遭遇4-2
田舎の如く大自然以外の物は何も無い、広大なラフォノ平野。
そんな平野を駆け抜ける馬車が、道に沿いながら走っていた。
馬車の作りは派手と迄ではないが高級感のある装飾が施されており、金や銀を所々に馬車の外装に取り付けられ、馬車の底部分と車輪には耐久面を上げる為に鋼鉄をミスリルという貴金属で鍍金した金属部品がより馬車の性能を高めている。
だが、ただ高級なだけでも頑丈なだけでもない。
この馬車がマジックアイテム其の物と言っても良い代物だ。
車体の方は軽量車体と呼ばれるマジックアイテムで、一般の車体よりも軽く、馬の負担が軽減される事でより速く長時間走らせる事が可能にするアイテムだ。
そして車体に取り付けられている車輪は快適な車輪と呼ばれるマジックアイテムで、どんな悪いデコボコした道や泥道などの走り辛い道を、障害無く快適に走れる様にするアイテムだ。
何方も一般人には手を出す事が出来ない高価な代物であり、一部の地位や身分の高い貴族が所有するマジックアイテムの部類である高価な馬車なのだ。ラウツファンディル王国を含む他国の王族であれば、これよりも更に高級かつ高価なマジックアイテムで作られた馬車を所有しているだろう。
そんな高価な馬車に乗っている4人、外の御者を除く3人は車体の中に居た。
馬車の中の作りも立派で広々とした空間であり、ゆったりと背凭れが掛けられる柔らかなソファーが付けられている。硬過ぎず、軟らか過ぎず、とても丁度良い具合の軟らかさで、滑らかな肌触りの高級な革で作られている。長い馬車の旅路で長時間座りっぱなしでも疲れない居心地の良い広々としたソファーだ。
更に車内には〈快適自然空間〉の魔法が込められたマジックアイテムが、天井に飾られていた。銀に金の細工を施せれ、ある程度平べったい小さな丸皿の様な形をしており、中心にはマジックアイテムの中核となる宝石が埋め込まれていた。その宝石は、青く透き通る様な空を彷彿させる輝きを放っていた。その輝きは魔法的な光の輝きではなく、深みのある青色の蒼玉の輝きであった。
宝石に込められた魔法は、それを中心に一定範囲の空間の気温と湿度を一定に保ち固定する魔法で、干からびて死んでしまう様な灼熱な気温だろうと凍え死ぬ様な極寒の気温だろうと、その空間の中では人が生きられる適温で過ごす事が出来る、謂わば空調装置の様な魔法である。
魔法発動による特徴的な光が放たなくとも、蒼玉に込められた〈快適自然空間〉の魔法は常時発動をしており、何時でも適温で快適な空間を保っているのだ。
そんな快適空間の馬車の中に、3人がソファーに腰掛けていた。
3人の内2人は女性。
1人は金色の長い髪でまるで絹の様な滑らかな髪質であり、誰もが目を奪われる程の美しい輝きを放っている様にさえ幻視してしまうであろう。
彼女の容姿は子供と言うには大人過ぎるが、未だ大人という訳ではない。顔は美しく整っており、日の光で反射する彼女の柔肌は白く輝く美しさがあり、優しくも真面目そうな目をし、瞳は天を青く染めている空の様な、まるで蒼玉の様な透き通った輝きを灯している様にさえ見える。未だ未だ幼さが残っている彼女の身体付きから見て、成長期の途中に違いないだろう。
そして彼女が着用している服は魔導師特有の防具であり、白く清潔な長袖の襯衣の上に丈夫な革で作られた革鎧を着用している。更に同じ革で作られた革手袋と革製の長靴を其々手足に着用し、青い長洋袴の腰には革帯が巻き付けている。革製の防具の色彩は焦げ茶色で統一されており、身体を包む様に青い外套を肩から羽織っていた。腰にはワンドを入れる為の短杖専用の入れ物が下げられている。そして当然そこには、ちょっとした銀の装飾が施された指揮棒の様な木製のワンドが納められている。例えて言うなら剣を鞘に納めている状態だ。
