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第23話 変わる効果達


「味は同じのがいいですか?」

「なんでもいいが、試したいのがあるのか?」

「ええ」


 今回はエリーちゃんの補助なしで一から作ってみるので、実は試してみたいのがいくつかあった。

 土台になるパンだけは彼女が手伝ってくれたのもあるんでしょうがないけど、今回は効果の確率より効果そのものを試す実験。

 まずは、材料を準備。


「オリーブオイル、塩、乾燥させたバジルの粉末に食パンだけです。パンは、サイコロ状にカットして」


 出来上がったパンはボウルに入れておく。

 調味料は別の器でよく混ぜてから、パンに少しずつ加えて絡めていきます。

 これを、天板二枚に均一になるように敷き、魔石で200℃に予熱したオーブンに入れて15分ほど焼く。

 途中で出してかき混ぜたりもするけど、その間にもう一個を作り始める。


「ルゥさん、甘いのやしょっぱいのだとどちらが良かったですか?」

「あらぁ、リクエスト聞いてくれるのぉ?」

「せっかくなので」

「俺にはなんで聞かなかったんだよ?」

「い、イメージから甘いものよりしょっぱいのかと……」

「まあ、間違ってねぇが」


 頭を掴まれかけたので正直に言えば、ロイズさんは手を引っ込めてくれました。

 対するルゥさんは、悩んでいるのか首を少しひねっていた。


「そぉねぇ? チョコもバターも美味しかったけどぉ……ラスクって、甘い方が多いの?」

「はい、僕がいた国や発祥らしい国でも甘いのが多いです」

「んじゃぁ〜、チョコじゃない甘いのならなんでもいいわぁ」

「承りましたー」


 だけど、時間はかけずに簡単に出来るのにしよう。

 今度はサンドイッチを作る時に出ちゃう、食パンの耳を活用。


「大きさはお好みの幅に切って、これを別のオーブンでカリカリに乾かします」


 入れてから隣のバジルの方を様子見すれば、ちょうどいい具合に焼け目が付いていた。

 なので、木ベラで上下をひっくり返しすように優しくかき混ぜてまた戻す。均一に火が通らなきゃいけないから、ラスクによってはこうした方がいい。

 もう一方が乾くまでは、少しお片づけ。


「あ、そうだ。エリーちゃん、粉チーズってあったっけ?」

「んー、ちょっと家の方見てこようか?」

「お願いしまーす」


 しょっぱい方のひと手間にいいのを思いついたからね。こっちの調味料って、和食文化の国を除いてもだいたい日本とそっくりなので結構なんでもあるから便利。

 片付けと焼き上げも終わったら、何もかけてないのはひとまず置いて、エリーちゃんが持ってきてくれた粉チーズを使います。


「このままでも充分美味しいと思いますが、粉チーズを適量ふりかけて」


 ボウルに入れたコロコロラスクをスプーンで絡ませて出来上がり。




『錬金完了〜♪』





************************




【スバル特製ラスク】



《バジル・サイコロラスク(食パン)》

・二、三個食べるだけで半日ほど禁煙状態が保てる

・オリーブオイルでさっぱり、味付けは塩でもオツだが粉チーズを振ったことでより濃厚に! 好みによるけど、チェダーチーズでも良いかもしれない……

・保存日数は四日




************************




「あらぁ? ロイズにあげるのだからかぁ、いいのが出来たじゃなぁい?」

「……俺はヘビーじゃねぇぞっ、ふがぁ⁉︎」

「こぉーのお口が言うー?」


 僕の脇からそれぞれ鑑定眼を使ってお二人は見てたが、ロイズさんの否定にルゥさんが彼のほっぺを盛大に引っ張った模様。

 ちょっと振り返れば、ロイズさんが子供のように遊ばれていました。


「カミールにちょくちょく心配かけてるじゃなぁい? ジュディちゃんやユフィ君も大きくなったけどぉ、子供に受動喫煙させるのは良くないのよぉ〜?」

「わ、わふぁった、わふぁったかりゃ離せ!」

「はいはーい」


 カミールさんはロイズさんの奥さんで、ジュディちゃんとユフィ君はお子さん達。

 週に三日程親子揃って来てくださる常連さんです。


「……スバル。作る時に、ロイズさんの喫煙状態とか思い浮かべたの?」

「お酒じゃないのだとそれくらいかなぁって」


 まさか、本当に出来ちゃうとは思っても見なかったが。

 効果を試すのは後になり、ルゥさんの方も仕上げることになりました。


「こっちはキャラメル味にします。フライパンに砂糖、無塩のバターと水を入れて弱火にかけます」


 バターと砂糖が溶けて色づいてくる頃には、キャラメル独特の甘くていい匂いが広がっていく。

 ただ、ここからは時間勝負なので一気にいきます!


「色がついてから、パンと絡めてすぐにシートの上に移して冷まします。でないと、キャラメルは焦げやすいので苦くなっちゃうからです」


 ひと手間に、ラスク一つ一つをバラバラにしておく。

 これで冷めれば完成なんだけど、何故か錬金の音声がそこで鳴り響いた。





************************




【スバル特製ラスク】



《キャラメルラスク(パンの耳)》

・女性には嬉しい脂肪代謝!

 →今回の大きさで一回の代謝につき、二個がベスト!

