救済の恵みと魔物襲来11-5
北部防壁前で隊列を組み、既に武装を整えた凡そ70名の騎士団、6名の警備兵、36名の魔導師団が、総指揮官のセルシキア騎士団長の支持の下で待機していた。
ガイアを含む残りの者達は防壁の上から、此方に向かって来るホブゴブリンが率いるゴブリンと狼の群れの動向を見張る少数の者と、戦闘準備を整える多数の者で分かれていた。そして胸壁に身体を隠す弓兵達は、弓の弦の張りと強度の具合と矢筒に入っている矢の本数を再度確認をしながら、戦闘準備を整えていた。
フォビロド魔導師団長は、自身が率いる魔導師団員に主力で使う攻撃魔法と支援魔法や、それとは逆に今回使ってはいけない――――使うと味方にも被害が及ぶ攻撃魔法、特に広範囲型の攻撃魔法の使用禁止を伝えていた。
レウディン、エルガルム、ベレトリクスは今回の殲滅戦には参加しないが、予想もしない不足の事態が起こった場合は、セルシキアも含む彼等も参戦する事となっている。
特に、幻神獣フォルガイアルスはそうだ。
幻神獣フォルガイアルスの力なら、たとえ小鬼から進化し強く為った大柄な小鬼であっても、そして72匹程度の群れであっても、圧倒的な膂力と圧倒的強大な魔法で、1分どころか30秒も経たずに殲滅させる事が出来るだろう。
――――いや、間違い無く出来る。そう誰もが確信している。
「シャラナ。今回は戦闘に参加しなくても構わないから、そう構える事はない」
レウディンは短杖をホルダーから引き抜いていたシャラナに言う。
「それでも、いざという時の為に何時でも魔法を発動出来る様、準備はしておきます。御父様」
シャラナは賢者エルガルムの下で魔導師としての修行をし、戦闘経験は魔導師団の者達よりは未だ劣るものの、魔法に関する実力は殆ど大差無い。魔導師として充分に闘える存在である。
(流石は…私の娘だ)
面には決して出さないが、自分の愛娘が貴族としてだけでなく、1人の魔導師として成長した事に、レウディンは内心で嬉しく思い微笑んでいた。
「うむ、良い心掛けじゃ」
エルガルムはうんうんと頷き関心する。
その場に居たガイアも共感し、うんうんと頷き関心していた。
「それに、滅多に見ない大柄な小鬼を実際に見知る事が出来ますし、小鬼の上位種が如何いう存在か知っておかなければ、後の対策に支障が出る可能性もありますから」
小鬼は弱い。
しかし、だからといって、小鬼から進化し上位種と為った大柄な小鬼も弱いとは言えない。そういった考えで大柄な小鬼に挑む者は、蛮勇にも値しない慢心を抱いた愚者でしかない。
シャラナは小鬼と闘った事があるから知っている。
弱い小鬼達が徒党を組んで襲い掛かって来る恐ろしさと厄介さを。
小鬼に限らず、力の弱い者でも大多数であれば、己よりも強い敵を圧倒的数の暴力で殺す事を可能にする。
シャラナは修行の旅で、師である賢者エルガルムの下で、複数の小鬼との実戦を言葉でよりも感覚で理解していた。
小鬼如きでも決して侮ってはいけない、と。
「たかが小鬼程度なら、やはり警備兵なんぞ派遣する必要は無いではないか」
この場に連れて来た慢心を抱く愚者が、嘲笑の言葉を呟きほざく。
その愚者は言わずもがな――――ダダボランである。
その言葉を耳にした者全員は、冷徹な視線で彼を睨んだ。
「その必要無い理由について、詳しく聴かせて貰おうか。ダダボラン」
レウディンは低い声音で、ダダボランを脅すかの様に問うのだった。
全員から向けられる極寒の視線を浴び、恐怖しながらもダダボランは口にし出す。
「そ…それは我々人間よりも劣る小鬼だぞ? ならば村の連中でも事足りるではないか。大柄な小鬼も上位種といっても、所詮は小鬼と変わらないだろ。だから幾ら小鬼が群れで現れたからといって、たかが小鬼如きにわざわざ警備兵を雇って村に派遣するなど、金が勿体無いではないか」
この愚者―――ダダボランは、小鬼なんて誰でも簡単に倒せる弱い魔物だと認識していた。上位種である大柄な小鬼も大差変わらない弱い魔物だと。そして、たかが小鬼如きから村を護る為に、警備兵を派遣するなど金が勿体無いとまでほざくのだった。
