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遭遇4-3

 2頭の馬がゆっくりと速度を落としながら、御者(ぎょしゃ)の騎士に従い脚を止めた。

 御者の役目をしていた騎士は止めた馬車の御者台から降り、馬車の扉を開けて確認の質問をする。

「この辺りで(よろ)しいでしょうか?」

「うむ、問題無い」

 騎士の確認に対し、賢者エルガルムは鷹揚(おうよう)に頷きながら答えた。

「後は決めた通りに短期決戦をこなすだけじゃ。2人も頼むぞ」

「はい! 先生!」

(かしこ)まりました。エルガルム様」

 貴族令嬢のシャラナは気を引き締めながら返事をし、直ぐに魔法を発動出来るように腰の短杖(たんじょう)専用のホルダーに収まっているワンドに手を当てる。

 その専属侍女(メイド)のライファは冷静な表情のまま御辞儀(おじぎ)をし、特殊技能(スキル)〈潜影移動〉を発動し、まるで溶け込むかの様に影の中へ素早く沈み、シャラナの影の中へと潜り込んだ。

 騎士は既に(さや)からミスリル製の長剣(ロングソード)を抜き、大型の盾(ラージシールド)を構え臨戦態勢が整っていた。

 馬車から先に賢者エルガルムが降り、シャラナもその後に続きシ外に出た。

 馬車から少しだけ離れた位置に移動し、賢者エルガルムは野盗共が来るであろう方向を鋭く見詰めた。

「…さて、そろそろかの」

 感知特殊技能(スキル)によって相手の数は把握しているが、賢者エルガルムは念には念を入れ、無系統魔法を発動させた。

「〈千里視(クレヤボヤンス)〉」

 魔法の効果により賢者エルガルムの視力が強化され、遠く離れた場所の光景を視認する事が出来る様に為り、野盗と魔獣が此方(こちら)に向かって走って来る様子を視認した。

 大蜥蜴(ビッグリザード)大口の剛獣(ドゥドウル)に騎乗している野盗達の体軀(たいく)はバラバラで、先頭を走る1人以外は(ほとん)どが細身である。その身体には余り合わない鎧装備をしており、肩鎧(ショルダーメイル)だけ装備している者や上半身だけ鎧を(まと)っていたり、中には面頬(めんぽお)の付いていない(ヘルム)だけ被っている者も居り、後はみすぼらしい頭巾(フード)付き外套(ローブ)を身に纏っている者が2人、この2人はおそらく魔導師崩れの野盗だろう。

 所持している武器は其々(それぞれ)刀身の短い直剣(ショートソード)短剣(ダガー)刀身幅が広い直剣(ブロードソード)鎚鉾(メイス)を腰や背中に下げていた。弓や盾は誰1人所持していなかった。野盗達の共通している物といえば、薄汚(うすぎた)い服を身に纏っている事だけだ。

(注意するべき野盗は奴1人くらいじゃな)

 11人の内の1人、先頭を走ってる野盗だけは違っていた。

 身体全身が筋肉で膨れ上がっている様に大きく、薄汚い服の上からでも分厚い胸板が盛り上がっているのがはっきりと見て取れる。両腕の上腕二頭筋が太く盛り上がっていた。脚部の筋肉の盛り上がり方もかなりのものだった。そしてそんな身体に悪い意味で似合う顔付きをしていた。まさに野蛮人そのものと言える見て呉れだ。

 背中には余り手入れがされていない刀身剥き出しの巨大な剣と大きな鉄鎚(てっつい)鶴嘴(つるはし)状に突起した武器、特大剣(グレートソード)刺突戦鎚(ウォーピック)があり、それ以外の装備品、自身の身を護る防具は一切装備していなかった。

 まるで防具に頼らなくとも、俺は強いと言わんばかりの主張をしている様に見えてしまう。

(余程の自信家の様じゃな。じゃが、世界の広さを知らん様じゃのぅ)

