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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
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36・盗賊、偽者の父と娘

「何処をどう見ても分からねえよ!何で分かったんだノイドさん!」


 サージディスの疑問に同意する全員の目がノイドに集まる、その目はロインが良く見せる興味津々キラキラさせた目だ。

 偽アニーも何故バレてしまったのかその理由が知りたくノイドがなんと言うのか睨みながら答えを待っていた。


(種を明かせば単純な答えだがどう答えるべきか・・・)ノイドは最初に死んだ偽商人に目を向けしばらく見つめた。


「そうだな・・・ロイン」

「はい」

「その前にまずはこの偽アニーを縛っておけ」

「はい」

「俺も手伝おう」


 ロインとモウガンは偽アニーを後ろ手に縛りそれに頷いたノイドは偽商人に近づいた。


「まずはこいつの服装だが何処かおかしくないか?」

「服装?良い服、ああすげー儲かってんな~って言える服だよな」


 サージディスが何処か羨ましそうに偽商人の服を見ている。


「では靴はどうだ?」

「靴?あっ!」

「分かりにくかったけれど随分と薄汚れてるわね、それによく見れば少し破れているしなるほど、新しい物好きのお金持ちにはありえないわね」

「バカな!そんな事で!たったそれだけで人を殺すなんて・・・」

「別にそれだけでは無いよ」


 納得出来ないと言わんばかりの偽アニーの言葉をノイドは止めた。


「履かなかったんじゃない履きたくても履けない、なにしろ靴が合わなかったからお前さんも服は着れたものの女物の靴は履けず裸足でいるしかなかった、そうであろう?偽アニー」

「・・・・・」

「そしてさっきも言ったが靴だけじゃない、これだけの金持ちなら身に付ける宝石がペンダントだけって事は流石にありえないだろ。しかし指輪のサイズも合わなかったからこいつもお前も1つもはめる事が出来なかった。どうだ?」

「・・・・・」

「他にもある」


 ノイドは偽商人のシャツをめくり腰から木でできた細長い何か取り出しサージディスに放り投げた。サージディスの手の中の物が何か解りそれを抜くと10センチ程の小さな小刀があった。


「こいつナイフを隠し持っていたのか」

「それにこいつの手のひらを見ろ」


 モウガンが近づき手のひらを見えるように手を上げさせてひっくり返す。


「タコ、そう言う事か」

「そうだ、こいつは普段から剣を握ってふりまわしているよ。多くはないが自ら身と財産を守る為剣術を学ぶ商人は意外といる、ましてやこれだけタコが出来るほど剣を振っているような使い手なら自分で娘を助けようとするだろう。それとも?金持ちの商人が泥臭い農民の真似事をして剣ではなく鍬で毎日土を耕して出来たタコですなんて言い訳する者がいると思うか?」

「・・・・・」

「実は剣が使える、ナイフを忍ばせている、ならば助けを求める振りして近づいて魔法使いの後ろからブスリ、正解であろう?偽アニー」

「・・・くそう」

「あと私は人間より鼻が良くてな、お前達賊なんて何年も風呂なんてまともに入っておらぬだろ?汚れは一応拭いて見た目は綺麗にしているようだが香水にも勝るひどい匂いだぞ」

「確かに近づいて分かったけどこの男もオカマも香水の匂いに混じって凄い匂いが・・・」


 サラディナはそう言って嫌そうな顔をした。

 元々商人が着ていた服に香水が付いていたのだろう、しかし風呂に入らぬ盗賊本人の悪臭は凄まじく服にかけられた香水だけでは悪臭を誤魔化せるほどの効果は無かったようだ。


(なんとか思いつきで答えたが納得させるには少々無茶な理由、強引でも納得してもらうしかない。まさかロイン共々千里視と千里聴で私達が来るのを仲良く隠れて待っている事が分かっていたと言えんからな)


 しかし実際にはノイドだけが知る真実があった。時間を朝方に遡る。




 まだ夜明け前ノイドは焚き火の火を消えないように薪をくべていた、本来ならば夜目が効くノイドには特に必要は無かったのだが傭兵達に合わせてサージディスが眠った後も消さないようにしていたのだ。

 そしてその火に釣られて二匹の蛾がやってきて森に隠れノイド達を監視していた。ノイドとココは二匹の蛾に気が付きムクリと起きたココは蛾が潜む森を見つめていた。夜明け前でまだ暗く、視界に制限があったのが幸いした。二匹の蛾は千里聴の届く距離まで来ていて彼らの会話をある程度聞く事が出来た。


(どうだ?見えるか?)

(ああ、少なくとも4人・・・いや5人はいるか)

(待て、大兄貴が調べていた獲物は3人組の傭兵じゃなかったか?似ている別チームか?)

(確かに3人組だが・・・だがなんとか見える・・・あのフルプレートの男の異様な左腕は目的の傭兵で間違いない・・・ん?)

(どうした?)

(まずいな、犬が俺達に気が付いているのかこっちを見てる)

(どうする?戻って兄貴にこの事を伝えるか?)