火に油を注ぐ様な私利私欲が含まれた発言に、全員が眉を顰め、苛立ちを面に表していた。
愚者ダダボランは困惑する。
何故その様な目を向けて来るのか。
小鬼如きなど脅威でもないではないか。
そんな事に警備兵を派遣する方が金の無駄ではないか。
寧ろ、これは普通の考えではないか。
そう自分勝手な考えが正しいと、間違った確信を抱いていた。
(最後の理由が結局金かよ…。金持ちだった癖に…ケチだなぁ)
ガイアだけは呆れた目でダダボランを見ていたが、彼の自分勝手な言葉に更に呆れるのだった。
そしてレウディンは愚かな発言をほざいた愚者に対し、静かに冷徹な声音で論破をし始めた。
「小鬼が弱い魔物である事は、私だけでなく殆どの誰もが知っている。それに関しては正しい。だがな、それは1匹だけの話だ。どんな弱い小鬼如きでも、数を揃え徒党を組まれれば、村にとっては立派な脅威だ。お前は魔物による被害報告を改竄や隠蔽する前に、その報告書に目を通してなかったのか? 今回の被害に多数の小鬼が原因だと本来の報告書には記されていたぞ」
実際、被害に関する報告書の内容にダダボランは目を通していなかった。
如何せ改竄と隠蔽をして偽の報告書をでっち上げる為、実際の内容には興味すら持たなかったのが理由である。
「そして貴様は警備兵を派遣しなかった結果……言わなくとも解るだろう。村が滅び掛けたのだぞ」
ダダボランは口を開くだけで、何も言い返す事が出来なかった。
しかし、それでも何か言い訳を愚考し、自分の言い分を正当化しようと考えを頭の中で巡らす。
「そもそも、私は前から疑問に思っていたのだが―――」
必死に無い悪知恵を絞っていたダダボランに、フォビロド魔導師団長が不意に問い掛けた。
「―――貴様が言う人間より劣る小鬼相手に、貴様は勝てるのか? いや、それ以前に闘えるのかね?」
答えは簡単だ。
――――勝てない。そして、真面にやっても闘えない。
この場に居る誰もが判る事だ。
但し、デベルンス一家だけは判っていない。
いや、正確に言えば、思い上がりの勘違いをしていた。
――――絶対に勝てる、と。
「わ…私を馬鹿にしているのか、クロクタス! 私は魔導師、魔法を使えるのだぞ!」
「だから何だ?」
「私は生まれながらにして選ばれた一流の魔導師なのだぞ! その私が、たかが小鬼如きに負けるとでも言うのか!?」
「負けるとも」
ダダボランの主張にならない主張を、ズバッと一刀両断するが如くフォビロドは短く答えた。
「ち…父上は一流の魔導師ですぞ! そんな父上に、小鬼如きが勝てる訳が無い!」
父親であるダダボランの主張に加勢し、ガウスパーも応戦するのだった。
「そ…そうだとも! 息子の言う通り、この私が小鬼如きに負ける筈が無い! それにガウスパーも私と同じ優秀な上級魔導師だ! 私も息子もあんな奴等…魔法で一掃出来る!」
また、調子付き始めた。
(まーだ言うか。あんなショボい火の球で勝てる訳が無いだろう。…というか、そもそも実戦すらした事無い癖に、よく勝てるだの優秀だの――――」
その時、ガイアはある事を閃いた。
(……この状況、利用出来るかも)
ガイアは1度皆から背を向け、紙と羽根洋筆を取り出し、こっそりと閃いた案を書き綴るのだった。
「貴様と其処の馬鹿息子が優秀とほざくか。証拠映像で神獣様に炎系統魔法を放った映像を観たが、あれの何処が一流と言える。あんな〈放火〉と〈火炎球〉は初めて観たよ。それも大きさも威力も小さい。あれでは敵に火傷は負わせても、焼き殺す事など出来る訳が無い」
冷徹な視線を向け、言葉には呆れを含みながらフォビロドは淡々と正論を告げ論破する。
彼が次々と論破する中、ガイアは閃いた案を書き綴り終え、その書き綴った内容が見られない様にし、後ろからレウディンを軽く突っ突き此方に振り向かせた。
「ん? 如何かしたかな?」
ガイアはちょいちょいっと手招きする仕草をし、書き綴った閃き案をレウディンに見せた。
(ちょっと思い付いたんだけど、こういうのは如何かな?)
