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第4話 移動と冒険者ギルド

 準備をしてから冒険者ギルドに行くことになりましたが。


「ヒヒィイン!」


 馬車の形は映画で見たような感じ。

 だけど、問題なのはそれを引く()

 何度見ても、脚が四本どころか六本ある生き物なんて地球じゃいません!

 改めて、異世界に来ちゃったと実感した。


「スバル、乗れ」

「あ、はい!」


 突っ立ってちゃいけないと首を振ってから、開けてもらった馬車の中に乗り込んでロイズさんも向かいに座ってから動き出した。


(思ったより、揺れない。お尻痛くない)


 クッションはふかふかだし、揺れもバスを少し遅くしたくらいかな?

 新幹線に比べればへっちゃらへっちゃら。

 とにかく、被ってたフードを取ってひと息つけたよ。


「悪いな? お前のその顔(・・・)じゃ、騒ぎが広がるだけだからよ」

「女顔なのはよく言われてましたけど……」


 ロイズさん曰く、僕の外見はとにかく可愛い女の子過ぎるから、商業ギルドもだけど冒険者ギルドに行くと……清楚な女の子に飢えてる男の人がわんさか集まって来そうだとか。

 商業ギルド内で騒ぎがなかったのは、女性職員以外たまたま出払ってたからって。この時間だとランチに行く職員が多いみたい。

 なので、パン屋の制服の上からぶかぶかの皮マントで身を隠してる状態だ。


「ま。対応策はなんとか考えてるが、冒険者ギルドのギルマスにも確認取ってからがいいな。着くまでに、冒険者ギルドについて少し話しておくぞ」

「お願いします」


 まったく知らないままじゃ、これから会うギルマスさんに失礼だ。


「商業側にもあるが、冒険者にはレベルに応じたランク付けをされてる。上位からS、AA、A、B、C、D、E、Fとある。俺もこう見えてAランクは持ってるが、休職中だ」


 元冒険者さんと言われて納得出来る。

 ダンディなお顔に羨ましい体つきを持ってるから、商工会の会長さんだけじゃもったいないと思ってた。


「商業ギルドのギルマスさんに就いたからですか?」

「そんなとこだ。お前のレベルはさっき見たが、Eに届くかどうかってとこだな」

「悪いレベルですか?」

「職人なら、別に普通だ。だが、自衛出来ないとなると店を開いた場合誰か雇う必要がある」

「パン屋を開くだけで?」

「その女顔と声だけじゃ、襲ってくださいと思われるだろ? あと、錬金師の作るパンとなりゃ売れる以上に万引きも考えとけ。ただの従業員雇うよか、護衛重視だな」


 なんとも、セキュリティ重視が大変なお仕事になりそうだ。


「旦那、そろそろ着きますぜ」


 御者さんの声が小窓から聞こえてきたので、お話は一旦ストップ。

 ロイズさんに続いて転けないように馬車から降りた。

 地面にちゃんと立ってから上を見れば、やっぱり日本語に読めちゃう文字で『アシュレインギルド本部』と大きな看板が見えた。

 言葉もだけど、文字も翻訳対応出来てるのって不思議。

 なんかのチート特典だろうか?


「来い。ここはいっつも騒がしいから離れんなよ」

「は、はい」


 ここのギルマスさんも体格のいい男の人かなって少しわくわくしながら中に入れば、映画のシーンであるようなファンタジー要素満載の酒場が目に飛び込んできた!


「よぉ! 商業のギルマスじゃねぇか!」

「おぅ、お疲れさん。今日はこっちのギルマスに用があんだ」

「そーかい。たまにはこっちの仕事もやってくれよ」

「無理言うな。役職持ちになってるんだからよ」


 元冒険者さんだったから、知り合いさんがちょいちょいいるみたい。

 とりあえず、置いてかれないように注意していけば、ロイズさんは可愛いらしい制服を着た女の人が立ってるテーブルに向かった。


「よぉ、ギルマスに用があって来たんだが今いるか?」

「確認して来ますね」


 お姉さんは軽くお辞儀をしてから裏の方に入っていく。

 ここ以外にもテーブルが横に何個かあって、その後ろにはさっきのお姉さんと同じ服を着た人が何人か。

 全員女性だから、受付係のお姉さん達かな?

 きょろきょろと子供のようにあちこち見てたら、奥からいきなり突風が吹いてきた!


「あらぁ! よく来たわねぇ、ロイズ!」

「来る度に突風巻き起こすなよお前さんは!」


 のんびりした話し方の女性だなぁ、って呑気に前を見てみると見事なナイスバディをお持ちの耳が尖った女性が奥からやってきた。

 紫がかった黒髪って珍しいけど、とっても綺麗。

 お化粧も派手すぎないのは元々お持ちの美貌を損なわないためかどうかは男の僕じゃわかんない。

 お姉さんはロイズさんの前に立つと、ご立派なお胸をたゆんと揺らしてから彼を見上げた。


「アポ無しに用だなんて珍しいじゃないのぉ。今日は何の用?」

「俺もだが、後ろにいる奴についてちょっとな?」

「後ろ?……あら、小さいわねぇ?」


 自他共に認めますが、言われるとやっぱり傷つく!

