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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第801話 ヘルメースの意味

2018年06月23日 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう コミック1巻発売

2018年06月29日 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう コミカライズ6話公開

2018年06月30日 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう 第4巻発売


という訳で、6月末は如何で目白押しです。

是非、書店に足をお運び下さい。

 歓声の鳴りやまぬ中、馬車に潜り込んだ辺りまでは笑顔を引き攣りながらも維持出来ていたと思う。

 館に入ってからは、夢遊病のようにふらふらと進み、ぱたりとベッドで力尽きたのだけを覚えている。


「起きた?」


 ふわとほの明るさに、瞼を開けると心配そうなリズの顔。の横に、タロとヒメの顔。はふはふしている。


『おきたの……』


『ひろうこんぱい……』


 てしてしとベッドによじ登ろうとするタロとヒメをリズが、てしってしっと防いでいた。


「あぁ……。寝てた? もう夜かな……」


 私が問うと、ふるふるとリズが首を振る。


「休み始めて、一日半が経っているよ。次の日の夕食が終わったくらいの時間」


 その言葉に、目を剥いてしまう。


「体力を消耗し過ぎだって。薬師の先生が仰ってた」


 リズの言葉に、はたと額を抱えてしまう。


「東から戻って、ノーウェティスカに行って、帰ってきて、演説。体がいっぱいいっぱいだったと思う」


 沈みがちのリズの言葉に、そっと手を差し伸べて、頭を撫でる。


「忙しい時だからしょうがないよ。ごめんね、心配させて」


「ううん。無理しているのは分かってた。……でも、あぁいう感じってヒロ嫌いだったよね? 大丈夫?」


 あぁいうが演説を指しているのなら、リズの指摘は正しい。


「そうだね。あんまり煽ったり扇動するようなのは好きではないね」


「なら?」


「うん。大規模な命の取り合いになると、意識って変わると思う」


 新兵といえど冒険者として生きてきた人達だ。古強者に至っては、各地で鳴らした猛者となる。

 そんな人間が人を殺す事に躊躇いを持つのか?

 となると、また話は別だ。


「小さな集団で行う命の取り合いは、背負うものが分かりやすいよね。家族だったり仲間だったり、明日の自分だったり」


 こくりと頷くリズ。


「でも、規模が大きくなったら、守るべきものがぼやけちゃう。町の平和を守るのに、人を殺す価値はあるのか。そんな事を考えてしまう」


 幾ら『リザティア』に家族がいるといっても、大多数は他人だ。友達、仲間だって総数で考えれば極僅かだろう。


「それでも、皆が守るのは全て仲間。責任は私が取る。だから安心して、煽られるままに戦って良いよ。私が皆に言えるのはこれだけだよ」


 苦笑を浮かべながら告げた言葉に、リズは若干の悲痛を浮かべる。


「やっぱり辛い?」


 その言葉に、首を振る。


「選んだ事だから。頑張る」


 と告げた瞬間、はたと気付く。

 『朱鷺の声(ケーリュケイオン)』というスキルのバックグラウンドはヘルメースだろう。

 ヘルメースは伝令使でありながらも、トリックスターとしての側面を持つ。

 扇動、曲解、不和。やりたい放題の神様だ。

 あぁ、自分自身が偽悪的に煽っていると認識していたからこその、トリックスター(悪意ある扇動)か……。

 神様、皮肉が聞き過ぎています。

 そりゃ、煽るのに使った題材を考えれば、ツッコミを入れたいだろう。

 人として死にたい軍人とヒトラーの尻尾だ。きっと碌な死に方はしないだろう。


「沈んでる……」


 リズの言葉にふいっと顔を上げる。


「いや、色々と諦めた。格好悪かろうが、評価が今一だろうが。結果で勝負するしか無いなって」


「結果って?」


「目的を果たす。そして、生きて帰す。私が出来るのはそれだけだ」


 やっと絞り出せた微笑みを浮かべ告げると、やっと安心したように微笑んでくれるリズ。


「ちょっと安心した。じゃあ、ずっと心配してた分のお返し」


 リズが告げると、ぱっと両手を万歳する。

 その瞬間を待っていたように、とうっとタロとヒメが飛び掛かってくる。


「あ、こら、ベッドに登らない!?」


『ふぉぉ。ぬくいの!! ぬくーだいじなの!!』


『ちりょうこうい!!』


 しかっと抱き着かれ、べろべろと嘗め回されて、解放されたのは顔じゅうがべちょべちょになってからだった。

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