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1-2. 勇者召喚? いいえ、転生です

「おはよう諸君! 気分はどうかな?」


 頭痛を覚えて目を覚ますと、若い男性の声でそう語りかけられた。

 身体を起こして周囲を見回すと、だだっ広い真っ白な空間に、俺の他にもクラスメイト達が居るのが分かる。

 周囲のあり得ない光景を見るに、どうもドッキリとかでは無さそうだ。


「さて諸君、時間は有限だ。無理矢理起きてもらって直ぐだが、手短にいかせてもらうぞ」


 男の声がそう言うと、そこかしこでクラスメイト達が騒ぎ出す。

 俺はどうかって言えば、話す相手もいないのだから騒ぎようがない。


「これってもしかして、異世界召喚ってやつ?」


「そうだな、これからチートスキルとか貰えちゃうんだぜ、きっと」


「まじ? やっべー、俺も今日から勇者か!」


「ぐふふっ……異世界でハーレムでござるな」


 といった楽しみにしている者も、


「なんなのここは!? 元の場所に帰してよ!」


「あはははは……これは夢だ、きっと夢なんだ」


 と取り乱している者もいた。


(魔法陣で転送されるとか、こんな夢のシチュエーションに置かれても、語り合える仲間が居ないなんて寂しいにも程があるぞ俺……)



 ふと、ざわざわとした喧騒が一瞬で静寂に変わり、それと同時に俺の身体が勝手に動き出す。

 俺の視点が白い空間の一点に定まってすぐに、スクリーンの様なものが現れた。

 他のクラスメイト達も、どうやら同じ方向を見せられているようだった。


 スクリーンの中から白いフードを被った怪しい男が、こちらに語り掛けてくる。


「黙って話を聞くこともできないようだから、口を封じさせてもらったよ。まず最初に行っておく、諸君らに拒否権は無い。そして、諸君らが何故ここに居るのかと言えば、異世界からの勇者召喚があった所為なのだ」


 どうやら、この白フードには常人が持ちえない力があるようで、身体も動かせないし喋ることすら出来ない。


「勇者召喚といっても召喚されたのは1名だ。諸君らは召喚に巻き込まれて、次元の狭間で既に死亡した身だ」


 巻き込まれて死亡ってマジか、俺のバラ色の高校生活は何処へ……。


「納得できない気持ちもあるだろうが、事実は変わらん、理解しろ。そして我がこれからする事は、諸君らの救済だ。心して聞くように」


 救済か……正直、胡散臭い気もする。弱ってる時に近づいて来る奴には気を付けろって、爺ちゃんも言ってたしな。


「まず、諸君らを元の世界で生き返らせることは出来ない。故に基本的・・・には、召喚主の世界に転生してもらうことになる。諸君らが其処で何をするかは自由、まあ召喚で巻き込んだのだ、諸君らに何をされても自業自得だな」


 白フードはそう言って、一瞬だけ苦笑を浮かべた。



 何も無かったかのように、無表情に戻った白フードはそのまま説明を続ける。


「転生先は、魔物溢れる剣と魔法の世界だ。全ての生物にはレベルとステータスが存在し、スキルを持つ者もいる。当然、諸君らには転生先で生き抜くだけの力を与えるつもりだ」


 剣と魔法の世界、但しチート無しとかだったらどうしようかと思ってたから、まだマシか。


「まずは、言語知識だがこれは転生時に直接脳に書き込むことになる。最初は違和感があるだろうが、直ぐに慣れるはずだ」


 直接脳にとか怖いけど、これはもう無事に済むことを祈るしかない。


「次に、レベルアップの優遇措置、これは魔素の吸収効率を最適化して送り出すことになる。魔素というより経験値と言った方がイメージし易いかもしれないな。本来はレベルアップと共に吸収効率が上がっていくのを、最初から最大効率としよう。現地人の場合、魔物を倒した時に吸収できる魔素は、レベル1で約2%、レベル40でも約10%、どんなにレベルを上げようと精々80%が良いところだ。それを最初から100%にするんだ、思う存分レベルを上げてくれたまえ」


 ふむ、最初から経験値50倍でレベル40でも10倍か、これは良いチートだな。

 でもこれって、パーティで倒した場合ってどうなるんだろね。


「他には、各人に対応したスキルの付与、これは例外もあるがスキルというよりは適性に近い物になる。いくつのスキルを与えるかは、この後決めてもらう事になるので、説明はその時にしよう」


 どうやって決めるんだろな、そこはかとなく嫌な予感もするけど……。


「最後に、転生先での一般的な装備と持ち物、武器に関してはスキルに対応したものを、こちらで自動的に割り振る予定だ。以上だが、質問があれば心の中で念じてみることだ。答えるに値する質問であれば、回答しよう」


 とりあえず俺は、気になったことを聞いてみることにする。 


(基本的に転生してもらうって言ってたみたいですが、例外はあるのですか?)

(例外はある。それ以上は答えることは出来ない)


(転生先はどういった場所になるのでしょう?)

(人が住まない森の奥だ)


(転生先から日本に行くことはできますか?)

(限りなく不可能に近い)


(経験値の細かい分配について聞きたいのですが)

(現地でいろいろ試して見てくれ)


 まあ、こんなところだろう。


 経験値については、クラスメイトだけで戦った場合とか、現地人を含めた場合とか色々パターンが有ってややこしそう……これは転生して落ち着いてからにしようと思う。

 転生の例外は考えても仕方が無いし、日本に渡る手段も今は考えないでおく。

 そんな事より、皆と仲良くなってことの方が大切だ。転生先が森の奥ってことは魔物とかも居るだろうし、いざという時取り残されないようにしておかないとならない。


 クラスメイトにどう溶け込もうかと考えていると、質疑応答が終わったようで、白フードが話を続ける。


「質問は出尽くしたようだから、これから与えるスキルの数を決めてもらう事とする」


 おっと、ここからは重要だな。出来る限り多くのスキルを貰えるように頑張らんと。


「ここにある200枚のカードを、諸君ら40人で分けなさい。分け方は自由だが、転生先を考慮し、どう分ければ生き延びられるか、よく考えて分けると良い」


 白フードがそう言うと、スクリーンの下に大量のカードが現れる。


「ちなみに1人が持てる最大枚数は9枚、カードの数でスキルの数が決まるから、少なくとも各自1枚は持っておくことをお勧めする。では始め、もう動けるようにしたぞ」


 『強引に9枚持っていく』って案は却下だ。第一印象が最悪だし、いきなりクラス全員を敵に回すとかは流石に馬鹿すぎる。

 そうすると、大人しく公平に分けてくれるのを待つ他は思いつかない。200枚を40人で分ければ、1人5枚でスキルを5個貰えれば御の字だな。


 そう考えている内に、不良っぽい見た目の3人が、我先にとカードに群がり9枚づつ持っていった。その瞬間、3人はカードと共に何処かへと消える。


「言い忘れたが、最大枚数を手に入れた者は、一旦隔離することになっている。これは、他者から奪われることを防ぐための措置である」


(そういう事は先に言ってくれ、まったく……これで残り173枚か、ちゃんと俺にも回ってくるんだろうな?)



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