「紅と共に」
親愛なる不定なる者たちへ
この手記は畏怖なる存在を封印せしめるために手に入れた古い手記である。恐らく戦後に執筆されたものであろう。
『紅と共に』
花美輪 乃霧
戦火の轟音が鳴り響く曇天の天を仰ぐなら、我国、愛国の精神すらも絶え絶えに冥府なる思深心へと叩き落される。
一人が天を仰ぎ見るや、直立不動なりて言霊さけぶと、曇天たるこの天空に一報の警笛ととに響きわたったのだ。
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
言霊を信じ崇拝した者どもは、自らの信念が植えつけられた嘘偽言であることに気づくのであった。
あーなぜなのか
なぜ人は繰り返すのだろう
人類は何千年と言う歴史を進捗進歩してきても、古代より争い続け、富を奪いなんら根本基生はかわらぬわ
これこそが畏怖なる者どもよ
現世に生きるものよ、何思ふ