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1-5. チートスキルは誰の手に

「時間だ、これから諸君らの行動を制限させてもらう。まずはステータスを表示するから、その感覚を覚えておくように」


 白フードの声と共に、感じたことが無い感覚が襲う。

 気付くと、目の前には自分のステータスらしきものが表示されていた。


+『高藤 誠司』【レベル1】---------

| 肉体強度:41 (82)

| 身体能力:32 (64)

| 魔力容量:34 (34)

| 魔力制御:47 (47)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【大】

| 斧適性4、空間魔法5

+--------------------------------



 なるほど、適正が斧ってのがちょっと脇役っぽいけど、空間魔法は胸アツだな。

 これなら何とかなりそうな気がするし、取りあえずはホッとした。後は他の人と比べてどうかって事だけだ。


「これからステータスを一旦閉じるから、今度は自分でステータスを開いたり閉じたりして見てくれ。今の感覚を思い出しながら『ステータス表示』と強く念じるのだ」


 白フードの言葉に続くように、不思議な感覚と共に、ステータスの表示が消える。

 その後、言われた通りに感覚を思い出しながら『ステータス表示』と念じることで、ステータスを開くことができた。

 次に閉じた時の感覚を思い出し、閉じようとすることで、やはりステータスを閉じることもできた。

 その後は、何度か開いたり閉じたりして、ステータス表示の感覚を馴染ませる。


 ステータスウィンドウの開閉を5回ほど繰り返したあたりで、俺は自分のステータスをじっくり見ることにした。


+『高藤 誠司』【レベル1】-------------

| 肉体強度:41 (82)

| 身体能力:32 (64)

| 魔力容量:34 (34)

| 魔力制御:47 (47)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【大】

| 斧適性4、空間魔法5

+--------------------------------


 ふうむ、基礎的な能力値らしいのとスキル表示があるけど、比較対象が無いとなんとも言えない。

 スキルも4つもあるしさ、俺のカードは2枚だったから2個の筈じゃ?


「さて諸君、これからステータスについて説明していくのだが、具体例があると説明しやすい。諸君の中で自分のステータスを見せて良いという者はいるか? いたら強く念じてくれ、最初の所持金を倍にしてやるぞ」


 最初の所持金を倍かぁ、正直微妙な気がするな。

 転生先は森だっていうから、金なんてあっても役に立たんし、どうせ街に着いたら金を稼がないとならないんだ。

 それに情報は大事だって言うし、ここは静観だな。


「協力者を募る間に、まずはステータスの各項目について説明しよう」


 白フードが説明してくれた内容は、だいたい次のようなものだった。


・レベルは肉体を構成する魔素の質で、魔物や生物を殺し相手の魔素を一定量集めるとレベルアップ(魔素の質が上がる)する

・レベルアップすると、能力値が全体的に上がる

・肉体強度は、力の強さ、頑丈さ、発揮できる速度の総合値

・身体能力は、身体の柔軟さ、器用さ、反応の速さの総合値

・身体強度と運動能力は、激しく身体を動かすことで上がりやすい

・魔力容量は、保有できる魔力の最大容量で、多いほど魔法をたくさん使える

・魔力制御は、高いほど魔法を細かく制御したり、強い魔法が使える

・魔力容量と魔力制御は、高度な魔法を使う事で上がりやすい

・能力値の左側の値は、ベース値で人間種の限界値は100程度

・能力値の右側の括弧で括られた値は、レベルとスキルで補正後の値

・スキルは、生まれつき持った才能で、増えることはめったにない


 とまあ、いろいろ面倒くさい。

 早い話、魔物を倒してレベルアップしたり、身体を動かしたり魔法を使って能力値を上げれば、強くなれるってことだな。



「協力者として5名が名乗り出てくれた。スクリーンに彼らのステータスを表示していくから、まずは見てくれ」


+『上原うえはら 進幸のぶゆき』【レベル1】-------------

| 肉体強度:40 (80)

| 身体能力:39 (78)

| 魔力容量:33 (33)

| 魔力制御:37 (37)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【大】

| 神聖光剣

+--------------------------------


 スクリーンにはステータスの表示と、ご丁寧に本人の顔写真も映し出されている。

 最初に表示されたのは、バカっぽいカップルの男のほうだ。


 スキルがなんか少ないんだけど、誰かに奪われでもしたのか?