 賢者エルガルムは野盗達の頭目(リーダー)であろうその男を永年の修行の旅で(つちか)ってきた経験から、ただ腕っ節だけは有る脳筋戦士だと見抜く。

 敵の再確認をし終え、〈千里視(クレヤボヤンス)〉の魔法効力を解除した賢者エルガルムは、影に潜むライファを含めた3人の方へと顔だけ振り向き、互いに何時(いつ)でも行ける事をアイコンタクトで意思疎通をし、戦闘準備の確認をした。

(ようや)く来よったか」

 野盗達の居る方向から11体の魔獣の足音が不規則に鳴り響き、此方に近付いて来るにつれて魔獣の重い足音が徐々に大きくなっていく。そして漸く肉眼で姿が見える距離になり、互いを視認出来る様になった。野盗達は魔獣の不規則に鳴り響かせる足音と共に、小さく見える姿を徐々に大きくしながら迫って来た。

 そんな野盗に魔獣用の(くら)を装着させられ乗せている6体のビッグリザードは、必死にダバダバと四足歩行ならぬ四足走行で蜥蜴(とかげ)をそのまま大きくした様な巨体を左右に揺らす特有な動きではなく、身体を揺らさずに脚だけを動かしながら前進していた。その御蔭(おかげ)で騎乗している野盗6人は振り落とされずに済んでいるのだ。

 そして残り5体の魔獣ドゥドウルも四足歩行ならぬ四足走行で此方に迫って来ていた。ドゥドウルの四足走行の仕方はビッグリザードと違い、その走る姿は大猩猩(ゴリラ)に良く酷似した走り方だった。自身の脚よりも太く大きい腕を、まるで平野の大地を両腕で同時に殴りながら跳躍(ちょうやく)する様に、丸みのある大きな巨体を前へ前へと進ませていた。

 ドゥドウルに取り付けられている鞍は一般的な形の物ではなく、鞍というよりは椅子の様な形の作りで出来たドゥドウル専用の鞍と言っていいだろう。もし、無理にでも一般の鞍を付けて騎乗しようものなら、走り出した瞬間に放り出されるのは間違い無いだろう。()ずそれ以前に、一般の鞍で騎乗する事が出来るのかも怪しいが。


 (つい)に賢者一行の前に、野盗達が魔獣を従えてやって来た。

 野盗達はやっと獲物を追い詰めたと()()()()()()()ゆっくりと近付いて来る。

 その顔は勝ち誇ったかの様に下卑(げび)た表情を浮かべていた。

 だが、彼等は追い回し続けただけだ。

 何も考えずに、ただ目先の欲に()られながら追い回していただけだ。

 追い回している相手に踊らされている可能性など考えず、そして踊らされている事にも気付かずに。

 獲物を見付け、そのまま追い掛け始めた時からずっと勝者のつもりのまま、長時間追い回す愚行(ぐこう)を愚行と思わずに追い掛け続けた。

 そんな野盗達の愚行の所為(せい)で、6体のビッグリザードと5体のドゥドウルはかなり疲弊(ひへい)していた。

 ビッグリザードは見開けば(こぼ)れ落ちそうな眼球にある黒い瞳を追い回していた獲物にギョロッと視線を向けているが、長時間による走行により(かす)れた荒い呼吸を何度も吐いては吸っていた。

 ドゥドウルも同様に、腹部の中心から少し上に亀裂が入っている様な所が大きく横に割けた大口を開き、大きな両肩を上下に動かしながら荒い呼吸をしていた。

 明らかに疲弊(ひへい)しきっている魔獣の様子を、野盗全員は気付きもしなかった。

(こりゃあ、馬鹿確定じゃな)

 賢者エルガルムは視界に映る野盗達を見て、内心で呆れた溜息(ためいき)()いた。

「ようやく諦めたようだな!」

 先頭のドゥドウルの上から、野盗達の頭目(リーダー)(おぼ)しき筋肉モリモリの男が腕を組みながら大きな声を吐き出す。

「観念しな、老いぼれジジイ!」

 ニタニタと嫌味たらしい笑みを浮かべながら、視線を1人1人と順番に映す。賢者エルガルムから御者の騎士、最後に目に映した貴族令嬢のシャラナに対しては全身を隈無(くまな)く舐める様に、彼女の美しい容姿を嫌らしい笑みを更に歪めながら観察をする。

