
吹き荒れる乱気流の真っ只中、全身が重過ぎるが故に吹き飛ばされない5体の動像は、平然とその中を戦闘態勢を難無く動き回る。動像5体をガイアは操作し、大天使達に猛攻を続ける。
大天使達は〈防風化〉の効力によって、吹き荒れる乱気流内での機動は可能と為ってはいるが、完全な風圧耐性を施されている訳ではない。その為、多少なりとも風圧の影響で飛行移動がし辛く、本来の機動力が十全に発揮出来てはいない状態と為っている。
その御蔭で、伸びる樹木で追い回していた1体の魔導の大天使の脚を漸く捕らえ、空中から地上へと引き摺り下ろす事が出来た。
(先ずは1体目ぇえ!)
荒れ狂う乱気流の中、捕まえ引き摺り下ろした大天使に向けて、白銀の動像の槍突撃を繰り出そうとする。〈絡み付く樹木〉によって脚を絡め捕られた魔導の大天使は、慌てて魔法を発動しようとするが、その魔法が攻撃系にしろ防御系にしろ手遅れ――――の筈だった。
突如と、白銀の動像の進行方向に、壁とは余り言えない高さの石壁が出現したのだ。既に槍突撃を決行してしまった白銀の動像は停止する事が出来ず、純銀の脚を石壁に引っ掛けてしまい、低空飛行でもしているかの様に前方に態勢を崩し、豪快かつ間抜けな転倒を披露するのだった。
(なっ!!? あれってシャラナの仕業か! 何処だ!? そういえば、霧は吹っ飛ばしたのにさっきから姿が見当たらない! あの霧の中でホントに何をしたんだ!?)
突然の小さな〈石壁〉を出現させたのはシャラナだと直感するが、開けた場所にも関わらず、周囲を見回しても彼女の姿が何処にも無い事にガイアは困惑する。
これ以上、頭が回らなかった。
もう既に、ガイアの脳は精神的に容量限界寸前かつ過熱しており、脳神経が焼き切れる寸前の状態と言っても良い。
困惑を生み出す疑問に対する答えを出す知力は殆ど機能しない。
ならば、直ぐに倒せる敵を迅速に倒し数を減らす。今はそれだけに集中しようとギリギリ寸前の状態で2つの魔法を持続させ、5体の動像を同時操作をし続ける。
猛攻の応酬により大天使を4体葬り、5体の守護の大天使と4体の騎士の大天使へと数を減らした。3体の魔導の大天使を含め残り計12体。
しかし、その猛攻をシャラナはそのまま許す訳が無かった。
「〈竜巻〉!」
(! 今彼処から聴こえた!)
ガイアは瞬時にシャラナの声に反応し、聴こえた方向へと視線を向けた。
しかし、視線の先、視界全体にはシャラナの姿は何処にも居なかった。そして魔力も感知出来なかった。
(居ない!??)
益々ガイアの困惑の色が濃く為る。
そんなガイアの困惑を他所に、シャラナが発動したであろう渦巻く風が乱気流と気流が逆向きの渦で接触し、互いの気流を衝突し、2つの風系統魔法の効力は失い鎮まるのだった。
乱気流から解放された大天使達は本来の機動力を取り戻し、再び猛攻を再開し、次々と動像達に向かって突撃して行く。
(や…やばい…! て、あっ、コラ! 折角捕まえてたのに!)
