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1-3. スキル分配は民主的に

 既に不良っぽい3人組は、何処かへと消えてしまった。

 残り37人で173枚を分けるとするなら、1人4枚で分けて25枚余る。

 今日、転校してきたばかりの俺が、余りを手にする可能性は低いだろうな。


 そう考えてるうちにも、今度は1人の女子がカードを取りに走り始めていた。そして、他のクラスメイト達もそれに続こうとしている。


 それに気付いたイケメン君が咄嗟に止めに入る。


優花ユウカ琴音コトネ九条クジョウを止めてくれ!」


「分ったわ大輝ダイキ! 九条さん行かせないよ!」


「お任せください、この先は通しません」


 イケメン君に応えた美少女2人は、すぐにカードまでの道に立ちふさがり、九条と呼ばれた少女を取り押さえた。


鷹塚タカツカさん、僕とキミは男子を止めるぞ!」


「オッケー。痛い目に逢いたくなかったら、思い留まってくれたまえよ君達!」


 イケメン君と鷹塚さんと呼ばれた男(いや女か?)も、クラスメイトの前に立ちふさがり、勝手な真似をしないように威嚇し始める。


 何というか、カースト上位のリア充グループってやつだ。うまい具合に暴走を止めてくれたようなので、爆発しろとは言わないけどね。


「僕達は、皆が暴走しないように抑えているから、分配については須長スナガ、クラス委員のキミに任せてもいいかい?」


「止めてくれてありがとう天間テンマ君、危うく収拾が付かなくなるところだったよ。それにしても分配についてか……このカード分配に、制限時間はありますか?」


「制限時間は2時間、2時間経過時点でカードの所持枚数で、諸君のスキルを確定する」


 イケメンは天間で、このクラスのクラス委員は須長というようだ。

 白フードの男が須長に答えると、スクリーン上にタイムリミットがデジタル表示される。


「一応確認しますが、さっき隔離された野島ノジマ達を元に戻す事はできますか?」


「本人が希望しない限り、このままだね」


 須長の駄目で元々の確認に、白フードがそう答えた。

 周囲のクラスメイトは口々に野島達の悪口を言っていたが、須長はそれに冷静に反応する。


「まあそうだろうね。なら2時間で残りを分けるのか、あまり考えている余裕は無さそうだな。かといって、単純に同じ枚数で配るのも問題がある」


「何が問題なんだい? 平等でいいと思うんだけど」


「問題は2つ、居なくなった野島達と、転生先の危険のことだよ。野島達に対抗できる者が、出来れば4人は居てほしい。残りを均等に分けると4枚くらいづつになるのだが、それだと転生先の危険を乗り越えられるかが心配だ」


 天間の問いに、須長は考え込みながらも、自分の考えを語った。


 言いたいことは分かるのだが、どうもに雲行きが怪しい。

 野島達ってのはカード9枚を持ち逃げした奴らで、確かにああいう奴らに力を持たせたままなのは厄介だ。

 それに対抗する主力の4人を用意するって考えは良いと思うのだが、その後の言葉を聞く限り、カードの分配が偏りそうな感じだ。

 そうなると今日あったばかりの俺が多く貰えるはずもなく、多くて3枚、最悪は1枚にされる可能性だって出てくる。


 なんとか反論したい…………したいけど今は無理だ、余計な口を出して1枚も貰えないとかなったら最悪だ。

 俺がそうならないと言い切れない、こいつらがどういう人間か全く知らないのだから。


「そうだなぁ…………カード9枚の主力を4人、カード6枚の戦闘要員を9人、カード4枚の防衛要員を11人、残りの13人をカード3枚とすれば、丁度173枚になるはずだ」


「良い考えのようにも聞こえるけど、3枚の人が可哀そうじゃないか?」


「その分、しっかり守ってやればいいんだ。俺は主力を天間君、鷹塚さん、古手川さん、桂木さんの4人にお願いしたい。最初に動けた君たちなら頼りになる。他に意見がある人はいるかい?」


