迷宮の異形創造者24-1
エルガルム達とダムク達の一行が地下砂漠領域へと踏み入れてから4日間。
幾度の小休止と野営休息を取りながらひたすら歩み進み、漸く地下砂漠領域から出られる出口に辿り着いた。
因みにだが、広大な地下砂漠を4日で進み切るのは中堅冒険者でも出来る速さではない。
ダムク達は個々としても一党としてもS等級冒険者の実力が有る為、早々に踏破する事が出来たのだ。
この地下砂漠に生息する魔物を瞬殺出来る冒険者一党は、最低でもB等級の者達だ。しかし、それ程の実力を有する冒険者一党でも、魔物にわんさかと同時襲来されてしまうとそうは行かなく為る。
複数人で1匹を相手取るのと複数人が複数体を相手取るのでは、当然戦闘に於ける難易度が違ってくるし、更には一党内での職業構成によっても更に違ってくる。
昔は一撃必殺といった高威力を主体とした主戦力――――攻撃力特化の戦士職や魔力特化の魔導師職だけの複数人構成が流行っていた。
確かに、高威力の武技や魔法を修めた者が複数人居れば、向かって来る有象無象の敵を容易く薙ぎ倒せる。
しかしその反面、攻撃主体だけの構成は弱点が多く、状態異常や弱体化、特定の属性無効や不可視といった特殊系に一度でも嵌まってしまえば助からない。
それに盗賊が居なければ簡単に隠された罠に引っ掛かり高確率で死んでしまうし、野伏の様な感知系特殊技能を有する者が居なければ死角からの不意打ちで殺られてしまう。
それもどんなに強くても――――あっさりと。
そういった脳筋一党は、それ等の弱点を補う為の魔道具類が多数必須となる。
しかし、有する弱点の数だけの魔道具を探す労力とかなりの資金が必要だ。しかし、それは冒険者からすれば現実的ではない。
そういった問題面が多々有った為、攻撃のみ威力重視型の構成一党は廃れた。
常に単独での場合はそうせざるを得ないが、冒険者稼業を遣って行くなら複数人の一党を結成し、均衡が取れた職業構成を作るべきである。
地下砂漠領域から奥へと続く大きな空洞へと踏み入れた直後、昼間の猛暑で満ちた空気が一変したかの様に平温の空気を身体が感じ取る。
地下砂漠領域と繋がった空洞の間に、何か目に視えない不可思議な隔たりが在るのだろうかと、ガイアは歩みながら首を傾げた。
このダンジョン内の現象は自然によるものなのか、それとも魔法による誰かが創り出したものなのか。
そもそも、ダンジョンは自然から生じたのか人工的かつ魔法によって創られたのかも謎である。
一行は次なる下層への入口を目指し、広狭が不規則な空洞を進んで行く。
そして、テウナク迷宮都市ダンジョン中層内に点在する幾つもの領域の1つ――――大晶洞へと辿り着く。
壁や天井の一面を水晶が覆い尽くし、所々には巨大な水晶の柱が地面から天井を突き抜けるかの様に聳え立っていた。
そんな煌めく天然水晶が広がる光景を目にしたガイアは感動し、蒼玉の様な瞳を輝かせた。
右を見れば幾つもの突き出した大きな水晶。
左を見れば鱗片状の水晶が一塊と成って、神秘的な花の様な造形をした物。
天井を見上げれば氷柱に似た形状の大きな水晶。
これ程迄に広大な晶洞は、元居た世界を探し回っても見付からないだろう。
巨漢が大手を振っても全く邪魔に為らない程の広さなので、ガイアは小さくした身体を元の大きさへと戻した。
テウナク迷宮都市の冒険者達曰く、大晶洞は多量の水晶原石を採掘出来る金策場所だそうだ。
ダムク達も当時C等級だった頃は、此処で大量に採掘した水晶原石を冒険者組合に良く換金してたという。中層部の大晶洞に辿り着ける様に為る迄に、苦労していた資金面はその頃から徐々に改善する事が出来、駆け出しの頃から悩まされた消耗品類の補充に掛かる費用に関しても余裕が出来たそうだ。
だが、この大晶洞にも魔物は当然徘徊している。採掘する際に鳴り響く鶴嘴の音で引き寄せてしまう危険性が在る。
「リーダー、来たよ」
「お! 噂をすれば影を差したか」
そんな話をしながら少し進んだ時、噂の魔獣の気配を感知したミリスティはダムクに伝える。
視界に映る突き出す幾多の水晶の影から、のそりのそりと魔獣が姿を現す。
大きな軀体と尻尾に青み掛かった硬い皮膚、そして一番の特徴は背面や四肢、尻尾に突出した水晶が宿した神秘的な姿をした大きな蜥蜴―――――結晶大蜥蜴である。
此処大晶洞に生息する魔物で代表とされている種類の1匹である。
四肢を動かし、のそりのそりと徘徊する結晶大蜥蜴はエルガルム達とダムク達を目にした後、右の前脚を上げた。
(何だあの動き?)
