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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
27/114

25・動物と泊まる宿

話を中断し二人は目的の宿を見つけた。

立ち止まって見上げるとギルドと同じ雰囲気の木製、2階建ての建物で外観ならギルドよりも綺麗だがギルドのように改装されて中が綺麗とは限らない。


「此処にする?安いって言ってたから結構ひどい宿想像してたけど見た目はそんなに悪くないと思うんだけど・・・」

「確かに悪くはない・・・話を聞いて問題なければ此処にしよう」


宿屋に入るとまず右側に受付カウンター、左側にテーブルと椅子が並べられていた。

テーブルは10のうちほど3つ埋まっており傭兵達がちょうど昼食を取っている、

どうやらこの宿は1階が食堂で2階が宿泊部屋となる作りのようだ。


よく見ると2つのテーブルには傭兵が1人づつ、また2人とも黒い犬を連れており床から出ている鎖に走り回らないように繋がれていた。

残りの1つは4人のチームで犬はいない、当然のように彼らは幻魔である2人に気が付き傭兵4人は顔を近づけ何やら小声で話し合う。

・・・とその時。


「やかましい!飯は黙って食え!宿は他にもあるんだ、嫌なら他所へ行け!」

『すみませんでした!!!』


突然の怒鳴り声に4人組は座ったまま背筋を伸ばし大きな声を綺麗に揃わせ謝罪し静かに食事を食べ始める。

この宿の主人はよく怒鳴る、よくある事なのか犬連れの2人は一瞬だけ顔を怒鳴った男とノイド達2人に向けるも気にせず、犬も一瞬耳を立て顔を上げた後のんびりと床に伏せた。


「いらっしゃい」

「いらっしゃいませ~」


1人はカウンターにいた、先ほど怒鳴った40~50くらいのまるで歴戦の戦士のようながっちりした男性主人が何事も無かったように無骨ながら人の良さそうな顔で微笑んでいた。

もう1人はロインと同じくらいの年齢の男の子のような服装をした女の子でちょうどお客と犬に食事を運んでいた。


「失礼、2人と1匹で1泊したいのだが・・・大丈夫だろうか?」


ノイドは後ろにいるココに目を向けると主人もココを見る。


「へ~狐か・・・これは珍しい、犬以外でたまに狼を連れたは傭兵は見てきたが狐を連れている人は初めてだ。・・・おっと1泊だったな、狐だろうと犬だろうとペット同士で喧嘩さえしなけりゃ何でも大歓迎だ、馬や牛みたいなでかいのは無理だがね。ただうちは犬小屋は無しのペットと相部屋だ。1人白銅貨7枚、ペットは1匹で白銅貨3枚。あと朝食1食だけサービスで付いている。それからうちは安い分泊まったらペットの粗相はちゃんと部屋を出る前に自分達で掃除をする事。出る時確認するぜ、綺麗に使わなきゃ俺が良いと言うまでタダ働きで掃除してもらう、大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫です」