「さてまずは共通で与えたスキルについての説明だ。『異世界人』は全員に与えたものだ、最初に説明した言語知識と経験値の優遇に関するスキルがこれだ」


「次に『身体強化』だが、これはカード枚数に応じたスキルとなっている。こちらで与えたおまけと考えてもらっていい。身体強化スキルによって身体強度と運動能力の能力値に補正が掛かるし、その他にも諸君の肉体に様々な恩恵を与えてくれる。詳細は転生後に確かめてみてくれ」


「ここからは、カード分配によって得たスキルとなる。彼のカード枚数は1枚のため、『神聖光剣』のみとなる。このスキルは勇者という存在が所持していたスキルと同じで、光の剣を出して自由自在に操ることが出来る」


 やはり、カード1枚になっていたのか。でもスキルは凄いチートっぽい雰囲気だ、身体強化も【大】だし。

 カード枚数に応じてってことは、1枚か2枚所持だと『身体強化【大】』で能力が2倍になるってことだろうか?

 あと、身体強化の恩恵が他にもあるって言うけど、どうせ教えてくれないんだろうから、転生後の楽しみとでも考えておこう。

 


「次はカード3枚の彼女だ」


+『今枝いまぐさ 幸子ゆきこ』【レベル1】-------------

| 肉体強度:35 (56)

| 身体能力:24 (38)

| 魔力容量:54 (54)

| 魔力制御:67 (67)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【中】

| 槍適性3、神聖魔法4、罠操作2

+--------------------------------


 スクリーンに表示された彼女の写真を見るに、腐女子3人組の1人、ポチャ子ちゃんである。『身体強化【中】』の補正は約1.6倍くらいか……なんか中途半端だな。


「『槍適性』はその名の通り、槍を使う適性だ。右の数字はスキルレベル、適性の度合いを表している。1は普通よりマシな程度、2で才人、3で天才、4で超人といった具合だな。武器適性については、これ以降省くぞ」


「『神聖魔法』は回復系や補助系に特化した魔法特性だ。魔法については転生先で教えてもらっても良いし、才能があるなら自分で作ってしまっても構わない。『罠操作』は、罠の設置や解除に関する適性だな」


 魔法の説明が随分とテキトウだが、作れって言うくらいだから、使い方も才能が有れば何となく分かっちゃったりするんだろうか?

 それより、4で超人なら俺の空間魔法5ってどうなんだ、なんかチートの香りがするぞ。



「3人目はカード6枚の彼だ」


+『須長すなが 総一郎そういちろう』【レベル1】-------------

| 肉体強度:42 (55)

| 身体能力:44 (57)

| 魔力容量:35 (35)

| 魔力制御:43 (43)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【小】

| 剣適性2、神聖魔法2、道具作成2

| 盾適性1、空間魔法1、罠操作1

+--------------------------------


 3人目はクラス委員の須長だ。スキルを見るに段々と法則性が分かって来たな。ちなみに『身体強化【小】』の補正値は1.3倍のようだ。


「『空間魔法』は異空間への接続や、空間転移などの魔法だ。『道具作成』もその名の通り、アイテム類の作成への適正だ。作成方法は転生先で教えてもらうなり、自分で考えるなりしてみてくれ」



