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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
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7・vsデュラハン

「精霊召喚。風よ力をお貸しください」


その声に応えるようにレネの周りの空気が揺れた、直後5羽の小鳥が出現した。

幻十朗は鳥を見た瞬間里の襲撃が浮かんだがすぐに違うと分かった。

里を襲った鳥は正真正銘血肉を持った生きた鳥だがレネの周りに現れた鳥は明らかに生物ではなかった。

姿形こそ鳥だが半透明でまるでゼリーのように向こうが透けて見えしかもやや緑に光を発し長い尾のように光の残像を残して飛んでいた。

それは幻十朗さえも一瞬心惹かれてしまった程、儚くも美しく幻想的な光景だった。


「ライティング」


目の前に輝く玉が出現、それはレネの頭上3~4メートルくらいの高さまで上がった。

月や星が出ている為ある程度は見えるが小鳥が発する光でレネの存在が分かる以上わざわざ暗い場所で戦う必要は無い。

魔法で出現した光はその場所を昼間のようにはいかないが十分に照らしていた。

その光に気が付きレネの姿を確認した魔物デュラハンは槍を構え馬に蹴りを入れるとレネに向かって走り出した。

どんどん距離が短くなりそしてデュラハンは速度を落とすことなく槍をレネに突き刺した。

しかし馬の突進も槍の攻撃も重力も無視したかのようにデュラハンは突然馬ごと後方に飛び距離を取った。


(あの状態から回避に移るか・・・さすが化け物、常識を完全に無視した動き。それにしてもあの小鳥たち精霊と言っていたか、あの化け物が警戒するほど強い・・・か。これは無駄足だったか)


ちょっと残念そうにレネの戦いを見守った。

レネは特に何かをするでもなくじっとデュラハンを見つめ、デュラハンは明らかに鳥を警戒しレネの周りをゆっくりと歩き隙を窺っていた。

ぐるぐると廻り痺れを切らしたか一度だけレネに向かって槍を突き出した。

しかし小鳥が一瞬だけ加速したような動きをしてレネの間に割り込むとガキィーンと大きな金属音が響き槍が大きく弾かれた。

すぐにレネが腕を振ると2羽の小鳥がデュラハンに突撃するもまた後方に離れて距離を取った。

これが何度も繰り返される、そのうち何回かレネではなく小鳥を直接攻撃をするも大きく弾かれるだけだった。

見た目はこう着状態だったが少しずつ確実にレネは町を囲む壁に近づいていった。

男たちもすでに壁の上でレネの戦いを見ていつでも魔法で攻撃できるように杖を持ち、また何人かは弓を構え待機している。

レネとのやり取りを見る限りデュラハンの実力は幻十郎から見れば病み上がりの体を慣らすのに最適な強さだと感じるのだが・・・。

幻十朗は「作戦通りに終わったな」とため息をついてデュラハンを見ると、ふと目が合ったような気がした。

いや、実際に合っていた。

デュラハンの後ろから戦いを見ていたデュラハンの頭蓋骨が幻十朗を見つめていた。

フッと幻十朗は笑ってしまった、嬉しくなった、これから起こる事に。

デュラハンは再び槍を構えるとそれを見たレネは小鳥を前に置き守りに入る。

しかしその必要はなかった、

何故ならその突進はレネの横をすり抜けデュラハンは一気に幻十朗に向けて駆け出した。

レネが小さな悲鳴を上げたがその時にはデュラハンと幻十朗の距離は半分になっていた。

幻十朗はデュラハンが槍を構えた時には前に歩きだし刀に手を乗せ、そして何故か目をつぶり騎士が王を前にしたように頭をさげ跪いた。


「風遁、刃・・・居合い!」


レネは何が起きたのか分からなかった。

ただ幻十朗は無事、それだけは理解した。

壁の上の男たちは弓と魔法で幻十朗を援護しようと構えたがデュラハンの突進が早すぎる為狙いを定められず矢を射ることも発動させることも出来なかった、

彼らは何が起こったかさえ見えていなかった。

デュラハンの槍が幻十朗を貫いたと思った時にはどう避けたのか刀を振りぬいた姿でデュラハンの後方にいた。

デュラハンの乗った馬は左側の前足と後ろ足が鎧ごと切り裂かれ前のめりに倒れかなりの速さで転がり滑っていく。

この時馬上にいたデュラハンは既に大地に足を着けその体を幻十朗に向けていた。


「・・・なぁ、今何があった?俺にはデュラハンの馬が勝手に自滅したように見えたんだが・・・」


一人の質問に全員が自分たちもそう見えたいやそれ以外ないと言い合っていた。

レネは一瞬呆然としたが思い出したように駆け出した。

馬は門より町の中に少し入り倒れたまま暫く暴れていたが動きを止めたとたん灰となって崩れ去った。

幻十朗は抜いた刀をそのままにデュラハンの方に歩き出しデュラハンは持っていた槍を投げ捨て腰の巨大な剣を抜いた。

それと同時に宙に浮いていた頭蓋骨は体の上に、あるべき場所に収まった。

幻十朗はクナイを左手だけで器用に2本投げそれを追いかけるように走り出す。

クナイの1本は額に、もう1本は首に飛んでいく。

デュラハンは上段からの一振りで2本のクナイを弾き飛ばし、大剣が真下に振り下ろされクナイが吹き飛ばされたと同時に幻十朗は刀をその大剣の上を滑らせるように右下から左上に切り上げる。