1体の騎士の大天使に隙を突かれ、苦労して捕らえた1体の魔導の大天使をあっさりと救出されてしまった。
大天使の数は減らせたが戦況を振り出しに戻されてしまい、ガイアは僅かながら焦燥を抱いた。
再び目まぐるしい高速攻防戦が開始され、互いの兵力を激しくぶつけ合う。
黄金の動像が殴り付けるが如く大天使を斬り付け、騎士の大天使が動像に純白のバスタードソードで斬り付け、白銀の動像が高速で騎士槍の穂先を突き付け、守護の大天使が幾多の猛攻を防ぎ弾いた後に純白のバスタードソードを動像に突き刺し、赤銅の動像が大天使を硬い拳や脚で殴り付けては蹴飛ばす――――激烈な大乱闘を繰り広げる。
遠くからは魔導の大天使が、治癒魔法で深手を負った大天使達の傷を癒す。そして他の魔導の大天使がタイミングを見計らい、水系統と電気系統、そして神聖系統による攻撃魔法を敵動像に向けて狙い放つ。
そして時折、何処からか魔法による風の刃や光線が放たれ、動像の脚に攻撃を仕掛けられる。
(ぬぅ~…。…ホントに何処に居るの~……!)
未だにシャラナの姿は見当たらず、魔力も感知出来ない。
魔法攻撃の発生源先を瞬時に目を遣っても、其処には誰も居ない。
再び戦況が傾く。
シャラナの大天使達は優勢へ、ガイアの動像達は劣勢へと互いの戦況が急速に傾いていく。
治癒魔法を行使する魔導の大天使の存在により、大天使達の数は一向に減らず、動像達の劣勢は更に続く。
そして中で機動力と俊敏性が一番高い赤銅の動像が倒され、残りは其々2体の白銀の動像と黄金の動像と為り、更なる苦戦を強いられる。
(〈粘土壁〉!〈絡み付く樹木〉! 更に盾の〈疾風衝撃〉起動!)
動像の同時操作中に2系統の魔法を同時発動させ、大天使達の左右を挟む様に粘土の壁を出現させる。そして更に粘土の壁から幾つもの樹木が生え出し、大天使達に向かって絡み付こうと伸び迫る。そこへ更に巨大な白銀盾に仕込んだ魔法を起動し、発生した爆風が大天使達を伸び迫る樹木へと吹き飛ばす。
(ぅぁあ~…! 頭痛い~…!)
頭を過剰にフル回転をし、別系統2つと魔法の白銀盾を起動という同時発動を行ったガイアは、重い精神的疲労と苦痛に苛まれる。
これ以上の同時操作及び同時魔法発動行使をする事は、流石に出来ない。
(けど、これで何体かは倒せる――――)
「――――〈疾風の刃〉!」
樹木が大天使達に絡み付こうとした瞬間、突然発生した疾風の斬撃が絡み付こうとした樹木全てを断ち斬り妨害される。
(むぅ~! またか~!)
せめて劣勢を拮抗へと押し戻せたらと行使した魔法は戦況を変えられず、吹き飛ばされた大天使達は空中で体勢を立て直し、一直線に4体の動像に向かって猛攻を再開する。
物理的攻防と支援魔法攻撃がひたすら入り乱れ続ける。
1体の白銀の動像が魔導の大天使の魔法によって脚を破壊され、体勢を崩された所に鋭い剣の一撃が動力源を貫かれる。
そして白銀の動像は両手に持つ白銀の騎士槍と巨大な白銀盾を残し、光の粒と為り霧散し消滅する。
――――残り3体。
1体の黄金の動像が巨剣を振り被る瞬間を狙い、3体の騎士の大天使が直列に並び、1体ずつ弾丸3連続発射の如く一直線に急速発進する。純金の太い手首目掛け、バスタードソードを構えながら突撃し、擦れ違い様に剣で斬り付ける。更にその後に続き、もう1体の騎士の大天使が急速に迫り、斬り傷目掛けて剣を振り抜き更に斬り傷を深くする。そして最後の1体が急速接近からの擦れ違い様に斬撃を与え、見事に純金の片手を斬り落とした。
巨剣を落とし体勢を崩された黄金の動像の前に、最後の白銀の動像が白銀の盾を構えて大天使の追撃を防ごうとする。しかし、3体の守護の大天使に阻まれ盾の役割を封じられてしまう。
残り4体の騎士の大天使は武器を落とし体勢が崩れた黄金の動像に対し、容赦無く一斉に斬り刻む。
動力源は破壊された1体の黄金の動像も黄金の巨剣だけを残し、消滅する。
――――残り2体。
(うぉおおおお!!〈鉄鎖の束縛〉!!〈巨岩落下〉!!)
