群青の日‐2
「タケル?」
「・・・あっ、なんでもない。俺、この後予定あるから今日は帰るね」
思い出せそうで思い出せない記憶。
「うん、また明日ね。」
また、、明日・・・。
「うん、明日もここにいる?」
「いるよ、当分はね。」
そう言って、アダムは微笑む。
笑うという表現より微笑むが正しい。
その微笑みに色気を感じるのは、自分が大人になったからだろうか。
小屋を出ると、空がオレンジ色に染まっていた。
それにしても、
「ここからどう出ればいいんだ。」
周りは木に囲まれた森だ。
「大丈夫、そこをまっすぐ行けば帰れるよ。」
その自信はどこからくるのか。
でも、アダムに言われるとそうなのか。とも納得してしまう。
「あ、そういえば白い猫見なかった?」
「白猫?見てないよ。」
「そっか・・・。あの猫どこ行っちゃったんだろう。」
「昔はさ、黒い猫がアダムのところに連れて行ってくれたんだけど、
今回は白い猫でアダムと同じ青い目の猫で」
自分で話してて、猫が連れていってくれるなんて、
どんだけファンタジーなことを言っているのだろうか。と思わず口を閉じると
「そうなんだ~。猫はいいよね。昔、猫に助けてもらったし
タケルにも会えたし、猫には感謝だね。」
「猫に助けられた?」
その言葉には、ふふっと笑っただけで答えてはくれなかった。
「早く行かないと暗くなっちゃうよ」
「あっ、うん。また、明日」
「うん、明日。」
ドアにもたれかかっている、アダムが手を振る。
それにつられて、手を振り返す。どこか懐かしい。
アダムと別れた後は、言われた通り森の中をまっすぐ進んでいく。
本当にたどり着けるのかな。
そう思いながら、不思議と足が進んでいく。
10分ほど歩くと、大学の構内にたどり着いた。
駐輪場に止めてある自転車にまたがり、思いっきり足を踏み込んだ。
まだアダムに会った衝撃と曖昧な記憶と、すべてが現実味をおびていない中
自転車に乗り駅までの道を急いでいる自分に、急に日常に引き戻される感覚を覚えた。
アダム、君はいったい、、、何者なの――――――――。