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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
39/114

37・滅びの村、潜入

 1頭の馬にはロインが操りその横をココが走る。2頭の馬が引く馬車にはノイドが御者となり傭兵達と一人残った盗賊が馬車の中に入り怯えきった偽アニーから聞いたアジトに向けて北に移動、数時間後森を抜けた。

 右手側の森は未だ続いていたが左手側には再び視界が広い草原が広がっている。

 ロインが乗っている1頭の馬は元々兄貴や賊達が使っていた馬で、馬車の方はおととい彼らが襲った商人から奪った物だった。

 馬車は外観こそ質素だったが内装は装飾など煌びやかで凝っており特に椅子の柔らかさ座り心地は非常に良いらしく子供のようにはしゃいだサージディスだったが、そんな兄に恥ずかしくなったサラディナに拳ではっ倒されロインの治癒魔法で癒される体感を経験し更に大喜びしたがしかしとどめの金的蹴りで時間停止させられた一幕もあった。

 森を抜け更に半時間、街道の先に元々彼らが向かっていた次の町レティーフルが小さく見えてきた。傭兵達と一緒の徒歩ではもう2日~3日の時間が掛かっただろうがかなり馬を無理をさせたお陰で陽が高い間に此処まで来る事が出来た。

 馬の速度を落としロインは馬車の横に着けた。


「サジさん、町が見えてきましたよ」


 ロインが馬車の窓に呼びかけると窓が開き心の時間がまだ止まっているのかサージディスではなくサラディナが顔を出した。


「ロイン君、ノイドさん、道の右側に小さな古い道しるべあるそうです。草に隠れて見えにくいらしいので注意して見て下さい」

「分かりました」


 それからしばらくすると聞いたとおりに草むらに隠れるように半分以上壊れた木製の標識があった。

 馬を止め森に目を向けるとなるほど、東側森の奥に向かって道らしきものがあって盗賊以外誰も使っていない為草花は生え放題で正直聞いていなければこの先に賊がアジト住処にしている、今は滅んでしまった村があるなど分からず見落としているだろう。

 馬と馬車を標識の傍に止めて降りた全員は道らしきものの先を見つめた。


「この先にお前らがアジトにしている村があるんだな?」

「・・・ああ」

「んじゃま本物のアニーさんを救いに行きますか」


 サージディスの質問に偽アニーは頷き渋々森に半分近く飲み込まれた村への道を歩き出した。勿論それ以外の質問も偽アニーは素直に答えてくれた。

 賊の目的はサージディス達のミスリル製の武具を奪う為だった。本人たちは自覚していなかったが最近この周辺では南アティセラから来た傭兵としてサージディス達はかなり有名だったようだ。東アティセラ大陸に見られる赤い髪、数少ない魔法の使い手、そしてルビーやダイアモンドクラスならまだしも下級であるエメラルドクラスが持つにはありえないミスリル製の武具はこの北アティセラのギルドと他の傭兵達の注目の存在であると同時に盗賊達にも目をつけられていた。

 しかしサージディス達にとっては運よくカザカルスと王都スカーチア周辺だけで活動していた為この辺りで出没していた盗賊達は半分諦めていた所だったのだが突如彼らの縄張りに近づいてきた。人数が3人から5人に増えていたが自分達を過信した結果今の状況になってしまったと言う事だった。

 またアジトにいる賊の数も残り8人だと分かっている。その中の1人は彼らのボスであり大兄貴と呼ばれるノイドが殺した兄貴の実の兄で弟を凌駕する実力を持つ、双剣使いとの事だった。


「う~ん・・・・」


 ひざ近くまで伸びた草を掻き分けながら道を進む中なにやらロインは納得できないとばかりに小さく唸っていた。


「どうした?ロイン、うんこでもしたくなったか?此処なら遠慮なくでけごばっ!」

「黙れアホニィ」


 サラディナの華麗な回し蹴りがアホ兄の顔面に炸裂しアホディスを吹き飛ばした。


「あの盗賊、父さんの武器を弾き飛ばす程強かったかな~?」

「なんだロイン、まだそんな事言っているのか?言っただろ、あの盗賊は私が思っていたより強かった事と油断によるものだと」

「ロイン君、君が思うほど盗賊は弱くない。そもそも実力が無ければ国家の敵対に位置する盗賊や海賊など出来ないからな」


 モウガンは吹き飛んだサージディスに目だけ向け「自業自得だ」と気にすることなくロインに盗賊の強さを伝える。


「そうなんですか?」

「ああ、最近は聞かないが昔はサファイアやルビークラスの傭兵と互角以上に渡り合う盗賊なんかもゴロゴロいたそうだ」

「そんなに強いなら傭兵になればいいのに」

「昔から傭兵と国は戦争にもお互い数多く利用して利用された間柄だからね、賊達は国に利用される事が心底嫌だったのだろうな」

「俺たちは決して安全だと言い切れ無い束縛より危険な自由を選んだんだ」


 偽アニーがポツリと呟き以外にもノイドが同意した。


「なるほどな、傭兵であろうが冒険者であろうが盗賊であろうが人の子である限り考え方が全て同じになる事は無い。私と息子とて情報収集の為にギルド登録を考えたがドワーフの情報の為だけに国に束縛される事は選べなかった。勿論人間族と幻魔族との種族違いによる差もあった事は確かだが」