ガイアは全ての大天使達に向けて、幾多の魔法陣から出現させた鉄鎖の束縛魔法と、真上上空から生み出した巨大な岩を落下させる土系統魔法を同時に発動した。
それに応じて1体の魔導の大天使が即座に魔法を発動し、味方の大天使達の上空に広範囲の〈聖なる防壁〉を展開する。
魔導の大天使から魔法援護が来る事を予め分かっていたのか、全ての騎士の大天使と守護の大天使は、味方の魔法発動と同時に高速低空飛行で前進する。
束縛しようと迫り来る幾多の鉄鎖を、強化されより俊敏性を増した機動力で難無く躱し、怯む事無く前進する。
上空から落下する巨岩も、魔導の大天使の特殊技能により強化された下位級の神聖系統魔法の〈聖なる防壁〉により、大天使達の頭上に着弾し被害を与える事は叶わずと為る。
大天使達はあっという間に、2体の動像の眼前へと接近する。
(不味い…! 間に合わない…!)
あっという間の急速接近に対する反撃が間に合わないと頭の中で即理解出来てても、何の道、反撃か防御するかの2択しか行動選択出来ない。
ガイアは反撃という選択肢を選び、動像を無理矢理に動かし、間に合わない反撃を急ぎ決行する。
理解していた通り、2体の動像――――白銀の動像と黄金の動像の反撃は間に合わなかった。
大天使達は今迄見せなかった保有する特殊技能を発動し、守護の大天使と騎士の大天使は目にも留まらぬ剣撃による連続一閃を繰り出し、2体の動像を幾度も斬り刻む。
戦闘力を削ぎ落とす為に両腕を斬り落とし、最後に引き絞り放たれた矢の如く、動像の身体を純白の剣で貫き、そのまま剣を押し込み動力源を破壊した。
遂に残り2体の動像が倒されてしまった。
その直後――――
――――特殊技能〈魔力並列操作〉修得――――
――――特殊技能〈魔力並列制御〉修得――――
――――特殊技能〈動像並列操作〉修得――――
――――特殊技能〈動像並列制御〉修得――――
(やった! 全部倒せた!)
〈不可視化〉で自身の姿を透明化し、魔導の大天使に〈魔力隠蔽〉で自身の魔力を隠して貰う事で〈魔力感知〉を晦ますシャラナは、動像を全て倒せた事に安堵を抱いていた。
「中々良い闘いでしたな、エルガルム様。訓練試合でこれ程までの激戦は中々観れませんな」
「儂も同じ意見じゃよ、ゼルクルス。こんな事なら記録を撮っておけば良かったわい」
「あ、それなら私が最初から全部撮ってるわよ」
「おお! ナイスじゃ、ベレトリクスよ!」
エルガルムはニカッと笑みを浮かべ親指を立てる。
「あの神獣様が操る動像……騎士団や魔導師団の訓練に是非取り入れたいものだな、セルシキア」
「それは私も母上と同意見ですが、神獣様に訓練の度にわざわざ付き合わさせるのは如何かと思うのですが…」
「ふむ…。そこの所はエルガルム様と相談してみるとしよう」
セルシキアと母のキルセミーゼは、ガイアの動像を騎士団と魔導師団の訓練に使用出来ないかと考察する。
「さて、そろそろ訓練終了には丁度良さそう…じゃ………ん?」
突如、ガイアが沈黙し出す。
その様子にエルガルムは違和感を感じた。
ガイアは目を閉じ、まるで時間が止まったかの様に鎮座する巨岩の如く、不動状態と為っていた。
そんな妙な様子に、他の重鎮達も違和感を抱く。
(……? 如何したのかしら…?)
