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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第799話 初めての出会い

 今後の細かい詰めを三人で行い、結論が出たのは夕刻に入ろうとする薄暮の時間だった。

 フーア交戦条例絡みでクロスボウに出来ること出来ない事を想定問答で確認しないと駄目だったのだ。

 取りあえず、面制圧はOK。狙撃に関しても日中は可能だから、日が出ている間に短時間で勝負を付けてしまえば問題無いだろう。

 王家との連携は必要だが、今回の武力制圧及びその後の仕置きに関しては一定の見通しがついた。

 後は、実際に環境を構築しなければならない。


「しかし、間に合うのかい?」


 ノーウェがテーブルの上の箱庭を指差しながら問うてくる。


「私が魔術を使えば問題無いかと考えます。ただ、誰の益にもならないのが勿体無いですが」


 私の言葉に、くくとロスティーがくぐもった笑いで答える。


「時ここに至っても、利益を、成長を考えるか。我が孫は豪胆よの」


 と言われても、建築、建設業者を噛ませれば、それはそれで経済効果が大きい。

 『リザティア』の莫大な富の理由は、積極的に経済を回している事だ。

 本当なら民の意志で回して欲しいが、そこまでの教育はまだ根付いていない。

 よって、官からの強制となる。下手をすれば、官製談合だってやっている。

 しかし、別にそれが罪な訳じゃない。今は、四の五の言わず、お金を回して規模を拡大するフェーズだ。


「金と経験、それに信用は幾らあっても足りません」


「至言よの。先程の事後の件、兵糧があっても人員は足りなかろう。片付けの人員を回す」


「あ、父上ずるいですよ?」


「お前の方が近いのだから、輜重は率先して行え。それを頼りに動くのだから」


 ここでも親子の談合が始まったが、可愛いものだ。

 心行くまで話をしてもらおうかと思って、席を先に立つ。

 流石に、準備があるので、帰ろうかと考える。

 聞くと、ロスティーはそのまま竜に乗って帰るらしい。バイタリティーがありすぎる。


『ふぉ!! ままなの!! みて、かわいいの』


『しとくのあい』


 ちなみに、ヒメ。それすぐに意味が出てこなかった。中学か高校で習ったんだろうけど、記憶になかった。謎だ。

 タロとヒメがひゃふひゃふぅぉふぅぉふと最近聞かないような甘えた鳴き声で近づいてくる。

 と、見てみると、大きな二匹の後ろから小さなオオカミがてちてちといった感じで付いてくる。


「おぉ、可愛い……」


 思わず、跪いて抱き上げようとすると、きょとんとした顔でストップする。


『ふぉぉ……。いい?』


『ままなの』


『ほうよう』


 ひゃふっと鳴いたオオカミの子供がはっはっと口を開けて甘えた様子で近づいてくるので、抱き上げる。

 首元を撫でると、目を細めて尻尾をぱたぱたと動かす。口に指を近づけると、ふんふんと嗅いだ後にかじかじと噛んでくる。


「歯は生えているのか……」


 時期的に珍しいなと思っていると、がちゃりと扉が開いてラディアが出てくる。


「あら、アキヒロさん。お久しぶりです。あら、そちらにお邪魔してたのね」


 微笑みを浮かべながらの挨拶に、一礼を返す。


「この子ですか?」


「えぇ。偶々ペールメントの群れで季節外れの子が生まれたの。それを貰ったのよ」


 ラディアが近づいてきて、ちょいちょいっと指先を振ると、嬉しそうにオオカミの子供が前足を伸ばす。

 丁度ロスティーとノーウェも部屋を出てきて鉢合わせになる。


「あら、お義父様……。こんな格好で申し訳ありません」


 家中にも知らせないように訪問したのか、ロスティーが手を振り頭を掻く。


「気にする事は無い。礼を逸したのは儂の方だ。しかし、ペールメントの血族か。無事届いたのだな」


 増えた人間に面食らいながらも、ふんふんと興味深そうに空気を嗅ぐ、オオカミの子供。


『ふぉ。まま、あそびたいの!!』


『せきりょう!!』


 どうもオオカミの子供に興味津々みたいなので、そっと地面に戻すと、てちてちと元の場所に戻る。

 タロとヒメもお兄さん、お姉さんぶりたいのか、ペールメントみたいな顔をしながら、色々教えている。


「ふふ。やっぱり同族が良いのね」


 ラディアの言葉に、ノーウェが肩を竦める。


「まだ到着したばかりで、慣れないみたいなんだ。でも、良い影響を受けると良いな」


 ノーウェが珍しく優しい瞳で、オオカミの子供を見つめる。

 そう聞くと、このまま帰るのも申し訳ない気がしてくる。

 ふむぅ……。


「いや、優先すべきを優先して欲しいのだが。また、タロとヒメを連れてきてくれるかい?」


 ノーウェが慌てたように苦笑を浮かべながら告げる。


「分かりました。飼育をしている人間も一緒に連れてきます」


「助かるよ。書状では貰っているけど、初めての事ばかりだしね」


 ノーウェがラディアと顔を合わせて、微笑む。

 うむ。良い感じに関係が出来ているようだ。


 ロスティーと顔を見合わせて、お互いに柔らかな微笑みを浮かべてしまった。


『まま、すごいの!!』


『びゅーん』


『ふぉ?』


 あんまり余計な事を教えなくても良いんだよ?


 そんな一幕を挟みつつ、さくっと『リザティア』に帰る事にした。


『ふぉぉぉ!!』


『いりょのぼう』


 あぁ、別れを惜しむオオカミが二匹。

 成長したもんだなと思いながら空に上がったら喜んでいたので、やっぱり可愛いなと思ってしまった。

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