「分かった、じゃー合計銀貨1枚白銅貨7枚だ・・・おーい!」


ノイドが銀貨1枚白銅貨7枚主人に渡すと主人の声に女の子がやってくる。


「泊まり客だ、部屋まで案内してくれ・・・それと食事に関しては女房か娘のこいつに言ってくれ」

「さ、お客さんこっち」


父親から鍵を受け取った少女は1階左奥にある階段に向かって歩きノイド達はその後ろを付いていく。

2階に上がると建物中央に通路があり通路左右に扉、各部屋があった。

少女は左側一番手前の扉の鍵を開け扉を開きノイドに鍵を渡した。


「この部屋だよ、ところで食事はどうする?ちょっと遅いけどお昼は?夕食は?明日の朝はでるけど・・・」

「どうする?ロイン、まだ食べるか?」

「あ、ん~もう良い・・・かな?」

「そうか、ではすまないが夕食だけ2人分準備してもらえるかな、お勧めがあるならそれで構わない」

「2人分ね。でも狐さんは何を食べるのかな?決まった物があるなら準備するけど?」


神獣であるココは元より食事を取らない。

実際ノイド達がテノアの町に来て数年食べ物も水も口にした事は1度もなかった。

ただロインが5歳くらいの時自分が食べている物をココに差し出すと口にしたので食べようと思えば食べるようだがロインの手から食べさせようとしない限り決して食べない。

それに対してロインが答える。


「えーっと・・・この子は小食で物より決まった時にしか食べないんだ、だから2人分だけで良いよ」

「そうなんだ、じゃー2人分ね。それで1つお願いがあるんだけど・・・」

「ん?お願い?」

「うん!1度だけで良いの!狐さんをなでなでさせて!」


手を組んで目をキラキラさせている少女を見て2人は何故かゴーダンを思い出しノイドは苦笑いを浮かべた。

(ドワーフのおじさんがやっても可愛くないけど女の子がやると可愛いな)などとロインは思いながらしゃがんでココの頭を撫でる。


「別に良いけどあまり人に触られるのってこの子は好きじゃないんだ、だから少しだけなら」

「ありがとう!狐なんて初めてだよ~、ねえ、この子の名前は?」

「ココだよ」

「そっか~ココちゃんか~」


そう言って少女はしゃがんでココの頭を撫でつつロインもココが嫌がったりしないように一緒になって首を撫でたりしている。

約束どおり少しだけ、数秒ほどで止め名残惜しそうに立ち上がった。


「もっと触りたいけど嫌われたら嫌だもんね。ありがとう!」

「うん」

「っと、忘れるところだった。夕食だけど陽が沈む頃に合わせて出すんだけどそれで良いかな?それとも早い方が良いとか遅い方が良いとか要望ある?」

「えーと・・・どうする?父さん、一応まだ町の道具屋とか回るんだよね?」

「ああ、少し部屋で休んでからその予定だが・・・こちらが時間を合わそう、先ほどの話しどおり陽が沈む時間にお願いしたい」

「分かった、鍵は外出の時一度カウンターで預けても良いし持ったままでも良い・・・けど失くさないでね。失くすと弁償で銀貨2枚だから」

「ああ、注意しよう」

「ではごゆっくり」


部屋に入り見渡す。

安いだけあってそれほど広い部屋ではなくベッドが2つあるがそれで部屋がほぼ半分埋まっており

あと2つ置いたら歩けるスペースが無い程度の広さだ。

2つのベットは離れておりその間に簡素な棚、テーブルと2つの椅子があり床には1階にもあった鎖が付いていた。

意外にも見た目は十分綺麗だったが獣臭いと言うべきか、若干匂いが気になるがこれは仕方がないだろう。

ノイドは荷物を棚に置いてから椅子に座りロインはそのままベットの端に座った後寝転がりココはロインの足元の床に伏せる。

ロインは大きく伸びをした後勢いよく起き上がってから刀などをベットの上に置きながらノイドに視線を向けた。


「それで、父さん」

「ああ、分かってるよ。これからの事だが・・・」

「そっちもだけど先に門でした契約の話!」

「ああ、そっちか・・・まず契約した時門兵の前には同じ血文字は浮かんでいなかっただろう」

「・・・・・・・・・あ」

「本当に見ていなかったか・・・ついでに腕輪も着けていないしこちらの契約内容にも『向こう側が守るべき項目』は1つも無かったんだが・・・」

「ごめん、ちゃんと見てなかった。父さんが承諾していたから良いのかと・・・」

「今回は町に入る為だけだから良かったが今後はちゃんと確認してくれ、内容は契約魔法を使った側に委ねられる。悪意ある契約はお前と私の契約内容が必ずしも同じとは限らない事もある」

