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忍者と狐to悪魔と竜  作者: 風人雷人
第一部 忍者見習いが目指すは忍者か?魔法使いか?
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13・忍者見習いの少年

「風遁、疾風迅雷!」


白いシャツに茶色のズボンとブーツ。

両手には指部分が無い茶色のグローブを付け腰のベルトには5本のナイフのようなもの、右手に木刀を持った15歳前後の黒髪の少年が目の前にいる男に木刀を何度も振るうが簡単に止められていく。

フェイントにと体術も組み込むが簡単にかわされ、卑怯と知りながらも目潰しに地面の土を蹴り上げ男の顔にぶつける。

しかし男は視界など気にせず既に目をつぶっており顔にかかる土さえも気にも留めず少年に足払いを食らわす。

「げっ!]と声を上げ尻餅をつきそうになったが疾風迅雷の効果か何とか体勢を保ち左手だけのバク転で後ろに逃げる。

前を見ると男は追撃せず余裕を持って顔と体にかかった土を払い落としていた、ならばと地面に手を付く。


「土遁、障壁!」


高さ3メートル近い分厚い土壁が4枚、男の前後左右を囲むように地面からせり上がった。

少年は勢いをつけて壁の上に登り壁に囲まれた男に向かって術を使おうとしたがそこには誰もいなかった。


「え?」


男は壁の中ではなく壁の向こう側にいた、どうやら上がり始めた時点で後方に下がっていたようだ。

男は背中を見せると一気に駆け出した。

少年は壁を飛び越え林の木を盾に右往左往逃げる男を追いかける。

少年は信じられない速さで走っているのだが前を逃げる男はそれよりも早かった。

ふと男は木の後ろに隠れた。

チャンスとばかりに木の向こうに隠れた男に一撃を食らわそうと木刀を構えたどり着くも木の裏に誰もいなかった。


「くそ!上か!」


少年が上を見ると木の枝から枝へ、さっきの逆方向へと逃げる男が見えた。

男は木に隠れうまく目視されないよう器用に木に登り上から逃げたようだ。

少年は再び男を追いかけるとある一定の距離までは近づけるのだがそれ以上が縮まらない。


「やっぱ無理か、仕方が無い・・・風遁、千里視!」


少年はなんとか先回りできないだろうかと脳内で地形と男の動きを組み合わせて先読みしようと試みた、だが・・・。


「うん!分からない!普通に追いかけた方が早いか」


前を行く男がため息を付いたのは気のせいだろうか。

枝から降りて普通に走り出す、さっきより遅く距離が縮まっていた。

よし!と少年は腰に挿したナイフ、いやクナイを1本取り出す、しかしまだ投げない。


「まずは隙を作る・・・力を抑えて・・・合遁、花火!」


逃げる男のすぐ目の前で火花を撒き散らしながら小さく爆発を起こした。

男が立ち止まりその隙にクナイを男の足に投げ手傷を負わせ逃げられないようにしてから木刀の一撃を食らわせて見事に捕まえた。



・・・・・・にはならなかった。



爆発が起こるより先に男は急な方向転換で少年に向き、先に少年に向けてクナイを投げてきた為少年は回避と術の為にしゃがんで地に手を付けると慌てて先ほどの障壁を使おうとしたがそれがいけなかったのか術の発動前に既に男は横をすり抜け後ろから首を腕で絞められ少年から抜いたクナイを胸に突きつけた。


「残念、お前の負け」


そう言って男は少年を離すと先ほど投げ木に刺さったクナイを取りに行く、少年はその場に座り込んだ。


「ああああ、また負けた・・・今のは結構良い感じだったのに」

「どこがだ、お前は何も考えず行き当たりばったり術を使ってるだろ?」

「か、考えてるよ、さっきだって木に火が燃え移らないようにちゃんと抑えたし」

「まて、それは火が木々に移れば火事になる、当たり前の常識で戦略ではない。ま、風下だから火をつけようなんて考えていだけまだマシか」

「うぐっ」

「さて、もう一度・・・と、もう昼か」


男が僅かに見える壁の向こう目を向けるとそこから1匹の狐が駆け寄ってくるのが見えた。

狐の大きさは中型犬くらいだろうが、金の毛に金の瞳、しかしそれより目を引くのは9つの尾だろう。

修行中は空気を読んでいるのか大人しく近寄らないようにしているが終われば甘えに行く。

狐は座り込んだ少年の傍によっていくと少年は手を伸ばし九尾の狐の頭や体を撫でてあげる。


「母さんがお昼持って来てくれたんだね、教えてくれてありがと、ココ」

「さて、いつもの所に戻ろう」


男、ノイドはそう言って町の壁の方に歩き出し少年、ロインとココも後を付いていった。

林を抜けると少し開けた場所に出た。

町の壁と林の中間ほどに大小様々の石が転がっておりそこにレネと小さな女の子がいた。

女の子はぶんぶんと手を振りこっちに来たそうにしていたがレネが手をしっかり握ってるので来れないでいた。

ノイド達がすぐ傍まで来てからレネが手を離すと女の子は一気にココに飛びついた。

「ココォ~、えへへっ」


女の子はニコニコとココを抱きしめ頬ずりをした。

ココは若干嫌そうな顔をしているような気もするが動かずなすがままにされている。


「ココ・・・母さんが来たこと教えてくれたんじゃなくてマローネから逃げてきたのか」

「マローネだけがこっちに来たと言う事は母上殿は昨日近所で生まれたと言っていた赤ちゃんを見に行ったってことか」

「ええ、正解」

「さすがは母上殿」


ノイドとレネはここにいないアイルに苦笑い、ロインはマローネに「あんまり強くするとココが痛がるよ」とやさしくたしなめた。


「それでどんな感じ?」


お昼のサンドイッチを食べながらレネは隣で一緒に食べているノイドに修行の成果を聞いた。

ココはロインとマローネに挟まれ、ロインに甘えたいのにマローネに甘えられる状況になっている。


「忍術、魔法の手数は私や君よりあるんだが・・・その忍術、魔法そのものをまるで使いこなせていないうえ少々強引な力押しの戦い方、それなりの敵なら良いがある程度手練の相手にはまだ無理だろう」

「あらら」

「ただ忍びの戦い方は元々剣士、戦士のそれとは違う。私の教えられる事は教えるつもりだがロインはもしかすると忍者より戦士のような戦い方の方が性に合っているのかもしれない。あるいは君の言うとおり魔法の才能があるなら本気で魔法使いを目指すのも良いのかもしれないが」

「そっか・・・」

「とは言えロイン1人でまともな実戦はやらせていないゆえ、こんな練習じゃなく実戦で開花する可能性もある。今後どうするか、それも明日の誕生日、元服を迎えてからロイン本人が決める事だ」

「・・・うん」


レネはちょっと寂しそうに義理の息子ロインを見た。

ロインは困ったようにサンドイッチを頬張りココは大人しく座りマローネはココに引っ付いて「コッココッコー~♪」と謎のココの歌を歌っていた。

昼食後、片付けを終えたレネが腰に手をやり仁王立ちになった。


「さて!午後からは魔法の勉強といきましょうか」

障壁・・・別名『ぬりかべ』大きな壁を作り出し四方囲んで檻のようにしたり正面に作れば盾にも出来る土遁術。


花火・・・火と風の術を合わせた複合術で火そのものより爆風による衝撃で敵を倒す合遁術。

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