そんな装備から見れば分かる通り、彼女は魔導師である。
そして、それと同時に彼女は貴族令嬢でもあるのだ。
彼女の名はシャラナ・コルナ・フォルレス。
彼女はフォルレス家の1人娘であり、強力な魔力を持って生まれた才女と呼ばれる子である。更に世界では数少ない、神聖系統魔法を扱える事が出来る聖職者と言われる魔導師の類でもあるのだ。
しかし、未だ幼い子供の時とはいえ、生まれながら魔力が強く数少ない神聖系統魔法を扱える高い適正を有していた。しかし、適正が高くとも思う様に上達はせず、自身の魔力を思う様に操れないという事から魔法を発動させる事に難儀していた。
そんな彼女が通っていた王都の魔導学院では、生まれ持っての魔力の高さと神聖系統魔法の適正が有るというだけで、周りから勝手に祭り上げされてきた。
それは貴族の学院生だけに限らず、学院の教師全員までもがだ。
神聖系統魔法の才を持つ彼女と繋がりを作るという事は、フォルレス侯爵家との繋がりを作れると同意義である。
その目的は爵位が上の者との信頼を結ぶ事で、それにより自身が行っている事業や領地管理などの資金面や、地位が上の者との交渉を有利に進める際の 後ろ盾を得る事だ。これ等は貴族社会の中では当たり前と言って良い。
しかし近年、国内の貴族達の大半以上は自分の欲望の為にと、必死に上の者に対し胡麻を擂る事しか考えていない。
ただ利益を得る為に。
より高い地位を得る為に。
シャラナはそういった居心地の悪い学院環境だけでなく、貴族の魔導師達が勝手に作り上げた魔法適性理論にうんざりしていた。
そんな意味の無い学院生活を無駄と理解していながら過ごしていた時に、名のある魔導師から「儂と共に修行の旅に来ないか」と誘われたのだ。彼女は直ぐにその誘いに乗り、即座に学園の無期限外出許可を申請しようとしたが、学院側はそれを良しとせず、何が何でも彼女を学院に留まらせようと彼是苦しい理由を押し付けてきた。そんな様子を見ていた名のある魔導師は彼等を叱責し、己の実力と功績を背景に学院の教師全員を捻じ伏せる様に黙らせたのだ。
そして無事、シャラナは学ぶべき所が殆ど無い無意味な学院生活から開放され、現在は名のある魔導師の弟子として共に魔導師の修行の旅をしているのだ。
「何時まで逃げ続ける振りを為さるのですか? 先生」
シャラナは落ち着いてはいるが顔は少し困った様な色を浮かべ、先生と呼ぶ目の前に座っている老魔導師に訪い掛けた。
先生と呼ばれた老魔導師は頭髪や髭も白く、特に白い髭は長くボサボサとしておらず、ちゃんと整えられた毛並みをしていた。頭も全く禿げてはおらず、白い髪の毛はしっかりと頭皮に根付いている。肌は余り老いているとは思えないほど皺が少なかった。そして老いても尚、その緑色の翠玉の様な輝きをした瞳からは今まで培ってきた深い叡智を宿しているかの様で、今もその生命力と活力は衰えず力強く輝いている。
老魔導師の片手に握られている物は上質な樹から加工され、ある程度の金と銀の装飾が施された人の背丈程の長さの杖――――魔導師お馴染みの武器と言えるスタッフだ。
紺色の魔導衣を身に纏い、その上から同じ色の外套で身体を包む様に羽織っていた。魔導衣と外套の間には、シャラナと同じ丈夫な革で作られた色違いの革鎧――――黒革鎧を着用していた。更に手足や腰にも色が統一された丈夫な革装備、黒革手袋、黒革長靴、黒革帯を其々着用していた。そして彼の隣に紺色の大きな魔導帽子がソファーの上に置かれていた。真上から見れば人1人隠れてしまう広い鍔が特徴の三角帽子だ。