「4人目はカード7枚の彼女だ」


+『村西むらにし 英瑠えいる』【レベル1】-------------

| 肉体強度:37 (41)

| 身体能力:41 (45)

| 魔力容量:55 (55)

| 魔力制御:41 (41)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【微】

| 短剣適性2、元素魔法2、投擲適性1

| 弓適性1、暗黒魔法1、隠密行動1

| 気配察知1

+--------------------------------


 4人目はたしか……ギャル女子3人組の中の1人で、マリって呼ばれていたボスにくっついてた子だな。御付きAとでもしておこう。

 これ、スキル数でカード奪ったのバレバレじゃん。

 なんで自分から、悪事を吹聴するようなことするかな、理解に苦しむね。きっとこういう子が、ネットで馬鹿な投稿とかして炎上するんだろうか。

 ちなみに『身体強化【微】』の補正値は1.1倍だ、たいして変わらんよな、これ。


「『隠密行動』と『気配察知』は、偵察行動に関する適正だ。『元素魔法』は、地・水・火・風の様々な属性魔法だな。『暗黒魔法』は相手への阻害魔法が主だな」



「最後の1人がカード9枚の彼だ」


+『前澤まえざわ 栄介えいすけ』【レベル1】-------------

| 肉体強度:59 (47)

| 身体能力:47 (38)

| 魔力容量:27 (27)

| 魔力制御:31 (31)

+-[スキル]-----------------------

| 異世界人、身体強化【特】

| 剣適性1、斧適性1、槍適性1

| 格闘適性1、投擲適性1、元素魔法1

| 空間魔法1、隠密行動1、武器作成1

+--------------------------------


 こいつは最初に9枚取って消えて行った中でも、一際バカっぽかった奴だ。

 『身体強化【特】』の効果は、補正値0.8倍といったところか、もはや強化では無くて呪いのようなものだな。


「『武器作成』も道具作成と同様、作り方は現地で頑張って習得してくれ。『身体強化【特】』については、まあ神の試練とでも思ってくれたまえ」


 ここまで見て来て、俺のステータスについて分かったのは、肉体強度は平均的で、身体能力は低いほうってことだな。

 これは、筋トレをして身体は鍛えたが、スポーツはめったにしないインドア派だからだろう。


 あとは、魔力容量については女子のが多い感じだから、俺は男としては普通な感じだ。

 魔力制御は、インドア派のほうが高い傾向にあるな、きっと想像力とか妄想力とかが関係してるんじゃないか?

 腐女子の妄想力とか凄そうだし、それなら今枝の魔力制御67ってのも頷ける。



「ここまで見て来て、察しのいい者は分かってくれたと思うが、スキルの数はカードの枚数で決まっている。しかし、カード枚数の少ない物には、他の才能を閉ざして、その分を他の才能に回している。そのため、与えるスキルレベルの総量は一緒だ。神が依怙贔屓するわけにもいかんからな」


 何言ってんだ、身体強化で依怙贔屓してるだろうに。


「身体強化はあくまでおまけさ、お遊びみたいなもんだよ。ふふっ、諸君の表情を見るに、この状況がどういうことか解った子もいるようだね。そう、俺はその表情が見たかった!」


 急に雰囲気が変わったな……もう猫を被る必要が無いってか?


 今回のスキル分配では、複数の適正があるのも、長い目で見れば良いことだ。

 だが転生直後を考えると、適性の高いものを一極集中で鍛える方がスタートダッシュが出来るだろう。

 つまり最初は、立場の弱かったカード枚数の少ない者達のほうが有利なのだ。

 そして、おまけで付けたという身体強化がそれに拍車を掛けている。


 力関係の逆転は秩序の崩壊を意味する。

 正直、転生後のことを考えると頭が痛いんだが……。



「いやー、楽しいね、実に楽しい。そうだ! 君たち、カード9枚手に入れた子達が何を考えていたか、知りたくはないかい? 伊達に最大枚数を手に入れてるわけじゃ無いんだ、力有る者の考えは、いろいろ参考になると思うぜ。希望者が多ければ、これから見せてやるぞ」


 白フードが最後に爆弾を落とす。

 建前は尤もらしいが、明らかに争いを煽っているようにしか思えない。

 証拠にフードから覗く口元には、厭らしい笑みが浮かんでいた。


 駄目だこれ、あかんパターンの異世界転生だ……。

 まあ有用そうなスキルを得たことだし、ヤバそうならさっさと逃げるに限るかな?



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