結晶大蜥蜴の妙に可愛く思える動作を観ながらガイアは首を傾げる。
しかし、結晶大蜥蜴が右の前脚で地面を強く叩いた瞬間、先端を尖らせた幾多もの結晶が突き出すが如く生じた。そしてそれは奔るが如く地を伝い、一行に向かって襲い掛かる。
結晶大蜥蜴との距離は離れていた為、迫る先手に一行は難無く回避した。
(おー、少しビックリしたぁ。そういう攻撃をしてくるのか)
初見だったガイアは新鮮な驚きを抱きつつ、地を伝い奔った水晶が煌めく塵と化す自壊現象を目にする。
(今のって魔法か? それとも魔力による特殊技能?)
結晶大蜥蜴の攻撃に魔力を感じたガイアは、浮かべた2つの可能性を考察する。
何方で有っても魔法属性を伴っているのは間違い無いが、結晶大蜥蜴に内在する魔力の質と量から、魔法も使える可能性が有ると推測出来る。
「丁度良いわ。結晶大蜥蜴の皮が随分減っててたのよねぇ」
ベレトリクスは結晶大蜥蜴の出現に、喜々の色を浮かべる。
「結晶大蜥蜴の皮は中級や上級の魔法の巻物に良く使われる素材ですもんね」
ダムクは余裕の表情を浮かべながら、結晶大蜥蜴という存在の有用性を口にする。
「そうよぉ。冒険者を遣ってた頃は良く結晶大蜥蜴狩りをしたわぁ。今も昔も魔法の巻物製作の際に御世話に為ってるわ」
結晶大蜥蜴の皮には微粒子の石英が無数に含まれており、内在する魔力と親和し、皮膚に多量の魔力を宿している。それ故に魔法の巻物の皮素材として人気だという。
因みに、石英の微粒子量が多い背面や尻尾などの部分には上皮へと分泌され、突出した石英は一定の大きさへと成長し、結晶面が発達した大きな石英の結晶体――――水晶と成るのだそうだ。
「折角来たんだから沢山狩りたいわぁ」
「ホッホッホッ。気持ちは解るが、今回はシャラナの実戦経験を積ませる事と最下層部の探索が目的じゃ。出来得る限り進む事を優先せねばの」
「解ってるわよぅ」
ベレトリクスは頬をぷくっと膨らませ、少々残念そうにする。
「さてシャラナよ、今度は魔導師にとって少々厄介な魔獣種じゃ。易々とは倒せんぞ」
「はい、先生」
シャラナは短杖をホルダーから引き抜き、前に出る。
「シャラナちゃん、結晶大蜥蜴はC等級の冒険者一党でも苦戦する魔獣だから気を付けてね」
「はい、気を付けます」
ミリスティからの案じが込められた警告をシャラナは聴き入れ、視線の先で唸り声を鳴らす結晶大蜥蜴を見据える。
「〈魔力の弾丸〉」
シャラナは初手でいきなり低位級魔法を結晶大蜥蜴に向けて放つ。
(え? 何で威力が低い魔法を?)