決して高価な代物とは言えないが、彼にとっては修行の旅で派手な格好をするのは無意味だと判断し、機動性と頑丈性を重視して選んだ武具であり、余計な物を削った事でより戦闘をし易くしているのだ。
そして、シャラナから先生と呼ばれる老魔導師の正体――――。
彼こそが、ラウツファンディル王国の英雄にして最強の魔導師。
賢者エルガルム・ボーダムである。
「出来る限り奴等の騎乗魔獣を疲弊させてからじゃ。焦るでない、シャラナよ」
賢者エルガルムは悠々とした態度で、彼女の問いに答えた。
彼は賢者として多くの様々な経験による余裕が見て取れた。
「その通りですよ。御嬢様」
シャラナの隣からもう1人の女性が冷静に口にする。
彼女の名はライファ・ベラヌ。
フォルレス侯爵家に仕える侍女であり、フォルレス侯爵家の令嬢であるシャラナ・コルナ・フォルレスの専属侍女である。
髪型はショートヘアで綺麗に整えられた銀髪であり、年上ではあるがシャラナと年齢は近くとても若々しい外見であり、異性の誰もが見惚れてしまう美しさがあった。綺麗に整った顔に少しだけ鋭い目付きからは、普段から常に冷静な性格である事が見て取れる。銀の髪と対となる金の瞳は、まるで獲物を狙い済ます気高い獣の様な鋭さを感じさせる。
侍女服は白と黒を基調とした作りと成っており、黒色の女袴は長く下は靴だけしか見えなかった。そして頭の上には侍女の白い頭飾りが乗っている。
因みに、彼女は只の専属侍女ではなく、暗殺者としての戦闘技術を有しており、シャラナに害を為そうとする輩を排除し、シャラナの身を護る役目をフォルレス侯爵家当主から任されている。命令というよりも、彼女自らがシャラナの護衛を買って出ている。
そして現在では、シャラナと共に賢者エルガルムの教えによって、修行の旅に出る前までは魔法適性が無いと言われていたライファだったが、今は〝暗殺者〟の特殊技能に加え、炎系統と無系統魔法を扱える様になっている。
「今私達を追って来ている者達に、手の内を直ぐに晒さない方が良いのです。逆に相手の手の内を探る方が賢明ですよ」
ライファは冷静に涼しげな表情で意見を述べた。
「そうじゃ。何より我々を追って来る奴等の正体と目的を一応知らねばなるまい」
賢者エルガルムは髭を扱きながら知るべき事を口にする。
「騎乗魔獣が大蜥蜴と大口の剛獣とはいえ、数だけなら此方が不利。出来る限り王都近くまで誘き寄せ、疲弊した所を一気に叩く。魔獣は全て排除し、残りの賊は生かして捕らえる」
「短期決戦という事ですね。エルガルム様」
ライファは冷静な態度を崩さずに、賢者エルガルムの言った事を即座に理解した。
「そうじゃ。万が一逃がした数がたった1人でも、時間さえ有ればまた同類を集め徒党を組み、再び私利私欲の過ちを犯し出す。それは避けなければな」
「捕らえた後は、王都の衛兵に引き渡す」
「その通りじゃ、シャラナ。そして悪党には然るべき罰を受けて貰う」
「では、手筈通りに私が特殊技能〈潜影転移〉で影に潜み、隙を見て敵を無力化させます」
ライファの保有する特殊技能〈潜影転移〉は、盗賊系である特殊な職業の暗殺者が扱える特殊技能で在り、影から影へと移動する事が出来る転移系に属し、魔法に属さない能力である。但し、超長距離の先にある影には移動する事が出来ず、20メートル範囲に在る影にしか転移出来ない。しかし、その特殊技能の基盤と成っている〈潜影移動〉によって影に潜む事が出来るので、誰かの影の中に潜んだまま尾行や情報収集等にはかなり便利な特殊技能である。たとえ限界距離まで転移しか出来なくとも、影から影へ移りながら転移すれば然程問題は無い。