 そんな彼から老いぼれジジイと言い放たれた賢者エルガルムは、頭の中で彼が如何いった人物であるかを直ぐに悟った。

 此奴(こいつ)は完全な世間知らずにして大馬鹿者であるという事に。

 この世界の人間や亜人等の誰もが、賢者エルガルムという名を訊けば知らぬ者など居ない有名な最強魔導師である。にも関わらず、目の前に居る野蛮な男は老いぼれ(ジジイ)という存在の正体すら分かっていなかった。しかも彼だけでなく、その取り巻きの野盗達も老魔導師の正体が分かっていなかった。

 その事に賢者エルガルムに限らず、シャラナも余りにも無知な彼等に対し呆れた表情を向けた。隣に居る騎士も顔は見えないが面頬付き兜(クローズド・ヘルム)の下で、同じ呆れた表情を浮かべながら両肩を(すく)ませる。

 それを見た野盗の頭目(リーダー)と思しき男の表情は、嫌らしい笑みから怒りに染まった顔へと変わった。

 自分の中に掲げている強者と言う簡素(チープ)誇り(プライド)を貶された事で殺意に満ちた怒りが込み上げ、老魔導師達に向かって怒鳴り散らした。

「テメェッ!! 状況分かってんのか!! この俺に追い詰められてんだぞっ!!」

 賢者エルガルムはやれやれと頭を横に振り、如何(どう)せ通じないであろう真実を話す。

「わざと追わせたんじゃよ。長時間走らせてその魔獣達を疲弊させる為にのう。そもそも、儂等(わしら)(はな)からお前さん等を捕らえるのが目的じゃよ」

「捕らえる!? 馬鹿かテメェは! この最強の戦士ドボギ様を老いぼれ如きが勝てる訳がねえだろ!!」

 賢者エルガルムの予想通り、野盗の頭目(リーダー)であるドボギという男は老魔導師の言っている事を理解する以前に、聴き入れもせず信じようともしなかった。

 そして男は、更に怒鳴り散らす様に続けて言う。

「何より、こっちの方が数でも圧倒的に有利だ! 魔獣だっている! 如何(どう)見たって追い詰められてるのはテメェらの方だろ!! 頭ん中も老いぼれてるのか!!」

 やれやれと賢者エルガルムはまた頭を横に振り、最強を名乗るなら相手の力量くらい見極められる様にしろと内心で呟く。

 何だかドボギという男が(あわ)れに思えて来るのだった。

「はぁ……。お前さん、世間知らず以前に阿呆(アホ)じゃろ」

「何だとジジイ!!」

「……賢者の存在を聞いた事ないじゃろ」

「けんじゃ?」

 ドボギは怒りの表情のまま「何だそりゃ」と、余りにも頭の悪い回答を口にしたのだった。

 流石(さすが)の賢者エルガルムを含むシャラナや、その影に潜むライファと御者の騎士は、「駄目だ此奴」と内心で全く同じ事を思ってしまった。

 そしてドボギだけでなく、その場に居る野盗全員も同じ世間知らずであった。

「まさか誰1人知らんとはのう……」

 賢者エルガルムは呆れながら悟った。

 世界は広い。

 知る人が居れば知らぬ人も居ると。

 力を持つ見識な者も居れば、力だけの世間知らずな人も居ると。

 そして世間知らずの者に集まる人は同じ似た者であると。

 類は類を呼ぶ。

 今目の前に居る野盗集団は、まさにそれがピッタリと当て嵌まる。

「お前さん等はいったい何処(どこ)で暮らしてきたんじゃ?」

 呆れた表情を浮かべながらドボギに質問を投げ掛けるが、それを聞いたドボギは癇癪(かんしゃく)を起こすかの様に質問に答えず怒鳴り散らした。

「ええい!! 訳の分からない事ほざくんじゃねぇ!! 老いぼれのくせに俺より強いって言いてぇのか!? アホはそっちだろ!!」

 ドボギは無知(ゆえ)の暴言を吐き、背中に背負っていた特大剣(グレートソード)を見せびらかすかの様に賢者一行に剣先を向けた。

「見ろ!! このグレートソードをいとも容易く持つ事を可能にするこの腕力を…!! 戦士としての最高の肉体を持つこの俺様を見て、力の差が分からねぇお前らの方がホントのアホだ!!」

