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第21話 まさかの……?

サブタイトル通りの事態が起きますノシ







 ◆◇◆









「本当に感謝してもしたりない!」

「お、大袈裟ですよクラウスさんっ」


 シェリーさんが伝書蝶を飛ばしてからしばらく、アシュレインでバラバラに行動してたクラウスさん達が集まってきました。

 そして全員が揃ってから、リーダーのクラウスさんが代表して僕とエリーちゃんにお礼を言ってくださった。

 けど、腰折り過ぎだから顔を上げてと言っても、今回は聞いてくれません!


「大袈裟じゃない。店長さんのパンがなきゃ、レイスは今頃植物状態になってた」


 前にパンを大量に購入してくれたアクアって小柄な女の子も、同じくらい深く腰を折っちゃった。

 なんでも、パラライトリザードって言うのは、直撃で相手に与える毒の量が体内の血液全部に値するらしい。

 つまり、僕のところに来なかったら、レイスさんは命を落とすに等しい状態になってたそうだ。

 僕のパンが役に立てて本当に良かった!


「先に仕留め損ねた事については、教訓として受け止めておくだけでいいと思うよ。引きずり過ぎちゃ、次への対策に繋がらない」

「Bランク保持者に言われちゃ、俺達もうだうだ言ってられないねぇ?」


 今日は寝不足じゃないケインさんも、苦笑いしながら体を起こした。

 ちなみに、今は玄関先。

 外はもう暗く、街灯もぽつぽつと付き出した頃だ。


「……ランクは関係ない。先輩からの受け売りだけど、パーティーで行動するなら、冷静に連携が大事だって」

「肝に銘じまっす!」


 ムードメーカーなのか、ケインさんは少しおちゃらけて敬礼の真似事をした。

 それだけで、場の空気が少し和むからすごい。

 クラウスさんや、またレイスさんを背負ってるジェフさんも少し噴いてから苦笑いしたしね。


「んじゃ、俺とアクアはレイス連れて先に戻るよ!」

「ん、りょーかい」


 アクアさんも何故か敬礼してから、ケインさんとジェフさんのところに行く。

 てっきりケインさんがレイスさんを背負うと思いきや、レイスさんより小柄なアクアさんが彼をお姫様抱っこしちゃった⁉︎


「ちょ、なんでぇ⁉︎」

「エリーさんにも言われた、パーティーを信頼してない罰」

「元々麻痺が治ったら、する予定だったんだよねー? じゃ、店長さん達まったねー!」

「失礼する」

「俺の意見ぅううう⁉︎」


 そんなやりとりをしながら、三人は行ってしまいました。


「不思議だろうが、うちじゃアクアが一番力持ちなんだ」

「俺のこいつより、でっけぇ業物を振り回す魔剣士(ルーンナイト)だかんなぁ?」


 ジェフさんが背負ってる槍も結構立派で大きいのに、あんな小柄な女の子が?

 想像しても、ゲームキャラのようにしか浮かばない。

 やっぱり異世界なんだ、って今日も実感出来た。


「まあ……反省には、あれくらいでも生易しいかもね」


 エリーちゃん、冒険者としては先輩だから厳しめです。

 シェリーさんやクラウスさん達も、苦笑いしながら同意してました。


(けど、男の人にはキツいよね……)


 もし、僕がエリーちゃんに抱えられたら、絶対恥ずかしい以上の気持ちになっちゃう。

 それがないように、僕も気をつけようと心に誓った。


「じゃ、あたしは今日食事当番だからそろそろ入らせてもらうよ」

「え、わ、私がやるよ! エリーちゃん治療で頑張ってくれたのに」


 思わず僕って言いそうになったのを訂正してから、エリーちゃんを引き止める。

 すると、エリーちゃんが僕の耳に顔を近づけてきた。


「……これ以上ここにいると、げ、げげげ、限界なんだよっ。口実にさせて! あと気を紛らわせたいぃっ‼︎」

「あ、うん」


 ほとんど普通に会話してたから忘れてたけど、やっぱりクラウスさん達も怖いんだ。

 僕の腕を掴む手も震え出してたんで、素直に頷いてから彼女を見送りました。


「食事は交代制なのか?」

「あ、はい。彼女にもパン作りは色々頑張ってもらってるんで」

「女二人で同居は危険だが、彼女はランクBなら納得がいくな。夕飯時まですまない。俺達も帰ろう」

「俺は、ちょっとだけ店長さんに用事あっから先行っててくれねぇか?」

「ジェフが?」

「すぐ済むって、な?」


 シェリーさんの頭を軽く叩いてから、ジェフさんはクラウスさんと彼女を先に行かせた。

 シェリーさんは僕にもう一度お礼を言ってから、クラウスさんと帰っていく。

 けど、今日も少ししか話してないこのお兄さんが僕になんの用事が?