(その方が良さそうだな番犬がいたんじゃこちらからじゃ迂闊に手が出せん、行こう)


 ノイドは立ち上がりサージディスの傍まで行き彼を起こした。


「サージディス殿、起きてくれ」

「ん~どうしたんだ?旦那」


 目を擦りながら、しかし流石は傭兵、寝ぼける事も無くすぐに目覚めた。

 ノイドは街道の北の森を見ているココを指さした。


「うちのココが何かに反応したようだ、少し調べてきたい。此処を任せて構わないか?」

「1人で大丈夫か?空もまだ暗いし皆たたき起こして皆で行くか?」

「いや、星も出ているし何とか見える大丈夫だ。ココも反応しているだけで警戒してる様子は無い、任せてくれ」

「分かった、んじゃそっちは任せた」


 ノイドは闇でサージディスが見えないくらいの距離まで道を歩いてから森の中に入り最速で駆け抜けて二匹の蛾を追いかけた。

 僅か十数秒で蛾に追いつきそこから10分程度歩くと火の明かりが見えてきた。焚き火の元まで来ると蛾の仲間と兄貴と呼んだ者と合流、その数合計8人。


「兄貴!さっき見つけた光りはどうやら以前から調べていた3人組の傭兵だ」

「あいつらやっとこっち側に来たか!」

「けど他にもう2人増えていましたぜ」

「5人もいて犬も連れていやがった」

「はぁ?マジかよ・・・どうすんだよそれ」

「増えた2人が犬を連れてるとして傭兵としてまだまだ未熟なんだろうな。とは言え5人、兄貴どうします? おとといの獲物で結構儲けましたし、それに『あの女』も馬車も売れればかなりの金になります。当初の予定通り人買いの所に行って今回は諦めませんか?」

「その方がよくねえか兄貴、人質作戦を使ったら戦えんのは5人、5対3ならまだ向こうの2人は2人がかりの4人でやれるから赤髪の女も殺さず捕まえられるでしょうが5対5は流石に厳しいしな」

「あるいは1度『アジト』に戻って大兄貴に頼んで何人か借りますか?」


 各手下達の考えを聞きながら兄貴は何も言わず腕を組み考えている。しばらくして兄貴は組んでいた腕を解き立ち上がるとゆっくりと7人を見回した。


「やるぞ。あいつ等の持ってる武器はミスリル製だ、エメラルドクラスでミスリル製の武器を持ってる奴なんざまずいねえ」

「兄貴、俺達だけで本当に大丈夫か?大兄貴に助けてもらった方がよくねえか?」

「お前の言いたい事は分かってる、兄者の調べじゃ確かにフルプレートの男は相当腕が立つようだ。だがあの武器は自分の実力で手に入れた物じゃなく人からの贈り物らしいじゃねえか、それに他の2人はたいした事がねえ。魔法使いも助けを求める商人の振りして近づいて後ろからブスリってやればどうって事はねえそれで6対4だ。人質の娘役も動かなきゃ本物か偽者か分からず疑心暗鬼になってまともに戦えねえよ」

「そう・・・だよな、おとといの商人だってこの作戦で護衛が4人もいて楽勝だったしな」

「そうそう、特にお前の女っぷりは本物の女も騙せるもんな」

「声出したら気持ち悪いがな」

「うるせえ!ほっとけ!」

「あはっははは!」


 盗賊たちはそれぞれやる気を出し兄貴はそれを満足げに見つめニヤリと笑った。


「よし野郎共!この先の森で罠を張る!次も成功させてまた兄者を驚かてやんぞ!」

「おう!!!」




 時間は戻り強気だった偽アニーは少し泣きそうな顔になっていた。


「な、何なんだよお前・・・幻魔は魔法以外使えない弱い奴じゃないのかよう・・・」

「剣の才能を持った人間がいれば魔法の才能を持った人間もいる、勿論その両方もな。ならば幻魔の中にもそんな者が1人くらいいても良いと思わないか?それからお前達商人が偽者だと分かった決定打だが最後にお前にも1つ助言、人質のもっと効率の良い使い方教えてやろう。拷問で悲鳴を上げさせろ・・・決して死なないように。例えば目の前で指の骨を1本ずつへし折る、指を全部折ったら次に腕や足の骨。特に脅したい相手の目の前で見せる行為と聞かせる悲鳴は恐怖心を煽らせ且つ私も疑心暗鬼になって歩みを止めていただろうな。もっとも男のお前では女の悲鳴は出せぬか。ちなみに拷問の素人は刃物で血が出るような切る刺すといった行為は止めておけ、血が止まらず出血死する可能性もある。ただし『治癒魔法が使える者』にはこれは当てはまらない。さて・・・」


 どこか無機質無表情な顔で近づくノイドを見たアニーは何故拷問の話が出たのか分かった。全員が信仰系魔法を習得していると言われる幻魔族とその可能性を知った時偽アニーは目には涙を、身を震わせ真っ青になっている。

 傭兵達も何かが違う雰囲気のノイドに何も言えず引きつっていた。

 ノイドは偽アニーの顔に息がかかりそうなほど近づき見下ろすような形で偽アニーの目を見つめ小さく呟いた。これで女装した男ではなく周りに賊の死体も無ければなかなかロマンチックな光景だが・・・。


「まずは何が目的で我らを襲ったか話して貰おうか。それからお前達のアジトが何処にあるのか、他に仲間はいるのか何人いるのか教えてくれないか?・・・出来れば私に効率の良い拷問をさせないでくれよ」


 可能性は現実となったと知った偽アニーの顔は一瞬で涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり男とは言え折角の美しさが台無しになっていた。

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