「うん、今度からは注意する」

「しっかりしてくれよ。魔法の事は母さん達から色々教えてもらっているんだ、知らないわけじゃ・・・」


そこまで言ってからノイドは顎に手を当て何やら考え始めた。


「ん?どうしたの?父さん」

「そうか・・・勘違いをしていたのかもしれない」

「勘違い?」

「ああ、血の契約魔法は双方に効果あるものだが一方が契約内容に守る項目が無ければ呪いを一方的にできる。私達はその事を幻魔の町で教えてもらっているから知っているが信仰系魔法の習得に制限のある人間族はその事を知らない」

「あ~そうか知ってる奴が嘘教えてるって事か、それなら国もギルドもリスクなんて無いも当然じゃないか」

「契約魔法は商人同士の間でも使われている、おそらく一部の人間族はしっかり分かっていて使っているんだろうが・・・まぁ向こうがどんな契約をしようがその際こちらが十分に注意する事、いいな?本当に頼むぞ」

「はい!気をつけます!」


ロインは背筋をピンと伸ばし返事を返す。


「(返事は良いんだが)・・・さて、これからの事だが探し物があると言ったな」

「うん、地図と刀だったね」

「実はもう2つある」

「まだあったの?」

「正確には探すと言うより『見つけてもらう』って言うのが正しいな」

「見つけてもらう?・・・ドワーフに?」

「いや、1つは『渡り鳥』と呼ばれる下忍だ」

「渡り鳥・・・確か里の外・・・情報収集に特化した下忍だっけ?」

「正確には海を渡っての大陸探査方の下忍だな」

「もしかしてその渡り鳥がこの町に?」

「それは分からない。そもそも誰が渡り鳥を行っているのか、何処へ向かったのか知っているのは半蔵様だけで十人衆でも知らされていない。もしかすると我が父風幻太は知っているかもしれないが・・・。仮にこの大陸この町にいたとしてもこちら側からは分からない、しかし向こうからは分かるだろう・・・この怪しすぎる忍び装束でな」


『怪しすぎる』、大賢者ペンダーの言葉を思い出した2人は思わず笑ってしまった。


「ああ~なるほどね、それでわざと目立っても良いと言っていたのか」

「もっとも渡り鳥も同じ『黒髪』、人間族の町ならこちらからもある程度は探せるがな」

「それだったら幻魔の町のテノア・・・はともかくサザイラで探した方が良いんじゃ?その人達だって目立ちたくないだろうしいるなら幻魔の町の方が隠れ蓑としては良いと思うけど」

「両方の幻魔の町は定期的に調査していたがそれらしい者はいなかったよ」

「そうなんだ・・・じゃあ残っているのは南、東アティセラに1つづつ計2つの町か・・・あ、あともう1つの探し物は?ギルドで聞いてた天使?」

「いや、里を襲ったであろう黒幕にわれ等を見つけてもらう」

「敵に!?良いの?」

「大丈夫だ、お前も十分強くなったからな」

「そ、そうかな」


ロインは父親に認められて若干嬉しそうだが実際はココの強さを知りロインの言う事は聞くからだがその事は言わない。


「あれから15年、里の生き残りとして今もわれ等を探している可能性は低いが無い訳ではない。もし捕まえる事が出来れば里が今どうなっているのかも情報が得られるかもしれん」

「あれ?じゃあ天使は?」

「天使は父上殿に頼まれたちょっとした調査だ。旅の準備している時にな」

「ふ~ん」

「さて、そろそろ町に出て歩き回ってみるか」

「はい」


そう言って2人は立ち上がりロインは刀を手にしようとして止めた。


「父さん武器はどうするの?」

「契約魔法のせいで使えないが持って行こう。宿に盗みに来るものはいないと思うが念の為にな」

「わかった、えーっと・・・残るは武器屋と道具屋?で良いのかな」

「まぁさっきの渡り鳥の件もある、この町の道を可能な限り全部歩こう」

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