その書き記されたガイアの閃き案を見たレウディンは、ニヤリとちょっと悪い笑みを浮かべ、「なるほど…実に丁度良い」と呟いた。
「ちょっと宜しいでしょうか」
レウディンはこの場に居た者、エルガルム、ベレトリクス、セルシキア、フォビロドを手招きし呼び寄せた。シャラナは呼ばれるまでもなく父親の下に近寄った。
レウディンの下に集まった彼等に、ガイアは閃き案を見せる。
ガイアの書き記した案を見た、シャラナを除く彼等も良い意味で少し悪い笑みを浮かべるのだった。特にフォビロドの笑みには怖いものが浮かんでいた。
「如何でしょう? 今回の状況に打って付けな案だと思いますが」
レウディンは彼等に、ガイアの案の評価を窺った。
「これはとても良い案です、フォルレス侯爵殿。実に丁度良い。これなら奴等の残った傲慢を全て圧し折れる筈です」
フォビロドからは実に良い高評価が付けられた。
「これは良いわねぇ。口だけ達者な無能には1番効果的な方法だわぁ」
ベレトリクスもフフフッと笑い声を少し漏らしながら、ガイアの案に高評価を付けるのだった。
「じゃが、死なせてはならんぞ。奴等には未だ他にも受けて貰わなければならん罰があるからのう」
エルガルムもガイアの案に賛成しつつ、彼等を決して死なせてはならないと念押しするのだった。
「そこは私が上手く戦況を調整しよう。いきなり群れで来られたら意味が無いからな」
セルシキアも同じくその案に賛成し、その案を遂行する為の戦況作りを頭の中で思案するのだった。
そして一斉にデベルンス一家へと顔を向けた。
「丁度良い機会だ。貴様とその馬鹿息子の実力、実際に見せて貰おうではないか」
「……え?」
ダダボランは彼の表情を見て、顔を引き攣らせた。
息子のガウスパーも、父親と同じ表情を顕にする。
フォビロドの口元だけがニヤリと笑みを浮かべ、それとは相反した極寒の視線をダダボランとガウスパーに浴びせながら、2人にとって嫌な予感をさせる言葉を告げるのだった。
それも少し楽しみに――――。
「御願いします!」
(りょーかい!)
ガイアは防壁の上に居るセルシキアの指示に従い、魔法で防壁に穴を開け、村の外側への出入口を開通させた。
開通させた先には、大柄な小鬼が率いる小鬼と狼の群れが、村へと駆けて来る姿が視界に映り込んだ。随分と距離が縮まっていた為、魔物の群れの姿が大体はっきりと視認出来る様になっていた。
「前へ!」
セルシキアの声に従い、凡そ70名の騎士団員と6名の警備兵、そして36名の魔導師団員が前進し、防壁の外側へと前線に赴く。
そして3人の騎士が、デベルンス一家を無理矢理に連行して防壁の外側へと引っ張って行った。
最後尾からは、ガイアが彼等の後ろの後を付いて行くのだった。
ガイアには、最初の開戦前に大切な役割がある為――――。
凡そ計112名の前線戦闘員と、デベルンス一家を引っ張り連行する戦闘には参加しない3名の騎士、最後にガイアが防壁の外側へ出た後に再び魔法を行使し、開通させた防壁を穴を完全に塞いだ。
ガイアの大切な役割の1つ、それは魔法による防壁の開閉役だ。
(良し。ちゃんと塞がった)
これで村に小鬼や狼が侵入する心配は無くなった。
ガイアは開けた防壁の穴が隙間無く完全に閉じ切った事を確認し、視線を大柄な小鬼が率いる小鬼と狼の群れへと向けた。
平野狼に騎乗する小鬼の騎手達と森林の大狼に騎乗する頭目の大柄な小鬼が此処から2,300メートル近くまで迫って来ていた。
互いの距離が縮まる。それと同時に開戦の時が近付いて来る。
平野狼達の駆ける足音が徐々に大きく為り近付く。
特に森林の大狼の駆ける足音は、平野狼達よりも大きかった。
小鬼達が片手には、適度に太い樹を伐り、持ち手部分は適当に削り整えた棍棒が握られていた。
頭目の大柄な小鬼が持つ棍棒は、他の小鬼達が持つ物とは比較にならない大きさだった。更に太く長く大きい木の棍棒を軽々と片手で所持していた。
だが、武器は棍棒のみで防具は一切纏っていない。防御面の方は一切考えていないか、そもそも防具を持っていないだけかの何方かだ。
前方に76名の近接戦闘員、後方に12名の遠距離魔法攻撃及び魔法支援強化を担う魔導師団員は各自、鞘から剣を抜き、盾がある者は盾を、何時でも魔法を放てる様にホルダーから短杖を引き抜き、敵の群れを見据えながら構えた。
ガイアも直ぐに魔法を発動出来る様に魔力を予め備えていた。
残り距離、約150メートル。
狼達の駆ける足音と、小鬼達の下卑た嗤い声が聞こえて来た。
残り距離、約125メートル。
大柄な小鬼と小鬼達の醜い顔が見えてきた。
残り距離、約100メートル。
頭目の大柄な小鬼が大きな棍棒を高く翳し、周りの小鬼達の士気を向上させる。
残り距離、約75メートル。
殺戮快楽に満ちた醜い表情を顕にする大柄な小鬼と小鬼達は、更に勢いに乗る。
そして残り距離、約50メートルを切り――――。
(良し! 今だ!)
ガイアはもう1つの役割を遂行する為、即座に魔法を発動した。
(〈石壁〉!)