その初手に対し、ガイアは少々驚きを含んだ疑問が生じた。
術者の魔力の質にもよるが、〈魔力の弾丸〉程度では大した損傷を与えられない上に、殆ど損傷が無ければ只の魔力の無駄遣いだ。
何故初手でそんな悪手を取ってしまったのだろうかと、ガイアは不可解に思う。
放たれた魔力の弾丸が結晶大蜥蜴に着弾したが、予想通り――――ほぼ無傷だった。
「……やっぱり魔法属性への耐性特殊技能は有るみたいですね」
シャラナがそう口にしたのを耳にしたガイアは、納得を抱いた。
(そうか。魔法に対する耐性の有無を調べる為にわざと弱い魔法をぶつけたのか)
シャラナは結晶大蜥蜴に幾種もの耐性特殊技能を有しているのか知らない。
〈鑑定〉で耐性や弱点の詳細を調べれば手っ取り早いが、至近距離まで接近する必要が在る。現在のシャラナにはそれを行うのは危険だ。だからこそ、初手で魔力消費が少ない低位級魔法を当て、損傷度合から耐性の有無を判断するという手段を取ったのだ。
こういった手段は冒険者の中では珍しくは無く、初見の魔物に対し、何が弱点で何が効かないのかを手探りしながら闘わなければ為らない。
攻撃された結晶大蜥蜴は背面に宿す水晶を急成長させ、シャラナに向けて射出する。
「〈魔力大障壁〉」
放射線を描き飛来する幾多の水晶に対し、シャラナは魔法の防壁を広く展開し後ろの全員をしっかりと護る。
撃ち出される水晶は魔法の防壁に衝突しては砕け、大きな破片と成った水晶は煌めきを放ちながら地面へと落ちる。
(へぇー、背中の水晶飛ばせるんだー)
ガイアはシャラナの魔力障壁の内側から、結晶大蜥蜴の攻撃方法をまじまじと観察する。
「〈中位魔法耐性突破〉」
防壁の効力が続いている内に、シャラナは結晶大蜥蜴を魔法で倒す為に必要な強化を自身に施す。
そして結晶大蜥蜴が水晶飛ばしを止めたその瞬間、シャラナは短杖を差し向け、魔法を発動させる。
「〈巨氷の牙〉!」
地面から猛獣の牙の如く鋭い氷塊が突き出し、結晶大蜥蜴の顎の下から頭上へと穿ち貫く。
結晶大蜥蜴は幾度か身体をびくりと痙攣させた後、そのまま地面に倒れ伏す。
「うむ、上出来じゃ」
シャラナの的確な魔法攻撃を観たエルガルムは、上々だと頷く。
「良ーし、結晶大蜥蜴の皮ゲットぉ」
ベレトリクスは地に伏した結晶大蜥蜴を鷲掴み、無造作に開いた〈収納空間〉へポイッと放り込んだ。
その華奢な腕の何処に力が!? とガイアは彼女の意外な腕力に目を丸くする。
そして一行は再び歩み出し、大晶洞を突き進む。
ちょっとした段差を登っては降り、坂を上っては下りてを幾度と繰り返し進む。
暫く進んだ先で、結晶大蟹と呼ばれる魔獣種の群れが、適当に列を成して何処かへ行く光景を目の当たりにした。
「おや、結晶大蟹か。しかも子供の群れとはの」
(えっ!? あれで子供なの!?)
子供と言っても、その大きさは横幅約30センチメートルもあり、前世の世界に存在する楚蟹の倍程だ。歩脚に関しては楚蟹の方が長いが、結晶大蟹の子供の脚は太く丈夫そうな見た目である。
(……結構わらわら居るなー)
そんな青白く煌めく結晶甲殻生物が集団移動する、その大自然ならではの光景にガイアは見入り、群れの中から1匹をひょいと捕まえる。
ガイアに掴まれた結晶大蟹の子供はわたわたと脚を動かし、抵抗にすら成っていない抵抗をするのだった。
(ホント綺麗だなぁ。何が如何なったらこんな生体に成るんだろう?)
結晶大蟹の子供の姿形、水晶の甲殻や鋏脚をまじまじと観察する。
動いていなければ蟹の形を模った水晶の芸術品だ。こういう生き物を模型にした物を欲しがる人は、探せばきっと居るだろう。それに生きた結晶大蟹を観賞用として飼いたがる物好きも、少なからず居るだろう。
そんな事を思っていたガイアの目の前に、大きな影が現れた。
(……およ?)
ガイアの前に現れた影の正体は、結晶大蟹だ。だがそれは、今も群れで移動している子供と比べる迄も無く遥かに身体が大きく、ガイアと同等の大きさだ。
(……もしかして、親蟹さん?)