 ジェフさんは、クラウスさん達の姿が見えなくなってから、僕に向き直った。


「店長さん、スバルって言ったか?」

「え、ええ……」


 意地の悪そうな笑顔に嫌な予感しかしないが、僕は努めて笑顔を装った。


「ま、用は簡単だ。……あんた、いや、お前男だろ?」

「っ⁉︎」


 衝撃的過ぎて、僕は言葉を失った。


(なんで⁉︎ どこで⁉︎)


 バレる要素なんて、思い返しても検討がつかないのに、目の前のジェフさんは僕が黙り込んだからニヤニヤ笑っていた。

 だけど、からかう雰囲気はなく、なんか納得がいった感じ。

 そうかそうかと言いながら、あごに手を添えられた。


「やっぱそーか? いやぁ、ほとんど確信持ってたんだが」

「え、そ、その、ど、どこでわかったんですか……?」

「ん? ああ、最初はおったまげたが、仕草とかでなんか変だなって」

「そ、それだけ?」


 もっとわかりやすい理由だと思ったのに。


「あと、俺の経験だな?」

「経験?」

「今はこんななりだが、昔は俺もさせられたんだよ『女装』」

「…………ジェフさんが?」


 想像したけど、ごつい感じの女の子しか浮かばない。

 それが顔に出てたようで、ジェフさんはからから笑い出した。


「今は、って言っただろ? 俺の実家は女ばっかで男が少な過ぎてな。古着とかは姉貴達のお下がりなのは当然、体つきがしっかりするまでは髪も結構伸ばしてたんだよ」

「……ほんとに?」

「ああ。そのせいで、女の仕種とかは叩き込まれたようなもんだ。スバルのその顔と服装で最初は気づかなかったが、よく見りゃ変な部分多かったしよ」


 たしかに、動きについては特に指示されていなかったから、そこでバレても無理がない?

 でも、会って二回くらいでバレるってマズイ。

 それに、確認してこの人は僕に何を要求するのだろうか?


「……確かめて、どうするんですか?」


 僕が少し固い声で聞くと、ジェフさんは笑うのを止めたが、何故か口元を緩める。


「そんな怖い顔すんなって。確認したかったのは……理由の一つにレイスがいるからだなぁ?」

「……レイスさん?」

「あいつが気づいてるかはわかんねーが、相当お前に惚れてっから」

「え」

「だもんで、夢壊す事になるが俺が確認しときたかったんだ。一応パーティーだしよ」


 たしかに、レイスさんは断っても諦めなさそうな気がした。


「あとは、割と個人的な理由。こいつなんで昔の俺以上に女の姿で生活してんのかって気になった」

「そっちが本音じゃ……?」

「まぁな?」


 茶目っ気たっぷりなウィンクされても誤魔化されません!


「別にどーこーしようって理由はねぇよ。けど、その顔じゃ男の恰好したところで信じられねぇし、逆にあれ(・・)な野郎とかには群がれるな」

「気持ち悪いこと言わないでくださいっ! その対策も兼ねてますが!」

「わーるかったって。んじゃ、商業のギルマスとかの指示で?」

「……ええ」


 時の渡航者と言う事実だけは伏せて、事情は簡単に言うことにした。


「流れ者だった僕を、ギルマスのロイズさんが拾ってくださって職もつけてくれたんです」

「敬語いいぞ? 見た感じ歳近そうだし」

「……ジェフさんいくつ?」

「22」

「え、同じ……」


 なのに、この体格差ってなんで?

 天に二物を与えずってこの事?と変に実感しました。

 僕も同い年だと言えば、ジェフさんは今度こそお腹を抱えて大笑いし出した。


「タメで同性なのに、この差おっもしれ⁉︎」

「面白いで済まさないで⁉︎ あと声大きい!」

「お前もでっけぇって」

「う」

「しっかし、まあ気づく野郎は少なねぇな。うちのケインやクラウスも多分気づいてねぇ」


 その事については、ほっとしていいやら不思議な気分だ。


「生活してく上で、性別を偽るのはそんな珍しくねぇが。スバルの場合、親衛隊もいんだろ? あれ大丈夫か?」

「だいじょばないけど、会ったことないし……」

「そうなのか? まあ、用はこんだけだ。俺らはシェリーのランクが昇格出来るまで滞在すっから、今度は男同士で話そうぜ?」

「今一人で出歩けないんだけど……」

「俺が迎えに来るんじゃ、エリー納得しね?」

「話してみる……」


 危害を加えようとはしないし、信用していいかもしれないが、日本と違ってすぐに人を信じていいか悩む。

 ロイズさん達とは、出会って事情を話した上で受け入れてくれたから別。

 ジェフさんが、それに値するかまだわからないしね。


「ま、パン買いには来るからそん時でもいいしよ」


 それだけ言い残して、ジェフさんは行ってしまった。


「……うーん。バレちゃったかぁ」


 しかも、相手も似た経験持ちだったのは意外過ぎでした。


(エリーちゃんに話したら、どう言うんだろう……)


 少なくとも、怒られるだけで済まないはず。

 少し考えたが、正直に言おうと振り返ったら、壁にエリーちゃんが腕組みしながらもたれかかっていた。


「い、いつから?」

「……男同士で話さないかってとこから」


 ああ、これはもうお説教コース?と思ったら、エリーちゃんは怒る様子もなくため息を吐いただけ。


「信頼はまだ無理だけど、信用はしていいと思う」

「なんで?」

「あいつ、多分あたしが男に恐怖を持つ体質って事も知ってる」

「え?」


 全然そんな話題も素振りもなかったのに?

 エリーちゃんに聞いても、まだ憶測としか返事はもらえなかった。


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