魔法によって地面から出現した巨大な石壁が、村を囲う防壁に隙間無く繋がり、その場に居る敵も味方も全員囲い閉じ込めた。
ガイアのもう1つの役割、それは敵を逃がさない様に敗走を完全に断つ事だ。
これで逃げ出し生き残った小鬼が、永い時間を掛けて進化する可能性を潰す事が出来る。
同じ悪い繰り返しが無くなる。
大柄な小鬼と小鬼達、それ等を乗せる狼達は突然の石壁の出現に驚愕し、囲われ逃げ場が失った事に慌てふためいていた。
これである御膳立ては整った。
(さて……と)
ガイアは後ろに居る者達に顔を向ける。
それはデベルンス一家と、彼等を連行する3人の騎士だ。
ガイアは騎士に頷き、ある合図を送り促す。
幻神獣フォルガイアルスの合図に2人の騎士は鍵を取り出し、ダダボランとガウスパーの手錠を外した。
これには予想外だと言わんばかりに、デベルンス一家は困惑の表情が浮かび上がっていた。
そんな困惑などお構い無く、2人の騎士は手錠を外した2人を引っ張り、最前線の前へと連れて行った行った。
慌てふためいていた小鬼達もその様子を見て、首を傾げながら困惑をしていた。
2人の愚者は、敵と味方のど真ん中に放り出される様に、2人の騎士に押し出された。
「な…何をさせる気だ!?」
2人の騎士は、ダダボランの質問に一切答えず数歩後退した。
そして防壁の上から、フォビロドの冷徹な声が響いてきた。
「先程貴様は言ったな。小鬼如きに負ける訳が無い、と。折角の機会だ。貴様とその馬鹿息子の実力を、実際に此処で見せて貰おうではないか」
「な、何だと!?」
ダダボランは小鬼を相手に闘う事に恐怖はしていなかった。代わりに沸々と怒りが沸き起こっていた。
「貴様…!! 何処まで私を馬鹿にする気だ!!」
彼が小鬼相手に闘う事に恐怖しないのは、ただ単に怖いもの知らずから来る高慢さからだ。
そして怒りが沸き起こる理由、それは自身はこの世に選ばれた強者であるという事を否定されたからである。
ダダボランとガウスパーは、今も己の脆弱さを認識出来ていなかった。
一流どころか、駆け出しの魔導師よりも実力が劣る無能な魔導師である事を。
そんな無いに等しい今の実力では、弱い小鬼1匹すら勝てない事を。
そんな2人には、実戦という洗礼をその身に刻み込まなければ、決して理解出来ないのだ。
――――愚者であるから。
「馬鹿にされたくなければ、闘って証明して見せろ」
「む、無茶を言うな!! 私と息子には短杖が無いのだぞ! それで如何やって闘えというのだ!!」
「魔法は短杖や杖が無くても発動は出来る。そんな事も知らないのか」
「ふざけるな!! 今は持っていないのだから、絶対に闘わんぞ!!」
ダダボランは闘えない理由にもならない苦しい抗議を、フォビロドに言い放つのだった。
ダダボランとガウスパーは、完全に便利な物頼りだった。
(やれやれ…。本当に酷い人間だな)
ガイアは前へと歩み出し、面倒くさい言い訳を口から出すダダボランとガウスパーの前へと近付いた。
幻神獣が目の前へと近付いた所為か、調子付き勢いに乗った我儘が一瞬で委縮し、それ以上の面倒くさい言い訳が言えなくなった。
ガイアは背に生えた樹木に手を伸ばし、樹木に引っ掛けていたある物を取り出し、2人の愚者の前に放り投げた。
放り投げられたある物、それは2本の王笏の様なタイプの短杖だ。
1本は白金を基調とし金の細工が施され、先端部分には大粒の紅玉が嵌め込まれた短杖。これはダダボランの所有していた物だ。
もう1本の方は、上質な木に金を塗ったくったかの様な細工が施され、木の表面が殆ど隠れており、これにも大粒の紅玉が先端に嵌め込まれた短杖である。これはガウスパーが所有していた物だ。
ガイアは愚者2人を睨み付けながら顎をしゃくる。
その仕草から伝えている意味、それは――――
「―――ンンンン」(―――闘え)
ガイアは低い唸り声を鳴らし、闘いから逃げられない様に促すのだった。
しかし、2人のデベルンスは直ぐに拾おうとはしなかった。
今度は闘う事に躊躇い出したのだった。
たかが小鬼程度に負ける訳が無いと都合の良い思い込みはしているが、先程の我儘は怠慢から出た言い訳でもある。
簡単に解り易く言えば、面倒くさいという理由を遠回しで言っているだけなのだ。
しかし、幻神獣フォルガイアルスから短杖を目の前に放り投げられる事は予想だにしなかった為、戸惑い躊躇うのだった。
だが、そんな怠慢から来る躊躇いをフォビロドの冷徹な言葉が圧し潰す。
「短杖があれば闘えるのだろう? 神獣様からの御慈悲だぞ。早く拾え」
「し、しかし……」
ダダボランは未だ言い訳を口にし、小鬼如き相手との面倒な闘いから逃れようと思案を巡らす。
フォビロドは愚考を思案する僅かな時間をも与えんと、愚者2人を追い詰める言葉を喰らわせた。
「一流の魔導師なのだろう? 貴様自身がそう言ったんだ。其処に居る小鬼共を、貴様と馬鹿息子の魔法で一掃出来るのんじゃないのか?」
もう、逃げ場は何処にも無かった。
この場から逃げ出す事は勿論の事、言い訳をして言い逃れすらも出来なくなってしまった。
今、ダダボランとガウスパーに残された選択肢は端から1つだけ―――。
「とっとと拾え。そして闘え」
2人の愚者は止むを得ず、目の前に放り投げられた己の高価な短杖を拾い上げるのだった。
そして後ろを振り向く。
大柄な小鬼と小鬼の群れへと。
しかし、未だそれでも恐怖していなかった。
そして限り無く侮っていた。
――――勝てて当然だと、揺るぎない薄っぺらな自信を抱いていた。
大柄な小鬼と小鬼達は、敵達の会話の遣り取りに疑問を抱きながらもその様子を窺い、頭目の大柄な小鬼は考察する。
前に出て来たあの2人の人間は何だ?