今も姿を透明化し魔力を隠蔽しているシャラナも、同じ違和感を抱いた。
そんな静寂で妙な空気はほんの僅か数秒、静寂で妙な空気が崩れる予兆が動き出した。
突然ガイアが巨岩の両手を勢い良く突き出す様に翳し出す。
そしてその直後、閉じた目を力強く開けた。
(何だ……この感じ……!!)
ガイアは新たな特殊技能を得た事により、脳が一気に軽く為ると同時に冴え渡り出す。
頭痛は引き、高熱も冷めた。
ガイアは感じた事のない新たな感覚に対し、驚愕と困惑を抱く。
頭の中で、何かを複数同時に思考する事が出来る様に為っていた。それも無意識にだ。
思考の複数同時が可能の影響か、全身のあらゆる部分を別々に独立動作する事も出来そうな気もする。
そう。ガイアは新たな感覚を覚醒したのだ。
常人では使用する事が不可能の感覚領域を、自ら抉じ開けたのだ。
(何だろう……今なら試してみたい事が確実に出来そうだ…!)
進化した感覚でどれだけの事が出来るのか、ガイアは内に存在する好奇心に身を委ねる。
(もっと試してみよう。出来そうな事を――――全て!)
そしてガイアは膨大な魔力を使い、魔法を発動する。
(〈動像創造〉!)
幾多の物質が魔法によって創り出され、質量を急速に増大させる。そして姿形をあっという間に形成されたそれ等は、シャラナと大天使達の前に現れ立ちはだかる。
白金の動像4体、真銀の動像2体、神秘銅の動像1体、水晶の動像1体、蒼玉の動像1体、、黄玉の動像1体、翠玉の動像1体が創造された。
その創造時間、僅か1秒という驚異的な速さだった。
「な、何と…! 先程より創造速度が上がっとる…!」
その驚異的創造速度と更なる数種類の豪華で煌びやかな動像が立ち並ぶ光景に誰もが驚愕する中、エルガルムは更に見た事が無い物に驚き凝視する。
「何じゃ…あれは…?」
ガイアの隣に1体、奇妙な造形の動像が宙に浮かんでいた。
胴体から下の脚は無く、代わりに独楽の様な逆円錐状と成っている。そして有する腕は6本もあり、肘の無い前腕と手だけの構成だ。しかも全ての腕は胴体に接合されておらず、本体から独立しているかの様に付かず離れずで宙に浮いている。
身体を構成している金属の種類が何なのかは、一目でははっきり判らない。ミスリル特有の美麗な白銀色でも、オリハルコン特有の炎の様な色彩でもない。もしかすると、その2種類の貴金属を融合し作られた合金なのかも知れない。
腕1本毎の手の甲には5種類の宝石が埋め込まれ、前腕の肘に当たる部分には魔力を宿した大きな水晶が接合されていた。
エルガルムとベレトリクスは、初めて見る異様な造形の動像に目を見開く。
賢者と魔女だけに限らず、それを見る全ての者も驚愕していた。
ガイアは隣の動像に意識し、そして動かす。
創造された異様な造形の動像は創造主の意思的操作によって、最初に指を動かす。
次は2つ、次は3つ同時にと、掌の開閉や指1本1本の動作を感覚で確認する。
「あれを全て操れるのか…!?」
其々の腕が独立するが如く人の様な滑らかな動作に、エルガルムは瞠目する。
動作確認を終えたガイアは、次に逆襲への準備を開始し出した。
(〈武器錬成〉!)