 →一日、二回以上食べると効果が水の泡に

・簡易版キャラメルだが、バターのコクがたまらない! 好みでシナモンパウダーを振るのも良し、ココアも可

 →ただし、甘いので補正追加は特になし

・保存日数は三日





************************




(女性向けとは考えてたけど⁉︎)


 なんで意識すると、こんなユニークアイテムになっちゃうの⁉︎

 けど、ルゥさんには鑑定眼があるから、誤魔化しなんて出来ない。同じ技能(スキル)持ちのロイズさんも、少しサイドに寄りながらルゥさんの出方を待っていた。

 エリーちゃんも雰囲気から僕の後ろにやってきて、全員でルゥさんの反応を待っていると。


「……あらあらぁ! 女性に嬉しいアイテムじゃなぁい⁉︎ けど、食べる量は注意しなきゃいけないのねぇ」


 どうやら大いに喜んでくださったようで、少しほっと出来た。

 ルゥさんは早速、と二つ掴んで食べ始めた。

 どう効果が出るかわかりにくいが、みるみる減っていくわけじゃないっぽい。


「美味しいっ! 甘いのにコクがあって、これは好きだわぁ! んー……気持ち胸が軽くなったくらいかしらぁ? エリーちゃんも食べてみるぅ?」

「い、いいんですか?」


 エリーちゃんも女の子だから、やっぱり体型変化に効果があるのは興味あるみたい。

 彼女が食べても変化はすぐになかったが、味が好みだったようで幸せそうに食べてくれた。


「これで禁煙なぁ……?」


 そう言いながらも、ロイズさんはコロコロラスクを三個程口の中に放り込んだ。

 こっちは効果があったのか、少しずつ彼の口が緩んでいく。


「なるほど、『喫煙』したくなくなる効果はあんな?」

「気分的にですか?」

「ああ。いつもなら吸いたくなるが、失せたな……だが、今回は『依頼者』がついた場合だな。今度は俺らを意識せずに作ってみろ」

「はい」


 そうして、出来るだけ考えずに同じ手順で作ったところ……やっぱり、効果は違っていました。


「バジルの方は、脚力付与ぉ?」

「キャラメルの方は風邪薬がわり、か」

「意識しないとこうも違うんですね……」


 そしてだいたいの場合、一度作ると値以外の効果は固定になる。

 だけど、その法則がこれで違うことが立証された。


「錬金師の特性かどうか、俺じゃ知識は付け焼き刃程度だ。前々から考えてたが、一度ヴィンクスの奴呼ぶか?」

「ロイズさん、あの人とスバルを会わせるんですか?」

「ああ。ヴィンクスの奴も結構気になってたようだからな? 研究がどーとかでこっちには来れてねぇが、スバル本人にも興味はあるらしい」


 この話の流れ、少し前にエリーちゃんが言ってたポーション屋さんのことだろうか?


(ロイズさんがこう言うのなら、会って大丈夫ってこと?)


 同じ、と言うより、だいぶ先輩の錬金師さんのお話を聞けるのなら嬉しいが、さっき思ったことは杞憂でいいのかな?

 ロイズさんが割とあっさりしてるから思ったけど。


「深ーく考え過ぎちゃうのもぉ、時には悪ぅいことよぉ〜?」

「る、ルゥさん⁉︎」


 いきなり耳元でささやかないでほしいです!

 変にドキドキしちゃうから!

 慌てる僕を他所に、ルゥさんは自分宛てじゃないキャラメルラスクをぽりぽり食べていた。


「とりあえず、普段店に出すのはあんま意識せずに作れ。ただ、ジェフんとこの件みたいなのがあれば対応はしていい」

「わ、わかりました」

「ヴィンクスに会わせるのは、最低祭りの後だな。今は向こうも忙しいだろうし、お前もこっちに来て初めてのイベントだしな?」

「はい!」


 出来る限り楽しみたいし、お客さん達にも喜んでもらいたい。

 そう意気込んでいると、お腹の鳴る音が聞こえてきた。


「ルゥ?」

「え、エリーちゃん?」


 二人がお腹を押さえ込んでるが、顔色がおかしい。

 なんだか、気持ち悪くなった時みたいに辛そうだった。


「「と……」」

「「と?」」

「「トイレ行って来ます(ぅ)ー!」」


 なにかを堪えながらも駆け足で自宅側に行ってしまった。

 うちはトイレが二つあって良かったが、一体どうしたんだろう?


「こりゃ、あれか?」


 ロイズさんはわかったのか、最初に作ったキャラメルラスクを鑑定し直してた。

 そして、僕に来いと手招きする。


「スバル、たしか自分が錬金したのは後でも表示が出るよな?」

「あ、はい」


 少し集中してラスクを見つめれば、同じ画面が表示される。

 そして、ロイズさんは自分が見えてる方の画面を少し叩いた。


「最初の文にあるが、この代謝……俺がいくつか調べた方じゃ古いもんを外に出す働きを起こすそうだ」

「じゃ、つまり……?」

「あいつらの体の脂肪を落とすのに、他の古いもんを出させようってことだ」


 それ故に、おトイレ事情。

 下品だけど、美容には大変効果があるとこれでわかりました。


【お手軽ラスクの作り方】



ラスクは二度焼きが基本なため、オーブンで焼く時間も調理法によっては結構かかってしまいます。


今回は、少しだけ簡単に出来る方法をお伝えさせていただきますね。



今回は、フライパンとレンジを使って『ソフトラスク』を作ります。

固焼きが主流なラスクがほとんどですが、まだ歯の成長途中なお子様にはこのソフトラスクが好まれるかもしれません。



①食パンを一口大にカット。(縦横4等分がいいかも)


②レンジで1分半加熱→この時、パンの下にキッチンペーパーを敷きましょう。出てくる水分を吸わせるためです。


③温めたフライパンに、マーガリンかバターを食パン2枚分に対して大さじ一杯か1.5ほど入れて、パンも入れたら転がすように炒めます。


④砂糖も入れて、溶けてコーティングされたら完成。

食感はサクサクしてて、前述した通り優しい歯ごたえのラスクになります。



是非一度、お試しあれノ

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