見た所、戦士では無い事は一目瞭然だ。剣も鎧も身に付けていないのだから。
その内の1人、太った人間は壁の上に居る人間と何か言い争っている様だったが、味方では無いのか? それともただ単に仲が悪いだけか?
……別に如何でも良いか。殺す事に変わり無いのだから。人間同士の仲など知った事じゃない。
しかし、大柄な小鬼は警戒しなければ為らないある存在を、魔物としてのの本能が警戒心を限界以上に引き伸ばしていた。
あれはいったい何だ?
人間の魔導師が造り出す動像という物か?
いや、違う。
あれは動像なんかじゃない。
――――絶対に触れてはいけない強者だ。
あれには絶対近付かない方が良い。近付けば絶対に容易く殺される。
ならば、あれに警戒しつつ此処に居る人間共を殺そう。
……ん? あの2人の人間が何かを拾ったようだ。
あれは……武器? いや、違うな。あれは短杖……魔導師が使う道具か。
あの人間は魔導師なのか。
それが前に出て来るという事は……あれが奴等の切り札という事か?
大柄な小鬼は2人の人間に対し、念の為に警戒をした。
「オイ。マダテヲダスナ。アノニンゲンノデカタトチカラヲミル。ケイカイシロ」
他の小鬼達にも警戒を促し、2人の人間の出方を窺った。
しかし、その念の為の警戒は、小鬼達にとって無意味なものであったのだ。
白金製の短杖を握り締めたダダボランは、苛立ちを面に曝け出し、小鬼達に短杖を差し向ける。
「糞…クロクタスめ…! 何処までも私を馬鹿にしおって…!」
優れた己を馬鹿にされ、それに対する不快な苛立ちをぐちぐちと口から漏らしていた。
(相手は小鬼だぞ! 一流の魔導師である私が負ける筈が無いのは誰でも解るだろう!)
未だにその愚者は、高慢を抱き続けていた。
「見ていろ~。この私と優秀な息子の圧倒的な魔法の威力で小鬼共を一掃し、その事実を利用して我々デベルンス家の貴族の地位復権と全ての罪を帳消しを強要させてやる!」
ダダボランは、この状況が自分にとって復権の機会だと思い込んでいた。その機会は掴む事が出来ない虚ろな幻である事だとも判らずに。
「行くぞ、我が息子よ! この場に居る全ての愚か者共に、我々が如何に優秀な魔導師である事を思い知らせてやるのだ!」
「勿論です、父上! 結果は解り切っていますが!」
何時も通りの調子と為ったダダボランとガウスパーは威勢を口にし、短杖の先端に魔力を込め始めた。
その様子を窺っていた小鬼達は一斉に構え、今から飛んで来るであろう魔法攻撃に対して警戒をする。
小鬼達は開戦の火蓋を切る敵の魔法発動を待つ。
発動の瞬間を見逃さない様に、敵2人を注意深く睨み付ける。
敵2人は自信の色に満ち、相手を嘲る不敵な笑みを浮かべていた。その表情から小鬼達、特に頭目の大柄な小鬼は2人の敵はかなりの魔法の使い手だと予想をする。
――――しかし、その予想は徐々に疑問へと変化し大きく為っていくのだった。
既に1分は経過しているのにも関わらず、未だに人間2人からの魔法が飛んで来る様子が無かった。
短杖の先端には魔法の炎が出現してはいた。
しかし―――小さい。
小さ過ぎる。
1分も経っていながら、その炎は成長していなかった。
炎というよりは、火と言うべきだ。
徐々に疑問が大きく為ると同時に、人間2人に対する警戒心は徐々に小さく為っていった。
大柄な小鬼は数少ない魔法攻撃の経験を思い返し、更に疑問が浮く。
――――魔法ってこんなに発動が遅かったか?