自身の両腕と異様な動像の六腕で背中に生えた鉱石と原石――――巨大な塊の白金、ミスリル、オリハルコン、そして人1人を簡単に覆い隠せる程大きな水晶、蒼玉、黄玉、翠玉を無造作に引っこ抜き、それ等全ての素材を使い一遍に様々な武器を作製し出した。
「待って待って待って待って…えぇええええ!! 嘘でしょ!! 一遍に武器も作れるの!!?」
更に続く驚愕な光景に、ベレトリクスは荒げた声を思わず上げてしまう。
たとえ魔法で即席の武器を製作するにしても1つずつが一般――――というよりも、2つ以上を同時に作製するのは常識的に無理がある。
しかし、ガイアは12もの武器を一遍に作り出すという非常識を遣って退けているのだ。魔女と称されるベレトリクスが声を荒げてしまうのも無理もない光景と言える。
勿論、ベレトリクスだけでなく、他の者達もその非常識な光景に有り得ないという驚愕を抱くのだった。
ガイアは12の武器―――――白金の巨剣、白金の巨鎚、白金の巨大斧、2本の白金の巨大な大型の刺剣、2本のミスリルの巨大な斧槍、オリハルコンの巨剣を作製し、それ等の武器全てを創造した新たな金属製動像に装備させた。
4体の白金の動像には其々白金製の巨剣・巨鎚・巨大斧・2本の巨大な大型刺剣、2体の真銀の動像にはミスリル製の巨大斧槍、1体の神秘銅の動像にはオリハルコン製の巨剣を装備させ最前線の近接戦闘の役割を与える。
しかし、水晶の動像、蒼玉の動像、黄玉の動像、翠玉の動像、そして宙を漂う異様な動像には武器は与えなかった。
(今度はこうだ!〈上位刃鋭利化〉〈上位武器魔法化〉!!〈魔法封印〉で〈接触大衝撃〉を封印!!)
九つの近接武器を強力な魔化を施し、刃が有る八つの武器は更なる鋭利さを与え、唯一の打撃武器である巨鎚には〈接触大衝撃〉の魔法を刻み込こむ。
(最後ォオッ!!〈上位敏捷力強化〉〈上位硬質化〉〈上位魔力上昇〉〈上位魔法防護〉〈迅速な脚〉!!)
最後の仕上げに異様な動像を含む計12体の動像に、過剰といえる強化を施すのだった。
「………それは幾ら何でも、強化し過ぎでしょ…」
その過剰強化に対し、ベレトリクスは引き攣った笑みを浮かべるのだった。
(さぁて……)
全ての過剰な下準備が整い終えたガイアは深呼吸を1回した後、一斉に全ての動像を操作し出す。
(行くぞぉおおおおおおー!!)
大逆襲開始。
宝石製の動像以外の金属製の動像全てが恐ろしい速度で急速前進し、其々が持つ魔化された武器で大天使達に襲い掛かる。
「先程よりも動作が更に速く為っておる! やはり特殊技能を習得しよったか!」
その巨軀に相反する更なる俊敏性と機動力が増し、動きがより精密さを増した動像達と、先程の12の武器を同時に作り出す光景を目にしたエルガルムは確信した。
ガイアが〈動像並列操作〉と〈動像並列制御〉、そして〈魔力並列操作〉と〈魔力並列制御〉の特殊技能4つを習得したのだと。
より鋭利と化した巨剣、巨大斧、巨大な斧槍の斬撃武器で盾ごと大天使を豪快に斬り飛ばし、巨鎚による打撃と共に付与された魔法の衝撃が更なる破壊力を以て盾を粉々に粉砕し、2本の巨大な大型の刺剣による高速剣撃を絶え間無く繰り出し、大天使を斬り刻み葬っていく。
後方からは、宝石製の動像達が放つ魔法が襲い掛かる。
水晶の動像は無系統魔法、蒼玉の動像は水系統魔法、黄玉の動像は電気系統魔法、翠玉の動像は風系統魔法と、其々が自動操作による独自判断で魔法を発動し、前線で逆襲進撃する金属製の動像達を援護する。
「何か凄く不味い状況に一転しちゃってる…!」
魔法で隠れているシャラナは、急変し一気に荒れた戦況に対し浮かべる驚愕の表情を引き攣らせる。
盾ごと斬り裂き、及び盾ごと粉々に粉砕する圧倒的な膂力と、動像とは到底思えない恐ろしい総合的速度による逆襲進撃。更に後方からは4つの系統――――1体につき1系統――――魔法が容赦無く大天使達に放たれる。
その光景は、荒れ狂う小規模な戦場の一部地帯と言えてしまうものだった。
(何ー処だ~っ!! 出ーて来~い!!)
