昔話2
こーん、こーん、いたいよ~、足がいたいよ~。
しんしんと、森に振り続ける白い雪。
こーん、こーん、たすけて、おかあさ~ん。
白く冷たい雪の中で、一匹の小さな子ギツネが泣いていました。
こーん、こーん、こーん。
お母さんキツネとはぐれてしまったのでしょうか、でも近くにお母さんはいません。
こーん、こーん、こーん。
どれだけ暴れても、どれだけ引っ張っても、足を挟んだ罠が子ギツネを逃がしません。
こーん、こーん、こわいよ~、おなかすいたよ~。
こーん、ドスッ、こーん、ドスッ、こーん、ドスッ。
何の音でしょうか、鳴き声にまぎれて変な音が聞こえて来ました。
ドスッ、ドスッ、ドスッ。
鳴くのをやめると、変な音はすぐ傍で聞こえました。
子ギツネは恐る恐る、後ろを振り返りました。
大変です、黒くて大きなクマが、子ギツネを見下ろしていました。
こん、こん、こーん、クマさんクマさん、僕はおいしくないよ、だからどうか僕を食べないで。
子ギツネは必死にクマにお願いしました。
しかし聞きどけられなかったのか、クマは大きく恐ろしげな前足で子ギツネを捕まえようとしました。
子ギツネは怖くてぎゅうっと目をつむりました、でも待っても待って何も起こりません。
再び恐る恐る目を開けると、子ギツネの目に大きな五芒星の星が見えました。
するとどうした事か、子ギツネがどれだけ暴れても外れなかった罠が外れたではありませんか。
自由になった子ギツネは怪我をした足をペロペロと舐めました。
するとクマはこう言いました。
「大丈夫かい、たいした怪我じゃなくてよかった、このあたりは人間の作った罠が多いからね、気を付けるんだよ」
優しいクマにお礼を言おうと頭を上げた時、子ギツネはそれと目が合いました。
なんとニワトリです、ニワトリがクマのお腹のあたりにぶら下がって子ギツネを見つめているではありませんか。
お礼を言うのも忘れ、お腹のすいた子ギツネと動かないニワトリは、じぃーと見つめあい続けました。
じぃー。クマはこう言いました。
「これは駄目だぞ。もうすぐ子供が生まれるのだ」
じぃー。クマは更にこう言いました。
「元気な赤ちゃんが生まれるように、こいつで体力をつけて欲しいんだ」
じぃー。クマは負けずに更にこう言いました。
「そんな目をしても、この鳥はやれん」
じぃー。クマは泣きそうになりました
「分かった分かった、やるからそんな悲しそうな目をするな」
勝ちました、クマに勝利しました。
子ギツネは大きなニワトリをなんとか口に咥え、森に向かって歩いていきます。
こーん、こーん、ありがとう、ありがとう。
子ギツネはニワトリを置いて、クマに感謝を込めて何度も何度も飛び跳ねました。
それに答えるように、クマは器用に前足を左右に振ります
再びニワトリを咥えた子ギツネは、森の中へと入っていきます。
こんこんこん、罠のせいで小さなねずみは獲れなかったけれど、大きなニワトリを貰いました。
こんこんこん、早く帰ってお母さんにニワトリを見せてあげよう。
こんこんこん、ちょっと足が痛いけれどガマンガマン。
こんこんこん、こんこんこん、こんこんこん。
すると向こうから大きな母キツネがやって来ました。
こん、こん、こーん、お母さん、大きなニワトリ貰ったよ、一緒に食べよう。
こんこんこん、子ギツネと母キツネはこうして無事に。
こうして無事に、こうして無事に、こうして無事に、こうして無事に、無事に無事に無事に無事に無事に無事に無事に無事にブジニ?。
━━ ココハドコ? ━━
雪は消え、見知らぬ森にいる子ギツネは、二度と母キツネに会う事はできませんでした。