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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
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1・忍びの里、襲撃

「なぁ、今夜は随分山が静かじゃないか?」

「・・・確かに」


 二本の刀を腰に差した侍風姿の二人のうち若い方が問いかけるとやや年配の男は眉をしかめた。

「ただの見張りといえ任務中に私語は慎め」と思ったものの実際に静かすぎる夜、素直にうなずき返してしまった。


 名も無きとある山、人が上るのも困難な山、高さによる死角と木々に阻まれ遠く離れた町や村からは見ること叶わぬ忍びの里が山の頂上にあった。


 台形に近い山の為真上から見れば森のように茂った木々に埋もれた里が見えた。


 2メートル程度の高さの塀に囲まれその広さは正門側が約70メートル、奥行きは100メートルは超えているだろうか。


 門を抜けると中央に10メートル程度幅の道が奥まで続いている。門から入ったすぐ手前には家畜であろう馬と牛がいる小屋が、その奥を進み左右には里の者達が住む家屋が建ち並び、よく見れば刀等打つ為だろう鍛冶場があり、最奥には更に塀と門があり寺のような屋敷が建っていた。


「獣の声はまだしも虫の声まで聞こえんとは・・・」

「まぁもうすぐ交代の時間だ。今夜は月夜、気になるなら風幻太様に事を伝え月明かりを頼りに周辺を調べるのも良かろう・・・ほら、ちょうど来おった」


 若者が里の中央に目を向けると似たような姿の二人組みが門に向かって手を振って歩いてきたので門の二人も手を振り返しながら門を背に歩きやって来た二人にさっきと同じ言葉を投げかけた。


「なぁ、今夜は随分山が静かじゃないか?」

「ああ、お前らもそう思うか?一瞬山どころか里に誰もいないんじゃないかって思えるほど静かだって俺達も今話してた所だ」

「里に誰もいないってさすがにそれはないだろ、三時間ほど前に幻十朗様が帰ってきたんだぞ」

「おおそうか!確かひと月ぶりか・・・帰ってきておられたか・・・それでは今日は久方ぶりに十人衆全員揃っておられるのだな、上忍も含め皆屋敷におられるのか?」

「多分そうだろ・・・ん?どうした?」


 見張りをしていた年配の男がなにやら夜空の一点を見つめじっとしていたので一緒にいた若者が声をかけると男は見ていた空を指差した。


「なぁ・・・あの黒いのなんだと思う?鳥・・・梟か何かか?」

「確かに何か動いてるな・・・蝙蝠?雲とも違うし・・・む~見えん!夜目が効かんのがもどかしい!」

「・・・おい、あれどんどんこっちに近づいていないか?」

「鳥だ!こっちに来てるぞ!!!」

「「「「うあああああああああああっ!」」」」


 非常事態に4人が刀を抜こうと手をつけたが抜くその暇なく一瞬で百とも千とも万とも言えるほどの鳥に包まれその悲鳴は里に届くことはなかった。





 ドスッ、ドスッ、ドスッ、ザッ、ザッ、・・・シャァァァァガタンッ!・・・スゥー・・・・トン。

 強く廊下を踏み鳴らし大雑把に草鞋を履き勢いをよく戸を開け屋敷から出てくる40歳くらいの男がいた。

 しかし自分が今何処にいるのか理解したのか「あ、やってしまった!」そんな顔をしながらゆっくりと静かに戸を閉めた。


「・・・ふぅ・・・えええい!十人衆とあろうものが大事な日に七人も姿が無いとはどう言う事だ!・・・それにしても今夜は随分と静かだが・・・」



 頭に来ていたが主が住む屋敷の前で大声で叫ぶこと出来ず器用に大声、いや怒りをこらえた太い声で小さく叫んだ。

 怒りを静めつつも探している七人がまだ自分達の家屋にいるのか鍛冶場で刀でも打ち直しているのか分からないが里を探す事にした男は屋敷の門のほうに歩みを進めようとしたとき不穏な空気と血の匂いを感じ突然走りだし一気に門の屋根に飛び移った。

 同時に爆音と赤い炎が揺らめいた。

「何事だ!」と前を見据えると刀を抜いた黒装束の忍者が男に気が付いたのか門上の方へ振り返り叫んだ。


玄ノ丞(げんのじょう)様!敵襲です!里は今鳥達の襲撃を受けております!」

富吉(とみきち)か!、それより鳥の襲撃!?・・何だこれは・・・何が起きている」


 玄ノ丞と呼ばれた男は里を見渡し愕然とした。目の前にいる富吉とよく似た黒や紺といった闇に溶け込んだ忍び装束を来た上忍達が里を埋め尽くしそうな大量の鳥達を刀で、忍術で迎撃していた。

 一瞬我を忘れてしまったものの更に近づく鳥の群れに気づき刀を抜き富吉と呼ばれた黒装束の忍者の横に並んだ。


「富吉!上!お前は火を!」

「承知!」


 二人は刀を前に構え集中する。


「風遁!」


「火遁!」


「「火災旋風!!!」」


 突如彼らの前に大きな竜巻が生まれた、その直後竜巻は巨大な炎になった。

 炎の渦は不思議と里の建物などは飲みこまず、しかし里にいた襲い来る鳥たちだけを凄まじい勢いで吸い込み一瞬で焼き尽くした。

「おおおおっ!」と周りで戦っていた忍び装束の忍者達は歓喜の声を上げた。

 しかしまだ空からくる鳥の影に気は緩んではいなかった。

 しかも鳥だけでなく塀を乗り越えて里の中に入ってくる何かもいた。


「くっ!鳥の次は猿だと!?いったいどうなっている!富吉!」

「はっ!」

「この騒ぎだ、もう気が付いておられるだろうがお前は半蔵様と風幻太に現状を伝えろ!私は他の十人衆が里の何処にいるのか探す!行け!」

「承知!」


 玄ノ丞は家屋が並ぶ里内に、富吉は屋敷の中に消えていった。

火災旋風・・・炎の竜巻で風と火を組み合わせた『合遁術』と呼ばれる複合忍術。本来1人でも可能だが二人以上で合遁術を使うと威力や範囲が広がる。

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