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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
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44・町の中の異質な反応

 門をくぐると馬に跨る門兵が1人、こちらが入ってくるのを確認後ゆっくりと歩き出しロインとノイドが操る馬と馬車は

 門兵の後を付いていく。

 やはり壁の外から見た想像通りレティーフルの町並みは規模こそ小さいがカザカルスとほとんど変らない。ただ規模はテノアと同じくらいと思いきやまるで違っていた。そもそも人口の数は桁が違う為建物の密度はかなり密集していてまたテノアは1階あるいは2階建ての建物が多い中このレティーフルは町壁の高さに近い建物、3階以上の中層建築物が非常に多い。唯一まだ発展中なのか大通りを外れた小道などは半分以上が舗装はされていなかった。

 そんな中、馬を操りながらロインとノイドは居心地の悪さよりも疑問を感じていた。と言うのもカザカルスでの人々の反応から黒ずくめ姿をした幻魔族は当然注目され色々噂されるだろうと覚悟はしていたがレティーフルでは少し違っていた。2人を見たとき驚くのは同じなのだがその後珍しがって2人を見るかと思いきや逆にそれ以上見ようとせず目を逸らしたり見ていながら気が付かないふりをしたり中にはまるで逃げるように建物の中に消えていく者までいた。明らかにこの町の人々は幻魔族の2人と関わろうとしない、とても門兵が言っていたように歓迎しているとは思えない。



「なんだろうこれ?嫌がられてる?カザカルスとは反応が違うんだけど?」

「ロイン、お前達この町で何やらかしたんだ?」

「何って言われても俺この町に来たの初めてだし父さんも一応初めてらしいけど……」



 ロインの後ろで町を見ていたサージディスも人々が発する不穏な空気に戸惑っていた。この時離れていてもお互い声が聞こえるように2人は村を出てからも千里聴を発動させていて、と言っても門兵とのやり取りの隙を突いてノイドだけは千里聴を掛けなおしていたがロインはノイドとモウガンの会話も常に聞いている。当然モウガンも町の雰囲気に気付いておりサージディスと似たような質問をノイドにしているがノイド自身もどうしてカザカルスとは違う反応を見せているのか分かっていなかった。

 ならばと町の人々の会話に聞耳を立ててみたが不思議とこの町に来た幻魔について誰かと語ろうとするものはいなかった。ただ前を進む門兵もそうだが幻魔の存在に気が付いた人は言葉にこそ出さないが緊張、警戒をしていると千里聴から聞こえる激しく打つ心音が教えてくれていた。そんな中暫く進むと診療所に着き馬を止める。



「ここが診療所です」

「ありがとう」



 サージディスは門兵に礼を言い馬車から降りたサラディナとアニーに声をかけた。



「サラ、俺達は先にギルドに報告してから宿を取ってくる。親父さんの方もギルドの方で腐敗とかしねえように保護魔法かけてもらうようにしておく。アニーさんの事は任せて良いか?」

「ええ大丈夫、それじゃアニーさん行きましょ」

「はい、父の事よろしくお願いします」

「ああ、こっちは任せてくれ」



 サラディナとアニーが診療所に入っていく姿を見守ってからサージディスは門兵に近づいていった。



「改めて兵士さんありがとよ。次ギルドに行っておきたいんだが見間違いじゃなけりゃ此処に来る途中にあった広場に面した場所にあったのがギルドじゃねぇかな?」

「ええ、そうです。他に宿屋や道具屋関係も全てその周辺にありますよ」

「そうか、んじゃ案内は此処までで後はこっちでやっとくよ。本当ありがとうな兵士さん

 ……とその前にノイドさん、ココがいるんだし泊まれる宿屋聞いておいた方が良いんじゃないか?」



 御者台から降りたノイドは頷き門兵に近づきココに目を向け質問した。



「失礼兵士殿、犬ではなく狐なのだが泊まれる宿はありますか?」

「はい、大丈夫1件ございます。『黒雪(くろゆき)』という名の宿です。ただ狐は今まで見た事ありませんので念のため宿にはこちらの方で話をつけておきましょう」

「ありがとう、よろしくお願いします」



 その後来た道を少し戻りギルドにたどり着いた。門兵は先程の話で言ってくれたように黒雪と呼ばれる宿屋に行って話しをつける為既にいない。

 馬と馬車もギルドに止めておく場所はあるらしく場合によってはアニーが泊まるであろう宿屋でも預けておく事は可能でギルド関係者に移動してもらえる為ギルドの建物の前にこのまま放置しても問題ないようだ。

 ノイドとロインは態度に特に変わったところはなくモウガンも兜を被っているお陰で問題ないがサージディスだけは気になる事があるのか少々居心地が悪そうにしている。



「んじゃ俺はギルドに話付けてくるよ、モウガンここは任せたぞ」

「サジ!……はぁ~申し訳ないノイド殿」

「構いませんよ」



 ギルドに消えていくサージディスを見つめながらモウガンはため息をついた後ノイドと握手を交わした



「今日はありがとう、まさか今更盗賊の事で色々学べるとは思いもよらなかった。それよりロイン君、リッチの宝石は本当に良いのか?ギルドに登録してないとは言え宝石と魔獣石は引き取ってもらえるんだが?」