「そうだったのか・・・」


 いつの間にか復活したサージディスが止まらない鼻血をハンカチで拭き取りながらしみじみと聞いていた。


「大丈夫ですか?また治癒魔法掛けましょうか?」

「いいのよロイン君、アホにマナの無駄使いは本当に無駄だから」

「・・・ですよね」


 にっこりと可愛い笑顔のサラディナにちょっとびびりながらロインは頷きサージディスは幼かった頃の妹を思い浮かべ「昔のサラは可愛かったのになぁ~」と過去にしんみりしていた


「村が見えてきた。見張りもいるはず十分に警戒してくれ」


 獣道のような道をしばらく歩き抜けると半分近く朽ちかけた建物が並ぶ村が見えてきた。

 モウガンを先頭に村に入ってすぐ近くの建物の陰に隠れ村の中の様子を伺った。


「どう?モウガン、賊の気配はある?」

「ああ、場所までは分からないが僅かに気配が村の中にあるのは確かだ」


 戦士としてはサラディナを上まる実力を持つモウガンは建物の陰から顔を出し可能な限り村の中の情報を読み取ろうとしいていた。しかしロインとノイドの2人にはこの村の情報は筒抜け・・・とまでは言えないが目視と千里視で見える範囲である程度分かっていた。

 山を背に森に囲まれた、そして滅んでしまった村。

 地形は西から東に細長い円形を横にしたような村で全体的に森に囲まれているが北から東にかけては壁のような絶壁を背にした大きな山が聳え立っているのが見える。

 建物は北側、中央、南側とおおよそ三列に並んだような形で建っていたが南側の建物はそのほとんどが森に侵食されていた。畑あとなどもそこにあったがこれらも完全に森の一部と化していた。

 また効果があったのか不明だが一応魔物と魔獣対策だろう、子供の背よりも高い木の壁が絶壁の辺りを除いて村を囲んでいるようだ。

 そして聞いていた残り8人の賊は既に2人の射程内に入っていた。


「おい偽アニー、お前の仲間はどの辺にいるんだ?」

「変わりなければ村の北側・・・教会に大兄貴達含めて5人と商人の女がいる。残り3人は村の見張りとして、と言っても此処には年に1度くらいしか調査しない誰も来ない村だからどうせ遊んでるんだろうが村の中央よりこちら側、この村唯一の三階建ての建物にいる。もし真面目に仕事をしていれば道から村に入った時点で既にこちらの姿を見られているだろう・・・カードゲームなんかに現を抜かしていなければの話だが」

「な!おいモウガン!」

「落ち着け、慌ただしく動く気配など何も感じられない。今のところはな」

「ふぅ~あぶねーな」


 潜入が既にバレている可能性を考えサージディスは尋ねたがモウガンは首を左右に振った。ロインもそれが正解と言うように小さく頷いている。


(大丈夫バレていないし嘘も無い。偽者さんの言うとおり教会かな、縦長に広い所に4人とその建物の奥の少し大きい部屋に1人と更に奥にある小さな部屋に1人。あと三階建ての手前の部屋に四角い机を囲んでこれも聞いたとおりにカードで遊んでいるみたいだ。・・・でも・・・そんな事よりも凄く気になる事が1つあるんだけど・・・)


 ロインはノイドも確認しているであろう村の中を千里視で届く範囲全て見ていた。そして目視ではなく千里視で見たからこそ、風が通る僅かな隙間も見通せるからこそ発見できたものがあった。好奇心が豊かと言えるロインは盗賊よりも発見してしまったものに今は心惹かれてしまっていた。

 ロインは目の前の家の土の壁を見つめ触れながら偽アニーに質問した。


「ねえ偽者さん、この壁にある無数の小さな穴って何ですか?」

「あな?」

 サージディスが気になってロインが見ている壁を見ると確かに指が入るか入らないか程の小さな穴がいくつか開いていた。

 ロインとノイドは千里視で気が付いたが盗賊達がいる教会や建物を含めこの村の中央を中心に大量の小さな穴が建築物や壊れた家財道具に開いていた。この穴は村の隅になるほど少なくなっており村の入り口すぐ傍のこの家は僅か数箇所しかない。

 ロインと壁を見た偽アニーは「ああ」と頷いた。


「そいつはこの村を滅ぼした悪魔の爪痕だよ」

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