ガイアは7体の動像と共に、六腕の異様な動像を縦横無尽に動かす。
(あの動像……近接型か遠距離型かは判断出来ないけど、間違いなく魔法が予め仕込まれてる筈)
シャラナは未知の動像対し、如何攻めるべきか思考する。
しかし、自分にとって最善と言える思案が浮かんで来なかった。
(……遠距離攻撃であの動像の性能を探ってみるしかないわね)
シャラナは異様な動像を視界中心に捉え、それに向かって魔法を放つ。
「〈水の弾丸〉!」
圧縮された水弾が3発、軌道の先に漂う動像に向かって急速に飛んで行く。
シャラナの魔法が放たれた直後、動像本体に追従する六腕の内の1本が、急速に迫り来る水の弾丸の軌道上へと即座に割り込む。
1本の腕を盾替わりとして魔法を受けるのか。そうシャラナは見解した。
しかし、更にその直後、自身の見解を否定する瞬間をシャラナは目にする。
盾替わりとして軌道上に割り込んだ腕―――その手の甲に嵌め込まれた宝石の1つが、突如と輝き出す。
すると魔力で構成された盾が出現し、シャラナの放った魔法を防いだ。
(〈魔力の盾〉!? あの腕は盾の役割なら…)
シャラナは3体の魔導の大天使に意思伝達で指示をする。
3体の魔導の大天使は彼女の指示に従い、目標の動像を囲う。そして三方向から其々、〈穿つ水圧大噴射〉〈大雷撃〉〈神聖なる光線〉を目標に向けて同時に放った。
目標の動像に魔法が直撃するその直前、シャラナは驚愕を抱かされた。
異様な動像の六腕の内、3本の腕が魔力の盾を展開した腕を構え、三方向からの魔法攻撃を全て防御したのだ。
「嘘!? 3つも仕込んでたの!?」
シャラナは思わず驚愕を口にしてしまう。
そんなシャラナに対し、更なる驚愕を抱かせる追撃を異様な動像が披露し出す。
〈魔力の盾〉で防御する腕とは別の腕が其々、3体の魔導の大天使に照準を合わせる様に掌を向ける。
金属の掌から放たれた不可視の衝撃波は大気を大きく歪ませ、魔導の大天使3体を同時に吹き飛ばす。
(〈衝撃波〉! 違う、あの威力は〈大衝撃波〉! あの動像…魔法を主体にしてる遠距離型!)
そう判断したシャラナは、防御系魔法を即座に発動出来るよう異様な動像の次の行動を窺う。
異様な動像は吹き飛ばした魔導の大天使に透かさず追撃を放とうと、相手1体に付き左右対称の腕一組を突き出し、掌を向ける。
右手は〈巨石の騎士槍〉、左手は〈氷結の騎士槍〉を発動させ、魔導の大天使に目掛けて射出する。
「〈魔力大障壁〉!」
シャラナは3体の魔導の大天使の前方に魔力の障壁を張り、ガイアが操る異様な動像の追撃から即座に護った。
(ありゃ、障壁で防がれちゃった)
魔力で構成された障壁を貫けず、巨石と氷塊の騎士槍が弾かれた光景に対し、ガイアは動揺なく平然だった。
(むぅ~。今のといいさっきの水の魔法といい……絶対シャラナだよね。ホント何処に居るの~!)