「うむ、頼むぞ。戦闘が始まる前にシャラナの影に潜んどいとくれ」
「承知しました。エルガルム様」
ライファはピンとした背筋を前に傾け、御辞儀をし了承の意を示した。
「さて、もう少ししたら馬車を止め――――」
その時、賢者エルガルムが急に言葉が止まり途切れた。
シャラナとライファは、突如と彼の僅かな驚愕を顕にした様子から、何か予想のしない不測の事態が起こったのかと感じ取る。
「せ、先生、如何しましたか?」
シャラナが少し困惑気味に問い掛ける。
賢者エルガルムは視線を2人から右の方へと動かし、僅かながら驚愕を含んだ声で、2人に答えているのか独り言なのかは判らないが、その原因を口にした。
「何じゃ…この魔力の反応は…? 幾ら何でも膨大過ぎる…! こんな何も無いラフォノ平野に……人ではない…。じゃが魔物だとしても……これ程迄に強大な魔力を宿す存在が、この平野に生息している何ぞ聞いた事が無い…! いったい何なんじゃこの存在は…!」
賢者エルガルムは自身が保有する魔導師の基本特殊技能の1つ、〈魔力感知〉で遥か遠方に居る強大かつ膨大な魔力を有する謎の存在を捉えていた。
「信じられん…! 今迄で感じた魔力の中で、量も質も高い…! これ程の強さはS等級に相当する魔導師や魔物すら遥かに超えておる…!」
「それって…先生を超えているという事ですか…!?」
「シャラナよ! 御主も彼方の方へ意識を集中して見ると良い! 既に〈魔力感知〉を習得しとる御主なら、あの強大な魔力をこの距離からでも直ぐに感知出来る筈じゃ!」
シャラナは目を閉じ、賢者エルガルムの言った方向に意識を集中し、魔力を探り出す。
「!?」
賢者エルガルムが指し示した方向に存在する魔力を感知した瞬間、目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。
人なのか魔物なのか判らないが、それは異常とも言える常識的に有り得ない強大かつ膨大な魔力だった。感知したと同時に、正体不明の巨大な神の化身を連想してしまう。
賢者エルガルムの言う通り、今迄に感じた事の無い圧倒的な存在感である。
「何これ……先生の魔力を遥かに超えている…!? 確かに人じゃない……いったい何なの!?」
シャラナは今まで賢者エルガルムから教わっていた、魔導師の力量の常識が頭の中から崩れた感覚に陥った。
だが、それは仕方の無い事だ。
賢者と呼ばれる老魔導師エルガルムですら、この事実に驚愕しているのだから。
「エルガルム様すら上回る魔力の保有者なのですか…!?」
普段から冷静なライファですらその事実に、珍しく驚愕の表情を滲ませていた。
「間違い無い! まさかこれ程の存在が居ったとは…」
そして賢者エルガルムの僅かな驚愕の表情は、笑みの色へと変化していた。
「やはり転移魔法など使わず、世界を巡るのは良いもんじゃ! こういった刺激がある出来事に遭遇する事が出来るのじゃからな!」
まるで子供の様に面白いものを発見した喜びから、今度は頭を抱えて悔しがる様な表情に変わった。
「くぅーっ! こんな状況じゃなければ今直ぐにでも調べに素っ飛んで行きたいもんじゃ!」
賢者としての知識的欲求が疼き出すが、必死にそれを抑える。
賢者と呼ばれるエルガルムですら知らない未知の存在は〈魔力感知〉で場所は把握出来ていたが、今はすべき優先事項をしなければならなかった。
しかし、追って来ている魔物の討伐と野盗の捕縛を終える前に、未知の存在に逃げられるかもしれない可能性があった為、内心は焦ってもいた。