 どうでも良いけど鷹塚さんって女子なのね。最初男かと思ったよ、髪は短く背も高いし、何より胸が……いや何でもないです。

 古手川さんと桂木さんは、どっちが優花でどっちが琴音だろうか。片や和風美少女、片や活発系美少女と、可愛い子達だからお近づきになりたいものだが。

 それにしても、最悪の事態は免れそうで良かった。最低でも3枚貰えるなら、希望は繋げるというものだ。


「私は反対、あんた達みたいな外面だけの人間なんて信用ならないわ!」


「真っ先に勝手なことをした、あなたがそれを言うのですか」


「あなた達は良いわよね。黙ってれば取り巻き達が、良いようにしてくれるんだから」


 何時の間にか、取り押さえられたままの九条さんと和風美少女が言い争いを始めていた。


 よくよく見ると九条さんも凄い美人だ。アンダーリムの眼鏡を掛けたクールビューティーで、その手の趣味がある男なら、一度は踏まれてみたいと思うかもしれない。

 

 九条さんの言い分も分からなくも無いけど、空気くらい読もうぜ。美人さんではあるけど、クラスでは浮いてそうだよなこの娘。


「喧嘩はそのくらいにしておいてくれ、今は時間が惜しい。九条さん、このクラスの結束を乱した君には、カード3枚で我慢してもらうよ」


「はん、いいわよ! どうせ黙っててもそうなったでしょうしね」


 須長にそう言われると、多勢に無勢と感じたのか、九条さんも諦めたようだった。


「じゃあ、他に異論が有る者はいないか?」


「皆賛成のようだから、俺の案で分配を始めようかと思う」


 あんなの見せられて文句を言える訳が無い。結束を乱したとかって、逆に非難されるのが落ちだ。


 須長の言葉に反対の言葉を口にする者は出なかった。

 周囲にいるクラスメイト達も口々に賛成の言葉を返していたのだが、ここでミソなのが、クラスメイト全員が声を上げているわけでは無いということだ。


 天間や須長を中心とした華やかな面々、それとその周囲で囃し立てる者達、残り10数人の離れたところで事の成り行きを見守る者達。これを見ると、クラス間の力関係が一目で分かるというものだ。

 離れて見守っている人は、自分がどんな意見を言っても聞き入れられないことを、これまでの経験からも分かっているのだろう。俺もまた、その中の一人ではあるのだがね。


 ただ、じっと耐えている俺達と、方法はどうあれ抗おうとした九条さん。どちらが利口かと言えば俺達のほうだとは思うけど、俺には九条さんの行動がとても眩しいもののように感じられた。