恐らく親であろう結晶大蟹が此方をじろっと睨んでいる――――様に見えた。
(あ、これって…)
眼前の大蟹の魔物は、石英の微粒子が含まれた大きな鋏脚を上に上げた次の瞬間、一気に振り下ろしガイアの頭上を殴り付ける。
(アウチッ! やっぱ怒ってるぅ?!)
そりゃそうだ。無断で子供を捕まえてるのだから怒って当然だ。
だが、襲い掛かって来るのなら此方は迎撃するまでだ。
因みに、殴られたガイアは一切痛痒は生じていない。
結晶大蟹は透かさず水晶の鋏脚を振り下ろし、エルガルム達やダムク達に殴り掛かる。そして大きな鋏脚を開き、眼前のガイアの首を挟み切ろうと鋏脚を一気に突き出した。
(おっとっと!)
それに対し、ガイアは片手で突き出された鋏脚を掴んで抑え込む。
結晶大蟹はそのまま挟み斬ろうとするが、ガイアの硬過ぎる岩石の片手に斬れ込みは入らず、鋏脚を閉じる力はガイアの圧倒的な握力によって封じ込まれてしまう。
だが、それでも諦めず、もう片方の鋏脚で挟み斬ろうと仕掛ける。
「そら、捕まえた」
しかし、それをヴォルベスが片手で掴み止め、余裕で鋏脚を封じ込める。
結晶大蟹はガイアとヴォルベスの手を振り払おうとするが、何方も握力が強過ぎるが為に振り解く事が叶わず、その場から逃げ出す事も出来なかった。
「良ーし、そのまま押さえとけ」
其処にダムクが背の大剣を引き抜き、盾を構えず結晶大蟹の前へと近付く。
そして両手で握り締めた大剣をゆっくり上げ、大きく一息してから再度息を吸い、フッと短く息を吐くと同時に武技〈金剛烈斬〉を行使し、大剣を急速に振り下ろす。
それは力任せだけの剣撃ではなく、斬撃の威力・速度・鋭さを最大限発揮させる適切な構えと、あらゆる身体の部分の重心を正しく連動させた剣技である。
ほんの僅かなズレの無い縦一閃の直後、目の前の結晶大蟹の身体は縦真っ二つと成り、力無く地面に崩れ伏すのだった。
「お、運良く魔石を斬らずに済んだ」
そしてダムクは地面に転がった真っ二つ状態の結晶大蟹と中から出て来た大きな魔石をひょいと持ち上げ、自分の魔法の小袋に仕舞い込んだ。
「さてと、また別の奴と直ぐ遭遇しちまわない内に行こう」
ダムクの言葉に一同は従い、今も移動する結晶大蟹の子供の群れと距離を取りながら先へと進み出す。
ガイアは結晶大蟹の子供達の様子を横目で観る。
親が一刀両断されたのを目にした為か、子蟹達は慌しく移動―――いや、その場から急いで逃げ出していた。
未だ子供の内は闘う力が余り無い為、自分から襲いに来る事は滅多に無いそうだ。しかし、子供であっても生まれ持った石英の微粒子が含まれた甲殻はとても硬く、魔法属性に対する最低限の耐性を有しているので早々に殺られる事は無い。
(写真機欲しいなぁ…)
この異世界には映像を記録する魔道具が在るのだ。きっと景色を映し記録する魔道具も在るに違いない。
ガイアがそう思っていた時、背に乗せた擬態宝箱ことミッくんがガタガタと暴れ出した。
「アーゲギャギャガガギェギャヴァー!!」(喰ワセロ!! 喰ワセロー!!)
(うおっ!? 背中が凄い振動する!)
急に暴れ出した擬態宝箱に対し、不意でも衝かれたかの様に全員驚く。
暴れ出した事もそうだが、此処に来て初めて言葉を口にし出した事にガイアは驚愕した。
無論、擬態宝箱が何を言っているのか理解出来るのはガイアだけである。
「何かすんごい暴れてるわね。どしたのかしら?」
ベレトリクスはガイアの背に居る擬態宝箱の様子を訝し気に観る。
「擬態宝箱の事だ、大方腹でも空かせたのではないか?」
ヴォルベスも暴れ続ける擬態宝箱を観ながら予想を口にする。
(あれ食べたいんだって。腹空かせてるかは判んないけど)
ガイアはある方へと指差し、全員がガイアの指差した先へ視線を向けた。
視線を向けた先――――結晶大蟹の子供の群れを目にした全員は、はっきりとした納得の色を浮かべた。
「まぁ、此処はダンジョンだ。どんだけ倒しても時間が経てばまた増えるしな」
ダムクの言う通り、ダンジョンの魔物は幾ら倒しても、暫く時間が経てば勝手に生まれては増えてしまう。なので特定の種が全滅しても復活するが如くまた生まれる為、生態系が崩れる事は無いのだ。
ガイアは渇望するが如く暴れる擬態宝箱を背から降ろし、鎖の拘束を解いて上げた。
「ンゲギャギャー!!」(戴キマース!!)