先程の水の弾丸も含み、魔法の障壁を張ったであろう本人を探り続けてはいるが、未だに視界にも映らず〈魔力感知〉にも引っ掛からず、ガイアは少々焦れ出す。
「〈大爆裂〉!」
シャラナは多量の魔力による爆発を起こし、異様な動像は諸に被爆する。
爆裂の衝撃によって動像の体勢を崩せたのを視認したシャラナは、体勢を立て直した魔導の大天使3体に指示を意思伝達する。もう一度囲い、反撃の魔法を放てと。
魔導の大天使達はシャラナの指示に従い、空中でよろめく異様な動像が体勢を立て直す前に即囲い、瞬時に魔法を発動しようと杖を目標へと差し向ける。
だがその直前、其々の背後から何かしらの斬撃が魔導の大天使3体を襲った。
不意を突かれた魔導の大天使達は再び体勢を崩され、魔法発動を妨害されてしまい、不発と為ってしまった。
シャラナは突如と襲来した斬撃の正体を視界に映し、目を見開く。
(あれって〈魔力の刀剣〉!?)
空中漂う全ての腕からは、魔力のみで構成された青白く淡い光を放つ刀身が真っ直ぐ伸びていた。長さはおよそ4メートル、特大剣を超える大きさだ。それも6本。
左右の腕が肘に当たる部分の水晶が付かず離れずの短い間隔で、その間を魔力の球体で固定されている。その魔力を中心に一組の腕を振り回す様に回転させる事で、腕から伸びた魔力の刀身も振り回され、丸鋸盤に似た高速回転で斬撃を繰り出していたのだ。
(さっきの攻撃の時に、腕だけを背後に回らせていたのね)
起こった原因を直ぐに理解したシャラナは、魔導の大天使3体の損傷状態を確認する。
魔法による刀傷度合は大きいが、飛行などの身体の動作に支障を来す程の重傷ではない。それに魔導の大天使は治癒魔法を有している。各自で傷を治癒すれば問題は直ぐに解消する。
シャラナは魔導の大天使3体に各自損傷治癒を優先せよと、意思伝達による指示を下す。そしてその間の護りの魔法を即座に発動出来るよう、シャラナは異様な動像の動向を見逃さぬように視界に捉える。
(む? あれは治癒魔法? 完治されるのはちょっと困るぞ!)
3体の魔導の大天使が自身の傷を治し始めたのを目にしたガイアは、それを阻止する為、若しくは傷が完治仕切る前に倒す為に動像を急速発進させる。
異様な動像の発進に合わせ全ての腕が集い、本体と共に追従する。
(回転!!)
集った六腕を輪の様に広げ、本体を中心に全ての腕を高速回転させる。腕に今も宿る魔力の刀身は高速回転により、接触した相手に斬撃を齎す光の輪を作り出す。
「〈魔力大障壁〉!」
標的と為った魔導の大天使の目の前に、シャラナは障壁を展開する。
高速回転する6本の魔力の剣が障壁に衝突し、金切り音とは似て非なる奇妙な音が煩く響かせる。
魔力の剣と魔力の障壁が接触した数秒後、障壁は削り斬られる。
その勢いで異様な動像はそのまま前進し、眼前の魔導の大天使を横真っ二つに斬り裂き倒す。
(そんな…!)
力押しで魔導の大天使1体を葬る光景に、シャラナは僅かに動揺する。
だが、動揺から直ぐに気を引き締め直したシャラナは、完治した2体の魔導の大天使に反撃の指示を意思伝達する。
(隙あり!)
2体の魔導の大天使が魔法を発動させようとした所に白金の動像が突如と現れ、両手で持つ巨鎚を横にフルスイングし、1体の魔導の大天使を殴り飛ばす。
狙ってたのか、殴り飛ばされた魔導の大天使はもう1体の魔導の大天使に勢い良く激突し、地面を1度弾み、そのまま転げる。
(しまった! 騎士の大天使と守護の大天使達に任せ切りにした所為で、他の動像の警戒が疎かに…!)
