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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
36/114

34・商人

「・・・なぁ・・・本当に全員眠っちまって良いのか?」

「ココちゃんがいるし大丈夫でしょ。そもそもその為のペットでしょ?」

「まぁそうなんだが・・・でもその肝心の狐も完全に寝てるいるように見えるだが・・・火も消すなり消さないなり好きにして良いって言っていたが・・・モウガンはどう思う?」

「ごめん・・・でも大丈夫・・・だと思う」


 食事を終え片付けた後警戒は狐のココがいるから大丈夫だと2人は毛布もかけず即行座ったまま眠りにつきその2人を見て半分安心したものの傭兵の3人は正直信じきって良いか迷っていた。


「ん~まぁモウガンが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろ。とは言えやっぱ火は消さずってのが傭兵の常識だし火の番はしておきてえぇし・・・しょうがねえ、俺が見てるからお前ら寝ろ」

「そう?・・・それじゃ~モウガン、兄さんおやすみなさい」

「うん・・・おやすみなさい」

「おう、おやすみ」


 それから数分後火に薪を放り投げながらサージディスはポツリと呟いた。


「・・・なんか俺損引いてねえ?」


 およそ3時間後眠気で頭がガクッとなり始めた頃起きたノイドに「代わろう」と言われ安心するように眠りについた。

 ノイドは眠る傭兵達を順番に見つめ小さく息を吐いた。


(われ等に何かをしたいのなら絶好のチャンスだったはずだったのだが・・・・初めからその意思が無いのか、あるいは腕輪の影響でこちらに何かするのも犯罪行為に当たるため出来ないのかもしれぬな)




 翌朝匂いに釣られてロインが目覚めると傭兵も全員起きて朝食の準備をしており1番最後だった。

 この辺りはロインと違い経験豊富な彼らはしっかりしている。


「おはようございます」

「おうロイン!起きたか、おはようさん」

「・・・お、おはようございます」

「おはようロイン君、良いタイミングね。朝は昨日の残り物だけど我慢してね」

「いえ、こんなおいしいものなら大歓迎です」

「ふふふ、ありがと」


 サラディナが嬉しそうにかき混ぜる鍋からは既に湯気が出ている、本当にちょうど良い時間に目覚めたようだ。

 ふとココがいつもなら目覚めた直後ロインのすぐ傍にいるのに何故か街道の北側を見つめている事に気が付いた。

 そしてすぐその方向からノイドが歩いてこちらに戻ってくる姿が確認できた。

「おはようココ」と呼びかけるとココはロインに顔を向け嬉しそうに尻尾を振った。


「おはよう父さん、何かあったの?」

「おはようロイン」

「どうだった?随分遅かったが何かいたか?ノイドさん」


 ノイドは食事を食べる為鍋の前に座りながら首を横に振った。


「いや、魔物も魔獣の姿も気配も確認出来なかった。恐らく他の傭兵か誰かがたまたまこの近くに通りココが反応してしまったのだろう」

「なんだそうか・・・んじゃサラ、朝飯にしようぜ」

「はいはい」






 朝食をとり北に向かって歩き始めて3時間ほど過ぎたお昼にはまだ程遠い時間帯。

 右手側の森はそのままに左手側も草原が途切れ木が無数生えている林になっていた。

 直線だった見通しの良かった街道も所々曲がりくねった道になっており道の先が見えなくなった道を歩いている時に突然助けを呼ぶ声と共に1人の男が右手の森から飛び出してきた。


「た、頼む!助けてくれ!」

「なんだ?」


 サージディスが反応するより早く2人の戦士は手持ちの武器に手を掛けいつでも使えるよう身構え男に注目した。

 ノイドとロインは特に動く事も無く飛び出してきた男を見た。

 男は50歳前後、中年らしい中年太りの体型に金髪だが天辺は寂しいくらい薄くなっていた。

 服装は仕立ての良い白いシャツとズボンを穿いていて首には2センチ近くもありそうな美しいダイアモンドが付いたペンダントをぶら下げておりその身なりだけを見ればかなりの金持ちの商人のようだった。