 確かに、賢者エルガルムと肉体的身体能力を比較すれば、圧倒的にドボギの方が(まさ)っている。

 しかし、それは戦士としてでの話だ。接近戦であれば()ずドボギが優勢なのは間違い無いが、相手は魔導師である為、接近する前に魔法で仕留められてしまえば、どんなに丈夫な肉体を持っていても無意味である。

 ドボギの様な力任せの戦い方をする者は、大抵ちょっとした策で簡単に無力化する事が可能だ。

 この男(ドボギ)の場合だと、あっさり落とし穴に引っ掛かりそうではあるが。

 力をただ振り回すのと力を使いこなすのとでは、大きく違ってくる。

 そしてドボギは前者の方だ。

 作戦なんてものは一切考えず、力任せに暴力を振り回す事しか頭にない男なのだ。

(まさに、脳筋馬鹿じゃな)

 賢者エルガルムは目の前に居る脳筋馬鹿とはもう付き合っていられないと呆れ、深く溜息を吐いた。

 早くこの世間知らずの野盗集団を取っ捕まえて、先程感知した強大な魔力の存在をこの目で確認しに行きたい気持ちが強くなりつつあった。

「全く…闘いというものを知らんお前さんには一生解らんじゃろうな。この儂が闘いというものを少しばかり見せてやろう。覚悟するがよい」

「ほざけ!! クソジジイ!!」

「さて、世間知らずの馬鹿共をとっとと捕まえて――――」


 賢者達と野盗達が開戦しようとしたその時、賢者エルガルムは野盗達の遥か遠くの後方から地響きを鳴らしている様な重い足音が響いてくるのを耳にする。それと同時に特殊技能(スキル)〈魔力感知〉で、足音を響かせる存在を感知した。


「な、なんだぁ!?」

 ドボギを含む野盗全員も、重い足音が響いてくる方角へと顔を向けた。

 ドスドスと遥か遠くから聞こえて来る音は未だ小さいが、此方に近付いて来ているであろう存在が響かせる重い足音は、徐々に――――いや、一気に迫って来る様な速さで重厚な足音が大きく為り、大地をより大きく鳴り響かせ続ける。

「ま、まさかっ! この魔力は…!」

 賢者エルガルムは目を見開き、此方に迫って来る未知の存在を魔法無しで視認した。

「何じゃあれは……!?」

 最初に見た瞬間に動像(ゴーレム)と認識したが、それは間違いだと直ぐに再認識した。

 その存在は簡単に言ってしまえば、岩石の動像(ストーンゴーレム)の姿をした生き物だ。

 全身は白色に近い灰色の岩石で構成されており、腕や脚は身体から生えているのか、それとも其々の身体の部位(パーツ)をくっ付けているのか不明だった。よく見れば手の形は人と変わらない様な構成をしていた。背中部分には何やら植物がくっ付いているのがちらちらと見える。そして顔はこの世界の最強種である(ドラゴン)の顔に似た骨格で形成されている。

 賢者エルガルムが認識を間違えたと再認識した更なる理由は、その存在の目だった。

 その岩石の身体には有り得ない生物的特長のある目だった。

 動像(ゴーレム)には決して付いていない物が2つ、(ドラゴン)の様な岩石の顔に付いていた。

 賢者エルガルムにとって今迄(いままで)の人生で、あの様な存在は見た事が無かった。

 そんな未知の存在に驚愕(きょうがく)してる最中、膨大かつ強大な魔力を持つ未知の存在がビッグリザードとドゥドウルの脚の速さとは比較にならない速度(スピード)で迫って来る。