周囲への警戒が散漫と為っていた事に、シャラナは自責の念を抱く。
だが、それは今のシャラナにとって、無理もない事である。
是迄に経験した事の無い荒れ狂う様な複数戦で、常にその戦況を把握し続けるのは非常に困難だ。
戦場というものを熟知し、常に変化する戦況を先読みが出来る有能な指揮官でも、その全てを完璧に対応するのは至難と言える。
地に伏す2体の魔導の大天使に向かって、巨剣を持つ1体の神秘銅の動像が迅速に迫り来る。
「また別の動像…!〈魔力大障壁〉!」
既に巨剣を振り上げている攻撃体勢の動像を視認し、シャラナは即座に障壁を張り、その場から退避が出来ない魔導の大天使を護る。
恐ろしい速度で振り下ろされた巨剣は障壁に接触し、強烈な衝撃を打ち付ける。
巨剣を打ち付けられた魔力の障壁は亀裂を生じ、無理やり砕かれた。
(貰った!)
障壁を砕いた直後、更に防御対応される前にガイアは六腕の動像を急速発進させ、2体の魔導の大天使へと一気に迫る。
至近距離にまで迫った異様な動像は2体の魔導の大天使を擦れ違い様に、六腕に宿る魔力の刀身で斬り伏せる。
これで3体全ての魔導の大天使が、この場から消滅した。
大天使側はより劣勢な状況に追い遣られ、先程までの優勢が新たな動像達による圧倒的暴力によって蹂躙されていく。その動像達の過剰強化された圧倒的暴力の前に、今も大天使達は防御に徹する事に手一杯の状態だった。
前衛の動像達の移動速度や攻撃速度は、もはや動像の機動性を逸脱していた。
その戦闘動作はまさに、歴戦の戦士のものであった。
攻撃力も軽くA等級に匹敵する破壊力。たった1体だけでも手に余る、金属の怪物と言って良い。
そして動像達の恐怖の逆襲進撃により、12体も居た大天使達は蹂躙されるが如く全て葬られ、消滅するのだった。
(全員やられた…! また召喚して戦力差を埋めないと…!)
シャラナは急ぎ新たな大天使達を召喚しようと、多量の魔力を込め出し、召喚魔法を発動させようとする。
しかし、召喚魔法発動させようとするシャラナに、ガイアは思い切った妨害を仕掛けた。
(出~て来ーい!!〈砂波〉!!)
ガイアは魔法発動する直前に動像達を一斉に急速後退させ、その直後に大量の砂を出現させた。そしてそれを高波へと変化させ、シャラナの周辺一帯を覆い尽くそうと前方に押し寄せる様に迫らせた。
「ええーっ!! それは遣り過ぎだってーっ!!」
シャラナは思わず叫んだ。
そして如何対処するのが最善かと、慌てて思考し出す。
大量の砂に埋もれてから這い出れば、姿が透明による現象で其処に誰も居ないのに、穴が不自然にポッカリ開く様に見えてしまう。それは其処に自分が居る事を教えてしまう事になる。かといって魔法で自身を護れば、それも自身の居場所を教える行為にもなってしまう。
大量の砂を被ってバレるか、魔法で自身を護りバレるか。
選択肢は2つのみ。
シャラナは迷わず最善だと思った選択をした。
「だったら吹き飛ばす!〈空圧大爆風〉!!」
シャラナは現在の自分にとって、一番威力が高い風系統魔法を発動させる。
押し寄せて来る砂の高波の目の前で、圧縮した空気を爆裂させ、殴り飛ばすかの様に吹っ飛ばす。
(直ぐに発動場所から離れて、もう一度召喚を…!)
シャラナは魔法を放った直後にその場から離れ、別の場所へと移動を開始した。
「―――え?」
その直前、巨大な何かがゴウッと重い風圧を鳴らし、シャラナに向かって高速接近するのだった。
シャラナの視界に映ったのは金属製の大きな掌だった。それも6つ。
そしてその6つの手の本体――――異様な動像が視界全体に映る。
恐ろしい速度で迫り来る眼前のそれは、下手をしたら恐怖を刻み込み兼ねない金属の怪物に見えてしまう威圧感だった。
迫り来る異様な動像の6つの掌がぐわっと広げ、シャラナを掴みに掛かった。
(見ー付ーけーたーぞー!!)
「イヤァアアアアァァァッ!!」