確信は無い。だが確信を得る為に、頭目の大柄な小鬼はもう暫く様子を見ながら待つ事にした。
暫く待って1分半――――。
「さぁ! 覚悟するがいい! 小鬼共め!」
やっと魔法が発動するようだ。
「一流の魔導師の私と息子の強さを、その薄汚い身を以て知るがいい!」
そして人間2人から魔法が放たれる直前、小さくなった警戒心を一気に大きくし小鬼達は構えた。
「喰らえ!! 〈火炎球〉!!」
2人の人間から魔法の火の球が放たれた。
――――その直後、小鬼達は一瞬で、警戒心は再び小さく窄むのだった。
2人の人間の魔導師から放たれた火の球は、余りにもショボかったのだ。
大柄な小鬼と小鬼達は、その醜い顔をポカンとした表情を浮かべ、それを眺める。
人間の握り拳より少し大きい程度であり、此方に向かって来る速度は歩くより少しだけ速い程度。
それが2つ、ふよふよと飛んで来ている。
小鬼達は目をぱちくりさせ、互いの醜い顔を見合う。
そして浮かんだ疑問が更に大きく為る。
あれ、本当に魔法か? と。
大柄な小鬼は、ショボい火の球を放った人間の魔導師2人を観察した。
何方も自信に満ち溢れた敵を嘲る笑みを浮かべている事と、此方に向かって来る魔法の火の球に何か違和感を感じた。
――――あの人間、本当に強い魔導師なのか?
頭目の大柄な小鬼は森林の大狼から降り、地面に幾つか転がっていた石を2つ拾った。
そしてふよふよとのんびり飛んで来る火の球に向けて、拾い上げた石を2つ同時に投げた。
投げられた2つの石ころが2つの火の球に当たった瞬間、ボンッと小さく間の抜けた音と共に爆ぜ、火の球は跡形も無く消えるのだった。残ったのは焦げた2つの石ころだけ。
再び2人の人間を見てみると、何方も自信に満ちていた表情が真逆に一変し、まるで信じられないと言わんばかりの驚愕と絶望が入り混じった表情に為っていた。
小鬼達はまた、互いの顔を見合わせた。
そして、頭目の大柄な小鬼は完全に理解し――――嗤い出した。
「ギャハハハハハハハハハハハハ!!」
大柄な小鬼の嗤い声に続く様に、配下の小鬼達も完全に理解し嗤い出した。
小鬼達の中にあった2人の人間に対する警戒心は完全に消え、代わりに嘲り見下し、指を差しながら大声で嗤う。
あの人間2人は俺達よりも弱いぞ。
あんなショボい魔法は見た事が無い。
あれで俺達を殺せるとでも思っていたのか?
大柄な小鬼と小鬼達は自分よりも完全に弱い人間、格下の存在だと確信し見下し、嘲笑に満ち溢れた嗤い声をその2人の人間に浴びせるのだった。
――――あの人間は馬鹿だ、と。
その人間2人――――ダダボランとガウスパーは驚愕と絶望を浮かべ、人間よりも劣る小鬼共に嗤われ、馬鹿にされていた。
「そんな……そんな馬鹿な…!」
ダダボランは理解した事を信じようとしなかった。
「小鬼だぞ…? たかが小鬼相手に魔法が通用しないだと!?」
己が小鬼よりも力が劣る弱者である事を、認めようとしなかった。
「私は……一流の魔導師なんだぞ!!」
己はただ魔法が使えるというだけの、無能な魔導師である事を認めようとしなかった。
息子のガウスパーも同じ思いを抱いていた。
小鬼共の耳障りな醜い嗤い声が焦燥を生み、現実を夢幻だと無駄に否定をし続ける。
「オイ。オマエトオマエ、アトオマエトオマエ。セッカクダ、アノバカトアソンデヤレ」
頭目の大柄な小鬼は小鬼達の中から適当に指を差して4匹を選び、ニタリと醜い顔を歪めながら甚振れと促す。
選ばれた4匹の小鬼もニタリと醜い顔を歪め、待ってましたと醜い喜色に満ちた表情で頷き了解の意を示した。
4匹の小鬼は平野狼から降り、棍棒を右肩に乗せて悠々とダダボランとガウスパーの元へと歩み近寄って行く。
本来なら、たった1人の人間相手でも複数で群がり嬲り殺しをするのだが、今回に限っては例外だ。
小鬼全員は完全に遊び感覚で、馬鹿で自分達よりも弱い人間2人を嬲り、優越感を楽しもうとしているのだ。
「く……来るな! 薄汚い小鬼めが!」
ダダボランとガウスパーは再び短杖を差し向け、魔法を放とうとする。