 一応は160あっても男じゃ小さいからね……。


「けど……あら? ふんふん、面白そうじゃなぁい。用件込みであたしの部屋に通してあげるわぁ。来なさーい」


 ちょっとぴりっとしたけど、この人もロイズさんのように『鑑定眼』を持ってる人なんだろうか?

 それなら、僕が男だってのもわかったはずだ。

 ギルマスさんについて行く途中、赤髪の女の子にちょっとぶつかったので僕はすぐに謝った。


「ごめんなさいっ」

「……別に。いいよ」


 ちょっと見えたけど、癖っ毛でも綺麗な長い赤髪。

 顔も整ってて少し猫っぽい印象。

 綺麗な女の子だなと思ってたけど、その子は僕の謝罪を気にせずに会釈してから行っちゃった。

 皮の鎧とか身につけてたから、受付係さんじゃなくて冒険者かな?


「おい、スバル?」

「あ、はい!」


 立ち止まってたのに気づかず、ロイズさんの後を追った。


「ここよぉ」


 階段を上がってすぐに大きな扉があるのは商業ギルドと同じかな?

 ギルマスさんは、勢いよく扉を開けてから中に入り、ロイズさんは気にせずに続く。他に誰もいないから、最後に入った僕が扉を閉めました。


「もう、脱いでいいわよぉ坊や」


 やっぱり鑑定されてたようで、僕はロイズさんが頷いてからフードを取った。


「あらあらあら、とぉーっても可愛い坊やじゃない!」


 テンション上がる理由は顔についてだろうけど、抱きついて来そうなんで申し訳ないがロイズさんの背後に隠れさせてもらった。


「なぁーんで隠れるのぉー⁉︎」

「お前さん自分の体型考えろ! その胸で窒息されんの誰でも嫌だろーが⁉︎」

「けちぃ」

「舌打ちすんな! ハーフエルフじゃ若手でも俺より歳上の癖して」

「お姉さんと呼んで?」

「願望より用件聞け! 鑑定してわかっただろうが、こいつは錬金師だ。それと、数少ない時の渡航者でもある」

「あらぁ?」


 ギルマスさんはテンションを少し落として、ロイズさんから少し離れた。


「時の渡航者とは穏やかではないわねぇ……?」


 なんだろう。

 妖艶さが増したと言うか、怖いオーラをまとったと言うか。

 とにかく、僕を警戒しているようだ。

 やっぱり、異世界人だから?


「どこで見つけたのぉ?」

「はずれでも奥にある元パン屋だったとこだ。俺が下見しようとしてたらこいつが既にいた」

「坊や、お名前ちゃんと聞いていーい?」

「え……っと、(すばる)です。苗字、ファミリーネームは上條(かみじょう)と言います」

「鑑定した通りの名前だけどぉ、金聖国とも違うから不思議だと思ったわぁ」


 ギルマスさんは軽く息を吐いてから、中央にある執務机のようなとこに行く。


「それで、ここに来た用件は?」

「所属はパン職人だからうちだが、錬金師の技能(スキル)を実証すんのにな? スバルが作ったパンを食ってもらいてぇんだ」

「あらぁ素敵。お昼ご飯?」

「か、簡単なサンドイッチですが」


 持ち運びは、ラップがないからパンを包装するのに使う油紙でくるみ、木の箱に詰めて持ってきた。

 二人で分けて持ってきたので、その箱をお姉さんが机の上の物を退けてから置くように指示してくれた。


「あらぁ! 可愛らしいサンドイッチ‼︎」

「オープンロールパンサンドです」

「早速食べたいけどぉ……きちんと錬成出来てるから、他の子を呼びたいわね」

「当てはあんのか?」

「ええ、一人くらいは」


 パチンと指を鳴らすと、彼女の隣に薄っすらと透けた緑色のもやが現れてどんどん綺麗なお姉さんになっていく。ギルマスさんよりは、清楚っぽい感じ。

 そのお姉さんは軽くお辞儀してから消えてしまった。


「呼びに行ってる間にぃ、一個いーい? あ。あたしはハーフエルフのラシャールゥよぉ。長いから、ルゥでいいわ」

「よ、よろしくお願いします! えと、体調に問題がなければ普通のパンみたいなのでお好きなのを」

「ありがとぉ!」


 じゃあ早速、とルゥさんはベーコンとスクランブルエッグのサンドを可愛らしいお口で頬張った。

では。次回は水曜日に〜ノシノシ

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