 男は立ち止まりぜぇぜぇと息を整えているのだろう、何か喋ろうとするも喋れない状態だった。


「おい!あんたどうした?大丈夫か?」

「はぁ・・・はぁ・・・お願い・・・します・・・助けて・・・娘が・・・娘が・・・」

「娘?」


 サージディスの質問に男が答えると同時に男が先ほど出てきた辺りから5人の男が飛び出してきた。

 その姿を見た傭兵達の緊張感は一気に張り詰めた。

 武装も年齢もバラバラだがその手には剣や短剣を持ちその殺気立った気配、敵意は明らかにノイド達に向けられていた。


「兄貴!男を見つけた!」


 1人が叫ぶともう1人、いや1人の女を肩に担いだ男が出てきた。

 兄貴と呼ばれた男は他の5人と比べると古びてるとは言え金属製の胸当てを着けておりなかなかの筋肉質、モウガンにも引けをとらないガッチリした肢体で二本の剣を左右の腰にぶら下げている。

 女は目隠しとさるぐつわをされ手も縛られ自由を奪われた状態で宝石類は彼女も小さな宝石が付いたペンダントだけだが、最初の男同様仕立ての良い黒いワンピースを着ていて顔はよく見えない為年齢などは良く分からないがおそらく彼女が商人男性が言っていた娘なのだろう、気を失っているのかぐったりとしている。


「アニー!」

「娘を見捨てて1人でさっさと逃げるとは随分出来の良い父親だなおい!」


 担いでいた、アニーと呼ばれた女を下ろし別の男1人に預けるとニヤニヤと笑いながら兄貴は商人を見た後急に真面目な顔をして黒髪黒ずくめのノイド達と3人の傭兵を順番に見てその顔を歪めた。


「あぁ?何で此処に幻魔族がいるんだ?」

「お前ら盗賊か!」

「おっと動くなよ!」

「くっ!」


 サージディス達が武器を手に前に出ようとした瞬間兄貴が叫ぶとクィっと親指で後方にいる女を指差した。


「妙な真似してみろ、その女殺すぞ」

「ああああ!アニー!お金ならいくらでも上げます!お願いします!娘だけは!娘だけは助けてください!」

「金か~・・・どうするかな~・・・」


 兄貴は困った振りをして悩んでいると他の男達は笑いながら「お前ら盗賊か!」や「娘だけは助けて~」と物まねをして

 全員でケラケラと笑っていた。


「サージディス殿、この者達は傭兵ではなく賊の類なのですか?」

「ああ・・・俺達が付けてる腕輪を付けていないだろ?盗みも人攫いも殺しも何でも出来ますって証拠さ」

「そうですか・・・」


「おいおい殿だってよ~」と何が可笑しいのか盗賊たちは大爆笑していた。

 ただその大きな笑い声に隠れて小さく千里視と千里聴を掛け直すと気が付いたロインも慌ててそれに合わせて千里視と千里聴を掛け直した。

 ノイドは小さく小さく笑った後ロインに語りかける。


「そうか・・・まさかとは思ったがこの地でもこういった賊はいるのか・・・ロイン」

「はい」

「この手の手合いの者の対処法はまだお前には教えていなかったな・・・こいつらは私1人がやろう。お前は・・・『誰にも手を出させるなよ』」

「分かりました」


 ノイドは持っていた荷物を降ろしゆっくりと前に歩き始めた。


「おい!てめ!聞いてなかったのか!?動いたら女を殺すと言ってんだろ!」


 しかし聞く耳持たずとばかりに歩みを止める事は無かった。


「おい!ノイドさん何やって・・・」


 サージディスが止めようと手を伸ばそうとした時ロインの腕が先に伸びて止められた。


「ロイン!?」

「大丈夫ですよ、まぁ見てて」


 兄貴は怒った顔で再び怒鳴った。


「聞こえねえのか!・・・おい!」


 兄貴が女を抑えている男に合図するとその男は頷き見せ付けるように女の首元に持っていた短剣を押し付けたがやはり女は気を失っているのか反応せず、しかしそれを見たノイドも気にすることなく歩いていく。

 と商人がノイドに駆け寄りまるで祈るように頭を下げた。


「お、お願いします!お願いします!お金ならいくらでも上げます!娘だけは!アニーだけは助けてください!」

「あ~分かった分かった、助ける」


 そう言ってノイドは懐に右手を入れて、しかし目線を兄貴から離さず右手を一気に真横に振りぬいた。


「だからお前は黙って死んでいろ」

「へ?」


 間の抜け声を上げ驚いたような顔のまま商人は突然動かなくなった。

 ノイドはやはり歩みを止めず、しかし固まった商人はゆっくりと前に傾きドサっと顔から倒れると首が横一文字にバックリと裂け喉元から大量の血が吹き出し地面に大きな血溜りを作り上げた。

 次の瞬間サージディスの絶叫が轟いた。


「あんた何やってんだぁぁぁっ!」

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