14・魔法契約
家に帰宅し夕食後、地下倉庫の部屋中央に魔方陣が描かれたその場所にペンダーを除き家族全員が揃っていた。
「それで神聖か神淵、どっちを契約するか決めた?」
「うん、母さん達も神聖だし俺も最初から決めていた神聖で良いかな~って思ってるんだけど・・・どうなんだろう?」
「どっちが良いかどうかは結局皆にも分からないからロインが良いと思う方で良いのよ。それに結構使える魔法ってどっちもかぶっててどっちでも使えるって聞くし・・・ねえ?お母さん」
「そう言われてるわね。それに相手を弱体化させる魔法が神淵にあるんだけ相手の魔法抵抗力のせいか分からないけど成功率が結構低いって聞くのよね。だったら確実に効く治癒や強化魔法が多数使える神聖が良いって言われてるから。多分この町の9割の人が神聖じゃなかったかしら」
「じゃーやっぱり神聖で良いかな。攻撃関係は剣術と体術、忍術と精霊魔法あるし治癒治療が色々あったほうがいざと言うとき便利そうだし」
「じゃあ魔方陣の文字が消えない様に中央に立って」
魔方陣の大きさは8メートル程で中心1メートルだけ文字など何がもない空白でよく見れば絵の具の材料などで使われる白い顔料の石をチョークのように使って魔方陣が描かれていた。
手書きであるため若干円などが歪な形をしているのだが全く問題ないとの事だった。
レネの指示にロインは足で文字が消えないようゆっくりと歩き中央まで歩いた。
念の為レネが歩いた箇所の文字を調べ問題無く「うん、大丈夫。教えた通りやって」とロインにうなずいた。
2人を除き全員は壁際まで離れて静かに見ている。
「ふ~・・・よし。・・・光の神アセラよ・・・闇の神テセラよ・・・対極たる全ての母よ・・・いにしえの契約に従い・・・我は求めん、光を求めん・・・ライティング?」
少々自信がなかったのか『これで合っている?』のニュアンスを含めレネを見ると『大丈夫』と頷いた。
ロインは持っていた石で自分が立つ中央ではなくその周りにびっしりと文字が書かれた場所、1箇所だけ文字が書かれていない空白の部分に星を、五芒星を描いた。
描いたあとロインは『そう言えば俺の左手にも五芒星の紋様があったな~』そんな事考えながら魔方陣の変化を待った。
ノイド自身も珍しくやや緊張の面持ちで腕を組んで見守っていた。
五芒星を描いて5秒くらいたち変化が訪れた。
元から描いていた歪な魔方陣と入れ替わるように白く光る完全な魔方陣が床に浮き上がっていた。
後から描かれた五芒星も光りロインは五芒星に右手をかざすと星の光は右手に吸い込まれるように消えた。
その後光の魔方陣と入れ替わるように最初の手書き魔方陣だけが床に残っていた。
ロインは左手に違和感を覚えてグローブを少しだけずらした。
一瞬だけ黒く、と言うのも変だがそうとしか言えない光が見えた気がしたが今はいつもの左手だった。
「どう?契約は成功してると思うけど」
「え?うん・・・大丈夫だよ。今も魔法に関する記憶が頭の中に入ってきてる、凄いなこれ、ちょっと変な気分だ」
「まぁ!1つだけじゃなく複数の習得をしてるのね。やっぱりロインは魔法使いの素質があるのかも」
知らない知識、記憶が頭の中に刷り込まれている、不思議な感覚にロインは魔方陣の外に出て耐える為少々ぼーっとしていた。
そんなロインのそばにココが擦り寄りロインはゆっくりとココの首に顔をうずめる。
そして嬉しそうなレネを見ながらノイドは一息付いた。
これで忍術、この地で使われている精霊系魔法、そして神聖魔法と更に手数が増えた。
ロインがこれらを使いこなせるかどうかはまだ不明だが戦闘に幅が広がったのは間違いないだろう。
その時そっとアイルが横に来て話しかけた。
「ノイド君も、もう一度契約してみたら?」
「契約ですか・・・ですが5~6年ほど前に一度失敗していますが・・・」
「意外と何年かしてから再契約すると成功する事もあるのよ。それに神聖か神淵どちらか前回と違う方を選んだら成功してる例もあるしどう?」
「なるほど・・・前は神聖ですから今回やるなら神淵か」
さてどうしようか、と迷っているとマローネがレネの足にしがみつき元気な声が地下室に響いた。
「ねえねえお母さん!私も!お兄ちゃんみたいに契約したい!」
「え?マローネも?ん~でもまだ早いような気がするけど・・・」
「あら、良いんじゃない?一層の事ノイド君と一緒に今から契約しても」
アイルの助け舟にマローネとノイドも契約する事となった。
ただどちらも契約は成功せずマローネは落ち込みノイドは「元より忍術は得意でなく風しか使えないから」と契約失敗をごく自然に受け入れていた。
この日夜遅く、この家の主であり大賢者となったペンダーが帰ってきた。
明日ロインの15の誕生日の為、そして15年前の真実とノイドの旅の出立の為に。
ぷっ!契約だっさいわー良いのが思いうかばん