「わ…私は魔導師だぞ! 魔法が使えるのだぞ! 貴様ら小鬼共より強いのだぞ! 死にたくなければ―――」
「ギャハハハハハハハ!!」
近寄って来る4匹の小鬼は面白可笑しいと言わんばかりに嘲り嗤い、人間2人に指を差しながら馬鹿にするのだった。
「アノニンゲン、スゲーバカダ!」
「アンナショボイマホウ、カンタンニヨケレル!」
「アンナヨワイマホウデ、オレタチヲコロストカ、ワラッチマウヨナ!」
「ギャハハハハハ! ニンゲンニモ、コンナアタマノワルイバカ、イルナンテナ!」
4匹の小鬼は脅威にもならないダダボランとガウスパーに対して一切恐怖せず、警戒もせずに近寄って行く。
人間よりも格下である小鬼から完全に馬鹿にされダダボランとガウスパーは苛立ちを煽られ、怒りで理性を吹っ飛ばしてしまい、ただ目の前に悠々と近付いて来る4匹の小鬼に対し、黒い本能の赴くままに殺意を剥き出し、魔法を放ってしまった。
「死ねぇえ!! 薄汚い下等な魔物がぁ!!〈火炎球〉!!」
ダダボランとガウスパーは異口同音に殺意満ちた汚い言葉を言い放ち、同時に〈火炎球〉を発動させた。
しかし、短杖の先端に込められた魔力が霧散し、何も起こらず消えてしまった。
その原因は簡単だ。
魔力を込め収束させる時間が1分半どころか30秒をも満たしておらず、放つのに必要な魔力が不足していた為、発動条件は満たされず不発に終わったのだ。
ちゃんと修練を積んだ駆け出しの魔導師でも、簡単な低位級の基本攻撃魔法の発動は遅くて3秒から5秒程度で、発動に必要な魔力を集めて発動する、これは力量が低い魔導師でも出来る事だ。
では何故、ダダボランとガウスパーはそれが出来ないのか。
それも答えは簡単だ。
魔法に関する基礎を、これまでずっと怠っていたからだ。
要は2人の中にある怠慢が原因なのだ。
「なっ…何ぃい!?」
「な…何で発動しないんだ!?」
しかし、2人はその原因すら理解出来ずに困惑した。
そして遂に4匹の小鬼が棍棒を振り被り、腹部に目掛けて振り抜き叩き付けた。
「ガハァ!」
2人の貧弱な身体に棍棒による打撃を受け、内臓にまで衝撃が響き、人生で初めての激痛に悶え苦しむ。
2人の愚者は、初めてゴブリンに対し恐怖した。それもたった4匹如きの小鬼に。
小鬼は嗤う。自分達よりも馬鹿で弱い人間を嬲るドス黒い喜悦と優越感に浸り。
小鬼達は嗤う。己を強者だと驕り誇張する高慢な人間が恐怖に歪む表情を。
大柄な小鬼は嗤う。高慢な人間を蹂躙し嬲り痛め付ける様を娯楽の如く。
そして2匹の小鬼は再び棍棒で殴り、2人の愚者は再び小鬼に殴られる。
胴体を殴り、腕を殴り、脚を殴り、背中を殴り、頭を殴り、顔面を殴る。
4匹の小鬼は何度も棍棒で、地面に転がり悶え苦しむ人間を殴り付ける。
容赦無く――――殴り付ける。
殴り付ける度、小鬼は更に高揚し、醜い顔に浮かべている喜悦を更に色濃くし歪めていくのだった。棍棒で何度も殴る途中でゴシャリと人間の身体から痛々しい音が鳴れば、更に高揚するのだった。
ダダボランとガウスパーは貧弱な身体に棍棒で打ち付けられ、殴られた箇所から走り続ける激痛に苦しみ、悲痛の声を上げ続けるのだった。
「たす…助げっ……助げでぐれぇ!」
ダダボランは助けを求める。
「イダイ、イダイよ! ダズケデ…助げでぇ!」
ガウスパーも激痛で涙を流しながら助けを求める。
2人の視界には大柄な小鬼と小鬼達が痛快に満ちた嗤い声を上げ、嘲笑の眼差しを向けていた。
余りの屈辱だった。
小鬼相手に、こうも一方的に嬲り痛め付けられる事に。
そして嫌という程身に沁み、理解をせざるを得なかった。
――――自分は小鬼よりも弱いのだと。
「誰がぁ! 助げでぐれぇえ!」
眼前に居る小鬼から逃れようと身体を引き摺り、騎士達に助けを求めようとダダボランとガウスパーは味方の居る方へと視線を向けた。
しかし、其方へと目を向けた2人の愚者の心は、恐怖と絶望で凍り付く。
視界に映る全ての者が、此方に冷徹な視線を送っていた。それも小鬼が2人を殴り始めた時からずっとだ。
誰の目にも慈悲は一欠片も宿っていなかった。
あるのは罪人に対する冷酷な眼差しのみ。
