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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第796話 援軍が来ない事が確定した中での決意

「じゃあ、行ってくるね」


 ロット達に託された思いを兵に伝えてもらうために、リズは残る。少しだけ寂しそうな表情のリズにそっと口づける。

 ふと、足元を見ると、てしてしと尻尾を振ったタロとヒメ。


『一緒に行く?』


 何気なく聞いてみると、ひゃふうぉふっと二匹が一斉に鳴きだす。


『ふぉ!! いっしょなの!! ついていくの!!』


『ふらいはい!!』


 ヒメは竜がお気に入りっぽい。


「気を付けてね」


 リズの言葉に手を振り、颯爽というにはちょっとあれだが、竜さんの首元からよじ登り鞍に跨る。

 タロとヒメはてしんてしんっと飛んだと思うと、すちゃっと私の左右に狛犬のようにお座りする。


「あは。タロ、ヒメ、よろしくね」


 リズの言葉に、ぶんぶんっと尻尾を振り、出立の合図とする。


「じゃあ、ティアナ、カビア。リズとよろしく」


「ノーウェ様によろしくお伝えして!!」


「へましないでね」


「忘れ物の無きよう!!」


 三人に見送られ、五稜郭から一気に上空に駆け上る。タロとヒメは大興奮だ。


『あいきゃんふらい!!』


 んー、ヒメ。自力で飛んでないし、何だか投身している気分がする、その思考。

 風を切り、秋の高い蒼穹を我が物のように舞う。本当であれば、こんなに贅沢な事は無いのに……。


「馬鹿……ばっかりだな……」


 静かに呟いた言葉は、ぺろっと頬を舐めてくれたタロとヒメだけが聞いていた。

 そう長くない時間をまっすぐ進むと、降下が始まる。竜での移動は上昇と下降だけで大半は食われる。

 トルカを抜けて、見慣れた景色が見えてくると、ノーウェティスカまでもう少しだ。


『ふぉぉ……。はやいの』


『しっぷー!!』


 風のざわめきを共に、竜は夕暮れにはまだまだ早い空を駆けノーウェティスカの手前に舞い降りる。どうも何事かを念話でやり取りしていたようだ。

 小さな草原が瞬く間に間近に迫ってくる中、一台の馬車が停まっているのが見えた。

 ふわっと地上に着地する竜。間髪入れず、とぉっという感じで飛び出すタロとヒメ。私がえっちらおっちら降りて、馬車に近づくとぱたんと扉が開きノーウェが降りてくる。


「やあ、忙しい中申し訳ないね。急ぎだったものでね」


 その懐かしい苦笑に、私も苦笑を返してしまった。

 馬車に乗り、旅路の話などをしていると間もなくノーウェティスカに到着する。そのまま門を潜り、館に向かう。


「随分と栄えていますね……」


 町の様子はいつもに比べると、住人の行き交う数が多いように見える。何気なく言葉を紡ぐと、ノーウェがくすりと笑う。


「『リザティア』へ行き交う旅人、君が預けてくれた職人の物資を買いに来る者。ふふ。君絡みばかりだね。大いに栄えているとも」


 そのノーウェ節に思ったよりも状況は切迫して無いのかと安心してしまう。

 館に入ると、そのまま急かされるように応接を通り過ぎ、執務室に慌ただしく入る。あ、タロとヒメは庭にててーっと遊びに出かけた。


「急ぎのため、竜の御方には無理を承知でお願いした。改めてお詫びを」


 茶の一杯も出さず、深刻な表情でノーウェが告げる。


「それは……はい。大丈夫かと考えます。そんなに状況は深刻ですか?」


「ふむ。最近は大きな戦が起きていないからね。大事と見てしまう部分はあるかもしれない。少なくとも今知れている数は脅威だ」


 そう告げてノーウェが机から地図を取ってくると、お茶が運ばれてくる。若干冷えた体をお茶で温め、改めて地図に向き合う。


「カビアから情報を貰い結論が出たのが、昨晩遅くだね。現状の集結点はここになる」


 『リザティア』から見て、随分と西南の一点をノーウェが指さす。


「現状は数百の塊だが、それが西端の貴族領の兵となる。それが東に移動しながら……」


 ついっとノーウェが地図の上に指を滑らし、徐々に『リザティア』へと近づけていく。


「合流、拡大していく。最終予測は二千を超える。だが、今の保守派の力ではどう転んでもそれ以上は維持出来ない」


「それは資金的な問題ですか?」


「いや、金もそうだが。物資が用意出来ない。現状はダブティア交易が徐々に拡大していると噂が流れている。物資はどんどんと……『リザティア』に集まっている。それに」


 はぁっと溜息を一つ。


「それだけの大きな軍を率いるだけの人材がいない」


 その言葉に、一瞬呆気に取られるが、正しい。三千からの集団に規律を守らせ、行軍させるだけでもとんでもない事務処理と兵へのバックアップが必要になる。それが寄り合い所帯の兵となれば、そんじょそこらの人間に出来るとは思えない。


「国の恥部を晒すようで申し訳ないんだが、開明派とて大きくは変わらない。父上には報告しているので何らかの動きは出来ると思うが……」


 地図で見るワラニカ王国の東部は広い。


「少なくとも、保守派が辿り着くまでには間に合わないと考えている」


 一層悲壮な表情で告げるノーウェに私はきょとんとした表情を返してしまう。


「ありがたくは思いますが、自分の領地の問題です。まずは自分で解決しようと考えます」


「しかし、君の領地の兵は二百強。引退した者を合わせての全数でも五百を超えるか超えないかの筈だ。四倍近い兵力差になる。それを!!」


 珍しく激昂するノーウェの目の前に手のひらを差し出し、落ち着いてもらう。


「いつかは攻められると考えていました。こんなに早くとは思っていませんでしたが、準備は済ませています」


 目を見開くノーウェに私は微笑みを浮かべる。


「別に、倒してしまっても構わんのだろう? というやつです」


 きょとんとしたノーウェに、私は心の中で足止めどころか食い尽くす事しか考えていない事をどう説明しようかと思案し始めた。

リハビリ期間ということで、新作を投稿しております。


■おじさんとJKと異世界 ~お気楽異世界生活~


おじさんの活躍と女子高生好きには堪らないかと思います。


https://ncode.syosetu.com/n8655et/

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