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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
22/114

20・神獣ココの能力

早朝まだ日は出ず、しかし周りが明るんできた時間帯にロインは突然目覚め足元にある刀とショートソードを手に持ち立ち上がった。

ノイドとココは既に目覚めており、並んである1点を見つめていた。


「父さん!この気配は?」

「さて、魔獣か魔物かただの獣か。街道からはまだ離れているから人ではないと思うが」

「ちょっと確認してみる。風遁、千里視・・・いた」

「どうだ?」

「人型だけど身長約2メートル・・・異様に腕が長い・・・尻尾が複数ある。猿・・・みたいだけど・・・多分猿の魔獣?」

「そうか」

「そう言えばちょっと気になったんだけど、町を出てからこれ以外1度も魔獣にも魔物にも出会ってないよね。普通の動物みたいに山とか森にそこらじゅういると思ったけど・・・なんで?」

「どちらも個体差があるゆえ絶対とは言えないが魔物はその場に留まらず何故か人間族がいる場所、町などに向かって移動する。目と鼻の先だと幻魔族の町にも向かってくるらしいが。逆に魔獣はあまり移動せず自然界のマナを吸収しているがやはり多くのマナを求めて移動する事もある。それと奴らには仲間意識はなく魔獣同士で出会えば共食いをする」

「共食いって・・・魔獣が魔獣を食べるのか」

「そう、更に魔獣は魔物も食うらしいな。その辺りは私にもわからんが魔物はマナの塊、幻魔族と同等あるいは超える最高の餌らしい。もっとも弱い魔物限定で強い奴にはさっさと逃げるか襲うも返り討ちになるが。まぁそれらもあって魔物を感知した魔獣は魔物を追いかけて移動、結果山や森は意外と数は少なくなりその代わり生き残った強い魔獣魔物が町や村に来る確率が高いらしい」

「余計な事してくれてるな魔物・・・と出てきた」


森から出てきたのは真っ黒な毛並み猿の魔獣だった。

確かに身長は2メートル、腕も2メートル近くと長く、尻尾は3本生えていた。

その姿は猿に近いが顔が少々異様だった。

目は赤いので間違いなく魔獣だが蜘蛛のような目、8つある複眼で唇が無く鋭い牙がむき出しになっている。

魔獣はゆっくりとロイン達に近づいていた。


「昨日の魔法の話の続きではないが・・・ロイン、お前1人でやってみるか?」

「やるやる!俺に任せて!」


そう言ってロインが前に出ると魔獣はこっちに向かって長い手も器用に使い4足で走り出した。

ロインは魔法メインで戦う気なので刀ではなくあえて短いショートソードを抜き、使い慣れた術を発動させる。


「風遁、疾風迅雷」


ゆっくりと歩き魔獣に手を向ける。


「火遁、火矢」


まず小手先と炎の矢を放つが魔獣は身を低くして簡単にかわした。


「まぁ見えるから当然・・・次!水遁、水蛇(みずへび)


ロインの足元から地面を滑るように蛇の形をした水がくねくねとした動きで進んでいき水の蛇が魔獣に近づくと飛び上がり顔に向かって飛んでいく。

それは回避される事なく顔に当たり走るのをやめて両手で顔を抑えてその場でのた打ち回った。


「んん?複眼だから避けると思ったけど・・・思ったより目が良くないのか?それとも見えないのは上下だけで視野が左右に特化してるのか・・・」


ロインは一気に近づくとそれに気づいた魔獣は右手で顔を押さえたまま左手でロインをなぎ払った。

それをバックステップでかわしながら剣で魔獣の指を切り落とし、ジャンプで魔獣を飛び越えた。

着地と同時に魔獣の自由を奪う為と足を切りつけ後方に下がる。


「ギイィィィッ!」


元であろう猿の声が少し低くなった程度の悲鳴がむき出しの牙から漏れた。

魔獣は片膝を着きすぐに立ち上がろうとするがその前にロインが更に足元に向けて術を放つ。


「氷遁、氷霧ひょうぎり)

「キィィィ!キィィィ!キィィィ!」


魔獣の足元が冷気の霧に包まれるとじわじわと魔獣の両足を凍てつかせ、魔獣は苦しそうに声を上げ続けた。

地面ごと両足は凍り付きよく見れば地に手を付けていた左手も巻き込んで地面に固定されまともに動けるのは右手だけ。


「とどめ・・・火遁、篝火」

「キィィィ!キィィィ!・・・キイイイイイイイイイイイッ!!!」


冷気で苦しんでいた魔獣に向けて小さな火の玉を投げつける。

火の玉が魔獣の背に当たると甲高い悲鳴を上げその悲鳴に合わせて炎上した。

炎に包まれた魔獣は更にひと際大きな悲鳴を上げた後地面に両足と左手を固定されたままうなだれるように動かなくなった。

ロインは終わったとばかりに懐から1枚の布を取り剣に付いた血をぬぐい鞘に収めながらノイドの所まで歩いていく。

と急にノイドは脇差を抜いてロインめがけて走り出す。


「馬鹿者!まだ終わっていない!!!」


突然走り向かってくる父と言葉にその意味が気が付いたロインが振り向くと炎に包まれた魔獣はロインを無視しその横を走りぬけた。


「え?・・・ええええええええ!?」


魔獣に無視されたロインが再び振り向きその状況と想定外の魔獣の行動に驚いたノイドの顔を見て本気で驚いた。

自由を奪った氷は火の熱で溶け、まだ生きていた魔獣は自由になり傷ついた足を若干引きずりながら走りロインを無視して更にノイドさえも目にくれずココに目掛けて飛び掛かった。

