第5話 水場を探していたら、人の痕跡を見つけました
さて、お腹も一杯になったところで次は水の確保をしなければならない。
そこまで暑くない為水分の消費量は微々たるものだが、500mlの水筒に入った麦茶だけでは心許ない。
「見渡す限りの平地だから、段丘も見当たらないな。一旦川上に向かっていくか」
湧水が無ければ最悪川の水を濾過して飲むが、濾過装置を作るにも機材が無くて難しい。
「せめて竹でも有れば何とかなるんだけど……」
4時間程歩いて行ったが大きく植生も変わらず、川幅も一定のまま続いている。
「時速5kmちょっとと考えても20km近くは歩いてるはずだけど、全然景色が変わらないな」
やや辟易とし始めた頃に、動物の密集した足跡を見つけた。
「草食動物の水飲み兼餌場か?」
足跡の大半は蹄の為、可能性は高いと思い一旦そちらの方に足を延ばしてみる。
森自体はそこまで鬱蒼としたものでは無く、木漏れ日が適度に入り足場も良い。
歩き始めて30分程で豊かな湧水を湛える池を発見した。
岩場からは滾々と水が湧き出し、池からの水は先程の川まで支流を作っていた。
「予想通り。取り敢えず飲み水の確保は完了と」
ここからは食料調達を目的と変更する。
「狙いは鳥類か。ウズラかそれに類似する辺りがいれば良いのだが」
正直、シカやイノシシ等の大型動物が罠にかかっても止めを刺す術が無い。
昔爺ちゃんとくくり罠にかかったイノシシを見たが、それなりの大木が半ばまで削れ、ドーナッツ状に地面が50cm以上掘り返されているのを見て恐怖した記憶しかない。
足なんて骨剥き出しだったし。近づくだけで威嚇及び猛突進のあの生物を得物無しで狩れるとは思えない。
「木の反発程度でかかる獲物じゃないと、カッターじゃ捌けないしな」
餌場から若干離れたクヌギとよく知らない小さな実がたわわに実った木の近くに小規模なくびちを何か所か設置する。
ちなみに蔓を探している際に、山芋を発見しほくほく顔で掘ったのだが、2m近く有り泣きそうになった。
スコップが有れば別だが、その辺の木の棒と板状の木では2mも掘るのは拷問だった。
「あれ?これってもしかして……」
いくつか罠を仕掛けている際に、明らかに生きている罠を発見した。
「『認識』を行使します」
金属のワイヤーを縒ったものをくくり罠モドキにしているものが何カ所かに設置されている。
「これスプリング使わず、踏み抜いた時に木の反動で締め上げるのか。良く出来てるな」
と言う事は、ここで罠を使っている人間がいると言う事である。
しかも設置時期は昨日との事。
「友好かどうか分からない知的生命体との遭遇か……。取り敢えず隠れて様子見かな」
罠を設置している際に丁度良い岩場を発見したので本日の寝床とする。
後は、日が落ちる前に罠の確認して、かかって無ければ山芋祭りかな。
あぁ、山芋は毒性は無く全く山芋でした。