「まずは戦闘要員の9人を決めよう、出来れば運動部に所属している者が良いな。戦っても良いという者は手を上げてくれ」


 須長がそう言うと、男子・女子の各4名づつが手を上げる。いずれもスポーツをしていそうな、引き締まった身体をしていた。


「あと1人居ないかい?」


「須長がなってくれないか? 指揮してもらうんだから、キミも力が有ったほうが良いだろ」


「そうか、わかった。後は4枚と、3枚で分けるだけだ。ふうむ……クラスで団結することが重要だからな、天間君が協力してくれそうな人を選んでくれないか?」


「どうしてもというならそうするけど、俺なんかで良いのかい?」


 あーはいはい、そう言うのいいから、さっさと分けておくれよ。どうせ俺は3枚のほうなんだし、離れて見てる奴らも、同じこと考えてるぞきっと。


 予定調和のように、天間の周囲から賛成の声が上がると。「そこまで言うなら」と言って、天間がカードを4枚づつ配っていく。

 周囲で囃し立てていた10人に配り終わった後、1人分余ったようで、離れて様子見していた1人を呼んだ。


速水ハヤミ、お前にも防衛を頼めるか?」


「ん? 俺か、別にいいぞ」


 速水と呼ばれた男子も、前に行きカードを4枚貰って戻ってくる。

 最初は、この速水という男、見た目からして強そうで、何で中心のほうに居ないのかと思ったのだが……。

 戻って来た後の速水の様子を見て、仲の良い友達?を優先しているようだと分かる。


 この友達?がまた可愛いのだ、男子の制服を着ていなければ、女子と勘違いしそうなくらいだ。

 仲睦まじい彼等を見て、キャーキャー言っている3人組の婦女子も居たが、BLがそうそう転がっているとも思えない。

 俺は2人の関係については深く考えない事にして、須長の方に視線を戻す。


「次に3枚づつ配るから、残りの人は取りに来てくれ」


 須長の指示を受け、様子見していた面々が遠慮がちに並び、カードを受け取っていく。

 俺も遅れないように並び、無事3枚のカードを手に入れる事が出来た。


「あー、転校生君、勝手に決めてしまって君には悪いことをしたね」


「いえ、貰えるだけで充分ですよ。見事な手際でした」


「そう言ってもらえると助かる」


 俺の、初めてのクラスメイトとの会話がこれである。我ながら、無難な答えを返せたとは思う。

 少なくとも悪印象は与えていないんじゃないか?


 何はともあれ、無事にカードを3枚手に入れることができた。

 スクリーンの表示を見る限り、残り時間は1時間ほど。このまま無事に終わればいいんだがね。



 3枚の人と4枚の人にカードの分配を終えた後、運動部連中が6枚づつカードを貰う。そして、最後にリア充4人組が、9枚のカードを受け取り、カード分配は完了した。


「それじゃ、僕達は行くから後のことは頼むよ」


「ああ、異世界でまた会おう」


 天間と須長がそう言って別れると、天間達4人はフッと消えて行った。


「さて、僕はこれから今後の作戦を練るから、皆は自由にしていてくれ。速水君だけは少し相談に乗ってもらっていいか?」


「何で俺が?」


「ああ、僕は戦闘班や防衛班の指揮にあたるだろうから、その他の子の指揮を君に任せたい」


「ふぅ、しょうがねーな」


 速水はしぶしぶ承諾すると、須長の元に行って今後の作戦について話し合いを始める。

 なかなか良い人選だな、速水はリア充グループから一目置かれているようなのに、グループにも属していない。

 そのため、彼が指揮するのであれば、あぶれ者たちの不満も多少は抑えられるかもしれない。


 俺もあまりぐずぐずしてる場合じゃない、残り時間はもう55分だ。

 この時間を使って、クラスメイト達と交流を深めておかねば後々拙い。



 俺はまず、誰に話しかけようかと、クラスメイト達の様子を探っていく。


 クラスメイト達は各自2、3人のグループに分かれて、今後の事を話しているようだ。

 異世界召喚という更なるショックを受けてか、転校生襲来イベントは完全に立ち消えとなっている。


 ざっと見た感じだと、次の通りにグループが別れているようだった。


・カード6枚の委員長須長と、カード4枚の速水

・カード6枚の運動部男子2人組が2グループ

・カード6枚の運動部女子3人組

・カード6枚のボスギャルと、カード4枚の御付きAとBの3人組

・カード4枚の馬鹿っぽい男女カップル

・カード4枚のチャラい男子3人組

・カード4枚の普通な女子3人組

・カード3枚の腐女子3人組

・カード3枚のオタク男子2人組

・カード3枚の地味女子2人組


 ここまでで27名、7名は既に9枚のカードを受け取って、この場から消えているので、合計で34名だ。

 残りの6名はというと、各自離れてポツンと立ち尽くしている。かく言う俺もその中の1人である。


 このままではボッチのまま異世界に飛ばされることになる。それだけは避けたいところだ。

 さて、誰に話しかけようか……。



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