解放された瞬間、擬態宝箱は思いっ切り前へ跳躍し、口を全開させながら結晶大蟹の子供の群れの中へと飛び込んで行った。その勢いはまさに驀地である。
そして無作為に定めた1匹の結晶大蟹の子供に喰らい付き、水晶の如く煌めく硬い甲殻をバキバキと噛み砕く。
1匹喰らい終え、即座に別の子蟹へと飛び付き喰らい出す。
また1匹喰らっては、逃げる子蟹の群れの中から無作為に選び、即座に飛び付き齧り喰らう。
(うわぁ……すっごいえげつない…)
結晶大蟹の子供達を次々と喰い荒らすその様は、何とも言えない残酷な光景であった。
「……何だか可哀相に思えてきました」
子蟹の群れに対し哀れだと抱いた感情をシャラナは口にし、そんな彼女の言葉に他の皆は胸中同意する。
そしてものの数分後――――結晶大蟹の子供は1匹残らず喰われ尽くされるのだった。
元凶の擬態宝箱は「ケフゥ」っと非常に満足そうな息を吐き、ガイアの下へぴょんぴょんと跳躍しながらのんびり戻った。
自ら戻って来る程に懐いてしまった様だ。
ガイアは戻って来た擬態宝箱を拾い上げ、鎖で拘束し戻す。そして背に乗せ、背の樹木の幹に巻き付けた鎖に擬態宝箱を拘束する鎖を鎖鉤で連結させた。
(結晶大蟹の子供達よ、マジでゴメンよ)
そしてガイアはちょっとした罪悪感を抱き、喰われた子蟹達に対し胸中で決して届かぬ謝罪をするのだった。
奥へと目指し、大晶洞内を更に突き進む。
道中では十数匹の魔狼や一角水晶兎、更には醜悪な怪巨人に鎌腕蟷螂に遭遇するが、これ等を難無く倒した。
しかし、倒し終えて少し暫く後にはまた奥から現れる。
一行の中でダンジョン探索経験の有る者は、奥から魔物が次々と現れる現象に対し違和感を感じ取る。
「妙だな」
そんな抱いた疑問を最初に口にしたのはダムクだった。
「同感だ。先程から遭遇する魔物の様子……まるで追われてるかの様だ」
ダムクの短い発言にヴォルベスは同意し、遭遇した魔物の様子から感じた違和感を口にする。
「ミリスティ、感知範囲内で何か妙なのは居るか?」
「今の所は居ないけど、また奥から魔狼が13匹来てるよぉ」
ダムクからの問い掛けに対し、ミリスティは現時点での感知情報を伝える。
「……こりゃあ、奥の方で何か起こってるな」
「この中層部内での大物か?」
「だろうな」
ヴォルベスの予想に対し、ダムクは肩を竦ませながら肯定する。
「ミュフィ、魔物は無視して良いからちょっくら偵察頼む」
「了解」
ダムクからの頼みにミュフィは了承をした。
「私も同行致します」
ライファはミュフィの偵察に同行すると志願し、共に音も無く駆け出し大晶洞の奥へと先行した。
「そんじゃ御令嬢さん、居るか如何かは確定してねぇけど、大物との戦闘に備えといてくれ」
「はい、解りました」
ダムクに声を掛けられ、シャラナはこくりと頷き返答する。
「さてさて、今度の大物は何なのやら」
ダムクはそう言いつつも、大晶洞に出現する大物が何なのか予想が付いていた。
ダムクに限らず、他の仲間も、そしてエルガルムとベレトリクスもこの奥に居るであろう大物について確信に近い予想が付いている。
ただ2人――――シャラナとガイアだけは予想が付かずであった。