 ロインはモウガンと握手を交わしながら首を左右に振った。



「今回は1人じゃ勝てませんでしたし出来れば初勝利記念の宝石は俺1人の力で手に入れたいので。それに傭兵暮らしは色々と入用がいるでしょ?俺も父さんも刀を打ったドワーフさんを探してるだけでもしお金が無くなったらさっさと幻魔の町に帰ればいいですから」

「そうか、なら遠慮なく使わせてもらおう。有難う。ただサラと合流したらアニーさんの状況も教えたいしまだ分からないが今回の救出と護衛で謝礼が頂けるかもしれない。後ほど、いや明日早朝にでも君達の宿にも寄りたいのだが構わないかい?」



 ロインがノイドに目を向けると頷くのが見えた。



「はい、よろしくお願いします」

「では明日」



 軽く手を上げモウガンもギルドに消えていく。

 この町のギルドもカザカルスと同じ石やレンガではなく古めかしい木材で立てられた外観もほとんど同じ建物だった。ギルドの建物は組織的に統一でもされているのかほぼ10割に近い石造りの建築物が並ぶ町並みには珍しい存在だ。

 2人は聞いていた宿、黒雪に向かうと門兵と話がついているのか店主は快く出迎えてくれた、当然表向きは。ただカザカルスと違い人と犬と一緒の部屋に止まれる宿ではなかった。

 宿屋の横手に向かい外に案内されると馬や牛を飼育する為の厩舎を小さくしたような小屋があった。中に入ると3メートル四方に1メートル半ほどの高さの囲いに上に飛び越えられないように金網が被せてある仕切り、それらが20ほどある。

 宿泊している間はこの小屋にココを入れておかなければならないようだ。これがまだ陽が高ければ観光を理由に外に連れ出すのだがあいにく陽は沈み闇の時間が迫っているためこの小屋に入れない訳にはいかない。



「ココごめんね、大人しくこの小屋にいてくれよ」



 ロインに撫でられて気持ちよさげに目を細めるココ。冷静に考えれば神の眷属である神獣を綺麗とは言いがたいこんな小屋に閉じ込めておくのは罰当たりのような気もするが神獣であることを伏せている以上ロインを通じて理解してもらうしかない。ただココはちゃんと分かっているのか2人が小屋から立ち去ってもお座り状態で大人しく座っていた。

 案内された2階建て石の宿屋黒雪は完全にペットを連れたお客専用の宿なのか全て1人用の小部屋が10部屋ある宿だったが部屋はカザカルスで泊まった宿と同じほどの広さにベッドが1つと小さな机と椅子があり意外と広い。ただ床に絨毯が敷かれていたが壁は石壁がむき出して何処か冷たさを感じる部屋だ。それぞれが休めるよう二部屋案内されたが今はノイドの部屋に二人がいる。



「さてロイン、お前にやってほしい仕事がある」

「仕事?」



 ノイドは1つしかない窓際に立って暗くなりつつ外を見つめながら頷いた。



「お前もこの町に来て気が付いたと思うが住人の我らに対する反応がカザカルスとは異なる。幻魔について誰かと何か話するかと思い聞耳を立てていたがまるで話さない、むしろ関わりたくない、怯えが含まれるそんな気配を感じた」



 その言葉に同意なのかロインも大きく頷いた。



「俺もそう思う。何度か目が合った人がいたけどまるで逃げてるみたいだった。盗賊が16年前この町に悪魔が来たって言っていたけどもしかして悪魔だけじゃなく第三者に操られた大賢者ニード様も一緒に来てこの町で大暴れしたとか?」



 北アティセラに住む2人の大賢者の1人にてして第三者に操られ戦争を起こし多くの同族の命を奪った犯人、大賢者ニード=サザイラ。今でこそ地位を剥奪され契約魔法により最低限の自由しか許されていないが当時精霊召喚が可能な実力を持つ彼ならば悪魔と共に好き勝手に大暴れしこの町に甚大な被害と恐怖を与え得る事も可能だろう。しかしノイドは外に目を向けたまま首を縦にも横にも振るわなかった。



「いや、どうだろうな。その可能性もあるがだとしたら全員が同じ反応なのもおかしい。それが原因で家族や友人、恋人を失ったのならこの町の人々は幻魔に対して恨み憎しみを持っている者が多数いてもおかしくない。なのに此処の人々にあるのは表向きは歓迎と口にしながらその裏にあるのは恐怖や警戒だ。そこでお前には千里聴を使って幻魔に関する噂話があれば何でも良いからかき集めてほしい。来てすぐの時は他者の目もあり警戒心もあっただろうがそろそろ闇の時間、他者とも隔離され親しい身内だけの時間が来る。心のすき間も生まれ私達二人を話題にするかもしれん」

「分かりました。父さんはその間サジさん達と一緒に村に?」

「ああ、アニー殿の事もあるゆえ全員ではないがチームのリーダーであり貴重な魔法使い、サージディス殿は間違いなく村の調査についていくだろう。さてサージディス殿達はあの脅迫に如何動くのか」



 ロインに顔を向けたノイドはどこか嬉しそうに、サージディスがどのような選択をするのか少し楽しんでいた。

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