しかし大剣は地面を切る事無く一瞬で振り上げられた。

刀は上に流れ幻十朗は弾き飛ばされそうになった刀を離さぬようしっかり握り後ろに逃げる。

だが逃がさぬとばかりに振り上げられた大剣は幻十朗の頭に振り下ろされた。

幻十朗は刀で大剣を止めようとしたが「チッ」と舌打ち残し真横に転がり避ける。

大剣は再び寸止めされデュラハンは体勢を立て直そうとしている幻十郎の方に飛び左下から切り上げるようその首を狙って大剣を振りぬく。

しかし今度は幻十朗のお返し、真下から切り上げられた刀が大剣を上に弾き幻十朗は上に上がったデュラハンの大剣を持つ腕を蹴り飛ばした。

ただ鎧のせいだろう、一瞬だけ顔をしかめたがその勢いを止めじとくるりと体を回転させ裏拳、いや、刀の鍔頭でデュラハンの頭を狙ったが空いた左手で受け止められ2人・・・と言っていいだろうか、お互い距離をとった。


「ふぅ~・・・風遁、疾風迅雷」


幻十朗はニヤリと笑うとデュラハンも笑ったような気がした。

術の発動と笑いと同時クナイを1つ再び頭蓋骨めがけ投げるが簡単に手で払い弾き飛ばす、もちろんこの瞬間に二人の間合いは無くなっていた。

幻十朗の横薙ぎをあっさりと逆さに立てた大剣で受け止め今度はデュラハンが鍔頭で頭を殴ろうとする、幻十郎はしゃがんでかわすがそこにデュラハンの人間離れした3度目の寸止め、突然切り返し攻撃に転じ斬りつける、これが刀なら峰打ちになったが両刃の剣には峰など無い。

だが先に下から突かれた刀が頭蓋骨に吸い込まれそうになり慌てて横に捻りかわす。

その状態から器用に鎧による重量級の蹴りを幻十朗の頭に食らわす、しかし突然軸にしていた右足を持ち上げられバランスを崩し蹴ることが出来なかった。

デュラハンの足を持ち上げたのは刀を捨て相手の体に密着するように近づいた幻十朗、左手でデュラハンの足を抱え持ち上げ何も持っていない右手でデュラハンの頭蓋骨を掴み術を発動させる。


「風遁、かまいたち」


デュラハンは咄嗟に頭を掴んだ右手を払いのけ左足で幻十朗の胸を蹴り飛ばす、その勢いで後ろに飛びのくもその場で跪き手を着く、その頭蓋骨は半分近くが崩れていた。

距離をとられた幻十朗は蹴られた胸の汚れを叩き落とし特に警戒することも無く落ちていた刀とクナイ3本を拾い上げ刃についた土を振り落とした。


「さすが魔物、頭を半分も壊されてまだ動けるか・・・まぁ首が外れていても動けるんだから当然か」


レネは走るのを止め幻十朗を見ていた、小鳥はもう消えている。

壁の上の男たちも呆然と見ているだけだった。

顔を半分失ってなお、しかし燃える炎は更に滾らせ立ち上がったデュラハンはまた間合いを詰め先ほどと比べると少し遅い剣戟を何度も何度も繰り出す、が幻十朗は反撃することなくかわし続けた。

幻十朗はかわしながら刀をゆっくりと鞘に収めるとデュラハンは何かに気づくように剣を止め間合いを少し取る。


「風遁、刃」


二人は同時に前に出てデュラハンは鋭い突きを、しかし幻十朗は抜刀術でデュラハンの大剣を根元から切り落とした。


「見事だった、首無しの魔物よ」


デュラハンはその言葉とその結果に満足するようにその場でまるで首を差し出すように跪いた。

青く燃えていた頭蓋骨も敗北を認めるように完全にその火を消している。

幻十朗は首を切り飛ばし忍術で止めをさした。


「風遁、かまいたち」


頭蓋骨は完全に破壊されドサッと体が倒れこむと黒い鎧ごと何も残さず馬と同様灰になった、いや、灰の中に大きな傷やヒビの入ったおよそ10センチ程度のデュラハンの形を模したダイアモンドだろうか、宝石が落ちていた。

上にいた男たちはいつの間にか降りてきて幻十朗をかこみ「凄いな」とか「俺にも剣を教えてくれ」など全員が称えた。

遅れてレネも息を切らして興奮するように幻十朗に走りよってきた。


「だ、大丈夫ですか?怪我は無いですか?さっきの戦いで昨日の傷開いてませんよね?」

「ええ、大丈夫です。怪我もしていませんし傷も開いていません」

「よかった~ごめんなさい、まさかあなたの方に行くなんて・・・」

「気にしないでください、無事魔物は倒せましたからね(・・・おかげで当初の予定通り憂さ晴らしが出来ました)」

「そうですか?でもこんなに強かったなんて・・・」

「それに関しても明日レネ殿のお父上がお戻りしだいお話しますので。さあ、帰りましょう」


幻十朗とレネは馬を借り家まで乗って帰ると起きた才蔵と子狐とアイルに出迎えられた。

レネはアイルにデュラハンの戦いを教えると二人興奮して盛り上がりかけたが幻十朗に休むと言われお開きになった。

ように見えたが母と娘はまるで子供のように布団にもぐりこっそり熱く語り合っていた。

男たちの興奮も未だ冷めず馬に乗らず歩いて幻十朗とデュラハンの戦いぶりを熱く語っていた。

一度だけ名前の事が出てきて「そう言えばあいつ誰だったんだ?北の町から来たのかな?」と疑問になったがやはり戦いの事でまた話が盛り上がり今夜男たちの酒の肴になっていた。

刃・・・擬似的な風の刃を武器に纏わせ切れ味と刃こぼれに対する耐久性を強化する。だが一度切ればその効果は消えてしまう風遁術。


かまいたち・・・風遁術・刃の強化版だが一発一撃の威力は刃に劣る。無数の刃を直接ぶつけ切り刻む風遁術。




注:居合いとかちょっと侍ぽさが入ってるけど忍者です。

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