 そして気付けば、巨大な岩の塊があっという間にこの場に乱入して来た。

 重い足音に気付いてから1分どころか30秒も満たない時間で、遥か遠くから恐ろしい程の速度で此処(ここ)まで走って来たのだ。

 その巨大な謎の存在が一瞬で通り過ぎた後、衝撃波の様な豪風が発生し、その場に居る存在に重い風圧を叩き付けた。

 乱入して来たその岩石は速度を緩めずに、そのまま1体のドゥドウルに目掛けて走り続け、同時に大きな岩石の拳を構えながら急速接近する。互いの距離が(わず)かになった瞬間、硬く頑丈な岩石の拳による強烈なアッパーカットを、ドゥドウルの腹なのか顔面なのか判らない部分を容赦無く重々しい一発を叩き付けたのだ。

「グブゥゥウウ!!」

「………へっ?」

 ドゥドウルの重い巨体は天高く、透き通る様な青い空へと真っ直ぐ垂直に吹っ飛んでいった。

「ごがっ?!」

 ドゥドウルに騎乗していた野盗の1人は、殴られた拍子に真上に吹っ飛んだドゥドウルとは別の方向に吹っ飛ばされ、吹っ飛んだ先に偶然にも鎮座(ちんざ)していた岩に激突し、そのまま岩に()り込んだまま気絶をした。吹っ飛ばされてた事に気付かずに。

「え……?」

 ドボギはぽかんとした表情を浮かべ、何が起きたのか分からない状態に陥っていた。

 賢者エルガルムは驚愕の表情を(あらわ)にしていた。

 あの岩石の存在が何をしたのかを理解し、驚愕の言葉を口から漏れた。

「何という膂力(りょりょく)じゃ…! それにあの巨体であの速度…!」

 シャラナはその言葉を耳にし、岩石の存在に関する問いを賢者エルガルムに向けて投じた。

「あれですか!? さっき感知したあの魔力の持ち主は!?」

「間違い無い! 彼奴(あやつ)じゃ!」

 騎士は2人の前に立ち、壁になる様に盾を構えながら賢者エルガルムに質問を投じた。

「あれって…魔獣ですよね!? いったい何の魔獣ですか!?」

「それは判らん。魔獣の可能性もあるが、もしかすると別の部類の可能性もあるやも知れんぞ!」

 質問に答えた後に、賢者エルガルムはニヤリと笑みを浮かべていた。

 そんな笑みを浮かべる理由はただ1つ。

 目の前に現れた存在だ。

「何という幸運じゃ! まさか未知の存在自らが儂等の前に現れるとは、何と運が良い!」

 内心は未知との遭遇(そうぐう)で歓喜と興奮で溢れていた。

 ドボギはハッと我に返り、老魔導師の言っている事が狂言の類に聞こえたのか、驚愕の表情を浮かべながら怒鳴った。

「ハアッ!? 何言ってんだ、アホかテメェ! 魔獣に遭遇(そうぐう)して運が良いだと!? 訳分かんねぇ事――――」

 ドボギが怒鳴っている最中に、天高く殴り飛ばされたドゥドウルが錐揉(きりも)み回転しながら大地に激突するかの様に猛スピードで落下し、地面へと墜落した。その衝撃はまるで、巨大な鉄鎚(ハンマー)で大地を殴り叩いたかの様、そして同時に重い轟音が周囲に響いた。

 その場に居る全員は、視線を落ちて来た魔獣の方に向けた。

 落ちて来たドゥドウルの巨体、は半分程大地に沈んでいた。

 落ちて来た時の衝撃で大地が(へこ)んだ為、実際に身体半分が沈んでいるのだ。

 割けた大口を開けた儘、仰向(あおむ)けの儘、ピクリとも動く気配が無かった。

 野盗の1人がビッグリザードから降り、落ちて来たドゥドウルを確認しに恐る恐る近付いた。

 そして近付いた野盗の顔は、一気に青ざめた表情へと変わっていた。

「し……死んでる…!!」

 ドゥドウルは――――謎の魔獣にたった一発殴り飛ばされだけで絶命したのだ。

 その事実に、ドボギも含む野盗全員は目を見開きながら驚愕したのだった。

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