「よーし! 何が何でもとっとと終わらせて転移魔法で直ぐに向かうぞ! 出し惜しみ無しじゃ!」
賢者エルガルムの深い緑色の瞳は、ギラギラとやる気に満ち溢れた強者特有の気迫が溢れていた。
そんな気迫を浴びた2人はその様子に強者に対する畏怖を感じ、表情は緊張で少し固くなっていた。
「勢い余って野盗ごと殲滅為さらないで下さいね、先生…」
「大丈夫じゃ! 熱意は溢れてはいるが頭の方は冷静じゃから安心せい! 何の道、短期決戦なのは変わらずじゃからの。魔獣を素早く排除してから束縛の魔法で即無力化じゃ!」
賢者エルガルムにとっては今回戦う相手の魔物はD等級である為、11体の数など大した数ではない。
はっきり言って――――エルガルムの敵ではない。上位級の魔法1発で戦闘は即終了だ。
しかし、今回は広範囲型の上位級魔法を放つ訳にはいかず、野盗を巻き込む形で倒しては情報が手に入らないので、魔獣を1体ずつ倒していく手筈になっている。その隙を突いてライファが〈潜影転移〉で敵の影に潜み、彼女が愛用している魔法の武器である麻痺の短剣で一番奥から順に麻痺状態にし、無力化していく事になっている。因みに、麻痺の短剣は相手を斬ったり刺したりしなくても、刀身を当てるだけで短剣に込められた〈麻痺〉の魔法が発動する。平たく言えば峰打ちの様なものだ。
シャラナは魔法による牽制と足止めを担う戦況を補佐する役割だ。彼女もD等級の魔獣1体程度なら倒せる実力はあるが、周りの状況を常に把握しながら、時には注意を此方に向ける様に仕向けたりなど、仲間を支える様に立ち回る事を重点に置く闘い方だ。これも彼女にとっては修行の一環でもあるのだ。
「さて、そろそろじゃな」
賢者エルガルムは、馬車を止めて戦闘を開始する事を御者に伝えるようライファに目で促す。
それを了承したライファは軽く頷き、御者の居る方の窓を開き、馬車を止めるように促した。
「そろそろ頃合だそうです。戦闘の準備を」
「了解した」
短くキリッと返事をした御者はフォルレス家に仕える専属侍女であるライファと同じく、フォルレス侯爵家に仕えている騎士の1人であり、彼も自ら護衛として志願した者だ。
騎士に相応しい全身鎧と頭をスッポリと覆い被さる面頬付き兜を被り纏い、芸術の様な模様を象った大型の盾に、綺麗な装飾が施された長剣の柄と鞘が腰にぶら下がっているのが確認出来る。そして彼の装備している武具は全てミスリル製であり、高価値に見合った実力も持っている。
此処に居る4人は数の戦力としては、11人の野盗と11体の魔獣に対しては不利ではあるが、1人1人の実力が高い者達だ。その内の1人は桁外れの実力を持っては居るが。
戦闘に於いては単純に数で押し切る闘い方はあるが、それは決して圧倒的な強者に対しては意味の無い無謀な突撃としか言えないのだ。10匹の蟻が、自分より巨大な人間にわざわざ踏み潰されに行く様なものだ。
だが、追って来る野盗達は其処までの無謀者とは限らない。当たり前だが、分かっている事は金目の物目当てだという事は容姿と武装で見て取れる。更に武装の統一性が全く無いのも、野盗の可能性を高めていた。一団としての思考も統制もバラバラだが、他者から奪うという私利が一致し集まっただけの悪党集団であるのだ。
「さて。いったい誰を相手に略奪しようとしてるのか、後悔させてやろう」
賢者エルガルムは追って来ている野盗達に脅しを語る様に、わざと目の前に居る2人に聞かせるかの様に口にした。
しかし、賢者エルガルムは気付いていなかった。
賢者エルガルム達を含む野盗の居る遥か遠くの後から、強大な未知の存在が近付いて来るのを――――。