会
「痛っ・・・」
木の根におもいっきり、つまずいてしまった。
「いてて。」
いつの間にか思ったより、遠くまで歩いてきてしまったらしい。
汚れるのも気にせず、座り込んで空を見上げる。
緑の葉が青い空に溢れ、遠くで鳥の声が聞こえる。
森の中はとても綺麗だった。
暑い日差しも遮って、空気がとても澄んでいる。
リュックからカメラを取り出し、写真を1枚撮る。
にゃあ
「あっ、」
すっかり猫の存在を忘れていた。そちらに視線を送る。
ざぁぁと風が吹く。
「—————っ。」
目を見開く。
先程見た映像と、全く同じ光景が目に飛び込んでくる。
白い小さな家。
いや、あの頃は幼かったこともあり家だと思ったが、
小屋というのが正しいだろうか。
「あっ、、」
慌てて起き上がろうとして、ずるっと滑ってしまう。
猫はカリカリと扉に爪を立てている。
早く行かないと消えてしまうのではないのだろうか。
という衝動に駆り立てられる。
慌てて起き上がり小屋の前まで行く。
薄いブルーのカーテン。
少し空いている窓から覗き込む。
ごくん。と唾を飲み込む音が異様にはっきり聞こえる。
部屋にはペンキの匂いが立ち込めている。
真っ白な壁の前に一人。
真っ白な服、足元には青いバケツ。そして眩いばかりの金色の髪。
あぁ――やっぱり綺麗だ。
「アダムっ!」
涙が溢れた。
悲しかったわけではない。
かといって嬉しかったというわけでもない。
どちらかといえば久々の旧友に、
街角でばったり会った気分というのか一番正しいだろうか。
なのに涙は止まらない。
彼が振り向く。何よりも濃い青色の瞳と視線が交じり合う。
「・・・タケル?」
人形のように整っている彼の口元が、名前を紡いだ。