ココは特に動じる事も無くじっと魔獣を見つめる、そして・・・。



音も無く魔獣と炎は一瞬で消えた、地面に赤い血痕だけを残して。



これにはまだ近くいたノイドも流石に戦慄した。

見る限りココは一切動いてない、攻撃をしたようには見えなかった。

ならば魔法のようなものだろうが・・・。

ノイドが見えたのは魔獣はココを捕まえようとするかのように右腕を伸ばし触れようとした瞬間、魔獣はミンチどころか血飛沫になって吹き飛んだ、地面を真っ赤に染めた血痕がそれだ。

戻ってきたロインは何が起きたのかまるで解らず父に尋ねる。


「・・・ねぇ・・・これどうなってんの?」

「ココが魔法で吹き飛ばしたんだろうな。おそらくだが魔獣の本能・・・血肉ではなくマナを求めた結果、お前でも私でもなく神獣のココを選んだ。恐怖より欲を選んだ結果がこれか。これでは魔獣石まで完全に吹き飛んでしまってるな」

「ん?魔獣石?・・・あ・・・あああっ!魔獣の急所は心臓よりも魔獣石のある頭だった事忘れてた!」

「初めての命がけの実戦だったんだ、それに関しては仕方あるまい。ただ私から見ても冷静に判断し行動していたし最後の油断を除けば十分及第点だと思うぞ」

「そ、そう?良かった・・・それにしてもこの血のあとココがやったのか・・・神獣の凄さはお爺ちゃん達から聞いていたから分かっていたけど改めて実際見てみるとココの強さって想像以上・・・ココが家族で良かった~」

「・・・そう・・・だな。それより日も登り始めた、早めの朝食を取って今日中に人間族の町に行こうか」

「はい!」


神獣ココが家族、しかしノイドはその言葉に心から頷けなかった。


町に行く為の街道をめざし山から再び森の移動でペースは上がり今度は北へ北へ進んでいた。

そして森の木々のすき間から街道まで見える所まで来た時、街道から大きく外れた草原で3人組の傭兵らしきチームを見つけた。

どうやら飛行する何かと戦っているようだが。


「あれもしかして・・・傭兵?」

「そうだろうな」

「魔獣、いや魔物かな?どうする?手伝う?」

「確か弱い魔物は群れをなしているんだったな」


出来れば傭兵とは関わりたくないと思う中それでも目の前で魔物や魔獣と命を賭けて戦ってる人を放っておけないのだろう、必要なら助けるべきと思っているのかもしれない。

よく見れば3対3、共食いをする魔獣は徒党を組む事はない為飛んでいるのは魔物だ。

魔物は空から舞い降りて攻撃しようとしているが冒険者側は1人は戦士が守りに徹し魔物に攻撃が届く範囲に来れば剣で攻撃、他の1人は弓で、1人は魔法で攻撃していた。


「上半身は人型、下半身は鳥型、手に槍を持ち背中には翼を持つ魔物・・・確かハーピーだったか、魔法使いがいて弓使いもいるなら問題ないだろう、いくぞ」

「はい」

「おっと忘れるところだった。ココ、お前に頼みがある」


ノイドがすぐに歩みを止めてココを見るとココは首を傾げている。


「父さん、ココに頼みって?」

「ココ、もし化ける事が出来るなら『普通の狐』に化けてほしい」

「化ける?ごめん父さん、意味が分からないんだけど」

「そうだな、ちゃんと話そう。まずココは神獣だ、お前は小さい頃から一緒に暮らしていたから不思議でもないしこの大陸に来た当初私自身神獣の事を分かっていなかったから隠さなかったがそれでもテノアの町の人たちにも受け入れられた。だがこれから行くのは人間族の町だ。人間族の町に神獣を連れて行けばどんな騒ぎが起こるか分からない。自分が人間だからよくわかるが金の為なら何でもする奴はいる。神に対して、神への信仰心を考えれば直接神獣にちょっかいを出す奴がいるとは思えないがそれでも絶対にいないとも言えない」

「なるほど・・・朝の魔獣の件もあるし何かあったら大変だしな。でも何でココが化けれるの?」

「故郷・・・火乃元国では力ある狐は色々な姿に化けて人を脅かすと言われている。神獣であるココなら姿を変えるくらい容易いと思ってな」

「へー、そんな話があるのか・・・」

「ロイン、もし可能だった場合お前の言う事なら聞くだろう。お前が頼んでみろ」

「うん、分かった。ココ・・・もし化けれるなら父さんの言うとおり普通の狐に化けてくれないかな」


その途端ココは赤い炎に包まれて一瞬で火が消えると大きさや毛並みは変わらないが9本あった尾が1本だけになり、瞳も金色から黒い縦長の猫のような瞳をして光も発していない普通の目になっていた。


「うおおおおお!ほんとに化けた!ココ凄い!」


ロインは驚きつつも嬉しくなってココに抱きつき頭を撫でたり首を撫でたりとしてやるとココもほめられた事が嬉しいのか尻尾を振り撫でられるたびに目を細めて気持ちよさそうにしている。

そんなココをノイドは冷たい目で見つめた。


(分かってはいたが・・・神の証でもある瞳さえ偽装するか・・・やはりココは危険すぎるかもしれない。ロインに言って今後うまく操る必要があるな)

火矢・・・炎の矢を飛ばす魔法『ファイアーアロー』を火矢と呼んでるだけの差の無い火遁術。


水蛇・・・本来は魚雷のように真っ直ぐ地を這う水蛇で水圧で切り裂く攻撃なのだが今回は蛇の動きまで付け加えられた水遁術。


氷霧・・・冷気の霧で包み込み凍てつかせる氷遁術。


篝火・・・蛍火を攻撃用に強化された火遁術。俗に言う『ファイアーボール』に近い。火力はあるが効果範囲は狭め。

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