この場にはダダボランの――――いや、デベルンス家の味方は誰1人としていない。
無力なメゼンベリアは、小鬼に甚振られる夫と息子の哀れな姿をただ見る事しか出来ず、その身を恐怖で震わせていた。
誰も助けようとはせず、ただ傍観するだけだった。
大勢の人からは無慈悲で冷酷な視線を、小鬼達からは嘲笑に満ちた見下す視線を、余りにも無様な姿を晒すダダボランとガウスパーは、その両方の視線の下に晒されているのだ。
これがガイアが閃いた案。
実際に小鬼と闘わせ、己が如何に弱くちっぽけな高慢な人間かを、己は一流どころか駆け出しの魔導師にも及ばない名ばかりの無能な魔導師である事実を、その身に直接知らしめるという制裁方法だ。
どんなに正論で論破しても、理解しようとも認めようともしないのなら、実際にその実力を強制的に披露して貰えば良い。己の力が如何に弱いかを晒してしまえば、言葉よりも理解出来る上に、大勢の視線の前で実際の実力が見定められる為、言い逃れは出来なくなる。
特に闘う相手が人間よりも劣る小鬼だ。ダダボランとガウスパーに対する罰として最適な魔物である。
闘う前から「小鬼は弱いから勝てる」だの「一流の魔導師だから負ける筈が無い」とまで豪語し、高慢な姿勢を見せていた2人が一方的に小鬼に嬲り痛め付けられれば、高慢な精神は確実に圧し折れる。
そして、そんな無様な姿を大勢の視線に晒されれば、圧し折れた高慢な精神は粉々に砕け散る。
嘲り嗤う小鬼の耳障りな声を聞きながら、ひたすら小鬼に棍棒で殴られ続ける。
激痛が身体全体を走り続ける。
ひたすら屈辱を味わい続ける。
己の無様な姿を晒し続ける。
激痛に涙し、屈辱な思いで涙し、地位も、金も、何もかも失った事に涙を流す。
恐怖が膨れ上がる。
人間よりも劣る小鬼に対し、身を以て恐怖を味わう。
そして、身も凍る言葉が耳にした。
「モウ、ソノニンゲンハコロシテイイゾ」
ダダボランとガウスパーはゾワッと背筋を凍らせ、更に恐怖が膨れ上がった。
頭目の大柄な小鬼からの殺害宣告。
4匹の小鬼は命令に従い、棍棒を頭上高く振り上げ、最後の楽しみを前にし醜い顔を喜色の表情へと歪ませた。
――――やっと殺せる。
嬲り痛め付けた後に止めを刺す。そんな最後の楽しみを味わう事に、喜びが膨れ上がるのだった。
ダダボランとガウスパーは極限まで恐怖が大きく膨れ上がる。それも破裂寸前だった。
「い…嫌だ……。やべ…やべでくれ……」
ダダボランは掠れた声で、弱いと馬鹿にし嘲っていた小鬼に嘆願をする。
ガウスパーは意識が朦朧としており、声を出す気力が殆ど無くなっていた。
小鬼がそんな嘆願など、聞き入れてくれる筈が無い。
小鬼も略奪者なのだから。
地位と権力で領地の村から不当不正な徴税で好き勝手に略奪をしていたダダボランは、今では略奪される側となり、防ぐ事も抗う事も出来ない弱いと嘲った小鬼の一方的な暴力をその身に受けていた。
そして、ダダボランとガウスパーは恐怖が破裂すると同時に初めて経験をした――――。
―――――これから死へと堕ちる恐怖を。
「ウワァアアアアアア!!」
ダダボランは叫ぶ。己に訪れる死という恐怖に。
脳天に向かって死が迫る。小鬼の棍棒が頭蓋骨を砕き脳味噌を叩き潰そうと。
死の恐怖によって恐怖の許容量を超え、己が意識が破裂し、音は消え、視界が、意識が、真っ暗となった。
2人の無能で無力な愚者は、小鬼に殺される前に気を失ったのだった。
そして小鬼が棍棒を眼前の人間の脳天に振り下ろ―――――。
「エギャッ?!」
ビンッと空気を切り裂く音と、ヒュンッと空気を高速で擦り鳴らす音が耳に入った直後、4匹の小鬼は眉間のど真ん中を矢で貫かれ、何をされたのか理解する間も無く、振り上げていた棍棒を命と同時に落とし大地に伏した。
大柄な小鬼と小鬼達はいきなりの展開に驚愕し、思考が一時停止してしまった。
その思考を停止してしまうという、大きな油断と隙を作らされてしまったのだ。
そして遂に幕を開ける。
「総員!! 大柄な小鬼率いる魔物の群れを殲滅せよ!!」
開戦の火蓋が、今切られた。




